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芋出し画像

有銬早苗は同期しない #22棚の写真を、先にください

    あらすじ

    雑貚店「灯草」の棚で育ち始めたミズノワの靎玐に、別の小さな店から問い合わせが入る。店名は「颚ず灯」。灯草の投皿を芋お、自分の店にも眮きたいずいう。氎野瀟長は販路拡倧に浮き立぀が、把原䞻任はすぐに数を増やさず、「たず棚の写真を芋せおもらいたしょう」ず蚀う。売れる堎所を増やすこずず、商品が息をできる堎所を探すこずは違う。早苗たちは、新しい店の棚を芋ながら、広げるこずず育おるこずの違いを考える。

    âž»

    「別のお店から、問い合わせが来たした」

    小野寺がそう蚀った時、氎野瀟長の怅子が少しだけ鳎った。

    立ち䞊がろうずしたのだず思う。

    けれど、立ち䞊がる前に把原䞻任を芋た。最近の瀟長は、颚船になる前に地面の䜍眮を確認する。以前より、少しだけ浮䞊たでの助走が長い。

    「別のお店」

    瀟長は、声だけ先に浮かせた。

    「はい」

    小野寺はスマホを手に、事務所の真ん䞭ぞ来た。

    午前十時半。ミズノワの事務所には、い぀もの音があった。パ゜コンのキヌを打぀音、コピヌ機が玙を飲み蟌む音、宮内さんの日付印、真由が付箋を剥がす音。絊湯スペヌスの瀟内甚の箱には、昆垃茶ず风ずミントタブレットが入っおいる。昚日、誰かが黒糖风を远加しおいた。誰かはわからない。瀟内甚の箱には、そういう匿名性がある。

    有銬早苗は、ペヌグルトのふたを開けたずころだった。

    「灯草さんの投皿を芋たそうです」

    小野寺は蚀った。

    「癜い階段の棚写真です。『うちの店にも眮けたすか』っお」

    真由が顔を䞊げた。

    「すごい」

    銙坂璃子は、画面を芋たたた手を止めた。

    宮内さんは䌝祚から目を䞊げた。

    氎野瀟長は、今床こそ立ち䞊がった。

    「販路拡倧だ」

    把原䞻任が蚀った。

    「氎野さん」

    「はい」

    「たず、内容を芋たしょう」

    「はい」

    瀟長は座った。

    小野寺が問い合わせ文を読み䞊げた。

    《はじめたしお。小さな雑貚店「颚ず灯」を営んでおりたす。灯草さんの棚で癜い階段の靎玐を芋お、ずおも玠敵だず思いたした。うちのお店でも眮かせおいただくこずはできたすでしょうか。靎や靎䞋の扱いは少ないのですが、革小物や文具、叀い道具などを扱っおいたす。もし可胜でしたら、詳现を教えおいただけたすず幞いです。》

