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千回目のさよなら、その先で― 䞖界を壊した僕たちの最埌の旅 ―

    第䞀章 空の傷跡

    空がおかしい。

    âž»

    それに気付いたのは、い぀からだっただろう。

    âž»

    誰もはっきりずは芚えおいない。

    âž»

    だが今では誰もが知っおいた。

    âž»

    青空のどこかに。

    âž»

    ガラスに入ったひびのような亀裂があるこずを。

    âž»

    その傷は少しず぀広がっおいた。

    âž»

    たるで䞖界そのものが壊れ始めおいるように。

    âž»

    人々は䞍安を抱えながらも日垞を続けおいた。

    âž»

    畑を耕し。

    âž»

    商売をし。

    âž»

    子䟛たちは走り回る。

    âž»

    終わりが近いかもしれない䞖界で。

    âž»

    それでも人は生きおいた。

    âž»

    そしお――

    âž»

    レむンは自分が䜕者なのか分からなかった。

    âž»

    目を芚たした時。

    âž»

    そこは森の䞭だった。

    âž»

    冷たい土の䞊。

    âž»

    芋知らぬ空。

    âž»

    芋知らぬ朚々。

    âž»

    そしお。

    âž»

    自分の蚘憶だけがなかった。

    âž»

    名前すら思い出せない。

    âž»

    なぜここにいるのか。

    âž»

    どこから来たのか。

    âž»

    䜕䞀぀分からない。

    âž»

    ただ。

    âž»

    胞の奥に匷い喪倱感だけが残っおいた。

    âž»

    䜕かを倱った。

    âž»

    ずおも倧切なものを。

    âž»

    だが䜕を倱ったのかは分からない。

    âž»

    䞉日間。

    âž»

    森を圷埚った。

    âž»

    食べられる朚の実を探し。

    âž»

    川の氎を飲み。

    âž»

    䜕ずか生き延びた。

    âž»

    そしお四日目。

    âž»

    ようやく村ぞ蟿り着いた。

    âž»

    小さな村だった。

    âž»

    石造りの家。

    âž»

    畑。

    âž»

    家畜。

    âž»

    どこにでもある平和な村。

    âž»

    だが。

    âž»

    村人たちの衚情は暗かった。

    âž»

    皆、空を芋おいる。

    âž»

    ひび割れた空を。

    âž»

    レむンも芋䞊げた。

    âž»

    青空の䞭。

    âž»

    確かにそこには傷があった。

    âž»

    胞がざわ぀く。

    âž»

    なぜだろう。

    âž»

    あの亀裂を芋るず。

    âž»

    泣きそうになる。

    âž»

    「旅人か」

    âž»

    声を掛けられた。

    âž»

    振り向く。

    âž»

    癜髪の老人だった。

    âž»

    村長らしい。

    âž»

    レむンは頭を䞋げる。

    âž»

    「すみたせん。」

    âž»

    「少し䌑たせおもらえたせんか。」

    âž»

    老人は頷いた。

    âž»

    「構わん。」

    âž»

    「だが今は物隒だ。」

    âž»

    「物隒」

    âž»

    老人は空を芋る。

    âž»

    「最近、魔物が増えおおる。」

    âž»

    「空の傷ず関係があるず蚀う者もいる。」

    âž»

    レむンは黙る。

    âž»

    空。

    âž»

    魔物。

    âž»

    そしお胞の違和感。

    âž»

    党おが繋がっおいる気がした。

    âž»

    その日の倜。

    âž»

    村の玍屋を借りお眠るこずになった。

    âž»

    久しぶりの屋根だった。

    âž»

    安心したはずなのに。

    âž»

    眠りは浅かった。

    âž»

    倢を芋たからだ。

    âž»

    燃える街。

    âž»

    厩れる塔。

    âž»

    泣いおいる少女。

    âž»

    血たみれの剣士。

    âž»

    そしお。

    âž»

    誰かの叫び。

    âž»

    『たた倱うのか――』

    âž»

    レむンは飛び起きた。

    âž»

    党身が汗で濡れおいる。

    âž»

    心臓が激しく鳎っおいた。

    âž»

    息苊しい。

    âž»

    倢ずは思えなかった。

    âž»

    たるで本圓に䜓隓したような。

    âž»

    そんな感芚。

    âž»

    「䜕だったんだ  。」

    âž»

    呟いた時だった。

    âž»

    倖から悲鳎が聞こえた。

    âž»

    村人の声。

    âž»

    助けを求める叫び。

    âž»

    レむンは飛び出した。

    âž»

    倜の村は隒然ずしおいた。

    âž»

    巚倧な狌のような魔物。

    âž»

    䞉䜓。

    âž»

    家を壊しながら暎れおいる。

    âž»

    村人たちは逃げ惑っおいた。

    âž»

    老人が倒れおいる。

    âž»

    子䟛が泣いおいる。

    âž»

    誰も戊えない。

    âž»

    その時だった。

    âž»

    レむンの䜓が勝手に動いた。

    âž»

    萜ちおいた槍を拟う。

    âž»

    構える。

    âž»

    なぜか分からない。

    âž»

    だが。

    âž»

    握った瞬間に理解した。

    âž»

    自分は戊える。

    âž»

    䜓が芚えおいた。

    âž»

    魔物が飛び掛かる。

    âž»

    レむンは暪ぞ跳ぶ。

    âž»

    槍を突き出す。

    âž»

    喉を貫く。

    âž»

    魔物が倒れる。

    âž»

    村人たちが驚く。

    âž»

    レむン自身も驚いおいた。

    âž»

    だが考える暇はない。

    âž»

    二䜓目。

    âž»

    䞉䜓目。

    âž»

    次々に襲っおくる。

    âž»

    レむンは必死に戊った。

    âž»

    そしお。

    âž»

    最埌の䞀䜓を倒した時。

    âž»

    村人たちから歓声が䞊がった。

    âž»

    助かった。

    âž»

    誰も死ななかった。

    âž»

    そのはずだった。

    âž»

    だが。

    âž»

    倒れおいた老人を芋぀ける。

    âž»

    村長だった。

    âž»

    胞から血が流れおいる。

    âž»

    間に合わなかった。

    âž»

    レむンは膝を぀く。

    âž»

    「くそ  。」

    âž»

    あず少し早ければ。

    âž»

    助けられたかもしれない。

    âž»

    そんな思いが胞を締め付ける。

    âž»

    その瞬間。

    âž»

    激しい頭痛が走った。

    âž»

    芖界が癜く染たる。

    âž»

    䞖界が揺れる。

    âž»

    耳鳎り。

    âž»

    叫び。

    âž»

    そしお。

    âž»

    誰かの声が聞こえた。

    âž»

    『たた埌悔するの』

    âž»

    知らない声だった。

    âž»

    優しく。

    âž»

    どこか悲しい声。

    âž»

    レむンは顔を䞊げる。

    âž»

    そこには誰もいない。

    âž»

    だが。

    âž»

    なぜか涙がこがれた。

    âž»

    胞が苊しい。

    âž»

    助けたかった。

    âž»

    助けられなかった。

    âž»

    もし。

    âž»

    もう䞀床だけやり盎せるなら――。

    âž»

    その瞬間。

    âž»

    䞖界が止たった。

    âž»

    颚が止む。

    âž»

    音が消える。

    âž»

    空の亀裂だけが光る。

    âž»

    そしお。

    âž»

    党おが癜に飲み蟌たれた。

    âž»

    レむンは知らなかった。

    âž»

    その願いこそが。

    âž»

    䞖界を壊し続けおいる力だずいうこずを。

    âž»

    そしお。

    âž»

    遠く離れた堎所で。

    âž»

    銀髪の少女が空を芋䞊げおいた。

    âž»

    癜い光を芋぀めながら。

    âž»

    悲しそうに呟く。

    âž»

    「始たった  。」

    âž»

    「たた始たっおしたった。」

    âž»

    少女の頬を涙が䌝う。

    âž»

    圌女だけは知っおいた。

    âž»

    この䞖界が。

    âž»

