
『プロでも外す。「安全設計」が壊れた日』|資産10億円を目指す投資日記
安全なはずだった。
リスクは抑えていたし、
想定もしていた。
それでも、崩れた。
農林中央金庫が出した損失は、約2兆円。
2兆円という数字は、
単なる赤字の報告ではない。
それは、誰もが知る日本の大企業が、
一社まるごと消えてしまうほどの金額だ。
しかもそれは、
無謀な賭けの結果ではない。
むしろ——
教科書通りに「守った」結果だった。
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彼らは無策だったわけではない。
海外の債券に投資しながら、
為替の変動に備えて「ヘッジ」もかけていた。
ヘッジとは、
もしもの時のために、別の損失でバランスを取ること。
たとえば、雨が降るかもしれない日に傘を持っていくようなものだ。
使わなければ少し邪魔になる。
でも降れば、濡れずに済む。
ただ——
その“守り”にも、前提がある。
どんな雨なのか。
どれくらい降るのか。
それが想定の範囲に収まる限り、
傘は機能する。
それが「守り」だった。
だが、その守りは“無料”ではない。
むしろ——
コストを払い続けることで、成り立っている。
ヘッジコストは、
「安心のために払うお金」ではない。
本当は——
生き残るために支払っているものだ。
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だが今回は違った。
「金利は上がらない」という平和な時代のルールが、
ある日突然、戦時のルールに書き換わった。
債券の価格は下がった。
それだけではない。
為替ヘッジのコストも、同時に膨らんでいった。
守るために持っていたはずの傘は、
いつの間にか、重荷に変わっていた。
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問題は、判断が間違っていたことではない。
問題は——
その判断が、何を前提にしていたかだ。
債券は比較的安全。
金利は急には動かない。
ヘッジすればリスクは抑えられる。
その前提の上に、すべてが成り立っていた。
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だが現実は、違った。
前提が崩れた瞬間、
守りは守りでなくなる。
リスクは消えない。
ただ、形を変えるだけだ。
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2兆円を切る。
それは特別な判断に見える。
でもたぶん、違う。
僕たちは、もっと小さな損失で迷う。
戻るかもしれないと期待し、
「サンクコスト(埋没費用)」の呪縛に囚われる。
これまで費やした時間、注ぎ込んだ資金。
それらを無駄にしたくないという執着が、
目の前の「沈みゆく船」から飛び出す勇気を奪う。
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問題は、金額じゃない。
「間違いを認めること」だ。
そしてそれは、
思っているよりずっと難しい。
それができるかどうかで、
結果は変わる。
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この損切りはすごい。
普通は赤字を隠したくなる。
でも彼らは、
これ以上の出血を止めるために、
自ら患部を切り落とす決断をした。
苦しい選択だと思う。
これは過去への執着を断ち切り、
未来を買い戻すための決断だ。
その決断に必要なのは、知識ではない。覚悟だ。
だが本当に問われているのは——
あなたなら、それを選べるかどうかだ。