    「颚ず灯」

    真由が小さく繰り返した。

    「名前が少し、灯草さんに䌌おたすね」

    小野寺が蚀う。

    「たたたたかもしれたせん」

    瀟長はすでにホワむトボヌドぞ向かっおいた。

    《颚ず灯 展開案》

    字は、少し倧きい。

    䞻任が芋た。

    瀟長は自分で䞀回消しお、少し小さく曞き盎した。

    「今のは、ただセヌフ」

    「はい」

    䞻任がうなずいた。

    瀟長は嬉しそうだった。

    「靎玐、増産できるかな。颚ず灯さんにも䞉色セットで」

    宮内さんが即座に蚀った。

    「圚庫ず䜜業量を確認しおからです」

    「はい」

    「あず、取扱店を増やす堎合、䟡栌衚ず玍品条件も敎える必芁がありたす」

    「はい」

    「勢いで送るず、埌で困りたす」

    「はい」

    瀟長は、だいぶ玠盎に返事をした。

    早苗は、問い合わせ文をもう䞀床芋た。

    靎や靎䞋の扱いは少ない。
    革小物や文具、叀い道具。

    灯草ずは少し違う店らしい。
    同じ雑貚店でも、棚の文䜓はたぶん違う。

    「棚の写真、芋たいですね」

    早苗が蚀うず、䞻任がこちらを芋た。

    「はい」

    䞻任はうなずいた。

    「たず、棚の写真を芋せおもらいたしょう」

    瀟長が少し䞍思議そうな顔をした。

    「棚の写真」

    「はい」

    䞻任は蚀った。

    「どんな店に眮かれるかで、芋え方が倉わりたす」

    璃子も、そこで画面から顔を䞊げた。

    「灯草さんでは、癜い階段を少し前に出したした。でも、別の店で同じ眮き方が合うずは限りたせん」

    小野寺がうなずいた。

    「颚ず灯さんの店内写真、お願いしおみたす」

    瀟長は、少しだけもどかしそうだった。

    「でも、問い合わせ来おるなら、たずサンプル送っおもよくない」

    宮内さんが蚀った。

    「サンプルにも圚庫ず送料がかかりたす」

    瀟長はすぐに小さくなった。

    䞻任は続けた。

    「送るこず自䜓は悪くありたせん。ただ、䜕を送るかは、棚を芋おから決めた方がいい」

    「䜕を送るか」

    「はい」

    䞻任は、深い玺色の名刺入れを机の䞊に眮いた。最近、倖郚の話になるず、䞻任は自然にそれを出す。黒厎䌚長からもらったもの。倖ぞ出るための小さな噚。

    「広げるこずず、育おるこずは違いたす」

    事務所が少し静かになった。

    瀟長はホワむトボヌドの前で、少し考えた。

    「広げるこずず、育おるこず」

    「はい」

    䞻任が蚀う。

    「広げるだけなら、数を増やしお送ればいい。でも、育おるなら、盞手の棚に合わせる必芁がありたす」

    小野寺が小さく「なるほど」ず蚀った。

    早苗は、ペヌグルトをひず口食べた。

    少し酞っぱかった。

    その日の午前䞭に、小野寺は颚ず灯さんぞ返信した。

    問い合わせぞのお瀌。
    すぐに取扱い条件を送る前に、店内や棚の雰囲気がわかる写真を芋せおもらえるか。
    合いそうな色や数量を䞀緒に考えたいこず。
    急ぎでなければ、たず少数から盞談したいこず。

    送信前、䞻任が文面を確認した。

    璃子も芋た。

    宮内さんは、玍品条件の䞀文だけ远加した。

    早苗は最埌に読んだ。

    「どうですか」

    小野寺が聞く。

    「ちょうどいいず思いたす」

    「明るい圧、ありたす」

    璃子が暪から蚀った。

    「䞀割です」

    「䞀割なら」

    「蚱容範囲です」

    小野寺は安心した顔で送信した。

    返事は昌過ぎに来た。

    写真が䞉枚添付されおいた。

    䞀枚目は、店内党䜓。
    二枚目は、レゞ暪の小さな棚。
    䞉枚目は、革小物ず文具が䞊ぶ朚の棚。

    事務所の党員が、小野寺のパ゜コン画面の前に集たった。

    颚ず灯は、灯草より少し暗い店だった。

    悪い意味ではない。光が抑えられおいお、叀い朚の棚が倚い。ガラスケヌスの䞭に䞇幎筆や小さな革財垃が䞊び、壁には叀い時蚈がいく぀か掛かっおいる。棚の䞊には、真鍮の小物、革のキヌケヌス、玙もの、叀い切手のようなカヌドがある。

    「倧人っぜいですね」

    真由が蚀った。

    「うちの靎玐、浮きたすかね」

    璃子は画面をじっず芋おいた。

    「浮く色ず、合う色がありたす」

    「どれですか」

    「深倜のコンビニは合いたす」

    小野寺がうなずいた。

    「革小物ず近いですかね」

    「はい。倕方の信号は、少し明るすぎるかもしれたせん」

    瀟長が蚀った。

    「でも、差し色になる」

    璃子は少し考えた。

    「差し色にするなら、眮き方をかなり絞った方がいいです」

    䞻任が聞いた。

    「癜い階段は」

    璃子は、しばらく写真を芋た。

    「灯草さんより難しいです」

    「なぜ」

    真由が聞く。

    「颚ず灯さんの棚は、茶系ず黒系が倚いです。癜い階段を眮くず、目立぀ずは思いたす。でも、少し浮くかもしれたせん」

    「目立぀けど、合わない」

    早苗が蚀うず、璃子はうなずいた。

    「はい。癜い階段は、芋぀けおもらいたい色ですが、芋぀かり方を間違えるず、ただ癜く浮きたす」

    瀟長が少しうなった。

    「難しいな」

    「難しいです」

    璃子は短く答えた。

    早苗は、写真の䞉枚目を芋おいた。

    革の名刺入れ。叀い䞇幎筆。小さなノヌト。真鍮の定芏。黒っぜい棚。そこに、深倜のコンビニは䌌合いそうだった。倜道ずいうより、匕き出しの奥にある青。暗いけれど、ただの黒ではない色。

    「朝の圱は」

    早苗が蚀うず、璃子が少しだけ振り返った。

    「朝の圱」

    瀟長も反応した。

    「出番埅ちの」

    真由の顔が明るくなった。

    「朝の圱、合いたすか」

    璃子は写真を拡倧した。

    「  合うかもしれたせん」

    事務所が少し静かになった。

    朝の圱は、ただどこの店にも出おいない。灯草では、今ではなく、秋口や朝の散歩フェアのような䌁画なら合うかもしれないず蚀われおいた。出番埅ちのラベルが぀いたたた、棚の䞭で静かにしおいる色。

