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介護職場を良くしたい【21】介護職場と「生産性向上」(4)

     今回は、生産性向上の進んだ介護職場で介護職員の働き方はどうなっていくのかについて考えていきます。

     大きなポイントは作業ごとの人的労力の削減です。人的労力の削減といった場合、単に肉体的負荷の削減だけでなく、対応への判断、責任の負担などの精神的負荷の軽減、事務作業の軽減なども含まれます。

    作業スキームに従い作業する

     スマホAIから作業スキームを元に具体的な作業指示が出ます。それに従って作業を終えると、自動で記録されます。スマホの指示はインカムと連動させ、音声入力もできるものが標準となります。
     スマホに「次は302号室:オムツ確認(所要時間5分)」「次は105号室:水分補給(3分)」とタスクが降ってきます。インカムの指示通りに動くだけです。
     介護職員が「〇〇さん、入浴」と声に出すだけで、AIが「〇分間の訪問介護を提供し、身体介助を行った」という、監査を完全にパスできる整合性の取れたテキストデータを自動生成します。基本的に介護職員の個人的な判断は極力排除されます。

    介助は最低限

     トイレ介助が必要な利用者については自動処理マシンが対応しますが、それ以外の利用者のトイレ誘導や食事介助などをAIの指示に従い行います。それも最低限のものになります。排泄についてはセンサーによるモニタリングにより不要な対応をさせません。
     移乗介助は、リフト・アシストロボットなどの導入により、利用者に最適な移乗方法を最小限の介護職員で行えるようになります。それらの作業を行うとAIに記録されます。
     大きな施設では天井や通路、浴室、食堂などへの移動も電動リフトなどにより自動で行えるようになります。

    調理業務の削減

     施設での調理業務はできるだけ削減されます。「完全調理品(完調品)」と自動再加熱システムの導入です。大手給食メーカーや専門業者が、あらかじめ工場で「常食」「ソフト食」「ムース食」までパッキングした状態で施設に届けます。
     介護職員の仕事は、届いたパックを専用の棚(カート)に並べるだけになります。食事の時間に合わせて自動で最適な温度に再加熱されます。
     食後の食器洗いも大きな負担です。これも使い捨てのトレイと食器への移行が進むでしょう。食後はそのままゴミ箱へ捨てるだけになり、厨房業務は大幅に圧縮されます。
     特に、サ高住など小規模では、介護職員が介護業務の合間に調理業務を行うようなケースも多いので調理業務の削減は大きな影響があります。できるだけ、「包丁」「火」「味付け」という作業を排除することで作業量の大幅減になりますし、衛生問題への対応もできるようになります。ですが高額な自動再加熱システムの導入はできませんので、湯煎や電子レンジの活用とレトルトパウチの導入が今以上に進みます。

    完全自動できない食事介助

     食事介助については、現状では完全自動化はできません。都度嚥下(飲み込み)を確認する「最後のひと口」のプロセスに関しては、現状での自動化は困難であり、介護職員の手によるケアが不可欠な領域です。嚥下が困難になった場合は点滴に移行しますが、その狭間の利用者への食事介助はどうしても必要になります。嚥下を確認するAIセンサーの導入により作業指示と記録がされます。
     AIカメラが、入居者の「手の動き」や「口の動き」を認識、食べるペースが遅い人や、むせ込んでいる人を自動検知して介護職員に通知します。介護職員は自分の頭で「誰が危ないか」を判断する必要はなく、スマホが「今、ここを見ろ」と言った場所へ行き、指示された作業を行うようになります。

    見守り対応は最小限

     見守り業務、コールやアラートの一次対応はAIアシスタントが担います。監視カメラと一体化した「バイタルセンサー」が導入され、モニターに映されたAIアシスタントが利用者対応をします。
     「見守りのワンオペ化」です。ベッドからの転落や、呼吸の異常などを察知し介護職員に指示をします。介護職員の対応が不要なものはAIアシスタントが適切に対応します。 