    もう䜕床も繰り返されおいるこずを。

    第二章 旅の始たり


    眩しい光が消えた。

    レむンは思わず目を閉じる。

    耳鳎り。

    浮遊感。

    そしお。

    次の瞬間。

    「おい、起きろ。」

    誰かの声が聞こえた。

    レむンはゆっくり目を開く。

    芋慣れた倩井。

    いや。

    芋慣れおはいない。

    だが芋芚えはあった。

    村の玍屋だ。

    昚倜眠った堎所。

    レむンは飛び起きる。

    窓から差し蟌む朝日。

    朝だった。

    魔物が襲っおくる前の時間。

    「  は」

    頭が远い぀かない。

    倢だったのか。

    だが。

    あたりにも鮮明だった。

    村長が倒れる姿。

    血の匂い。

    自分の埌悔。

    党郚。

    倢ずは思えない。

    レむンは玍屋を飛び出した。

    村人たちが働いおいる。

    子䟛たちが走り回る。

    そしお。

    村長が生きおいた。

    䜕事もなかったように。

    レむンは蚀葉を倱う。

    「どうした」

    村長が䞍思議そうに笑う。

    「顔色が悪いぞ。」

    生きおいる。

    間違いなく。

    レむンは胞を抌さえる。

    錓動が早い。

    理解できない。

    だが。

    䞀぀だけ確かなこずがある。

    今倜。

    魔物が来る。

    それを知っおいる。

    レむンはその日䞀日、村の呚囲を芋回った。

    柵の匱い堎所。

    芋匵り台。

    逃げ道。

    村人たちは䞍思議そうな顔をしおいた。

    それでも手䌝っおくれた。

    そしお倜。

    予想通り。

    森の奥から遠吠えが響いた。

    村人たちが凍り付く。

    レむンは槍を握る。

    「来るぞ」

    叫ぶ。

    盎埌。

    巚倧な狌型の魔物が飛び出した。

    村人たちの悲鳎。

    だが今回は違う。

    レむンは先に動く。

    最初の䞀䜓を迎え撃぀。

    喉を貫く。

    二䜓目。

    暪から飛び掛かる。

    避ける。

    槍を突き立おる。

    最埌の䞀䜓。

    村長ぞ向かう。

    レむンは党力で走った。

    間に合え。

    間に合え。

    そしお。

    槍が魔物を貫いた。

    村長の目の前で。

    魔物は倒れる。

    静寂。

    やがお。

    歓声が䞊がった。

    誰も死んでいない。

    党員が無事だった。

    レむンはその堎に座り蟌む。

    助けられた。

    今床は。

    本圓に。

    その瞬間だった。

    頭の奥で䜕かが匟ける。

    芋知らぬ蚘憶。

    燃える街。

    泣いおいる少女。

    そしお。

    自分の声。

    『やり盎せる。』

    レむンは頭を抌さえる。

    䞀瞬で消える映像。

    䜕も分からない。

    だが。

    䞀぀だけ確信する。

    自分は普通じゃない。

    䜕かがおかしい。

    その倜。

    村長が酒を持っおきた。

    「助かった。」

    老人は深々ず頭を䞋げる。

    「お前は呜の恩人だ。」

    レむンは銖を振る。

    「俺はただ  。」

    蚀葉が続かない。

    ただ助けたかっただけ。

    それ以䞊の理由はない。

    老人は笑う。

    「これからどうする。」

    レむンは黙る。

    行く堎所がない。

    蚘憶もない。

    家族がいるのかも分からない。

    その時。

    ふず空を芋る。

    倜空に浮かぶ亀裂。

    あれを芋た時。

    胞が痛くなる。

    なぜか。

    あれを攟っおおいおはいけない気がした。

    「旅に出たす。」

    気付けばそう蚀っおいた。

    村長が頷く。

    「そうか。」

    「なら䞀぀忠告しおおこう。」

    老人の衚情が真剣になる。

    「東ぞ行け。」

    「東」

    「あの空の傷を調べおいる者たちがいる。」

    「旅人や孊者が集たる街だ。」

    レむンは頷く。

    手掛かりは少しでも欲しい。

    蚘憶のこずも。

    䞖界のこずも。

    自分自身のこずも。

    翌朝。

    レむンは村を出た。

    小さな荷物だけを背負っお。

    行き先も分からないたた。

    だが。

    歩き始めお半日ほど経った頃だった。

    山道の途䞭。

    金属音が響く。

    剣ず剣がぶ぀かる音。

    誰かが戊っおいる。

    レむンは足を止める。

    音のする方を芋る。

    森の䞭。

    黒い倖套を着た男がいた。

    長剣を握っおいる。

    幎霢は二十代埌半くらい。

    鋭い目。

    無愛想な顔。

    その男は䞀人で魔物の矀れず戊っおいた。

    五䜓。

    いや。

    六䜓。

    普通なら囲たれお終わる。

    だが。

    男は匷かった。

    䞀歩も䞋がらない。

    迷いもない。

    次々ず魔物を斬り䌏せおいく。

    レむンは思わず芋入った。

    その時。

    最埌の䞀䜓が男の死角から飛び掛かる。

    危ない。

    レむンは反射的に駆け出しおいた。

    槍を投げる。

    魔物の䜓を貫く。

    男が振り返る。

    鋭い芖線。

    レむンを芋る。

    そしお。

    ほんの䞀瞬だけ。

    信じられないものを芋るような顔をした。

    「  お前。」

    䜎い声。

    たるで。

    ずっず探しおいた誰かを芋぀けたような。

    そんな衚情だった。

    しかし次の瞬間。

    男はい぀もの無衚情に戻る。

    「助かった。」

    短く蚀う。

    レむンは銖を傟げた。

    今の反応は䜕だったのか。

    だが。

    男はそれ以䞊䜕も蚀わない。

    剣の血を払うだけだった。

    沈黙。

    劙な空気が流れる。

    やがお男が口を開く。

    「名前は。」

    「レむン。」

    気付けばそう名乗っおいた。

    森で目芚めた時。

    なぜか頭に浮かんだ唯䞀の名前。

    男の目が僅かに揺れる。

    だが。

    すぐに隠した。

    「そうか。」

    そしお。

    自分の名を告げる。

    「カむルだ。」

    レむンはただ知らない。

    この出䌚いが。

    䞖界の運呜を倉える旅の始たりになるこずを。

    そしお。

    カむルがずっず前から。

    自分を探しおいたこずを。

    第䞉章 銀髪の少女

    レむンずカむルは䞊んで歩いおいた。

    âž»

    ずはいえ。

    âž»

    䌚話はほずんどない。

    âž»

    カむルは無口だった。

    âž»

    必芁なこずしか話さない。

    âž»

    レむンが話し掛けおも、

    âž»

    「そうか。」

    âž»

    「知らん。」

    âž»

    「奜きにしろ。」

    âž»

    倧䜓この䞉぀で終わる。

    âž»

    「お前、友達いなかっただろ。」

    âž»

    レむンが呆れながら蚀う。

    âž»

    カむルは歩きながら答えた。

    âž»

    「䜙蚈なお䞖話だ。」

    âž»

    「やっぱりな。」

    âž»

    少しだけ。

    âž»

    本圓に少しだけ。

    âž»

    カむルの口元が動いた気がした。

    âž»

    二人は東の街を目指しおいた。

    âž»

    空の亀裂に぀いお調べるためだ。

    âž»

    旅人や孊者が集たるずいう街。

    âž»

    䜕か手掛かりが芋぀かるかもしれない。

    âž»

    䞉日埌。

    âž»

    二人は森を抜けた。

    âž»

    だが。

    âž»

    街ぞ続く街道の途䞭で異倉に気付く。

    âž»

    静かすぎる。

    âž»

    鳥の声がない。

    âž»

    颚の音さえ聞こえない。

    âž»

    カむルが立ち止たる。

    âž»

    「気を付けろ。」

    âž»

    䜎い声。

    âž»

    レむンも槍を握る。

    âž»

    䜕かいる。

    âž»

    嫌な気配だった。

    âž»

    しばらく進む。

    âž»

    やがお村が芋えおきた。

    âž»

    小さな集萜。

    âž»

    だが様子がおかしい。

    âž»

    人の気配がない。

    âž»

    家の扉は開いたたた。

    âž»

    掗濯物も干されたたた。

    âž»

    たるで。

    âž»

    䜏人だけが突然消えたようだった。

    âž»

    「䜕だここ  。」

    âž»

    レむンが呟く。

    âž»

    カむルは黙っお呚囲を調べる。

    âž»

    争った痕跡はない。

    âž»

    血もない。

    âž»

    死䜓もない。

    âž»

    なのに。

    âž»

    誰もいない。

    âž»

    その時だった。

    âž»

    かすかな歌声が聞こえた。

    âž»

    遠くから。

    âž»

    どこか悲しい旋埋。

    âž»

    レむンは顔を䞊げる。

    âž»

    村の奥。

    âž»

    叀い教䌚が芋えた。

    âž»

    歌声はそこから聞こえおくる。

    âž»

    二人は顔を芋合わせる。

    âž»

    そしお教䌚ぞ向かった。

    âž»

    扉は少し開いおいた。

    âž»

    䞭は薄暗い。

    âž»

    壊れた長怅子。

    âž»

    色耪せたステンドグラス。

    âž»

    その䞭倮。

    âž»

    祭壇の前に少女が立っおいた。

    âž»

    銀色の髪。

    âž»

    透き通るような癜い肌。

    âž»

    青い瞳。

    âž»

    歳は十䞃、八くらい。

    âž»

    歌っおいたのは圌女だった。

    âž»

    だが。

    âž»

    レむンは息を呑む。

    âž»

    少女も同じだった。

    âž»

    歌が止たる。

    âž»

    青い瞳がレむンを芋぀める。

    âž»

    その瞬間。

    âž»

    少女の衚情が凍り付いた。

    âž»

    信じられないものを芋るように。

    âž»

    いや。

    âž»

    ずっず䌚いたかった人を芋぀けたように。

    âž»

    そんな顔だった。

    âž»

    レむンの胞がざわ぀く。

    âž»

    なぜだろう。

    âž»

    初めお䌚うはずなのに。

    âž»

    懐かしい。

    âž»

    どうしおか。

    âž»

    涙が出そうになる。

    âž»

    長い沈黙。

    âž»

    やがお少女が口を開く。

    âž»

    「  レむン」

    âž»

    レむンの心臓が跳ねる。

    âž»

    「どうしお俺の名前を。」

    âž»

    少女は答えない。

    âž»

    代わりに。

    âž»

    今にも泣き出しそうな顔で笑った。

    âž»

    「やっず䌚えた。」

    âž»

    その蚀葉が。

    âž»

    なぜか胞に刺さった。

    âž»

    だが次の瞬間。

    âž»

    少女の衚情が倉わる。

    âž»

    悲しそうに。

    âž»

    苊しそうに。

    âž»

    そしお。

    âž»

    どこか諊めたように。

    âž»

    「違う。」

    âž»

    小さく呟く。

    âž»

    「ただなのね。」

    âž»

    レむンには意味が分からない。

    âž»

    カむルも譊戒したたた少女を芋る。

    âž»

    「お前は誰だ。」

    âž»

    少女は芖線を向ける。

    âž»

    そしお静かに答えた。

    âž»

    「セレナ。」

    âž»

    それだけだった。

    âž»

    しかし。

    âž»

    レむンは気付かなかった。

    âž»

    その名を聞いた瞬間。

    âž»

    頭の奥で䜕かが反応したこずに。

    âž»

    知らないはずの名前。

    âž»

    なのに。

    âž»

    忘れおいた䜕かを思い出しそうになる。

    âž»

    その時だった。

    âž»

    教䌚党䜓が揺れた。

    âž»

    蜟音。

    âž»

    倩井から埃が萜ちる。

    âž»

    䞉人は顔を䞊げる。

    âž»

    倖だった。

    âž»

    村の倖から。

    âž»

    巚倧な咆哮が響く。

    âž»

    空気が震える。

    âž»

    尋垞ではない。

    âž»

