
☕ Café Solas — season7 第1話 「マジで?! ― ケンタのネットショップ」
春の午後。
カフェ・ソラスの窓から、柔らかな光が差し込んでいた。
カウンターの奥で、アキラが静かにコーヒーを淹れている。
店内には、ゆっくりとした時間が流れていた。
そのとき――
ドアが勢いよく開いた。
「見てくれ!」
入ってきたのはケンタだった。
両手に大きな段ボール箱を抱えている。
箱の側面には、マジックで太く書かれていた。
「取扱注意」
タクヤが眉をひそめる。
「……なんだよそれ」
ケンタは得意げにカウンターへ箱を置いた。
「いいから見ろって!」
テープをはがし、フタを開ける。
中に入っていたのは――
小さなプリンのフィギュアだった。
丸い目。
大きく開いた口。
そして台紙には、大きく書かれている。
『マジで?!』

タクヤはしばらく黙ってそれを見ていた。
そして一言。
「……何これ」
ケンタは胸を張る。
「ネットショップ始めたんだよ!」
アキラが思わず笑った。
「カフェの仕事は?」
「やるよ、ちゃんと!」
ケンタはフィギュアを一つ持ち上げる。
「これはな、
ビックリ!プリン・フィギュア!」
タクヤは真顔だった。
「誰が買うんだよ」
少し間を置いて、もう一言。
「……いや、マジで」
そのとき、ドアベルが鳴った。
カラン。
入ってきたのはミユキだった。
ケンタはすぐに声をかける。
「ミユキ!見てくれよ!」
ミユキはフィギュアを受け取り、しばらく眺めた。
角度を変えて、もう一度見る。
そして言った。
「……かわいいじゃん」
ケンタの顔がぱっと明るくなる。
「だろ!」
だが、次の瞬間。
「でも」
ミユキはスマホを取り出した。
「ショップページ見せて」
ケンタが得意げに画面を見せる。
ミユキはそれを見て、すぐ言った。
「写真ダメ」
ケンタ
「え?」
「説明も弱い」
ミユキは画面をスクロールする。
「これじゃ“欲しい”って思えない」
タクヤが笑う。
「ほらな」
ケンタは不満そうに腕を組んだ。
「うーん……」
その日の夜。
カフェの閉店後。
テーブルの上には段ボール箱が並んでいた。
タクヤがガムテープを持ちながら言う。
「……なんで俺たち発送作業してるんだ」
ケンタはスマホを掲げた。
「だって注文入ったんだよ!」
アキラが顔を上げる。
「え?」
ケンタは画面を見せる。
そこには確かに表示されていた。
注文:1件
タクヤが目を細める。
「マジで?」
ケンタは叫んだ。
「マジで?!」
三人の笑い声が、
静かなカフェに広がった。
春の夜。
カフェ・ソラスの新しい出来事は、
どうやらここから始まるらしい。
カウンターの上では、
例のプリンのフィギュアが
どこか誇らしげに
こちらを見ていた。 🍮