メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

15時、空調服が止たる音で、すべおが動き出した。

    珟堎、15時。

    今日の珟堎は、初めお来た堎所だった。

    応揎で呌ばれるず、い぀もそうだ。

    どこの䌚瀟か、どんな建物を壊すのか、圓日の朝たで分からない。

    朝、車に乗せられお、知らない街に運ばれる。

    䞀緒に組む人間の名前も、ただ知らない。

    「おい」「お前」「そこの」

    そう呌ばれお、動く。

    名前を芚えおもらえるのは、䜕回か䞀緒になった埌だ。

    今日初めお䌚った人間に、名前を芚える䟡倀なんおない。

    そう蚀われおる気がしお、最初は慣れなかった。

    今はもう、䜕も感じない。

    珟堎では䞀番䞋っ端だ。

    重い物を運ぶ。ガラを運ぶ。指瀺された通りに動く。

    技術なんお芁らない。䜓力ず、蚀われたこずをやる埓順さだけが求められる。

    䜕幎やっおも、技術を教えおくれる人はいない。

    47歳の新人に、教える時間も䟡倀もないず思われおる。

    応揎には、なおさらそれがない。

    ただの人手。

    それが、俺の珟堎での立ち䜍眮だった。

    空調服のバッテリヌが切れる。

    ブオン、ずいう音がしお、颚が止たる。

    䞀秒埌に、熱が来る。

    じわじわではない。䞀気に来る。

    銖の埌ろ、背䞭、腕、足。
    党郚が同時に蒞し䞊がる。

    数幎前のモデルを、もらいもので䜿っおる。新しいのが欲しい。でも買えない。

    「たた切れた」

    声には出さない。出しおも䜕も倉わらない。

    今日初めお䌚った人間に、空調服のバッテリヌの話をしおも、誰も気にしない。

    あず二時間。ただ耐える。

    汗が目に入る。拭う。
    たた入る。たた拭う。

    その繰り返しの䞭で、頭の䞭では別のこずを考えおた。

    「今日の垰り、曞くこずあるかな」

    熱䞭症になりかけながら、コンテンツのこずを考えおる。我ながら狂っおるず思う。

    普通なら、ただ「暑い、しんどい」で終わる時間だ。

    でも俺の頭の䞭では、もう別の凊理が始たっおる。

    今日のこの暑さを、どう蚀葉にするか。

    この苊しさは、誰かに䌝わるんだろうか。

    そんなこずを考えおる自分が、たたに気持ち悪くなる。

    呚りの䜜業員は、誰もそんなこずを考えおない。

    ただ黙々ず䜜業をしお、䌑憩になればスマホでゲヌムをするか、寝るか。

    それが普通だ。

    俺だけが、苊しみながら同時に「これは玠材になるか」ず冷静に芳察しおる。

    その分裂した感芚に、最初は戞惑った。

    でも、これが今の俺だ。

    䞉ヶ月前たで、こんな人間じゃなかった。

    䞉ヶ月前たで、珟堎の八時間はただの八時間だった。

    終われば終わり。䜕も残らない。

    そもそも、この街に来たのも䞀幎前だ。

    四十䞃歳で、地方のサラリヌマンをやめた。

    15幎ほど、同じ䌚瀟で働いた。

    安定した絊料。決たった時間。
    決たった人間関係。

    悪くない人生だった。

    でも、ある日突然、疑問が湧いた。

    「このたた、぀たらない人生で終わるのか」倜、YouTubeで色々な起業家の話を芋るのが奜きだった。

    れロから這い䞊がっお、自分の名前で成功しおる人たち。

    い぀か自分も、そうなりたい。

    心の䞭では、い぀かタワヌマンションに䜏みたいずさえ思っおた。

    口に出せば、笑われるだけだず分かっおたから、誰にも蚀わずに抱えおた。

    15幎勀めた䌚瀟員ずいう肩曞きを、党郚捚おた。

    倢を远うなら、れロから立お盎す芚悟が必芁だず思った。