    レむンたちは教䌚を飛び出した。

    âž»

    そしお。

    âž»

    蚀葉を倱う。

    âž»

    村の倖れ。

    âž»

    黒い霧の䞭から珟れた巚倧な魔物。

    âž»

    高さは家ほどもある。

    âž»

    四本の脚。

    âž»

    挆黒の䜓。

    âž»

    赀く光る目。

    âž»

    芋たこずもない存圚。

    âž»

    村を芋䞋ろしおいる。

    âž»

    セレナの顔色が倉わる。

    âž»

    「そんな  。」

    âž»

    レむンが振り返る。

    âž»

    初めおだった。

    âž»

    圌女が動揺したのは。

    âž»

    たるで。

    âž»

    起こるはずのないこずが起きたような。

    âž»

    そんな反応。

    âž»

    カむルが剣を抜く。

    âž»

    「知っおいるのか。」

    âž»

    セレナは答えない。

    âž»

    答えられない。

    âž»

    代わりに。

    âž»

    震える声で蚀った。

    âž»

    「駄目。」

    âž»

    「レむンを近付けちゃ駄目。」

    âž»

    レむンの眉が動く。

    âž»

    「俺を」

    âž»

    セレナは叫ぶ。

    âž»

    「お願いだから逃げお」

    âž»

    その蚀葉ず同時に。

    âž»

    巚倧な魔物が咆哮を䞊げた。

    âž»

    地面が揺れる。

    âž»

    黒い霧が広がる。

    âž»

    そしお。

    âž»

    レむンの脳裏に䞀瞬だけ映像が走る。

    âž»

    燃える街。

    âž»

    厩れる空。

    âž»

    泣きながら自分の名前を呌ぶセレナ。

    âž»

    そしお。

    âž»

    血に染たった未来。

    âž»

    レむンは頭を抌さえる。

    âž»

    䜕だ。

    âž»

    今のは。

    âž»

    だが。

    âž»

    考える暇はない。

    âž»

    魔物が動き出した。

    âž»

    䞉人の運呜を倉える戊いが。

    âž»

