ヒップホップしたい
桃子「はるかー。私、本当はビーガールになりたかったの」
アイ「おっ、漫才ですか?」
桃子「違うよ」
はるか「いいですね☆ 今度の新曲、ヒップホップにしますか!」
桃子「こないだ対バンした文具ちゃん、超可愛かったじゃん。私もあんな感じになりたい」
※文具ちゃん。
正式には、MC文具&DJ日用品。
うちの店の文具担当、大学生の文子(あやこ)ちゃんと、我らがFCSのはるか嬢によるヒップホップユニットである。
名前だけ聞くと、だいぶホームセンターだ。
多分、名付けたのはあのパンチパーマだと思う。

トモ「あやちゃん、おしゃれで可愛いもんねー」
桃子「そう! 私も悪い奴と友達になりたいし、港区のクラブで踊りたい」
はるか「ヒップホップの解像度が古いんですよね」
アイ「そもそも桃さん、怖い人も人混みも嫌いじゃないですか」
桃子「でも、ビーガール桃子ならいける気がする!」
はるか「じゃあ、文具ちゃんの新曲、FCSでやっちゃいましょうか☆」
桃子「いいの? ありがとう! はるえもん!」
はるか「私、わさびじゃないですよ」
トモ「のぶよ?」
はるか「ちょっと何言ってるかワカリマセン」
FCSヒップホップに挑戦!
はるか「とゆーわけで、FCSヒップホップに挑戦ってことで、今日は講師をお呼びしました☆ 文具ちゃんです! パチパチ」
桃子「わぁー! 本物だぁー☆ 女子大生だー! ラッパーだー!」
文子「桃子さん、毎日お店で会ってるじゃないですか……」
アイ「先生! どうやってラップ作ったらいいですか?」
トモ「唐突だし雑だね」
文子「私なんかは、ライムとかフロウとか一旦無視して、一日の出来事とか、何気ないことをリリックに落としてますね」
桃子「すごーい。何にも分からない」
はるか「歌い方より、日常で起きたことを歌詞にするって言ってますよ」
アイ「すごーい。分かりやすーい」
文子「例えば最近だと……こないだ友達と調子乗って遊んでたら、終電乗り過ごしちゃって。朝まで知らない街を探検して遊んでたんすよ」
桃子「なになに?」
文子「?」
桃子「その友達って、もしかしてメンズ?」
はるか「桃子さん、それセクハラですよ」
桃子「ごめんなさい」
はるか「それで、アヤちゃんどうなの?」
桃子「お前も聞くんかい」
文子「いや、男友達っすけど。そんな感じじゃないっすよ。ノリが合うっていうか、一緒にいてラクみたいな。弟みたいな感じっすね」
桃子「いいなー! いいなー! 私も終電逃して異性の友達と朝まで探検したい! 青春だなぁー」
アイ「桃子さん、こないだ終電逃して漫喫で『ガラスの仮面』読んでるって連絡くれたじゃないっすか」
桃子「あれは青春じゃない」
トモ「朝までやってるお店探して飲んでればいいのに」
はるか「ダメだ、この人たち」
こうして、女子大生によるラップ講座は、いつの間にか女子大生の恋バナを聞く会になった。
ライムもフロウも結局よく分からなかった。
ただ、文子ちゃんの話はなんだか楽しそうだった。
終電を逃した夜。
知らない街。
友達以上でも恋人でもない二人。
朝まで意味もなく歩いて、コンビニに寄って、くだらない話をする。
なるほど。
こういう何気ないことを歌にするってことか。
桃子「はるか!」
はるか「はい?」
桃子「なんか分かった気がする」
はるか「ラップが?」
桃子「青春が」
はるか「ラップを学んでください」
とゆーわけで、終電を逃した男女の友情を描いた曲が出来た☆
※音が出ます。ボリュームに注意⭐︎
LAST TRAIN
ねえ
まだ帰らなくてもよくない?
あと一本あるし
たぶん。
23時40分 駅前の交差点
さっきまでいた店 もうシャッター閉まってる
「明日何時?」
「知らない、見てない」
そういうことにして また歩き出す
コンビニの前 買ったアイス半分
溶ける方がちょっと早い九月
行く場所ないし することもない
なのにまっすぐ駅には向かわない
通知が光って
ポケットに戻して
青になった信号
誰も渡らない
「そろそろ行く?」
「んー、どうしよう」
答えないまま
曲がり角を曲がる
明日になれば
またいつもの朝
だから今は
時計を見ないで
もう少しだけ
もう少しだけ
遠回りして帰ろうよ
Take me somewhere
行き先なんてなくていい
この夜が終わるその前に
もう少しだけ遠くまで
Take me somewhere
最終電車が来る前に
名前も知らないこの道を
君と歩いていたい
まだ帰らないで
0時03分 ホームまで三分
走れば間に合う たぶん余裕
改札の前で立ち止まって
電光掲示板 あと二分
「走る?」
「……やめよっか」
なんか笑って
それだけで決定
発車のベルが遠くで鳴って
銀色の電車が夜に消えてく
やっちゃったね
明日どうする?
タクシー高いし
始発は遠いし
検索画面を閉じた君が
「じゃあ朝まで遊ぼっか」
……それもいいね
予定なんてない
理由だってない
こんな夜くらい
それでいいじゃない
もう少しだけ
もう少しだけ
知らない街まで行ってみよう
Take me somewhere
行き先なんてなくていい
街灯だけを追いかけて
知らない道を選んでく
Take me somewhere
最終電車はもう行った
明日のことは明日になって
考えればいいから
まだ帰らないで
午前一時
自販機のコーヒー
午前二時
誰もいない公園
午前三時
くだらない話
午前四時
ちょっと眠くなる
特別なことなんて
何ひとつなかった
写真に撮るような
景色でもなかった
なのにたぶん
何年か経ったら
こういう夜を
思い出すんだろうな
ねえ
空、ちょっと明るくない?
……ほんとだ。
Take me somewhere
行き先なんてなくていい
夜と朝の隙間を抜けて
もう少しだけ遠くまで
Take me somewhere
始発電車が動き出す
昨日みたいな今日だけど
少しだけ違って見える
もう帰らなくちゃ
でも
また連れてってよ
5時12分
反対側のホーム
「じゃあね」
「またね」
ドアが閉まる
またね。
爽やかすぎて、桃子は3日間寝込みました。
そして桃子は、ヒップホップを学んだことなどすっかり忘れました。
ライブでは好き勝手に歌い、好き勝手に動き、
はるかに怒られました。
でも、
「……悪くないかも」
ということで。
今ではすっかり、FCSライブの定番曲になりましたとさ。
おしまい☆
シルバーウィーク音楽ネタ企画!
明日もバンド記事、連投します☆
明日以降は未定です。
お楽しみに☆
