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利府の夜に見たアオハル。私が「地方での日本代表戦開催」に大きな意味があると思う理由

2013年、宮城スタジアムのピッチで2ゴールを叩き込んだディエゴ・フォルランが、今度は監督として凱旋した。

タイムスリップできたとして、その時の私に彼が後にJリーグでプレーするんだよ、と言ってもきっと信じないだろう。2010年のW杯でMVPをとった選手でヨーロッパで活躍するスター選手だったから。
そんな信じられないような現実を経て、彼は宮城スタジアムに戻ってきた。

そんな感慨深い思いで始まった、13年ぶりのウルグアイ戦。結果は3-1で見事に日本代表が勝利した。
日本代表は本当にしたたかに、強くなったのかもしれない。そう思わせる勝利だ。

日本代表の試合も劇的で面白かったが、前座試合もよかった。
小野伸二さんの色褪せないファンタジスタぶりに魅了され、宮城スタジアムのピッチに立つ宮本恒靖会長の姿を観て、雨のトルコ戦を思い出す。

今の代表は生まれてないか記憶がないだろう。
それくらい昔のことだな、と思うと少し切なくなる。

けれど、試合が終わった後、私の心に最も深く残っているのは、スコアでもレジェンドたちの姿でもなかった。

ゴール裏の端っこで、「アオハル(青春)」を爆発させていた、若者たちの姿だ。

相変わらずアクセスが最悪な宮城スタジアムで、彼らが見せてくれた熱さ。それこそが、全国各地で日本代表戦を開催する本当の意味なのかもしれない。


■中心じゃなくても、そこは選手の背中を押す「ゴール裏」だった

その日の私のチケットは、ゴール裏自由席だった。ただ、太鼓の音やコールリーダーが陣取る、いわゆる「応援の中心部」からは結構な距離がある場所を確保した。

普通なら、全力で応援すると言うより、周りに合わせて手拍子をしたり、じっと戦況を見守ったりするような、少し落ち着いた雰囲気のポジションだ。しかし、私のすぐ前にいた若い男子グループは違った。

試合開始のホイッスルが鳴った瞬間から、彼らは大声でチャントを歌っている。

誰かに煽られたわけじゃない。中心部から離れていても関係ない。「自分たちがこの場所から代表を後押しするんだ」と言わんばかりに、心から応援を楽しんでいた。その姿が本当に微笑ましかった。

そんな楽しい雰囲気は、伝染するものなのかもしれない。

後半に入ると、彼らの楽しそうな熱を感じ取ったのか、周りにいた別の男子たちが一緒になって応援し始めた。

別のグループで、隣同士でもない。
おそらく宮城スタジアムのゴール裏以外で会ったことも見たこともない他人だと思う。それでも「日本代表を応援する」という目的を共にする仲間として気持ちが通じ合っていそうだった。

試合終了のホイッスルが鳴り、3-1の勝利が決まった瞬間、彼らは弾けるような笑顔でハイタッチを交わしていた。そして最後には、一緒になって、みんなで笑顔の集合写真を撮っていた。

「AirDropで送るよ?」

AirDropで写真を送り合う。
やっぱりLINEやInstagramで繋がっていなさそうだ。
アオハル(青春)だな、そう思った。

■未来の「12番目」のために。地方で日本代表を生で観るということ

もしかしたら、彼らは日本代表の試合観戦が初めてだったのかもしれない。

首都圏に住んでいれば、埼玉スタジアムや国立競技場で、年に何度も代表戦を観るチャンスが巡ってくる。
けれど、ここは宮城県だ。宮城スタジアムの開催は7年ぶりだったという。前回の宮城スタジアムでデビュー戦を飾った久保建英選手はもう日本代表を背負う選手の1人に成長している。
それくらい長い時間、宮城県では日本代表の試合が開催されなかった。遠くに出掛けていかない限り、日本代表の試合を「生」で観られる機会なんて、なかなかないのだ。

地方で代表戦を開催する意味がここにあるのかもしれない、彼らの姿を見て思った。

もし、代表戦がいつも東京近郊だけで行われていたら、宮城のあの若者たちが「初めての代表戦」で、あんなに喉を枯らしてチャントを歌う日は来なかったかもしれない。見知らぬ仲間と肩を並べて応援し、試合後にAirDropで写真を送り合うような、生涯忘れないであろう最高の夜を過ごすこともなかったはずだ。

「テレビの画面越し」と「スタジアムの現場」には、超えられない壁がある。

地鳴りのような歓声、ゴールが決まった瞬間のスタジアムの揺れ、そして見ず知らずの人と心が通い合う瞬間。それを10代や20代の若い時期に、自分の地元のスタジアムでリアルに体験できることの価値は、計り知れない経験になるだろう。

初めて生で観た代表戦が、最高に楽しかった記憶として彼らの中に思い出として刻まれた。
きっと、これから先もサッカーを愛し、日本代表を、そしていつかは地元のJリーグクラブを支える未来の「12番目の選手」になってくれる可能性も高くなったと思う。

全国各地を日本代表が巡る意義がここにある。未来のサッカーファンの種が、日本中に蒔かれるのだ。

■やっぱり過酷な「利府の洗礼」と、それを上回る心地よい余韻

なんかエモい気持ちになったが、試合が終われば現実が待っている。
そう、宮城スタジアムの相変わらずのアクセスの悪さだ。
来たことがある人皆が受ける、利府の洗礼。

情弱だったのでシャトルバスのチケットを買い損ねていた。歩くしかない。
スタジアムを出てから、小一時間。
車を少し遠くに止めていた人たちもいたのでものすごい人混みだった。夜風は心地よいはずなのに、人が多いとなかなか進まない。

ようやくたどり着いた利府駅でも、すんなりとはいかなかった。駅前でぐるっと大回りをさせられるルートに誘導され、なかなか改札までたどり着かない。

やっとたどり着いたが、きっと電車の中もパンパンに人が乗ってるだろう。
そう思っていたら嬉しい誤算があった。
待っていた電車はガラガラだったのだ。4人だったのでボックス席を占拠できた。

「コンビニでお酒買えたらよかったね。」
そんな冗談を言うくらいの心の余裕があった。
間に合うか少し不安だった夜行バスにも、余裕で乗れそうだ。

心に余裕ができて、思い出すのはあの近くにいて一生懸命応援していて最後に記念撮影をしていた若者たちの弾けるような笑顔だった。

アクセスは最悪だし、帰り道は本当に一苦労だ。それでも、日本代表が宮城に来てくれたからこそ、あの最高の「アオハル」が生まれ、私はそれを目撃できた。

やっぱり、全国各地で代表戦をやる意味は、間違いなくある。宮城スタジアムに来られてよかった。
(でも、やっぱりしばらくはこのスタジアム来なくていいや。大変すぎる!)



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