    今、始たろうずしおいた。

    第四章 黒霧の獣


    巚倧な魔物が咆哮を䞊げた。

    空気が震える。

    黒い霧が村党䜓を芆い始める。

    家々の窓ガラスが割れた。

    地面が軋む。

    たるで灜害そのものだった。

    レむンは槍を握る。

    手が汗で濡れおいる。

    恐怖だった。

    だが。

    なぜか知っおいる気もした。

    この化け物を。

    どこかで。

    昔。

    芋たこずがあるような。

    「䞋がれ。」

    カむルが前ぞ出る。

    長剣を構える。

    鋭い目が魔物を捉える。

    セレナは青ざめおいた。

    芖線は魔物ではない。

    レむンを芋おいる。

    それが気になった。

    なぜ圌女は自分を心配しおいるのか。

    なぜ初察面なのに。

    たるで昔から知っおいるような顔をするのか。

    その時。

    魔物が突進した。

    地面が抉れる。

    圧倒的な速床。

    カむルが飛び出す。

    剣閃。

    鋭い䞀撃が魔物の前脚を切り裂く。

    だが。

    浅い。

    魔物は止たらない。

    「硬いな。」

    カむルが舌打ちする。

    レむンも暪から飛び蟌む。

    槍を突き出す。

    銖元。

    柔らかそうな堎所。

    しかし。

    槍は途䞭で匟かれた。

    黒い霧。

    霧が鎧のように魔物を守っおいる。

    「䜕だよこれ」

    レむンが叫ぶ。

    魔物が尟を振るう。

    二人は吹き飛ばされた。

    地面を転がる。

    息が詰たる。

    匷い。

    今たでの魔物ずは別栌だった。

    その時だった。

    「右ぞ」

    セレナの声。

    レむンは反射的に飛ぶ。

    盎埌。

    巚倧な爪が通り過ぎた。

    もし遅れおいたら。

    真っ二぀だった。

    レむンは驚く。

    なぜ分かった。

    偶然ではない。

    たるで。

    攻撃を知っおいたみたいだった。

    魔物が再び動く。

    今床はカむルぞ。

    だが。

    セレナが先に叫ぶ。

    「次は巊」

    カむルが避ける。

    爪が空を裂く。

    「しゃがんで」

    「飛べ」

    「今」

    圌女の指瀺は完璧だった。

    未来を芋おいるように。

    䞀床も倖さない。

    レむンの違和感は倧きくなる。

    だが今は戊いが先だ。

    魔物は確実に远い詰められおいた。

    しかし。

    突然。

    黒い霧が膚れ䞊がる。

    村党䜓を飲み蟌むほどに。

    嫌な予感。

    セレナの顔色が倉わる。

    「駄目」

    その声ず同時だった。

    黒い霧が爆発する。

    蜟音。

    衝撃波。

    芖界が真っ黒になる。

    レむンは吹き飛ばされた。

    地面を転がる。

    耳鳎り。

    痛み。

    そしお。

    遠くで誰かの声が聞こえた。

    『たた倱うの』

    知らない声。

    だが。

    胞が締め付けられる。

    芖界が揺れる。

    目の前に映像が流れ蟌む。

    血。

    炎。

    厩れる空。

    泣いおいるセレナ。

    倒れおいるカむル。

    そしお。

    笑わなくなったガむア。

    知らない男だった。

    なのに。

    倧切な仲間だず分かる。

    「䜕なんだ  。」

    レむンは頭を抌さえる。

    苊しい。

    胞が痛い。

    たるで。

    本圓に倱ったように。

    その時。

    誰かが叫んだ。

    「レむン」

    セレナだった。

    レむンは顔を䞊げる。

    魔物が迫っおいる。

    巚倧な爪。

    避けられない。

    間に合わない。

    その瞬間。

    セレナが飛び出した。

    レむンの前ぞ。

    「セレナ」

    蜟音。

    爪が振り䞋ろされる。

    だが。

    盎前で止たった。

    空間が歪んでいた。

    セレナの呚囲に淡い光が広がる。

    たるで結界。

    魔物の爪が抌し返されおいる。

    レむンは息を呑む。

    魔法。

    それも盞圓高床な。

    セレナの額から汗が流れる。

    苊しそうだった。

    長くは持たない。

    その時。

    カむルが叫ぶ。

    「レむン」

    「栞を狙え」

    魔物の胞。

    黒い霧の䞭心。

    赀い光が芋えた。

    心臓のように脈打っおいる。

    レむンは立ち䞊がる。

    䜓䞭が痛む。

    それでも。

    なぜか。

    今なら届く気がした。

    脳裏に知らない蚘憶が流れる。

    同じ魔物。

    同じ戊い。

    そしお。

    䜕床も倱敗した光景。

    だが今回は違う。

    そんな確信があった。

    レむンは走る。

    党力で。

    セレナが道を䜜る。

    カむルが泚意を匕く。

    二人が繋いでくれた道。

    レむンは跳んだ。

    槍を握る。

    そしお。

    魔物の胞ぞ突き刺した。

    赀い栞が砕ける。

    絶叫。

    黒い霧が匟ける。

    空ぞ消えおいく。

    巚倧な䜓が厩れ萜ちた。

    静寂。

    颚が吹く。

    戊いは終わった。

    レむンはその堎に膝を぀く。

    息が䞊がる。

    勝った。

    確かに。

    だが。

    胞の違和感は消えなかった。

    なぜセレナは攻撃を予知できたのか。

    なぜ自分の名前を知っおいたのか。

    そしお。

    なぜ自分は戊いの蚘憶を持っおいるのか。

    その時。

    魔物の亡骞から䜕かが転がり萜ちた。

    黒い石だった。

    手のひらほどの倧きさ。

    衚面には芋たこずのない王様。

    セレナの顔色が倉わる。

    カむルも険しい衚情になる。

    レむンは石を拟う。

    觊れた瞬間。

    頭の䞭に声が響いた。

    『蚘憶の塔ぞ来い』

    知らない声。

    䜎く。

    䞍気味な声。

    レむンは思わず石を萜ずす。

    しかし声は消えない。

    たるで呌ばれおいるようだった。

    そしお。

    セレナが小さく呟く。

    「始たった  。」

    その衚情は。

    再䌚を喜ぶものではなかった。

    避けられない運呜が動き出したこずを知る者の顔だった。

    第五章 陜気な男


    黒い石は垃に包たれた。

    誰も觊れたがらなかった。

    特にセレナは。

    石を芋るたびに顔色が悪くなる。

    だが理由は話さない。

    レむンが聞いおも。

    「ただ蚀えない。」

    そう答えるだけだった。

    カむルも远及しない。

    たるで。

    䜕かを知っおいるのに。

    話すこずを避けおいるようだった。

    そんな空気のたた。

    䞉人は旅を続けた。

    目指すは蚘憶の塔。

    黒い石が瀺した堎所。

    東の街よりさらに先。

    叀代文明の遺跡が残る土地だった。

    䞉日埌。

    䞉人は倧きな亀易郜垂ぞ到着する。

    高い城壁。

    賑やかな垂堎。

    行き亀う旅人たち。

    久しぶりの人の倚さだった。

    レむンは少し安心する。

    魔物だらけの旅だった。

    こういう堎所を芋るず。

    ただ䞖界は終わっおいないず思えた。

    その時。

    垂堎の向こうから悲鳎が聞こえた。

    「ひったくり」

    女性の叫び。

    人混みの䞭を男が走っおいく。

    財垃を抱えおいた。

    盗賊らしい。

    誰も止められない。

    その時だった。

    「おっず。」

    軜い声。

    次の瞬間。

    盗賊が地面に転がった。

    足を匕っ掛けられたのだ。

    財垃が飛ぶ。

    誰かが空䞭で掎む。

    長身の男だった。

    茶色の髪。

    日に焌けた肌。

    人懐っこい笑顔。

    幎霢は二十代半ばほど。

    男は財垃を持ち䞻ぞ返す。

    「萜ずし物だ。」

    「ありがずう」

    女性が頭を䞋げる。

    男は笑っお手を振る。

    呚囲から拍手が起きる。

    たるで英雄だ。

    しかし。

    その盎埌。

    男は別の客の果物をこっそり盗み食いした。

    「おい。」

    店䞻が怒鳎る。

    「金払え」

    「埌で払う」

    「今払え」

    男は逃げた。

    店䞻が远い掛ける。

    垂堎䞭を走り回る。

    レむンは思わず吹き出した。

    䜕なんだあい぀。

    カむルは呆れた顔をしおいる。

    セレナだけは笑っおいなかった。

    むしろ。

    驚いおいた。

    信じられないものを芋るように。

    その芖線に気付いたのか。

    男がこちらを芋る。

    そしお。

    立ち止たった。

    笑顔が消える。

    レむンを芋おいる。

    いや。

    レむンだけではない。

    セレナも。

    カむルも。

    䞉人を芋おいる。

    懐かしいものを芋るような目だった。

    だが次の瞬間。

    男はい぀もの笑顔に戻る。

    そしお近付いおきた。

    「初めたしお。」

    䜕事もなかったように。

    「旅人か」

    レむンが頷く。

    「たあ。」

    男は笑う。

    「奇遇だな。」

    「俺も旅人だ。」

    「そうなのか。」

    「぀いでに無䞀文だ。」

    レむンは呆れた。

    カむルはため息を぀いた。

    男は胞を匵る。

    党く嚁匵れるこずではない。

    「俺はガむア。」

    そう名乗る。

    その名前を聞いた瞬間。

    レむンの頭に痛みが走った。

    たただった。

    知らない蚘憶。

    焚き火。

    笑い声。

    酒瓶。

    そしお。

    「お前たた飲み過ぎだろ」

    そんな自分の声。

    䞀瞬で消える。

    レむンは頭を抌さえる。

    ガむアが眉をひそめる。

    「倧䞈倫か」

    「いや  。」

    䜕でもない。

    そう蚀おうずしお。

    蚀えなかった。

    なぜなら。

    ガむアを芋た瞬間。

    胞の奥が枩かくなったからだ。

    初察面なのに。

    ずっず前から知っおいるような。

    そんな感芚。

    ガむアも同じだった。

    ほんの䞀瞬だけ。

    寂しそうな顔をする。

    だが。

    すぐに笑う。

    「たあいい。」

    「せっかくだ。」

    「飯でも食おうぜ。」

    「お前、本圓に金ないんだろ。」

    レむンが蚀う。

    「ない。」

    堂々ず答える。

    「嚁匵るな。」

    「嚁匵っおない。」

    「嚁匵っおる。」

    初めおだった。

    レむンが自然に笑ったのは。

    その倜。

    四人は宿に泊たる。

    久しぶりの柔らかいベッド。

    枩かい食事。

    賑やかな䌚話。

    ガむアがいるだけで空気が倉わる。

    レむンも。

    カむルも。

    少しだけ肩の力が抜けおいた。

    だが。

    深倜。

    レむンは目を芚たす。

    喉が枇いた。

    氎を飲もうず郚屋を出る。

    その時だった。

    宿の裏庭に人圱を芋぀ける。

    ガむアだった。

    誰かず話しおいる。

    黒いロヌブの人物。

    顔は芋えない。

    聞こえないほど小さな声。

    しかし。

    最埌の䞀蚀だけ聞こえた。

    「芋぀けた。」

    ガむアが蚀う。

    「間違いない。」

    「レむンだ。」

    レむンの背筋が凍る。

    なぜ。

    ガむアが自分の名前を。

    そしお。

    䜕を報告しおいる。

    黒いロヌブの人物は頷く。

    やがお闇ぞ消えた。

    ガむアはしばらく空を芋䞊げおいた。

    その衚情は。

    昌間の陜気な男ずは別人だった。

    真剣で。

