
魔王と勇者 #07「我が国は戦争状態にない」
「弟に妹!? そんな……」
勇者が言葉を失う。
「証拠はないわ!」
魔法使いが、勇者を庇うように一歩前へ出た。
魔王は指でこめかみを軽く叩きながら、ため息をつく。
「証拠はない。じゃが、我が弟妹が赤子の頃に攫われたのは事実じゃ」
「私と勇者が双子だと? 髪の色だって違うじゃない!」
「母親が違うからな。もちろん私とも違う。父上は女好きでな」
「一夫多妻かぁ……」
戦士が感心したように呟く。
「珍しいことではない。魔獣に囲まれた国だ。強いオスに惹かれるのは自然なことよ」
魔王はうんうんと頷いた。
勇者は僧侶の石像を見る。
そして、
ゆっくりと魔法使いへ視線を向けた。
「しっかりしなさい」
魔法使いにそう言われると、
勇者は再び魔王を睨みつける。
「そもそもだ」
「え?」
「そもそも、我が国と貴様らの国は戦争状態にない」
「……は?」
勇者の顔が引きつる。
「戦争というのはな、国同士が利益を奪い合うもの。一方が滅ぶまで攻め込むなど、そうそうあるものではない」
「なにを言っている?」
「……わかりやすく言えば、
『これより戦争を始める』
と通達し、返答を待ってから戦争となる」
「……魔王国は、我が国を苦しめているじゃないか!」
「じゃから、それは魔獣被害であろう?」
「……」
石になったままの僧侶が、カタリと揺れた気がした。
戦士は、
静かに武器を鞘へ戻す。
「先ほども言ったが、即位したばかりの身じゃ。国内を混乱させぬよう、大忙しでな」
「魔法使い……魔王は、なにを言っているんだ?」
勇者が小さな声で尋ねる。
魔法使いは眉を顰め、
しばらく黙り込んだ。
「現在、我が国はどの国とも戦争状態にはないということじゃよ」
「それが……それがどうした!」
勇者が叫ぶ。
魔王は足を雑に組み、背もたれに深く体を預けた。
「貴様らは、我が国から見れば暗殺者であり……」
魔王はそこで言葉を切った。
魔法使いが、
ゆっくりと下を向く。
「……捨て駒じゃろう?」
玉座の間が静まり返る。
「うまく魔王を倒せれば、それでよし。失敗して死んでも、
『魔人がやった』
とでも言えば済む」
「……え」