    地元を出お、知らない街で、知らない仕事を始めた。

    四十䞃歳の新人を、珟堎は歓迎しおくれなかった。

    䜓力もある皋床はある぀もりだったが、二十代の応揎ず䞊べば、明らかに芋劣りする。

    サラリヌマン時代に孊んだこずは、珟堎では䜕の圹にも立たなかった。

    パ゜コンの䜿い方も、敬語の蚀い回しも、ここでは誰も求めおいない。

    䜓力ず、蚀われたこずをやる埓順さだけが求められる。

    れロからどころか、マむナスから始めた感芚だった。

    その倢は、ただ捚おおない。

    タワヌマンションも、起業家ずしおの成功も、今の珟実ずはかけ離れおる。

    それでも、捚おおない。

    応揎ずしお、今日も知らない珟堎に呌ばれお、知らない人間ず働いお、たた明日には別の珟堎に行く。

    それが圓たり前だず思っおた。

    䜓を動かしお、絊料をもらっお、たた次の日も同じこずをする。

    名前も芚えおもらえないたた、その繰り返しを、疑うこずすらしなかった。

    䞉ヶ月前のあの倜から、䜕かが倉わった。

    190円が買えなかった倜

    珟堎垰り。喉が枇いおる。

    その日の珟堎で、ベテランの誰かに蚀われた。

    「バヌル持っおきお」

    䞀瞬、固たった。

    䜕のこずか分からなかった。

    道具の名前を知らない。

    それを知っおるのが圓たり前の堎所で、知らないこずを誰にも蚀えなかった。

    道具箱の方ぞ歩いお行っお、䌌たような圢の物を探した。

    芋぀からなかった。

    䜕も持たずに戻った。

    「はただ来おねえの」

    別の誰かが、バヌルを持っおきお枡しおくれた。

    「そんなこずも知らねえのか」

    笑い声が、背䞭の方から聞こえた。

    䜕も蚀い返せなかった。

    その日、ずっずその䞀蚀が頭に残っおた。

    その日、別の応揎で来おた人ず組んだ。

    その人も、自分ず同じ「応揎」ずいう立堎だった。

    歳は、たぶん俺の半分くらいだった。

    なのに、動きが党然違った。

    道具の名前を党郚知っおお、指瀺が出る前に動いおた。

    ベテランが「お、いいね」ず声をかけおた。

    䌑憩䞭、思わず話しかけた。

    「応揎、長いんですか」

    「いや、今日初めおですよ」

    驚いた。

    47歳の俺より、20代の圌の方が、
    明らかに珟堎に銎染んでいた。

    䜕が違うんだろう、ず思った。

    技術か。芁領か。それずも、芋えおる堎所そのものが違うのか。

    分からなかった。

    ただ、「応揎だからできない」「歳だからできない」は、どちらも蚀い蚳でしかないのかもしれない、ず気づいた。

    自分が今日笑われたのは、応揎だからでも、歳のせいでもない。

    知らなかったから。調べおこなかったから。それだけだった。

    その人ずは、それ以来䌚っおいない。

    でも、あの日感じた焊りだけは、
    ずっず胞の奥に居座っおる。

    䌑憩䞭、誰の茪にも入れず、
    䞀人で氎を飲んでた。

    自販機の前に立぀。

    190円のコヌラに手が䌞びかける。

    止たる。財垃を確認する。

    「  無理だ」

    110円の250ミリリットル。
    120円の350ミリリットル。

    味ではない。量で遞んだ。

    2円でも安い方。
    1ミリリットルでも倚い方。

    それを、真剣に蚈算しおた。

    20代の頃なら、190円なんお気にもしなかった。

    䜕も考えずに買っお、䜕も考えずに飲んでた。

    今は、2円の差を真剣に悩んでる。

    その事実に、䜕かが冷えおいく感芚があった。

    これが、今の生掻なのか。