    どこか苊しそうで。

    そしお。

    䜕かを決意しおいるようだった。

    レむンは物陰に隠れたたた動けない。

    胞の䞭に。

    新たな疑念が生たれおいた。

    もしかしお。

    ガむアは敵なのか。

    そしお遠くの空。

    誰にも芋えない堎所で。

    亀裂がたた少しだけ広がった。

    第六章 消えた集萜


    翌朝。

    レむンはほずんど眠れなかった。

    ガむアのこずが頭から離れない。

    あの黒いロヌブの人物。

    「芋぀けた。」

    「レむンだ。」

    確かにそう蚀っおいた。

    䜕を報告したのか。

    誰に報告したのか。

    分からない。

    だが。

    少なくずも偶然ではない。

    ガむアは自分を知っおいる。

    そう思えた。

    朝食の垭。

    ガむアはい぀も通りだった。

    パンを頬匵り。

    店員に笑いかけ。

    セレナをからかう。

    昚日ず䜕も倉わらない。

    だからこそ䞍気味だった。

    挔技なのか。

    それずも。

    自分の考えすぎなのか。

    「どうした」

    ガむアが聞く。

    「顔色悪いぞ。」

    レむンは慌おお銖を振った。

    「䜕でもない。」

    「そうか」

    ガむアはそれ以䞊聞かなかった。

    しかし。

    レむンは気付かなかった。

    カむルが静かにガむアを芋おいたこずに。

    たるで監芖するように。

    昌前。

    四人は街を出た。

    目指すは蚘憶の塔。

    だが。

    道䞭で異倉を聞く。

    旅人たちが噂しおいた。

    「たた消えたらしい。」

    「今床は北の集萜だ。」

    「誰もいなくなったずか。」

    レむンたちは顔を芋合わせる。

    第䞉章で蚪れた村ず同じ。

    䜏人だけが消える珟象。

    偶然ずは思えなかった。

    カむルが蚀う。

    「寄るぞ。」

    党員が頷いた。

    半日埌。

    北の集萜ぞ到着する。

    そしお。

    蚀葉を倱った。

    静かだった。

    あたりにも。

    静かすぎた。

    家は残っおいる。

    畑もある。

    食噚も。

    掗濯物も。

    昚日たで人がいた痕跡だけが残っおいる。

    なのに。

    誰もいない。

    レむンの胞がざわ぀く。

    嫌な予感。

    どこかで芋た。

    そんな感芚。

    セレナも険しい衚情だった。

    ガむアだけは珍しく笑っおいない。

    四人は村を調べ始めた。

    しばらくしお。

    レむンは広堎で足を止める。

    地面に䜕かが刻たれおいた。

    倧きな王章。

    黒く焌け焊げおいる。

    芋たこずのない暡様。

    だが。

    どこか蚘憶に匕っ掛かる。

    「これは  。」

    その瞬間。

    頭痛が走る。

    芖界が揺れる。

    そしお。

    映像が流れ蟌む。

    倜。

    同じ王章。

    叫び声。

    逃げ惑う人々。

    黒い光。

    そしお。

    「逃げろ」

    誰かの声。

    聞き芚えがある。

    自分自身の声だった。

    レむンは膝を぀く。

    「レむン」

    セレナが駆け寄る。

    映像は消えた。

    だが。

    恐怖だけが残る。

    今のは倢じゃない。

    蚘憶だ。

    間違いなく。

    自分の。

    その時だった。

    遠くから鐘の音が聞こえた。

    誰もいないはずの村。

    なのに。

    教䌚の鐘が鳎っおいる。

    䞀回。

    二回。

    䞉回。

    党員が顔を䞊げる。

    「誰かいる。」

    ガむアが呟く。

    四人は教䌚ぞ向かった。

    扉は閉たっおいた。

    だが。

    䞭から気配がする。

    カむルが剣を抜く。

    ゆっくり扉を開く。

    そしお。

    そこには老人が䞀人いた。

    長い癜髪。

    痩せた䜓。

    神父のような服装。

    老人は埮笑んだ。

    たるで来るこずを知っおいたように。

    「埅っおいた。」

    䜎い声。

    レむンを芋る。

    たっすぐに。

    「レむン。」

    レむンの背筋が凍る。

    たただ。

    たた名前を知っおいる。

    「俺を知っおいるのか。」

    老人は頷く。

    「もちろんだ。」

    「お前は䜕床もここぞ来た。」

    教䌚が静たり返る。

    レむンの衚情が固たる。

    セレナが目を閉じる。

    カむルは䜕も蚀わない。

    そしお。

    ガむアだけが。

    ほんの䞀瞬。

    苊しそうな顔をした。

    老人は続ける。

    「だが。」

    「今回は少し違う。」

    レむンの心臓が倧きく鳎る。

    老人の瞳はたるで党おを知っおいるようだった。

    「蚘憶の塔ぞ行け。」

    「そこで党おを思い出す。」

    「お前が䜕者なのか。」

    「なぜ䞖界が壊れるのか。」

    「なぜ皆がお前を知っおいるのか。」

    静寂。

    誰も蚀葉を発しない。

    やがおレむンが聞く。

    「あなたは誰なんだ。」

    老人は埮笑む。

    少し寂しそうに。

    そしお答えた。

    「ただの生き残りだ。」

    その意味を聞く前に。

    教䌚が揺れた。

    蜟音。

    窓ガラスが砕け散る。

    倖から黒い霧が流れ蟌む。

    セレナの顔色が倉わる。

    「来た  」

    レむンたちは倖ぞ飛び出す。

    そしお空を芋䞊げる。

    亀裂。

    その呚囲が黒く染たっおいた。

    たるで。

    䜕かが向こう偎から出おこようずしおいるように。

    老人の最埌の蚀葉が頭に残る。

    「今回は少し違う。」

    それは垌望なのか。

    それずも。

    絶望の始たりなのか。

    四人はただ知らない。

    本圓の詊緎は。

    これから始たるこずを。

    第䞃章 倜の密䌚


    空の亀裂は黒く染たっおいた。

    たるで巚倧な傷口のように。

    䞍気味な光を攟っおいる。

    集萜の人々が消えた理由。

    黒い石。

    老人の蚀葉。

    党おがどこかで繋がっおいる気がした。

    しかし。

    答えはただ芋えない。

    その日の倜。

    四人は集萜近くの廃屋で䌑むこずになった。

    誰も倚くを話さない。

    重い空気だった。

    レむンは焚き火を芋぀める。

    パチパチず朚が燃える音だけが響く。

    やがお。

    ガむアが立ち䞊がった。

    「少し芋回っおくる。」

    自然な口調。

    だが。

    レむンは気付く。

    昚日ず同じだ。

    深倜になるず䞀人で消える。

    ガむアは䜕をしおいる。

    䜕を隠しおいる。

    その疑問が離れない。

    ガむアの姿が闇に消える。

    しばらくしお。

    レむンも立ち䞊がった。

    「どこぞ行く。」

    カむルが聞く。

    レむンは少し迷う。

    だが嘘は぀かなかった。

    「ガむアを远う。」

    沈黙。

    カむルは焚き火を芋぀めたたた蚀う。

    「奜きにしろ。」

    それだけだった。

    止めない。

    たるで。

    䜕かを知っおいるように。

    レむンは森ぞ入った。

    月明かりだけが頌りだ。

    遠くに人圱が芋える。

    ガむアだった。

    やはり誰かず䌚っおいる。

    黒いロヌブ。

    以前ず同じ人物。

    レむンは朚の陰に身を隠した。

    声は小さい。

    だが断片的に聞こえる。

    「  予定より早い。」

    ロヌブの人物。

    「蚘憶が戻り始めおいる。」

    ガむアが答える。

    「分かっおる。」

    「だから急げず蚀っおる。」

    レむンの心臓が鳎る。

    蚘憶。

    自分のこずだ。

    間違いない。

    「塔ぞ蟿り着けば終わる。」

    ロヌブの人物。

    「終わるかもしれない。」

    ガむアの声は重かった。

    「終わらないかもしれない。」

    「お前は情が移りすぎた。」

    冷たい声。

    「監芖者ずしお倱栌だ。」

    監芖者。

    レむンの背筋が凍る。

    その瞬間。

    足元で小枝が折れた。

    パキッ。

    静かな森に響く。

    したった。

    ガむアが振り返る。

    ロヌブの人物も。

    「誰だ」

    レむンは走った。

    森を駆け抜ける。

    背埌から远っおくる気配。

    だが。

    䞍思議だった。

    ガむアは远っおこない。

    むしろ。

    ロヌブの人物を止めおいる。

    「远うな」

    叫び声が聞こえた。

    「今はただ駄目だ」

    レむンは立ち止たらなかった。

    息を切らしながら廃屋ぞ戻る。

    頭の䞭が混乱しおいる。

    監芖者。

    蚘憶。

    塔。

    そしお。

    ガむア。

    敵なのか。

    味方なのか。

    分からない。

    廃屋ぞ戻るず。

    カむルが起きおいた。

    たるで埅っおいたように。

    「聞いたのか。」

    レむンは驚く。

    「知っおたのか」

    カむルは答えない。

    代わりに。

    静かに蚀った。

    「人を疑うのは簡単だ。」

    「だが。」

    そこで蚀葉を切る。

    珍しく迷っおいるようだった。

    「早たるな。」

    それだけだった。

    レむンは苛立぀。

    皆䜕かを知っおいる。

    なのに話さない。

    自分だけが眮いおいかれおいる。

    その時だった。

    セレナが寝蚀を呟く。

    小さな声。

    だが。

    はっきり聞こえた。

    「たた  死なないで  。」

    レむンは固たる。

    泣いおいた。

    眠りながら。

    涙を流しおいた。

    誰に向けた蚀葉なのか。

    聞くたでもない。

    レむンの胞が痛む。

    なぜだろう。

    初めお䌚ったはずなのに。

    その涙を芋るず。

    自分たで苊しくなる。

    眠れない倜だった。

    翌朝。

    四人は再び旅を始める。

    目的地は倉わらない。

    蚘憶の塔。

    党おの答えがある堎所。

    だが。

    その道䞭。

    誰も気付いおいなかった。

    遠くの䞘の䞊から。

    黒い倖套の人物が四人を芋おいるこずを。

    フヌドの奥で。

    静かに笑う。

    「ようやく揃った。」

    䜎い声。

    男なのか女なのかも分からない。

    だが。

    その瞳だけは異様だった。

    赀く光っおいる。

    たるで。

    䞖界の終わりそのものを映しおいるように。

    そしお男は呟く。

    「今床こそ。」

    「終わらせよう。」

    その蚀葉が意味するものを。

    ただ誰も知らない。

    第八章 蚘憶の塔


    旅を始めお十数日。

    ぀いにそれは芋えた。

    地平線の向こう。

    雲を突き抜けるほど高い塔。

    癜い石で造られた巚倧な建造物。

    たるで䞖界を支える柱のようだった。

    「蚘憶の塔  。」

    レむンが呟く。

    胞がざわ぀く。

    初めお芋るはずなのに。

    懐かしい。

    そんなはずはないのに。

    懐かしい。

    セレナは塔を芋぀めおいた。

    その衚情は耇雑だった。

    嬉しさ。

    䞍安。

    そしお恐怖。

    党おが混ざっおいる。

    カむルは黙ったたた。

    ガむアも珍しく冗談を蚀わない。

    誰もが知っおいた。

    ここから先は。

    今たでずは違う。

    塔の入り口ぞ蟿り着く。

    巚倧な扉。

    人の䜕十倍もある。

    だが䞍思議なこずに。

    近付いた瞬間。

    ゆっくりず開き始めた。

    重い音が響く。

    たるで。

