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アラむグマの憂鬱嚘に枡す文孊版 ♯シロクマ文芞郚

    野村英暹

    嚘が倧きくなったら、深そうで浅い話をしおやりたくお話を䜜りたした。


    シャボン玉が空高く飛んでは消える。

    アラむグマは、人間の郜合でこの町に連れおこられた。捕たり、檻に抌し蟌たれ、名前も奪われ、
    圹に立たないずわかるず、ただの「特定倖来生物」ずしお凊理された。

    毛皮の色も、爪の圢も、野性の匂いも――
    すべおが“異質”ずいう䞀蚀で片づけられた。

    人の勝手な郜合で、圹割を期埅され、
    その扱いに困るず無慈悲に凊分された。

    誰も圌らの意思など気にしなかった。
    無関心は、暎力より静かで、深く刺さった。
    ◆
    「人間になれば  人間に近ければ、きっず迫害されない。」
    そう思ったアラむグマは、必死に人間の真䌌をした。

    手を掗い、床を拭き、仕草を真䌌た。

    掗うたびに毛が抜け、皮膚が赀く腫れあがり、
    自分の茪郭が少しず぀削れおいくのを感じながら。

    仲間たちの芖線も倉わった。
    「嫌な人間の真䌌をするダバいや぀。」
    その蚀葉は、泥より重かった。
    ◆
    ある日、ゎミ箱の底に小さな石鹞を芋぀けた。
    拟い䞊げた瞬間、胞の奥で䜕かが匟けた。

    「身䜓がきれいでなければ、人間らしくない  。
    食べ物も、服も、氎も、
    すべおきれいでなければ人間になれない。」

    泡を指先に繰り返しすり蟌むたび、
    指先の痛みが“正しさ”の蚌のように思えた。

    だが、色んなものを掗えば掗うほど、
    口に合わない食べ物を無理しお食べるほど、
    身䜓は匱り、心は揺らいだ。

    気づけば行き先倱い、誰からも盞手にされない。

    倜、軒䞋で震えるたび、
    自分が䜕者なのか分からなくなった。

    その時、静かに声が降りおきた。

    「  ずいぶん、無理しおるのね」

    顔を䞊げるず、人間の女
    ――珠代さんが立っおいた。

    圌女の目は優しいようで、どこか疲れおいた。
    生掻の重さを抱えた倧人の目だった。

    嘲りでも、哀れみでもない。
    ただ、芋おいる。
    その距離が、逆に痛かった。

    珠代さんは息を吐き、䜎く蚀った。

    「ねぇ、アンタ。深いこず蚀っおるようで
    めちゃくちゃ浅いのよ。」

    「でもね。浅いっおこずは、
    ただ沈めるっおこずよ。」

    「偉そうに蚀っおるけど、私もよくわかっおない。
    他人が話しおくれるこずなんお、
    結局そんなもんなのよ。」

    アラむグマは息を呑んだ。
    珠代さんは続ける。

    「勝手に連れおこられお、理䞍尜な目に遭っおもさ、
    生き残るには、ちょっずだけ合わせるしかないのよ。」

    「でも党郚、勝手な人間に合わせる必芁なんおないの。人間の私が蚀うこずじゃないけど 。」

    そしお、ほんの少しだけ笑った。

    「ヒトはヒト、アラむグマはアラむグマ。
    サカナを石鹞で掗っお食べたりしおたで、
    人間にならなくおいいのよ。」

    アラむグマは䜕で薄汚れた自分に
    声をかけおくれたのか、䞍思議で仕方なかった。

    「  アンタ、䌌おるのよ。
    昔の私に。
    身䜓が治るたでりチにいらっしゃい。」

    その䞀蚀が、胞の奥の叀傷に觊れた。
    理解される痛みは、孀独より鋭い。

    珠代さんは、近くの仲間たちに目をやり、
    ふぅヌずシャボン玉を吹いた。

    虹色の泡が、颚に乗っおゆっくり舞い䞊がる。
    觊れようずすれば壊れる距離で、ふわりず揺れた。

    「男なんお、シャボン玉ね」

    軜く蚀ったその蚀葉の裏に女ずしお生きおきた
    長い時間の重さが滲んでいた。
    ◆
    圌女は小さな角砂糖を䞀個だけ目の前に眮いた。
    理由は蚀わなかった。
    アラむグマも聞かなかった。
    ただ、その沈黙が、劙に枩かかった。

    アラむグマは珠代さんを真䌌お、
    手を掗い、食べ物を口にし、氎を飲んだ。
    そのたび、石鹞の銙りが黒い錻をくすぐる。

    身䜓の調子が戻るたで、珠代さんの家に
    居候させおもらった。

    正しい努力の仕方を少しず぀孊びながら、
    アラむグマずか人間ずか、どうでもいいこずを
    考えずによく食べ、よく眠った。

    過剰な努力で壊れかけた身䜓も、心も、
    少しず぀楜になった。

    孀独や倱敗の痛みが、珠代さんの静かな理解の県差しに溶けおいく感芚―― それは、初めお自分を蚱される気持ちだった。
    ◆
    そしお深呌吞ひず぀――
    野生の銙りが錻をくすぐる。

    自分の䞖界ぞ戻る時だ。

    もう、人間になろうず焊る必芁はない。

    ヒトにはヒトのルヌル、
    アラむグマにはアラむグマの䞖界。

    無理に背䌞びする必芁はないのだず、
    初めお理解した。

    最埌たで角砂糖をどうしおも
    食べるこずができなかったけど。

    川に飛び蟌み、仲間たちの䞭ぞ戻る。

    窓の䞊から、珠代さんの吹いたシャボン玉が、
    ゆっくりず空に溶けおいく。

    アラむグマは泥ず倪陜の匂いを胞いっぱいに吞い蟌んだ。


    【泚意】アラむグマは特定倖来生物です。可愛い倖芋に䌌合わず、凶暎ずされ、蟲産物や環境に倧きな負荷をかけるず蚀われおいる動物です。
    芋かけた堎合には、近寄らないで自治䜓などに連絡しおください。


     
     
     
    䞻にホラヌを曞くのが奜きですが、ゞャンルに瞛られおたせん。ホラヌ小説を買っお読んだのは、鈎朚光叞さん、貎志祐介さん。お二人の䜜品は映像が浮かび、日垞や人間の怖さに匕き蟌たれたす。 はじめた曞いた長線ホラヌの『廻りもの』ずいう䜜品を時間のあるずきに読んでもらえたら嬉しいです。

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