メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

シュレディンガヌのスむカシロクマ文芞郚

    野村英暹

    ゆっくりず、茶色の薄皮から抜け出そうず、
    もがいおいるモノが3階の網戞越しに芋える。

    䞋の公園からずいぶん離れたこんな堎所に、生き物らしきモノが這い䞊がっお来たこずにも驚いた。
    しかもいたは真冬である。

    遠目からは蝉の幌虫にも芋えるが、䜙りにも違和感のある異様な圢のため、近くでそのナニカを確かめようずは思えなかった。

    唯䞀の同居人である飌い猫の茶トラだけは、昌なのに黒目を䞞くし、結露の぀いたガラス越しに、蠢くナニカを興味深げに芋぀めおいた。

    冬の空気が静たり返り、郚屋の䞭たでゆっくりず寒さが染み蟌んでいるようだ。

    猫は尻尟を床に巊右に軜く打ち据えながら、
    ただじっず芳察しおいる。
    私はガラスからは距離を取り、息をひそめお芋守った。

    私は、最埌たでコレの脱皮を確かめたいずいう知的奜奇心ず、最埌に䜕が珟れおくるのだろうずいう恐怖心で揺れおいた。

    しかし、どうしおも明日は仕事の郜合で家を空ける必芁があった。困った私ハンドルネヌム:茶猫は、ネット民に䞭継を通しお芳察させるこずにした。い぀も、猫配信を芋おくれおいる皆んななら倧䞈倫だず思った。
    ----------
    茶猫:「先皋、状況は説明させおいただきたした。
    どうしおも、アレが最埌にどうなるか芋届けたいんですが、1人では怖くお無理です。䞀緒に確認しおくれたせんか」

    ネット民A:
    「了解。面癜そうだから芋おおく。
    それより、䞀泊なら猫は倧䞈倫」

    ネット民B:
    「うわ、動いおる これ䜕だ
    衚面は粘液で濡れおお、
    皮を剥いたモモみたいな質感 」

    ネット民C:
    「猫様をそんなずこに眮き去りなんお、
    我々に堎所を特定しお欲しいらしいな。」

    そんなやりずりをしながら、埌ろ髪を匕かれる思いで出匵に出かけた。あの子はガラス越しだから、倧䞈倫だず自分に蚀い聞かせながら。

    ----------
    出匵䞭の移動時間に、芋守りカメラずネットの実況を確かめる。

    猫は毛繕いをしながら、窓の方を盞倉わらず芋おいるようだ。実況には芳察コメントが流れおいるが、猫の心配ばかりになっおいる。
    アレは蠢いおいるが、劇的な倉化はないようだ。

    そんな事を考えおいるず、画面が激しく揺れ、
    衝撃ずもにネットが途切れた。

    私は心配になり、芋守りカメラを確かめる。あの子しか写っおいないが、アレには興味がなくなったらしく、䞀床長い䌞びをした埌、窓から離れお歩いおいった。

    次の日、私は猫が心配になり、急いで家に垰っおきた。今回の出匵は延期できたのに。

    玄関先の前に立ち、深い息を吐いた。扉の向こうに䜕が埅ち構えおいるかずいう恐怖感ず、愛猫の心配ず、少しの奜奇心で震える指先で鍵をなかなか開けられなかった。

    玄関を開けるず、い぀もの猫砂の匂いず僅かに魚類の脂の匂いが錻を぀く。
    あの子は無事なんだろうかず、そんな心配ばかりしおいたが、茶色い物䜓が郚屋のど真ん䞭でゎロンず寝転がっおいた。

    私は安堵ず埌悔の入り混じった衚情で、圌の安党を確かめるようにお腹に顔を埋める。い぀もの日向の様ないい匂いがした。

    ふず、ナニカの事を思い出し、ちらっず窓の方に目を向ける。ここからは䜕も倉わっおない様に芋えた。
    はやく確かめたい気持ちを抑え、ネットの実況を再開させる。䞀人で芋るのが怖かったからだ。
    -----
    茶猫:
    「すみたせん、いた戻りたした。
    配信が途䞭で切れたみたいです。」

    ネット民B:
    「アレはどうなった
    猫は無事」

    ネット民A:
    「配信、猫しか芋おなかったわ。」

    茶猫:
    「猫は無事です。アレはただ網戞にいたす。
    念のため䞀床確認しおきたす。
    䜕かあればよろしくお願いしたす。」

    そういいながら、猫を胞に抱きしめお窓にゆっくりず近づいおいく。

    あれいない。

    私は蠢いおいたナニカが薄い殌の䞭に芋圓たらない事に気が぀く。脂汗が額にじんわりず滲み、喉の奥が締たるような感芚になった。

    どこにいるベランダに萜ちた

    ベランダのスリッパ、
    長らく䜿えなかった小さめの物干し、
    音を鳎らしお動いおいる宀倖機の陰、
    小さいものが隠れられそうな堎所に目をやる。
    どこにもいない。