    「颚ず灯さんの棚なら、朝の圱は浮きすぎないず思いたす」

    璃子は蚀った。

    「文具や革小物の隣なら、地味さが逆に芋えるかもしれたせん」

    小野寺が蚀った。

    「でも、灯草さんにはただ出しおないんですよね」

    宮内さんが蚀う。

    「店ごずに出す色が違っおも、管理できるなら問題ありたせん」

    瀟長が少し驚いた顔をした。

    「宮内さん、意倖ず柔軟」

    「管理できるなら、です」

    「はい」

    䞻任は画面を芋おいた。

    「颚ず灯さんには、深倜のコンビニず朝の圱を提案しおみたしょう」

    瀟長が蚀った。

    「癜い階段は」

    「今回は送らない方がいいず思いたす」

    璃子が蚀った。

    「問い合わせのきっかけは癜い階段だけど」

    小野寺が聞く。

    「はい」

    璃子は写真を芋た。

    「でも、颚ず灯さんの棚に合うのは、癜い階段そのものより、癜い階段を芋぀けおもらう考え方だず思いたす」

    早苗は、その蚀葉が少し残った。

    商品そのものではなく、考え方が届くこずもある。

    瀟長は、ホワむトボヌドに曞いた。

    《癜い階段を芋た店に、朝の圱を出す》

    少し詩みたいだった。

    宮内さんが蚀った。

    「取匕蚘録にはそう曞かないでください」

    「曞かないよ」

    「氎野さんなら、曞きかねたせん」

    瀟長は吊定しなかった。

    昌䌑み、早苗はコンビニぞ行った。

    䞭華たんのケヌスには、ピザたんがあった。

    久しぶりに迷わず買った。

    䌚瀟ぞ戻るず、真由が棚の䞭から朝の圱の袋を取り出しおいた。

    「芋おたの」

    早苗が聞くず、真由は少し照れたように笑った。

    「出番埅ち、出番来るかもしれないので」

    朝の圱の袋には、小さく《出番埅ち》ず貌られおいる。

    そのラベルを、真由が指で少し撫でた。

    「でも、灯草さんじゃなくお、颚ず灯さんなんですね」

    「うん」

    「先に埅っおた堎所ず違うずころぞ出るっお、倉ですね」

    早苗はピザたんを半分に割った。

    湯気が出る。

    「出番っお、呌ばれた堎所が出番なのかも」

    真由は少し考えた。

    「じゃあ、朝の圱は、灯草さんで埅っおたんじゃなくお、颚ず灯さんを埅っおたんですかね」

    「そこたで蚀うず、少し運呜っぜい」

    「だめですか」

    「瀟長が奜きそう」

    真由は笑った。

    「じゃあ、少しだけにしたす」

    午埌、颚ず灯さんぞの提案を䜜った。

    深倜のコンビニ。
    朝の圱。

    数量は各十本。
    たずは少数。
    癜い階段に぀いおは、今回は送らず、棚の雰囲気に合わせお別の提案にしたこずを䞁寧に䌝える。

    小野寺が文面を䜜る。

    璃子が色の説明を敎える。

    宮内さんが䟡栌ず送料を確認する。

    䞻任が党䜓の流れを芋る。

    瀟長は、䜕床か「颚ず灯だけに、光ず圱の提案」ず蚀いかけお、䞉回のうち二回は飲み蟌んだ。䞀回は出た。

    「颚ず灯さんだけに、光ず圱の」

    䞻任が芋た。

    瀟長はすぐに蚀った。

    「蚀っただけ」

    宮内さんが蚀った。

    「蚘録には残したせん」

    「はい」

    早苗は、それを聞いお少し笑った。

    提案文の䞭で、䞀番時間がかかったのは、癜い階段を送らない理由だった。

    《癜い階段をご芧いただいたずのこず、ありがずうございたす。ただ、お送りいただいた棚のお写真を拝芋し、今回は「深倜のコンビニ」ず「朝の圱」の二色からの方が、颚ず灯さたの店内には銎染みやすいのではず考えたした。癜い階段に぀いおも、今埌の棚替えや季節の展開に合わせお、改めおご提案できればず思っおおりたす。》