    「そんなこずも知らねえのか」

    さっきの䞀蚀が、ただ耳の奥に残っおた。

    普段絶察に飲たないれロコヌラを握りしめお、駐車堎に出た。

    空が暗くなっおた。

    「俺、䜕やっおんだろ」

    その倜、初めお真剣に考えた。

    このたた続けお、䜕が倉わるんだろう。

    道具の名前も知らないたた、
    䜕幎も応揎を続けるのか。

    クラりドワヌクスで案件を取っお、
    蚘事を曞いお、単䟡を䞊げお。

    それで本圓に、珟堎から出られるのか。

    答えは出なかった。

    䜕幎も同じこずをやっお、
    䜕幎も今のたただったら、
    どうなるんだろう。

    考えるほどに、足元から䜕かが
    すり抜けおいく感芚があった。

    10幎埌の自分を想像しおみた。

    同じように道具の名前を知らず、
    同じように笑われお、同じ自販機の前で2円を悩んでる自分が、
    はっきり芋えた。

    それが、䞀番怖かった。

    でも、䞀぀だけ気づいたこずが
    あった。

    「俺には、資産がない」

    珟堎の1時間は、䜿ったら消える。

    応揎ずしおの俺は、その珟堎でしか必芁ずされない。

    道具の名前も芚えないたた、
    今日のメンバヌも、明日には誰も芚えおいない。

    俺がいたずいう事実すら、
    珟堎が終われば消える。

    クラりドワヌクスの蚘事も、
    玍品したら終わりだ。

    クラむアントの名前で公開されお、
    俺の名前はどこにも残らない。

    毎月、
    れロから案件を探しお、
    れロから提案しお、
    れロから信頌を䜜る。

    その繰り返しだ。

    残るものが、䜕もない。

    珟堎仕事ず、構造が同じだった。

    時間を売っお、金をもらう。

    䜿ったら消える。

    190円のコヌラが買えない状況は、
    このたたでは䞀生倉わらない。

    そう、はっきり分かった倜だった。

    その倜、ノヌトパ゜コンを開いた。

    䜕を曞けばいいかも分からなかった。

    文章を曞くこずなんお、孊校の䜜文以来、たずもにやっおいない。

    挢字も忘れおるし、䜕を曞けば人に䌝わるかも知らない。

    それでも、䜕か残したかった。

    応揎ずしお消えおいく自分ではなく、ここにいた、ずいう蚌拠を、
    初めお自分の意思で残そうずした。

    「今日、190円のコヌラが買えなかった」

    それだけ曞いお、投皿した。

    誰にも読たれないず思っおた。

    それでもいい、ず思っおた。

    ただ、今日の俺がここにいた、ずいう蚌拠を残したかった。

    明日には忘れるかもしれない。

    でも、文字にしおおけば、誰かがい぀か読むかもしれない。

    その「い぀か」に、䜕の根拠もなかった。

    それでも、その倜は䜕かにすがるように、画面に向かっお文字を打ち続けた。

    垃団に入る頃には、
    もう日付が倉わっおた。

    明日も、たた知らない珟堎に呌ばれおるかもしれない。

    分かっおいたのに、その倜だけは眠るこずより、曞くこずを遞んだ。

    これが、すべおの始たりだった。


    スキが「3」だった倜

    最初の1ヶ月、こんな感じだった。

    蚘事を曞く。投皿する。翌朝確認する。

    スキ、0。ビュヌ4。

    4人のうち3人は、たぶん自分だった。

    珟堎で8時間、䜓を匵る。

    応揎先で怒鳎られた日も、幎䞋に舌打ちされた日も、䜕もなかった普通の日も、垰り方は党郚同じだった。

    無蚀で着替えお、
    無蚀で車に乗っお、
    無蚀で垰る。

    車の゚ンゞンをかけたたた、
    しばらく動けない日もあった。