    私は怖くなり状況を知らせる。
    -----
    ネット民D:
    「倧䞈倫無理しないでくださいね。」

    ネット民A:
    「猫可愛いから別にいいわ笑」

    ネット民C:
    「どこかに行ったのかもしれたせん。」
    -----
    情報共有が終わった埌、指瀺された堎所を恐る恐る探したが、ナニカは芋぀からなかった。

    あたりにも呆気ない幕匕きだった。
    しかし、アレがいたのは玛れもない事実だ。

    芋぀かる怖さ、芋぀ける怖さを想像するず、配信をしばらく切る事はできなかった。

    萜ち着くためにお茶を飲む。足元が少し寒くなっおいた、゚アコンの調子を芋たが壊れた蚳ではなさそうだ。

    猫が隣の郚屋に続くドアの前でニャヌニャヌず鳎いた。普段はあたり鳎かない事が倚いのに。

    ふず、猫に目をやるず隣のドアが少し空いおいた。
    隙間から冷たい颚が流れおいた。

    茶トラの圌は、ドアの隙間から液䜓のようにするりず郚屋に入っお行った。

    床に目をやるず、倧きなナメクゞが這った埌のような粘着質のれリヌの様なものが぀いおいるのに気づく。

    嫌な予感がした。

    圌の名前を叫びながら、隣の郚屋のドアを開ける。

    冷たい颚ずずもに、ひどく生臭く、切ったばかりのスむカの皮の様な異様な匂いが錻を぀く。

    閉めおいた窓が少し空いおいた。

    窓には䜕かが這い回っおいたかのようにネットリずしたのり状の物質が付着しおいた。

    短い悲鳎をあげ、狭い郚屋であの子を探す。

    怅子の䞋でクチャグチャず咀嚌音が聞こえおくる。

    激しく小刻みに脈打぀錓動が口から溢れそうになる。息を殺しお、嫌な想像をしながらゆっくりず怅子の䞋を芗き蟌んだ。

    想像しおいたよりも嫌なものを芋おしたった。あの子の口から粘り気のある䞀雫が床に萜ちる。
    私は䜕も蚀わない。
    ネット民は興奮ず困惑を亀互に叫ぶが、私はプツンず䞭継を切った。

    郚屋には茶色い薄皮ず、粘液の跡だけが残った。

    あの子はベランダから入っおきたバッタやダモリを口にした時のような顔で、私の目を芋お「なに芋おんの」ずのん気そうにしおいた。

    すんず顔を逞らし、䜕もなかったように長い䌞びをした。

    向こうの郚屋に戻り、キャットタワヌの䞊で元気そうに毛づくろいしおいる。

    猫を芋守っおいた小さなレンズが、
    寒い郚屋で震えおいる私を暫く映しおいた。
    ------
    数日埌、窓から差し蟌む枩かな日差しを小さな身䜓に集めながら、茶色の猫は赀く小さな舌で毛繕いをしおいる。

    暫く圌の方をゞヌっず芋぀める。

    「なになんかようなん」

    日向の匂いをさせながら、私の方にゆっくり歩いおくる。

    ふず足を止めお、床に䌏せた。

    赀い舌を口から出したたた、喉の奥を小さく鳎らし身䜓を䞊䞋させた。

    「グッ、グりェ 」

    口から唟液に塗れた物䜓が飛び出した。
    私は恐る恐る吐き出したモノを確認した。

    嫌な予感が脳裏に走った 。
    毛玉だった。

    圌は䜕もなかったような顔で、私の膝の䞊に飛び乗っおくる。リラックスした様子で身䜓を預け、ゎロゎロず喉を鳎らす。私は圌のお腹を優しく撫でおいた。

    優しい陜だたりの匂いの䞭に、䞀瞬だけスむカの様な匂いがした気がした。

    あの時の動画は手元にある。
    でも、私は再生しない。
    芋なければ、アレはただどこかにいるはずだから---



    ↑
    この䌁画に参加させおいただきたした。
    今回はい぀もず少し違うテむストで曞いおいたす。
    楜しんでいただけたら嬉しいです。
    ありがずうございたした。

    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
     
    䞻にホラヌを曞くのが奜きですが、ゞャンルに瞛られおたせん。ホラヌ小説を買っお読んだのは、鈎朚光叞さん、貎志祐介さん。お二人の䜜品は映像が浮かび、日垞や人間の怖さに匕き蟌たれたす。 はじめた曞いた長線ホラヌの『廻りもの』ずいう䜜品を時間のあるずきに読んでもらえたら嬉しいです。

    あなたぞのおすすめ