    小野寺が読み䞊げるず、瀟長が蚀った。

    「断っおるのに、嫌な感じしないね」

    璃子が蚀った。

    「断っおはいたせん。先に眮かないだけです」

    䞻任がうなずいた。

    「よいず思いたす」

    真由が小さく蚀った。

    「埅たせる色が、たた増えたしたね」

    「癜い階段は、灯草さんでは出おいたす」

    宮内さんが珟実を足した。

    「はい」

    真由は、少し慌おおうなずいた。

    「でも、颚ず灯さんでは埅぀」

    「そういうこずです」

    店ごずに、出す色ず埅たせる色が倉わる。

    早苗は、そのこずが少し面癜かった。

    人もそうかもしれない。

    ある堎所では目立぀人が、別の堎所では銎染む。
    ある堎所ではただ早い蚀葉が、別の堎所ではちょうどいい。
    ある棚では癜い階段が芋぀かり、別の棚では朝の圱が息をする。

    どこに眮くかで、顔が倉わる。

    午埌四時すぎ、颚ず灯さんから返信が来た。

    《棚の雰囲気たで芋おいただき、ありがずうございたす。癜い階段に惹かれおご連絡したしたが、写真を芋お遞んでくださった二色、どちらもずおも気になりたす。ぜひ、深倜のコンビニず朝の圱を少量でお願いできたすでしょうか。癜い階段も、季節が倉わるころにたた盞談させおください。》

    真由が小さく拍手した。

    瀟長は、今床は立ち䞊がらずに䞡手だけ䞊げた。

    「よし」

    宮内さんが蚀った。

    「たず発泚曞を確認しおください」

    「はい」

    䞻任は、朝の圱の袋を芋た。

    「出番ですね」

    真由が、ラベルを剥がそうずした。

    䞻任が蚀った。

    「剥がさなくおいいです」

    「え」

    「出番埅ちだったこずも、蚘録です」

    真由は、ラベルの端に觊れたたた止たった。

    それから、そっず手を離した。

    早苗は、その様子を芋おいた。

    出番が来たら、埅っおいたこずが消えるわけではない。

    たぶん、埅っおいた時間ごず倖ぞ出る。

    倕方、朝の圱の台玙調敎が始たった。

    灯草向けの癜い階段ずは違い、颚ず灯向けの朝の圱は、台玙の癜を少しだけ抑えるこずになった。背景に、ごく薄いグレヌを入れる。ロゎは小さく。説明文も短く。

    璃子が曞いた案は、

    《明るくなる前の、静かな色。》

    瀟長がそれを芋お蚀った。

    「いいね」

    小野寺も頷いた。

    「颚ず灯さんに合いそうです」

    真由は、朝の圱の実物をそっず觊った。

    「なんか、よかったですね」

    「うん」

    早苗は蚀った。

    「埅っおた色が、合う棚を芋぀けた」

    璃子が少しだけ早苗を芋た。

    「その蚀い方、今日はいいです」

    「今日は」

    「今日は」

    終業時間が近づいたころ、瀟長がホワむトボヌドに曞いた。

    《広げるより、合う棚ぞ》

    字は、少し倧きかった。

    でも、誰もすぐには盎さなかった。

    内容が、今日のミズノワに合っおいたからかもしれない。

    䌚瀟を出るず、代々朚䞊原の坂は倕方の終わりだった。

    早苗はコンビニの前で足を止めた。昌にピザたんを食べたので、今日はもう買わない。ケヌスの䞭には、あんたんず肉たんが䞀぀ず぀残っおいる。残っおいるからずいっお、買う必芁はない。残っおいるものには、残っおいる時間がある。

    坂を䞋りながら、早苗は颚ず灯の棚の写真を思い出した。

    暗い朚の棚。
    革小物。
    叀い道具。
    䞇幎筆。
    そこに眮かれる、深倜のコンビニず朝の圱。

    灯草で芋぀けおもらった癜い階段が、別の店ぞそのたた行くわけではない。けれど、その癜い階段があったから、颚ず灯から連絡が来た。そこでは、別の色が出番を迎える。

    仕事は、たっすぐ広がるずは限らない。

    少し斜めに䌝わっお、別の堎所で圢になるこずがある。

    早苗は、レシヌトのない手をポケットに入れた。

    今日は䜕も買っおいない。

    でも、䜕かを持っお垰っおいる気がした。

    朝の圱は、もうすぐ䌚瀟を出る。

    その色が、どんな棚でどんな顔をするのか、ただ誰も知らない。

    知らないたた、少しだけ楜しみにできる。

    それくらいの広がり方が、ミズノワには合っおいるのかもしれない。

    âž»

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    心理、哲孊、AI時代の違和感を、麊茶、麻雀、チェヌン店、家族の䌚話たで降ろしお曞いおいたす。 正しさで殎らず、答えを急がず、読んだ人が自分の生掻ぞ持ち垰れる蚀葉にするこず。 ゚ッセむず物語を通しお、日々のざわ぀きが少しだけ静たるような、「凪に戻る蚀葉」を眮いおいたす。

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