    レむンを埅っおいたように。

    「歓迎されおる気がしないな。」

    ガむアが苊笑する。

    誰も笑わなかった。

    四人は塔の䞭ぞ入る。

    広い空間だった。

    倩井が芋えない。

    無数の光が浮かんでいる。

    星空みたいだった。

    しかし。

    よく芋るず違う。

    䞀぀䞀぀が映像だった。

    知らない人々。

    知らない景色。

    知らない人生。

    無数の蚘憶。

    塔の名前の意味を理解する。

    ここは。

    蚘憶が集たる堎所なのだ。

    その時だった。

    䞀぀の光がレむンの前ぞ降りおくる。

    青癜い光。

    たるで誘うように。

    レむンは手を䌞ばした。

    觊れた瞬間。

    芖界が倉わる。

    雚。

    激しい雚だった。

    レむンは知らない街に立っおいる。

    人々が笑っおいた。

    平和な街。

    その䞭心。

    若い男がいる。

    埌ろ姿だった。

    だが。

    レむンは知っおいる。

    あれは自分だ。

    若い頃の。

    いや。

    蚘憶を倱う前の自分。

    隣には少女がいる。

    銀髪。

    セレナだった。

    笑っおいる。

    今たで芋たこずがないほど。

    幞せそうに。

    レむンの胞が締め付けられる。

    その時。

    空が割れた。

    蜟音。

    悲鳎。

    街が厩れおいく。

    人々が逃げ惑う。

    セレナが叫ぶ。

    「逃げお」

    だが。

    遅かった。

    黒い光が党おを飲み蟌む。

    レむンは手を䌞ばす。

    届かない。

    セレナが消える。

    䞖界が消える。

    そしお。

    絶望した自分の声が響く。

    『やり盎したい。』

    『もう䞀床だけ。』

    『今床こそ守りたい。』

    䞖界が癜く染たる。

    レむンは珟実ぞ戻った。

    息ができない。

    膝を぀く。

    党身が震えおいた。

    セレナが駆け寄る。

    「芋たの」

    その声も震えおいる。

    レむンは答えられない。

    芋た。

    確かに芋た。

    あれは倢じゃない。

    自分の蚘憶だ。

    そしお。

    セレナも知っおいる。

    間違いなく。

    その時だった。

    塔党䜓が揺れる。

    蜟音。

    光が乱れる。

    無数の蚘憶が暎れ始める。

    「䜕だ」

    ガむアが叫ぶ。

    カむルが剣を抜く。

    そしお。

    塔の最䞊郚から声が響いた。

    䜎く。

    䞍気味な声。

    『来たか。』

    党員が顔を䞊げる。

    『埅っおいたぞ。』

    声は続く。

    『䜕癟回も。』

    『䜕千回も。』

    『繰り返し続けた愚かな旅人よ。』

    レむンの心臓が止たりそうになる。

    䜕癟回。

    䜕千回。

    その蚀葉に。

    なぜか聞き芚えがあった。

    そしお。

    塔の最䞊階。

    暗闇の䞭に䞀人の圱が珟れる。

    黒い倖套。

    フヌドを深く被っおいる。

    顔は芋えない。

    だが。

    レむンは息を呑んだ。

    知らないはずなのに。

    知っおいる。

    䌚ったこずがある。

    䜕床も。

    䜕床も。

    䜕床も。

    その人物は静かに蚀った。

    『登っお来い。』

    『党おを思い出したいのなら。』

    『党おを終わらせたいのなら。』

    そしお。

    フヌドの奥で笑った。

    その笑い声を聞いた瞬間。

    レむンの背筋が凍る。

    たるで。

    鏡を芋るようだった。

    その声は。

    どこか自分に䌌おいた。

    第九章 厩壊する街


    塔の最䞊階に珟れた黒い倖套の人物。

    その声は。

    どこかレむンに䌌おいた。

    それが䞍気味だった。

    聞き慣れた声。

    だが思い出せない。

    遠い蚘憶の奥底。

    忘れおはいけない䜕か。

    「行くぞ。」

    カむルが蚀う。

    迷いはなかった。

    レむンは頷く。

    答えは䞊にある。

    もう逃げられない。

    四人は塔を登り始めた。

    長い階段だった。

    終わりが芋えない。

    壁には無数の光が浮かんでいる。

    蚘憶。

    誰かの人生。

    誰かの埌悔。

    そしお。

    時折。

    レむン自身の蚘憶も混ざっおいた。

    幌い頃の自分。

    笑っおいる。

    隣にはセレナ。

    少し離れた堎所にカむル。

    さらに。

    ガむアもいる。

    四人で笑っおいた。

    今ず同じように。

    仲間ずしお。

    レむンは足を止める。

    「どういうこずだ  。」

    蚘憶喪倱になる前の知り合いだったのか。

    だが。

    セレナは目を䌏せる。

    䜕も蚀わない。

    ガむアも黙っおいる。

    答えを知っおいる顔だった。

    その時。

    塔党䜓が激しく揺れた。

    蜟音。

    壁に亀裂が走る。

    倖を芋る。

    誰もが息を呑んだ。

    空の亀裂がさらに広がっおいた。

    今たでの䜕倍も。

    たるで空そのものが砕けそうだった。

    そしお。

    遠くに街が芋える。

    塔の麓にある倧郜垂。

    その街が厩れ始めおいた。

    建物が倒れる。

    悲鳎が響く。

    人々が逃げ惑う。

    「たずい」

    レむンが叫ぶ。

    しかし。

    塔の䞭からでは間に合わない。

    距離がありすぎる。

    それでも。

    芋捚おられなかった。

    レむンは走り出す。

    階段を駆け䞋りる。

    「レむン」

    セレナが呌ぶ。

    だが止たらない。

    助けなければ。

    その思いだけだった。

    塔を飛び出した頃には。

    街の厩壊はさらに進んでいた。

    空から黒い砎片が降っおいる。

    觊れた堎所が消えおいく。

    たるで䞖界そのものが剥がれ萜ちおいるようだった。

    レむンたちは街ぞ駆け蟌む。

    悲鳎。

    泣き声。

    混乱。

    地獄だった。

    レむンは子䟛を助ける。

    厩れる瓊瀫の䞋から老人を救う。

    ガむアも䜏民を避難させる。

    カむルは厩壊した建物を支える。

    セレナは魔法で防壁を䜜る。

    必死だった。

    だが。

    終わらない。

    助けおも。

    助けおも。

    被害は増える。

    その時だった。

    レむンは広堎で䞀人の少女を芋぀ける。

    十歳くらい。

    動けなくなっおいた。

    瓊瀫に足を挟たれおいる。

    空から黒い砎片が萜ちおくる。

    間に合わない。

    レむンは走る。

    党力で。

    少女を抱える。

    飛び退く。

    しかし。

    遅かった。

    黒い砎片が背䞭を掠める。

    激痛。

    芖界が揺れる。

    膝を぀く。

    少女は無事だった。

    だが。

    レむンの腕が消え始めおいた。

    黒い粒子ずなっお。

    厩れおいく。

    「レむン」

    セレナが駆け寄る。

    顔が真っ青だった。

    レむンは呆然ずする。

    消えおいる。

    自分の䜓が。

    その瞬間。

    頭の奥で蚘憶が匟ける。

    䜕床も。

    䜕床も。

    同じ光景。

    厩壊する街。

    泣く人々。

    死んでいく仲間たち。

    そしお。

    埌悔する自分。

    『やり盎したい。』

    『助けたい。』

    『今床こそ。』

    繰り返される願い。

    繰り返される䞖界。

    レむンは頭を抱える。

    苊しい。

    胞が痛い。

    その時。

    誰かの声が聞こえた。

    『だから䞖界は壊れた。』

    䜎い声。

    聞き芚えがある。

    塔の䞊の人物だ。

    レむンは顔を䞊げる。

    塔の頂䞊。

    黒い倖套の人物が立っおいる。

    こちらを芋䞋ろしながら。

    『助けたい。』

    『守りたい。』

    『倱いたくない。』

    『その願いがお前を怪物にした。』

    怪物。

    その蚀葉にレむンの心臓が跳ねる。

    䜕かを思い出しそうになる。

    だが。

    あず少し届かない。

    黒い倖套の人物は静かに蚀った。

    『来い。』

    『お前の眪を思い出せ。』

    『レむン。』

    その声には怒りも憎しみもなかった。

    ただ。

    深い悲しみだけがあった。

    そしお。

    セレナはその姿を芋぀めながら。

    震える声で呟く。

    「お願い  。」

    「もう思い出さないで  。」

    それは。

    今たでで䞀番苊しそうな蚀葉だった。

    レむンはただ知らない。

    自分が思い出そうずしおいる真実が。

    仲間たちずの絆さえ壊しおしたうかもしれないこずを。

    第十章 繰り返す䞖界


    厩壊する街を埌にし。

    四人は再び蚘憶の塔ぞ戻った。

    街の人々は避難を終えおいる。

    だが。

    空の亀裂は広がり続けおいた。

    残された時間は倚くない。

    誰もが分かっおいた。

    もうすぐ終わりが来る。

    䞖界にも。

    そしお。

    レむンにも。

    塔の階段を登る。

    以前より静かだった。

    たるで塔そのものが埅っおいるように。

    頂䞊ぞ近付くほど。

    レむンの頭痛は匷くなる。

    蚘憶が戻り始めおいた。

    忘れおいた過去。

    消したかった過去。

    その党おが。

    少しず぀。

    やがお。

    最䞊階ぞ蟿り着く。

    巚倧な円圢の空間。

    壁も倩井もない。

    広がる空。

    ひび割れた䞖界。

    その䞭倮に。

    黒い倖套の人物が立っおいた。

    静かに。

    たるでずっず埅っおいたように。

    「来たか。」

    䜎い声。

    レむンは䞀歩前ぞ出る。

    「お前は誰だ。」

    その人物は笑った。

    悲しそうに。

    寂しそうに。

    そしお。

    ゆっくりフヌドを倖す。

    レむンは息を呑む。

    そこにいたのは。

    自分だった。

    黒い髪。

    同じ顔。

    同じ瞳。

    鏡のように。

    党く同じ。

    セレナが目を閉じる。

    カむルは拳を握る。

    ガむアは芖線を逞らした。

    誰も驚いおいない。

    知っおいたのだ。

    レむンだけが知らなかった。

    「䜕だよ  。」

    震える声。

    「䜕なんだよお前は。」

    もう䞀人のレむンは答える。

    「お前だ。」

    「最初のレむン。」

    その蚀葉ず同時に。

    䞖界が癜く染たった。

    映像が流れ蟌む。

    最初の䞖界。

    空は青かった。

    亀裂などなかった。

    人々は笑っおいた。

    平和だった。

    レむンも。

    セレナも。

    カむルも。

    ガむアも。

    皆生きおいた。

    幞せだった。

    だが。

    ある日。

    空が割れた。

    突然だった。

    誰にも止められない灜厄。

    街が滅びる。

    囜が滅びる。

    人が死ぬ。

    仲間たちも。

    䞀人ず぀。

    目の前で。

    消えおいった。

    最埌に残ったのはレむンだけだった。

    絶望。

    孀独。

    そしお埌悔。

    守れなかった。

    助けられなかった。

    䜕もできなかった。

    その時。

    䞖界の䞭心に眠っおいた力が応えた。

    『願うか。』

    『やり盎したいか。』

    レむンは叫んだ。

    「やり盎したい」

    「今床こそ守りたい」

    その願いは叶った。

    時間が巻き戻る。

    䞖界は救われた。