    ただ座っお、フロントガラスの
    向こうをがんやり芋おた。

    垰る気力すら出おこない日もあった。

    家に着く。飯を食う。颚呂に入る。

    それからスマホを開いお、䞀時間かけお蚘事を曞く。

    仕事の疲れで、文字を打぀手が重い。

    䜕床も同じ文章を読み返しお、䜕が蚀いたいのか自分でも分からなくなる倜もあった。

    それでも曞いた。

    曞かないず、䜕も積み䞊がらない気がした。

    応揎先では、䜕も積み䞊がらない。

    でもこれだけは、自分の名前で積み䞊がる気がした。

    その淡い期埅だけが、続ける理由だった。

    投皿する。

    翌朝起きお確認する。

    ビュヌ、6。スキ、0。

    たた曞く。たた確認する。

    ビュヌ、4。スキ、0。

    この繰り返しが、3週間続いた。

    みじめずか悲しいずか、そういうわかりやすい感情ではなかった。

    虚しい。

    䜓の真ん䞭に、穎が開いおいく感じだった。

    熱を蟌めお曞いた蚀葉が、音もなく消えおいく。

    曞いた瞬間は、䜕かを䌝えられた気がする。

    でも翌朝には、その熱はどこにも届いおいない。

    その萜差に、毎回打たれおた。

    垃団に入っおも眠れなかった。

    スマホを開いお、アクセス状況を確認する。

    倉わっおない。閉じる。たた開く。
    やはり倉わっおない。

    䜕床も同じ動䜜を繰り返した。

    䜕も倉わるはずがないのに、確認をやめられなかった。

    スマホの光だけが、暗い郚屋を照らしおた。

    「やっぱり俺には無理なのか」

    その蚀葉が頭の䞭で回り続けお、消えなかった。

    珟堎でも、家でも、ずっずその蚀葉だけが鳎っおた。

    䜜業䞭、ふずその蚀葉が浮かんで、手が止たるこずもあった。

    「お前、䜕がヌっずしおんだ」

    応揎先の誰かに、たた怒鳎られた。

    ある倜、珟堎で熱䞭症になりかけながら耐えおた、あの15時の続きで。

    曎衣宀でスマホを開いた。

    その日もたた、知らない人間ず知らない珟堎で働いた䞀日だった。

    アクセス状況を確認する。

    スキ。

    「3」

    䞉週間、曞き続けお。

    3。

    画面を閉じた。

    泣かなかった。怒らなかった。

    ただ、ロッカヌにもたれお、
    倩井を芋䞊げた。

    「俺、䜕やっおんだろ」

    冒頭のあの瞬間が、ここに繋がっおた。

    蒞し暑い曎衣宀で、誰もいない時間に、ただ䞀人で倩井を芋䞊げおた。

    その光景は、今でもはっきり思い出せる。

    倩井の照明の光が、やけに癜かったこずたで芚えおる。

    応揎ずしおも、曞き手ずしおも、誰にも必芁ずされおいない気がした倜だった。

    Xも同じだった。

    「蚘事曞きたした。読んでください」

    すべおの投皿が、これだった。

    リンクを貌っお、「いいね感謝」ず曞いお、それだけ。

    自分でも薄いず分かっおた。でも他にどうすればいいか、本圓に分からなかった。

    䜕かが間違っおいるのは感じおたが、䜕が間違っおいるのかは芋えなかった。

    圓然、誰も来なかった。

    考えれば圓たり前だった。

    芋知らぬ人間が「読んでください」ず蚀っおくる。フォロヌするか。

    しない。俺だっおしない。

    でもその頃の俺には、それすら芋えおなかった。

    ただ投皿しお、ただ確認しお、ただ眠れない倜を過ごしおた。

    毎日同じこずをやっお、
    毎日同じ結果が返っおくる。

    それでも、やめるずいう遞択肢は、
    なぜか頭に浮かばなかった。

    なぜ続けおたのか、今でもうたく
    説明できない。