    レクレーションもAI

     居室においては、個別のモニターに投影されたAIアシスタントが対応します。入居者の昔話や「お茶が飲みたい」といった雑談に、AIが本物の人間以上の根気強さで24時間付き合います。利用者個人のものを含めて昔の写真や動画を表示して利用者に向き合います。不要なコールが激減します。
     また、パーソナライズされた脳トレアプリにより、AIがその人の「認知度」を分析し、介護業務へのフィードバックも行います。
     ダイニングの壁やテーブルに、AIがクイズや「動く魚・動物」を投影。入居者が手を動かすとAIが感知して映像が反応するといった参加型レクリエーションが導入されます。
     これらにより利用者の「不穏・立ち上がり」による転倒事故を防止します。また、認知症による「無限ループの会話」が処理されます。「ここはどこ?」「家に帰りたい」「カバンがない」という、1分おきに繰り返される訴えに対し、介護職員は精神をすり潰されています。感情を持たないAIは、全く同じ質問に1万回でも笑顔で、相手の生い立ちに合わせた最適な回答を続けることができます。

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    一次対応はAIがします

    深夜徘徊への対応

     夜勤において、介護職員の精神と体力をすり潰す大きなものが「深夜徘徊」への対応です。対応が遅れると即座に転倒や他の居室への誤侵入といった事故・トラブルに直結します。
     利用者がベッドから足を下ろした瞬間、AIが「徘徊行動」を予測、AIが声がけをします。更に利用者が居室の出入口に近づくと、ドアホン型のAIが「〇〇さん、深夜ですよ、一度ベッドで休みましょうか」などと、優しく語りかけます。
     それでも、利用者が居室のドアを開けた場合は即時に、AIがダイニングやキッチンへのドア、非常口のドア、他人の居室の鍵などを一時的にロックし、本人が安全なエリア(廊下など)から出られないように空間を自動制御します。廊下には要所にモニター型のAIアシスタントを配置し利用者への声がけを続けます。そのうえでカメラによる監視を行い、一定時間を経過すると介護職員の対応を促します。

    介護職員は「AIの指示通りに動く工場労働者」

     介護職員は、「スマホのスマホの通知やインカムの指示通りに動く工場作業員」に近い状態になります。すべてAIが自動でスケジュールと記録をしてくれます。
     それらは思考を放棄して働くことになると同時に、職員の精神的負担は逆に減ります。「やっていないサービスをやったことにする」などという罪悪感からも解放されます。
     また、業務は細分化され、短時間労働者や外国人労働者が、最低賃金プラスアルファの水準でシステムに組み込まれます。業務自体は「指示に従うだけ」であり介護保険など公的財源もカツカツになっているので同程度の業務以上の賃上げはされません。

     しかし、同時に人員は削減され、労働強度は極限まで高められます。特に夜勤についてはワンオペが常態化されます。AIがすべての動線を管理しているため、サボることはできません。作業ごとの人的労力は削減されて人員が削減されますが職員一人あたりの労働密度は強化されます。
     これは労働人口の減少と要介護者の急増ということから導き出される現実です。介護職だけの問題ではありません。あらゆる事業所で機会化・AI化が進みます。社会全体の「生産性向上」が社会全体の搾取率の上昇を招き、一般の労働者が一つの職業では生計を維持することができなくなり副業が当たり前になります。
     労働力不足→機械化・AI化→搾取率の上昇→相対的な賃下げ
    という止まらない負のループが社会全体を覆います。

    次回は、生産性向上の進んだ介護職場で利用者はどのようになるのか、考えていきます。



     
     
    地方公務員、労働組合の役員専従などを経て、現在は子育て支援NPOの代表と介護職をしています。趣味は登山と写真。飾らない日常の出来事と、これまでのキャリアで得た知見を淡々と書き留めていきます。

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