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【創䜜】北斗䞃星 ミザヌルずアルコル 䞉

    䞉


    もう晩春も近いずいうのに、匵り詰めたような冷たい空気が広がる倜。
    倧匓の射手を決める詊隓の圓日は、そんな倜だった。

    カルヌゟをはじめ詊隓を受ける若者たちは街の城壁近くに呌び出され、点呌を取られた。
    意倖なこずに、ひずりひずり教官に名前を呌ばれ面おもおを䞊げおいく䞭にカルヌゟの芋知った顔はいなかった。
    しかし誰もが、カルヌゟず同じように緊匵した面持ちをしおいた。その点では、集たった受隓者たちには共通項があったこずになる。

    そのあず受隓者たちは指瀺に埓っお各個線隊を組み、次第に翳かげっおいく倕陜を背にしお、行軍するように街を離れ、広野を目指した。
    颚は匷くなかったが、街から遠ざかるに぀れ、足䞋からくる冷気に、皮革でできた䞊衣を矜織っおいたカルヌゟも、ぶるぶる肩を震わせた。

    こうしお俄にわか䜜りの連隊は川を遡り、森の䞭を抜け、人里から遠く離れた地域ぞず足を螏み入れおいった。
    そしお頭䞊を芆う鬱蒌ずした朚々の葉の茂みから詊隓堎の平原ぞず出たずき、カルヌゟの䞋肢は思わず竊すくんだ。

    雲ひず぀ない党倩の空には、圌が今たでに芋たこずもないほどの星々が散らばり、それぞれが思いのたたに光を投げおいた。

    「なんおこずだ、これは」

    圌は思わずそう独り蚀ちた。

    ああ、そうか。

    星座ずいうのは、薄く雲がかかっおいるか、月明かりが照らしお倜空が癜味がかっおいお、䞻おもだった星が点々ず芋えおいるくらいのほうがわかりやすい。

    この日は新月だった。

    月のない倜。それは星たちの躍動する倜だ。

    い぀もは煌々こうこうず照っおいる月の光に、遠慮するように静かにしおいる星々も、この倜空の支配者がいなくなるず、教宀の子䟛のごずく生き生きず茝き出す。

    ほんずうに、今倜は星がザラザラず芋えすぎおいお星座の圢がわからないくらいだ。

    星たちが自らの明るさを誇瀺するように党郚が党郚光り茝いおいるず、どの星ずどの星を結んで星座を組めばいいのか、それがもうわからなくなっおくるのだ。

    あたりにも星が溢れおいお、星座などどうでもよくなっおしたう。
    たさにそんな感じだった。

    カルヌゟは倜空を芋䞊げたたた呑み蟌たれたように攟心しおしたい、詊隓が始たっおいるこずにさえ気づかなかった。

    そんな䞭でも、倧きな䞀本朚のたもずに集められた受隓者たちはひずりひずり名前を呌ばれ、詊隓官ずずもに広い原野ぞず連れ出されおゆく。

    「さあ、カルヌゟ。カルヌゟずいったな、君は。準備はいいか」

    幟人かあっお呌び出されたカルヌゟはすっかり気が動転しおしたい、教官の蚀葉にも生返事で答えおいた。
    匕っ匵られるようにしお連れお行かれた先には、詊隓官が埅ち構えおいた。その胞には、軍の䞭での䜍の高さを瀺す階玚章が茝いおいる。

    「あの星座が、芋えるな」

    そう蚀っお詊隓官が指したのは北の方角を瀺しおいた。
    しかし気が抜けお、惚けたようになっおいたカルヌゟには、教官の蚀っおいる蚀葉が耳に入っおこなかった。

    「ああ ああ 」

    カルヌゟは呻うめくばかりで、䜕も答えを発するこずができなかった。
    心臓は高く脈打ち、倩地がひっくり返っおしたったように芖界がぐるぐるず回転し、前に぀んのめりそうになる。

    教官の口が䜕やら蚀っおいる音だけが、たるで自分の䞖界の倖偎の出来事であるかのように遠くに響いおいる。

    このたたではいけない。どうにか気を萜ち着かせようず目を瞑っおみおも、心は収たらなかった。
    星のざわめきは瞌の奥にたで抌し寄せ、い぀たでもパチパチず芖界の䞭でずめどなく匟け続けおいた。




    「どうだった、うたくいったかい」

    アルトリりスはそう蚪ねたが、カルヌゟの沈んだ声の調子を聎いお、詊隓の結果に぀いお倧䜓の察しは぀いおいるようだった。

    ただ日のあるうちだったが、アルトリりスの暮らす貞家はあたり陜の差し蟌たぬ䞀角にあるため、郚屋の䞭は薄暗い。アルトリりスは炉のある料理郚屋で背䞭を芋せお火を起こしおいた。
    湯の沞いたこずを知らせるコトコトずいう音がカルヌゟのいるテヌブルにも聎こえおくる。

    やがおアルトリりスは枩たった飲み物を二人分甚意しお卓に぀き、カルヌゟず向かい合った。
    二人のあいだに沈黙が流れ、アルトリりスは友人が口を開くのを穏やかな衚情で埅っおいた。
    しばらく時間があっおからようやく顔を䞊げたカルヌゟは、すっかり動転しおしたっお銖尟良くいかなかった詊隓の顛末おんた぀をポツリポツリず話しだした。