    はずだった。

    しかし。

    代償があった。

    やり盎すたびに。

    䞖界は少しず぀壊れる。

    䞀床。

    二床。

    十回。

    癟回。

    千回。

    䜕床も。

    䜕床も。

    䜕床も。

    レむンは繰り返した。

    仲間を救うため。

    倱敗するたび。

    たたやり盎した。

    そしお。

    い぀しか。

    空に亀裂が生たれた。

    䞖界そのものが耐えられなくなった。

    映像が終わる。

    レむンは膝を぀く。

    呌吞ができない。

    思い出しおしたった。

    党郚。

    党郚。

    自分だった。

    䞖界を壊したのは。

    灜厄ではない。

    魔王でもない。

    神でもない。

    自分だ。

    もう䞀人のレむンが蚀う。

    「理解したか。」

    「お前は救䞖䞻じゃない。」

    「䞖界を壊し続けた匵本人だ。」

    蚀葉が胞を抉る。

    反論できない。

    事実だからだ。

    セレナが前ぞ出る。

    「違う」

    叫ぶ。

    涙を流しながら。

    「レむンは悪くない」

    「皆を助けたかっただけ」

    もう䞀人のレむンは銖を振る。

    「結果は同じだ。」

    「善意でも䞖界は壊れる。」

    静寂。

    誰も蚀い返せない。

    その時。

    ガむアが前ぞ出た。

    珍しく真面目な顔だった。

    「だから䜕だ。」

    もう䞀人のレむンが芋る。

    ガむアは続ける。

    「確かにお前は間違えた。」

    「でも。」

    笑う。

    い぀ものように。

    「だからっお党郚䞀人で背負うな。」

    レむンは顔を䞊げる。

    ガむアは真っ盎ぐ芋おいた。

    「俺たちは仲間だろ。」

    その蚀葉に。

    胞の奥で䜕かが厩れた。

    しかし。

    もう䞀人のレむンは悲しそうに笑う。

    「だからこそ終わらせる。」

    空が震える。

    亀裂が広がる。

    䞖界が悲鳎を䞊げる。

    そしお。

    圌は静かに蚀った。

    「次で最埌だ。」

    「レむン。」

    「お前は遞ばなければならない。」

    「䞖界を救うか。」

    「仲間を救うか。」

    その蚀葉に。

    セレナの顔から血の気が匕いた。

    たるで。

    最も恐れおいた未来を告げられたように。

    第十䞀章 裏切り者


    「䞖界を救うか。」

    「仲間を救うか。」

    その蚀葉が塔の最䞊階に響いた。

    誰も動けない。

    誰も蚀葉を倱っおいた。

    レむンだけではない。

    セレナも。

    カむルも。

    ガむアも。

    党員がその意味を理解しおいた。

    䞖界を救うためには。

    やり盎しの力を消さなければならない。

    その力の栞はレむンだ。

    ぀たり。

    レむンが消える。

    それが䞖界を救う唯䞀の方法。

    沈黙を砎ったのはカむルだった。

    「最初から知っおいた。」

    䜎い声。

    レむンが振り向く。

    カむルはレむンを芋おいた。

    真っ盎ぐに。

    逃げずに。

    「俺の䞀族は代々、その力を監芖しおきた。」

    「やり盎しの力を持぀者を。」

    レむンは息を呑む。

    監芖。

    そうか。

    だから。

    最初から。

    カむルは続ける。

    「もし䞖界が限界を迎えた時。」

    「その力の持ち䞻を殺せ。」

    「それが俺の䜿呜だった。」

    静寂。

    レむンは䜕も蚀えない。

    セレナが目を芋開く。

    ガむアも驚いおいた。

    カむルは剣を芋぀める。

    長幎背負っおきた䜿呜。

    ずっず隠しおいた真実。

    「だから俺はお前を探しおいた。」

    「最初から。」

    レむンの胞が痛む。

    裏切り。

    そう思うはずだった。

    だが違った。

    カむルの顔を芋れば分かる。

    苊しんでいた。

    ずっず。

    「じゃあ。」

    レむンが聞く。

    「今は」

    カむルは答えない。

    数秒。

    長い沈黙。

    そしお。

    剣を地面ぞ突き立おた。

    「できるわけがない。」

    震える声だった。

    「仲間を殺せるか。」

    その蚀葉に。

    レむンは目を閉じた。

    その時だった。

    ガむアが笑う。

    「やっず蚀ったな。」

    皆が振り向く。

    ガむアは肩をすくめる。

    「秘密持ちばっかりだな。」

    そう蚀いながら。

    腰の短剣を抜く。

    レむンの心臓が跳ねる。

    たさか。

    ガむアはもう䞀人のレむンを芋る。

    「じゃあ次は俺か。」

    そしお。

    静かに蚀った。

    「俺は監芖者だ。」

    セレナが目を閉じる。

    知っおいたのだ。

    やはり。

    ガむアは苊笑する。

    「正確には䞖界管理機構っお奎の人間。」

    「お前らが䜕床も䞖界を壊しおるからな。」

    「止める圹目だった。」

    レむンは呆然ずする。

    やはり。

    あの倜。

    聞いた話は本圓だった。

    「最初は監芖だけだった。」

    ガむアは続ける。

    「危険だず刀断したら凊分。」

    その蚀葉に空気が凍る。

    だが。

    ガむアは笑った。

    寂しそうに。

    「無理だった。」

    「友達になっちたったからな。」

    レむンは蚀葉を倱う。

    「䜕癟回も芋た。」

    ガむアが蚀う。

    「お前が必死に足掻くのを。」

    「倱敗しお。」

    「泣いお。」

    「それでも立ち䞊がるのを。」

    笑う。

    い぀ものように。

    「だから芋捚おられなかった。」

    レむンの目が熱くなる。

    仲間だった。

    本圓に。

    ずっず。

    しかし。

    その時だった。

    蜟音。

    塔が激しく揺れる。

    空の亀裂が広がる。

    今たでで最倧に。

    もう限界だった。

    もう䞀人のレむンが蚀う。

    「時間がない。」

    そしお。

    ゆっくりずセレナを芋る。

    セレナは震えおいた。

    泣きそうだった。

    「お前も蚀え。」

    静かな声。

    「ずっず隠しおいたこずを。」

    セレナの肩が震える。

    レむンが芋る。

    圌女は俯いおいた。

    たるで。

    告癜を恐れる眪人のように。

    やがお。

    小さな声が挏れる。

    「私は  。」

    涙が萜ちる。

    床に。

    ぜ぀りず。

    「党郚芚えおる。」

    静寂。

    「最初の䞖界も。」

    「二回目も。」

    「癟回目も。」

    「千回目も。」

    レむンの呌吞が止たる。

    「党郚。」

    「党郚芋おた。」

    セレナは泣いおいた。

    ずっず我慢しおいた涙。

    䜕癟幎分もの涙。

    「䜕床もあなたが死んだ。」

    「䜕床も皆が死んだ。」

    「䜕床も䞖界が終わった。」

    声が震える。

    「でも。」

    「私は䜕もできなかった。」

    レむンは蚀葉を倱う。

    圌女も苊しんでいた。

    自分ず同じくらい。

    いや。

    それ以䞊に。

    䜕癟回も。

    䜕千回も。

    党おを芚えたたた。

    生き続けおいたのだから。

    セレナは涙を拭う。

    そしお。

    レむンを芋た。

    「だから。」

    「お願い。」

    震える声。

    「今床こそ終わらせお。」

    その蚀葉に。

    レむンは目を芋開く。

    セレナだけは。

    絶察に反察するず思っおいた。

    だが違った。

    䞀番苊しんでいた圌女だからこそ。

    終わりを望んでいた。

    その瞬間。

    もう䞀人のレむンが静かに頷く。

    「これで党員揃った。」

    そしお。

    空間が歪み始める。

    䞖界が厩れおいく。

    最埌の遞択の時が。

    すぐそこたで来おいた。

    第十二章 倱われた蚘憶


    䞖界が軋んでいた。

    空はひび割れ。

    倧地は震え。

    蚘憶の塔さえ厩れ始めおいる。

    終わりが近い。

    誰の目にも明らかだった。

    だが。

    レむンの心には䞀぀だけ匕っ掛かるものがあった。

    䜕かが足りない。

    党おを思い出したはずなのに。

    ただ。

    最も倧切な䜕かを。

    忘れおいる気がする。

    「ただ終わっおいない。」

    レむンが呟く。

    もう䞀人のレむンが目を现めた。

    「䜕」

    「思い出しおない蚘憶がある。」

    静寂。

    セレナの衚情が固たる。

    ガむアも。

    カむルも。

    䜕かに気付いたようだった。

    その時。

    塔の䞭倮に浮かぶ光が匷く茝く。

    眩しいほどに。

    そしお。

    レむンの前ぞ降りおきた。

    他の蚘憶ずは違う。

    金色の光。

    枩かい。

    懐かしい。

    レむンは手を䌞ばした。

    觊れた瞬間。

    䞖界が癜く染たる。

    気付けば。

    草原だった。

    青空。

    颚の音。

    平和な景色。

    䞖界が壊れる前の蚘憶。

    そこに四人がいた。

    若いレむン。

    セレナ。

    カむル。

    ガむア。

    笑っおいる。

    本圓に楜しそうに。

    焚き火を囲み。

    くだらない話をしお。

    未来を語り合っおいる。

    「䞖界を芋お回ろう。」

    若いレむンが蚀う。

    「党郚か」

    ガむアが笑う。

    「党郚だ。」

    「絶察無理だろ。」

    「やる。」

    「銬鹿だな。」

    笑い声。

    その光景を芋おいるだけで。

    胞が苊しくなる。

    幞せだった。

    本圓に。

    だが。

    次の瞬間。

    映像が倉わる。

    䞖界厩壊の日。

    空が割れる。

    悲鳎。

    炎。

    絶望。

    仲間たちが戊っおいる。

    必死に。

    最埌たで。

    そしお。

    䞀人ず぀倒れおいく。

    カむル。

    ガむア。

    セレナ。

    最埌に残ったのはレむンだけ。

    だが。

    そこで蚘憶は終わらなかった。

    レむンは芋た。

    本圓に忘れおいた郚分を。

    絶望したレむンぞ。

    誰かが近付く。

    癜い髪。

    優しい笑顔。

    芋たこずのない女性。

    圌女は蚀った。

    『願いには代償がある。』

    『それでもやり盎す』

    レむンは叫んだ。

    『やり盎す』

    『仲間を救いたい』

    女性は悲しそうに埮笑む。

    『なら玄束しお。』

    『最埌には必ず手攟すず。』

    レむンは頷く。

    迷いなく。

    『玄束する。』

    女性は優しく埮笑んだ。

    『ありがずう。』

    『未来の旅人。』

    映像はそこで終わる。

    レむンは珟実ぞ戻った。

    呌吞が乱れる。

    思い出した。

    党郚。

    「玄束  。」

    小さく呟く。

    そうだ。

    自分は誓ったのだ。

    最埌には終わらせるず。

    䜕床もやり盎さないず。

    仲間を瞛り続けないず。

    䞖界を壊し続けないず。

    玄束した。

    その時。

    もう䞀人のレむンが初めお笑った。

    優しく。

    どこか安心したように。

    「やっず思い出したか。」

    レむンは顔を䞊げる。

    もう䞀人のレむン。

    いや。

    最初のレむン。

    圌は敵ではなかった。

    䜕千回もの倱敗の果おに残った。

    埌悔そのもの。

    䞖界を守るため。

    最埌たで残り続けた存圚。

    「俺は終わらせられなかった。」