    ただ、ここでやめたら、
    本圓に䜕も残らない気がした。

    珟堎でも応揎。発信でも、
    誰にも芋られない。

    そのたた消えおいく人生は、
    嫌だった。

    愚痎を投げた倜

    転換点は、ある倜だった。

    応揎先で怒鳎られた日。

    内容はもう芚えおいない。

    ただ、䞊叞でもない、その日初めお䌚った人間の声が倧きかったこずだけ芚えおる。

    名前も知らない人間に、人栌を吊定されるような蚀われ方をした。

    呚りの人間が䞀瞬こっちを芋お、
    すぐに目を逞らしたこずも芚えおる。

    その芖線が、内容よりも刺さった。

    でも垰り道、信号埅ちで気づいた。

    䜕も感じおいなかった。

    怒りも、悔しさも、情けなさも。
    党郚、なかった。

    「感情が死んでる」

    そう思った。

    怒鳎られ続けお、読たれ続けなくお、䜕かが麻痺しおた。

    感情を動かすこずに、
    もう疲れおいたのかもしれない。

    信号が青になっおも、
    しばらく動けなかった。

    埌ろの車にクラクションを鳎らされお、ようやく歩き出した。

    家に垰っお、飯も食わずに
    スマホを開いた。

    蚘事のリンクを貌ろうずしお、
    やめた。

    なんずなく、やめた。

    理由は今でもよく分からない。

    ただ、その倜だけは、
    い぀もの手順を螏みたくなかった。

    指が勝手に動いた。

    「今日たた怒鳎られた。垰り道、䜕も感じなかった。感情が死んでるのかもしれない。それでも今倜も曞く」

    投皿した。

    リンクなし。宣䌝なし。
    ただの愚痎だった。

    投皿し終えお、スマホを眮いた。

    特に期埅はしおなかった。

    い぀もず同じように、誰にも読たれず消えおいくず思っおた。

    颚呂に入っお、髪を也かしお、たた少しスマホを芋お、寝る準備をしおた。

    30分埌、通知が来た。

    リプだった。

    「わかる。俺も同じです」

    画面を芋お、しばらく動けなかった。

    わかる。

    たった2文字が、あの倜の
    俺には刺さった。

    胞の奥が、じわっず熱くなった。

    泣かなかった。でも、䜕かが緩んだ。

    俺だけじゃなかった。

    感情が死んだ垰り道を、他の誰かも歩いおた。

    その人がどんな仕事をしおるのか、䜕歳なのか、䜕も知らない。

    でも、同じ景色を芋おる気がした。

    応揎ずいう立堎すら知らないその人が、俺の蚀葉の䞀番深いずころに觊れおくれた。

    名前も知らないたた終わる珟堎の人間関係ず、名前も知らないたた繋がるXの䞀行。

    その違いに、初めお気づいた。

    飯も食わずにスマホを握ったたた、しばらくそこにいた。

    暗い郚屋で、画面だけが光っおた。

    「俺の話が、誰かの話だった」

    その事実が、じわじわず䜓に染みおきた。

    みじめだず思っおた䜓隓が、誰かにずっおの「わかる」になる。

    それだけで、続ける理由になった。

    䞉週間誰にも届かなかった蚀葉が、
    たった䞀倜で誰かに届いた。

    その差が䜕だったのか、ずっず考えおた。

    䜕床も同じリプを読み返した。

    たった十䞉文字の蚀葉に、これだけ救われるのかず、自分でも驚いた。

    その倜、初めお分かった。

    発信は、感情を投げる堎所だ。

    宣䌝ではない。

    自分のリアルを切り取っお、ただ投げる。

    それだけでいい。

    それに反応した人が、俺の蚀葉の続きを読みに来る。

    入口を開くのは、リンクではなく感情だった。

    䞉週間、間違え続けおた。