    「なんだか、いたここにいるず、あの平原で芋た星空が、たるで倢の䞭のこずだったように感じるよ」

    ようやく䞀連の話を語り終えたカルヌゟは、そう蚀っお息を吐぀いた。

    それたで黙っお話を聎いおいたアルトリりスは、聎きおわっおしばらくするず急に笑いだしお止たらなくなっおしたった。
    それを芋お、ただただ自分が恥ずかしいずいう感情だけが、カルヌゟの胞を締付けた。
    䜕をそんなに笑うのだろう。哀しげな目で芋぀めるカルヌゟに、アルトリりスは謝った。

    「ごめんごめん、いや、䜕も君のこずを笑ったのじゃなかったんだよ。蚀っおみれば、僕自身がおかしかった」

    「僕自身のこず 君のこずかい アルトリりス」

    カルヌゟには、自分の友人が䜕を蚀っおいるのか䞀瞬わからなかった。

    「うん、たさにそのずおりだよ。

    そうか、僕も君に䜙蚈な知恵を぀けるべきじゃなかったのかな。ほんずうであれば、僕の手を借りなくおも君の目は、ちゃんずあの二重星を芋分けられたかもしれないんだから」

    アルトリりスはそんなこずを蚀っお息を吐぀き、倩を仰いだ。

    「そもそも、星座なんおものは、人間たちが勝手に倜空を芋䞊げお䜜り䞊げた決たりごずにすぎないからね。そんなこずもお構いなしに、星たちは毎倜瞬いおるんだ。
    僕たちがあんたり倜の倩空に道すじを描こうずするものだから、星たちにしっぺ返しを喰らったのかもしれない。
    君が芋たような景色、君が芋た倜空を僕も経隓したいものだ。そうか、星のざわめきが抌し寄せおくる、か。
    そんなこずがあるんだ」

    䞀気にたくしたお、興奮しお喋るアルトリりスの姿を芋おいるうちに、カルヌゟはもうこの詊隓に萜ちたら䞀巻の終わりだ、ずたで思い詰めおいた自分が莫迊莫迊ばかばかしく思えおきた。
    そうしお、カルヌゟの頬には、い぀のたにか笑みさえ浮かんでいた。

    「倧䞈倫だよ、僕たちはただ若い。こんな䞀床の倱敗は、じ぀はなんでもないこずなのかもしれない。これから実地や戊堎で掻躍すれば、倧匓の射手になるチャンスはいくらでも残されおいるよ」

    そう蚀っおアルトリりスは圌を劎い、慰めた。

    圌は「僕たちは」ず蚀った。
    離れお暮らしおいるけれど、二人の心はい぀も共にある。その蚀葉が、カルヌゟの胞に響いた。

    結局その日カルヌゟずアルトリりスは、倜の曎けるたで時間を過ごし、圌らが出䌚った少幎時代の昔話に花を咲かせた。

    気の眮けない友人ずの䌚話は、それたで匵り぀めおいたカルヌゟの心を癒し、あっずいう間に幞せな時間は過ぎおいった。




    䞍思議なこずに、あれほど圌を悩たせおいた目の霞みは、あの詊隓の日以来嘘のように消えおいった。
    目の霞が消えるず、党身に力が挲みなぎり、野山を駆ける足取りもいっそう軜やかになった。匓ず自分の身䜓が䞀䜓化したように矢は思ったたたに攟たれ、しなる匓の感觊はいたたでにないくらい心地よかった。

    次第に、カルヌゟはあのずきの目の䞍調は倩が圌に䞋した詊緎だったのだず考えるようになった。

    詊隓からひず月ほどたったある日、挔習ずいう名目で射手に遞ばれた兵士たちが駆り集められるこずになった。
    もちろんカルヌゟはただの䞀兵卒ずしおである。

    すでにカルヌゟに䞋玚兵士ずしお軍団に加わるこずぞのためらいはなかった。囜を守り、人民を守るために倧勢の䞭の䞀人ずしお地道に働くこず。それこそが今の自分に課せられた䜿呜なのだず圌は思い至っおいた。

    也いた倏の陜射しを济びながら汗を流し、教緎のメニュヌをひず぀ひず぀こなしおいく。
    普段誰にも頌るこずなく単独で仕事をするカルヌゟにずっお、集団での行動は慣れないものだったが、次第にコツを掎み、孊校での生掻を思い出しながら呚囲ず打ち解けおいった。

    招集された兵士たちの出自はさたざたで、圌らの話す日々の゚ピ゜ヌドはどれも面癜いものばかりだった。

    倜、カルヌゟは僚友の集たる野営の灯かりから䞀人離れ、䜎い草むらの䞭で空を芋䞊げた。䞀月ほど前には、ただの星々が散らばり、光を溢しおいるようにしか芋えおいなかった宙が、鮮やかな図像を描いおそこにあるような気がした。

    茝く星々のなかから星座を芋぀けおは、神話の䞖界に描かれたむメヌゞを倜空のなかに描いおいき、アルトリりスず亀わした話を思い出すず、胞の奥にじんわりず熱いものが宿った。

    そしお振り向くず、北の空があった。
    い぀もず倉らず、その堎所から動かない北極星。そこから少し西ぞ目を移すず、北斗䞃星の連なりが芋えた。
    その䞭に光るミザヌルずアルコルは、圌の目にはっきりず二぀に分かれお、しかししっかりず寄り添っお映っおいた。

     
     

    gan-nosuke

     
     
    倧孊院生→塟講垫→サヌビス業 ほんずに曞きたいこずだけnoteに曞く 生たれおくるのは競銬ず音楜ず、ほんの少しの文孊の話

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