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ホラー短編小説【当たらない占い】

    古い雑居ビルの四階。
    薄暗い部屋で、占い師は私の顔を見るなり言った。

    「あなた、自分で不運を引き寄せるタイプね」

    さらに紙にいくつか書きながら続けた。

    「今後三年、特に注意することがある

    “車移動”
    “対人”
    “水”

    そして三年後、自分で“気づいた”と思った日に心せよ」

    どれも曖昧だった。
    よくある恋愛運でも聞けると思って胸を弾ませていた私と友人は、思わず顔を見合わせて苦笑した。

    「大事故とかですか?」

    と聞くと、占い師は笑いながら言った。

    「避けようとすると、逆に寄ってくるよ」

    訳がわからなかったがその後、妙に占いが当たり始めた。

    車の横を擦って傷がつく。
    職場での空気が悪くなる。
    雨の日に財布を落とす。

    どれも小さいこと。

    でも、占い師の言葉を思い出すには十分だった。

    私は次第に、占いで言われた事を基準に生活するようになった。

    車には乗らない。
    人付き合いも減らす。
    危なそうな日は外出しない。

    すると今度は、慎重になりすぎたせいで仕事で失敗したり、人間関係がぎくしゃくしたりした。

    そのたびに、

    「また当たった」

    と思った。

    三年目に入る頃には、完全に占い師の忠告に支配されていた。

    通勤は車の事故を避けるために、1時間の距離を歩いていたし、
    同僚や上司からの飲みの誘いは断り続け、いつしか声すら掛からなくなっていた。

    そんなある日、朝のニュース番組を見ていた私はある事件の報道に目が釘付けになった。

    「今日未明、女性が自宅で倒れているのが発見され、その後病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。
    警察は同居していた自称占い師の女を逮捕しました。
    容疑者の女は被害女性を洗脳状態に置き、十分な食事を与えず、現金などを搾取していた疑いがあるということです。」

    洗脳かぁ、被害者の女性は気の毒だな。

    と思うのと同時に、

    あれ…今の私も占いに洗脳されている状態なんじゃない?
    私、いつの間にか臆病になっていた。
    不幸を避けようとして選んだ行動が、悪い結果を呼び寄せていたんだ。
    全部、自分が引き寄せていただけだったのかもしれない。

    そう気づいた瞬間、急に全部が馬鹿らしくなった。

    その日、私は久しぶりに車で出社した。
    運転しながら、開放感に笑が溢れる。

    「結局、占いなんて心理誘導だったんだ」

    赤信号で停車する。
    清々しい気分を音楽でさらに盛り上げるために、ナビのプレイリストに目をうつす。

    その時、助手席の横に紙が落ちていることに気づいた。
    拾い上げて見ると三年前、占い師が書いてくれていたメモだった。

    この占いに人生を振り回されてたんだなぁ。

    そう思い、メモを読むと最後の文が引っかかった。

    『三年後、自分で“気づいた”と思った日に心せよ』

    次の瞬間、後ろから強烈な衝撃が来た。

     
     

    微熱

     
     
    私を見つけたあなたへ。 微熱が長引くようならまた来てください。

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