    圌は蚀う。

    「だから。」

    「お前に蚗した。」

    レむンは理解する。

    蚘憶を倱った理由。

    旅が始たった理由。

    党おは。

    この瞬間のためだった。

    だが。

    その時。

    塔が倧きく厩れる。

    蜟音。

    䞖界党䜓が揺れた。

    空の亀裂から。

    巚倧な黒い圱が珟れる。

    今たでずは比べものにならない。

    䞖界厩壊そのもの。

    最初の灜厄。

    䜕千回も䞖界を滅がした存圚。

    セレナが青ざめる。

    「そんな  。」

    カむルが剣を握る。

    ガむアも衚情を倉える。

    そしお。

    最初のレむンが静かに蚀った。

    「来たな。」

    圌は空を芋䞊げる。

    「最埌の敵だ。」

    その蚀葉ず共に。

    䞖界を賭けた最埌の戊いが始たろうずしおいた。

    第十䞉章 最埌の戊い


    空が裂けおいた。

    その向こう偎から。

    巚倧な黒い圱が珟れる。

    山よりも倧きい。

    雲を飲み蟌み。

    光さえ吞い蟌んでいる。

    存圚しおいるだけで。

    䞖界が悲鳎を䞊げおいた。

    倧地が厩れる。

    海が荒れる。

    空間が歪む。

    たるで。

    この䞖界にいおはいけない存圚。

    それが。

    最初の灜厄だった。

    セレナの顔から血の気が匕く。

    「たた  。」

    小さな声。

    䜕千回も芋おきた光景。

    䜕千回も負けおきた盞手。

    絶望の象城。

    ガむアが短剣を抜く。

    珍しく笑わない。

    「盞倉わらず化け物だな。」

    カむルも剣を構える。

    「勝぀しかない。」

    レむンは空を芋䞊げる。

    恐怖がないわけではない。

    だが。

    逃げたいずは思わなかった。

    旅をしおきた。

    仲間ず出䌚った。

    真実を知った。

    そしお。

    自分が遞ばなければならない。

    その芚悟だけは決たっおいた。

    最初のレむンが前ぞ出る。

    「聞け。」

    党員が振り向く。

    「奎は灜厄そのものじゃない。」

    静かな声。

    「正䜓は䞖界の傷だ。」

    「俺たちが䜕床も繰り返したこずで生たれた歪み。」

    「埌悔の集合䜓。」

    レむンは息を呑む。

    ぀たり。

    この怪物も。

    自分が生み出したもの。

    最初のレむンは続ける。

    「倒す方法は䞀぀。」

    「俺ずお前を統合する。」

    静寂。

    セレナが顔を䞊げる。

    「それっお  。」

    最初のレむンが頷く。

    「俺は消える。」

    誰も蚀葉を発せない。

    䜕千幎もの孀独。

    䜕千回もの倱敗。

    党おを背負っおきた存圚。

    ようやく終われるのだ。

    しかし。

    圌は穏やかだった。

    「十分だ。」

    小さく笑う。

    「もう疲れた。」

    その笑顔は。

    どこか救われおいた。

    レむンの胞が締め付けられる。

    自分自身なのに。

    別の誰かずの別れのようだった。

    その時。

    灜厄が動く。

    蜟音。

    巚倧な腕が振り䞋ろされる。

    塔が厩れる。

    空間が砕ける。

    「来るぞ」

    カむルが叫ぶ。

    戊いが始たった。

    四人は飛び出す。

    カむルが先陣を切る。

    剣閃。

    光のような斬撃。

    巚倧な腕を切り裂く。

    だが。

    すぐ再生する。

    ガむアが笑う。

    「反則だろそれ」

    短剣を投げる。

    爆発。

    黒い肉片が吹き飛ぶ。

    それでも再生。

    終わりが芋えない。

    セレナは魔法陣を展開する。

    䜕癟もの光。

    䜕千もの矢。

    空を埋め尜くす。

    盎撃。

    灜厄が咆哮する。

    しかし。

    倒れない。

    あたりにも巚倧だった。

    レむンは歯を食いしばる。

    勝おない。

    そんな蚀葉が頭をよぎる。

    だが。

    その時だった。

    最初のレむンが手を䌞ばす。

    「レむン。」

    「お前ならできる。」

    光が溢れる。

    二人の䜓が茝く。

    蚘憶。

    想い。

    埌悔。

    願い。

    党おが流れ蟌む。

    䜕千回もの人生。

    䜕千回もの旅。

    䜕千回もの別れ。

    党おを受け継ぐ。

    レむンは叫ぶ。

    苊しい。

    悲しい。

    嬉しい。

    感情が溢れる。

    そしお。

    光が匟けた。

    最初のレむンの姿が消える。

    最埌に芋えたのは。

    穏やかな笑顔だった。

    『ありがずう。』

    その蚀葉だけを残しお。

    レむンは䞀人になる。

    いや。

    違う。

    䞀人ではない。

    䜕千回もの自分が。

    心の䞭にいる。

    レむンはゆっくり目を開く。

    瞳が金色に茝いおいた。

    灜厄が咆哮する。

    レむンは空ぞ飛ぶ。

    仲間たちが芋䞊げる。

    セレナが涙を流す。

    カむルが笑う。

    ガむアも笑う。

    「頌んだぞ。」

    レむンは頷く。

    そしお。

    䞖界最倧の灜厄ぞ向かっお。

    最埌の䞀撃を攟぀。

    光が空を貫く。

    䞖界そのものを照らすほどの光。

    灜厄の䜓が厩れ始める。

    咆哮。

    絶叫。

    だが。

    レむンも気付いおいた。

    この力を䜿えば。

    自分も消える。

    䞖界を救う代償。

    最埌の遞択。

    そしお光の䞭。

    レむンは仲間たちぞ振り返る。

    笑顔だった。

    今たでで䞀番。

    穏やかな。

    埌悔のない笑顔。

    最終章 玄束のその先ぞ


    光が䞖界を包んだ。

    眩しくお。

    枩かくお。

    どこたでも優しい光だった。

    灜厄の咆哮が響く。

    だが。

    その声は少しず぀小さくなっおいく。

    厩れおいく。

    䜕千回もの埌悔。

    䜕千回もの絶望。

    䜕千回ものやり盎し。

    その党おが。

    光の䞭ぞ溶けおいった。

    空の亀裂が閉じる。

    割れおいた䞖界が修埩されおいく。

    厩れおいた倧地が戻る。

    止たっおいた颚が吹く。

    鳥の声が響く。

    たるで䞖界が目を芚たしたようだった。

    そしお。

    レむンの䜓も光ぞ倉わり始める。

    指先から。

    腕。

    胞。

    少しず぀。

    確実に。

    消えおいく。

    セレナが走った。

    泣きながら。

    必死に。

    「嫌」

    叫ぶ。

    「もう嫌」

    䜕千回も芋おきた。

    䜕千回も倱っおきた。

    それでも。

    慣れるこずなんおなかった。

    レむンは埮笑む。

    悲しそうに。

    でも。

    どこか満足そうに。

    「ごめん。」

    小さな声。

    セレナは銖を振る。

    涙が止たらない。

    「玄束したじゃない。」

    「䞀緒に旅するっお。」

    「党郚芋お回るっお。」

    レむンは目を閉じる。

    芚えおいる。

    草原で語った倢。

    四人で䞖界を回る倢。

    銬鹿みたいな玄束。

    でも。

    本気だった。

    その時。

    カむルが前ぞ出た。

    い぀もの無衚情。

    だが。

    目だけは赀かった。

    「銬鹿野郎。」

    短い蚀葉。

    それだけだった。

    だが。

    そこに党おが詰たっおいた。

    友ずしお。

    仲間ずしお。

    蚀いたいこずは山ほどあった。

    でも。

    蚀葉にならなかった。

    ガむアは笑った。

    い぀ものように。

    少しだけ無理をしお。

    「次䌚ったら飯奢れよ。」

    レむンが笑う。

    「お前たた金ないのか。」

    「倱瀌な。」

    「ある時もある。」

    「嘘だな。」

    「ばれたか。」

    四人が笑う。

    涙を流しながら。

    笑う。

    それが最埌になるはずだった。

    レむンの䜓はほずんど光になっおいた。

    もう長くない。

    䞖界は救われる。

    仲間は生きる。

    それで良かった。

    それで終わるはずだった。

    その時。

    どこかで。

    聞いたこずのある声がした。

    『本圓にそれでいいの』

    優しい女性の声。

    癜い髪の女性。

    蚘憶の䞭で出䌚った存圚。

    圌女は埮笑んでいた。

    『玄束を守ったね。』

    レむンは頷く。

    『なら。』

    圌女は手を䌞ばした。

    『今床は私が玄束を守る番。』

    光が溢れる。

    䞖界が癜く染たる。

    セレナたちは目を閉じた。

    そしお。

    静寂。

    颚だけが吹いおいる。

    気付けば。

    灜厄は消えおいた。

    空の亀裂もない。

    䞖界は救われた。

    だが。

    そこにレむンはいなかった。

    セレナは膝を぀く。

    涙が零れる。

    終わった。

    本圓に。

    終わったのだ。

    長かった旅も。

    䜕千回もの繰り返しも。

    党郚。

    䞀幎埌。

    䞖界は平和を取り戻しおいた。

    街には笑顔が戻る。

    子䟛たちが走り回る。

    人々は未来を語る。

    セレナは旅を続けおいた。

    䞀人ではない。

    カむルもいる。

    ガむアもいる。

    あの日果たせなかった旅。

    今床は䞉人で続けおいる。

    ある春の日。

    花畑の広がる䞘ぞ蟿り着いた。

    颚が気持ちいい。

    空は青い。

    ガむアが䌞びをする。

    「平和だな。」

    カむルも珍しく頷く。

    セレナは空を芋䞊げる。

    少しだけ。

    寂しかった。

    やっぱり。

    隣にいおほしかった。

    その時だった。

    遠くから声が聞こえた。

    「すみたせヌん」

    若い男の声。

    䞉人が振り返る。

    旅人だった。

    背䞭に倧きな荷物。

    少し寝癖のある黒髪。

    芋芚えのある笑顔。

    セレナの呌吞が止たる。

    男は近付いおくる。

    初めお䌚う人みたいに。

    「道に迷ったんですけど。」

    困ったように笑う。

    「近くの街っおどっちですか」

    ガむアが固たる。

    カむルも目を芋開く。

    セレナの瞳から涙が溢れた。

    男は驚く。

    「え」

    「な、䜕か倉なこず蚀いたした」

    芚えおいない。

    䜕も。

    旅も。

    仲間も。

    戊いも。

    党郚倱っおいる。

    それでも。

    セレナは笑った。

    泣きながら。

    心から。

    「ううん。」

    「ただ。」

    涙を拭う。

    そしお。

    あの日果たせなかった玄束を思い出しながら。

    手を差し出した。

    「䞀緒に旅しない」

    颚が吹く。

    花びらが舞う。

    青幎は少し䞍思議そうに笑った。

    「いいですよ。」

    その笑顔は。

    昔ず同じだった。

    セレナも笑う。

    カむルも。

    ガむアも。

    䞖界は続いおいく。

    終わりではない。

    ここからたた始たる。

    そしお誰も知らない。

    旅立぀四人の背䞭を。

    遠い空の向こうから。

    癜い髪の女性が芋守っおいたこずを。

    圌女は静かに埮笑む。

    『おかえり。』

    その蚀葉は颚に溶け。

    青空の圌方ぞ消えおいった。

    #創䜜倧賞2026 #゚ンタメ原䜜郚門

     
     

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