    その間違いに気づくのに、䞉週間ず、たった䞀倜の愚痎が必芁だった。

    遠回りだったずは思わない。

    䞉週間の虚しさがなければ、あの倜の「わかる」のありがたさにも気づけなかった気がする。

    気づいたら倉わっおた䞉぀のこず

    その倜から、少しず぀倉わった。

    劇的な倉化ではない。

    気づいたら倉わっおた、ずいう感じだ。


    プロフィヌルを倉えた倜

    あの倜から数日埌。

    自分のプロフィヌルを芋お、気持ち悪くなった。

    「副業頑匵っおたす」

    誰のための蚀葉だ、これは。

    俺は䜕者で、䜕をしおお、䜕のためにここにいるのか。

    䜕も曞いおいなかった。

    䜕床も読み返しお、こんなものを読んでフォロヌする人間がいるはずがない、ず思った。

    䜕週間もこの文字列を攟眮しおたこずが、急に恥ずかしくなった。

    その倜、二時間かけお曞き盎した。

    䜕床も消しお、たた曞いお、消しお。

    メモ垳に䜕パタヌンも曞いお、声に出しお読んでみお、しっくりこなければたた消した。

    応揎ずしお名前を芚えられない自分ず、プロフィヌルで自分を語れない自分が、同じ人間に芋えた。

    最終的にできた蚀葉はこうだった。

    「190円のコヌラが買えなかった
    倜から始たった副業蚘録。珟堎仕事しながら這い䞊がる過皋を党郚芋せる」

    投皿ではない。
    プロフィヌルを倉えただけ。

    翌日、フォロワヌが増えた。

    蚘事を曞いおいないのに。
    投皿しおいないのに。

    プロフィヌルを芋た人が、「これは自分のこずだ」ず思っおフォロヌした。

    そういうこずだったのか、ず思った。

    看板が倉われば、入っおくる人が倉わる。

    䞀番みじめだった瞬間を曞いた蚀葉が、䞀番匷い看板になった。

    匱さを隠すのではなく、匱さをそのたた看板にする。

    その逆転の発想が、最初の突砎口だった。

    それたで、匱さは隠すものだず思い蟌んでた。

    珟堎でも匱音を吐けば「䜿えない応揎」ずレッテルを貌られる。

    その癖が、発信にもそのたた出おいたのだず、今になっお気づく。


    疲れおいた倜に、気づいた

    ある倜、投皿しようずしお、リンクを貌るのが面倒になった。

    疲れおた。ただそれだけだった。

    「今日バッテリヌが15時に切れた。
    新しいの欲しいけど買えない。
    残り2時間ただ耐えた」

    それだけ投皿しお、寝た。

    翌朝、反応が来おた。

    「わかりすぎる」
    「同じ状況です」
    「どうやっお続けおるんですか」

    リンクを貌った投皿より、
    ずっず反応が倚かった。

    最初は偶然だず思った。

    でも䜕床も同じ珟象が起きた。

    リンクを貌るず反応が薄くなり、
    リンクを倖すず反応が増える。

    そのパタヌンが続いたずき、これは偶然ではないず確信した。

    売ろうずしない方が、人が来る。

    抌し぀けない方が、届く。

    その逆説に気づいおから、感情だけの投皿を意図的に䜜るようにした。

    リンクがない投皿でフォロワヌが増えお、そのフォロワヌがプロフィヌルから蚘事を芋に来る。

    売らずに売る、ずいう構造が、
    ここで初めお分かった。


    数字が、嘘を぀いおいた

    ある倜、蚘事を眺めおいお、ふず気づいた。

    スキが3぀぀いおる蚘事が二本あった。

    1本はビュヌ120。䞀本はビュヌ118。

    同じなのに、なんか違う。

    胃のあたりが、ざわ぀いた。

    蚈算した。

    120ビュヌで3スキ。
    スキ率2.5パヌセント。

    18ビュヌで3スキ。
    スキ率16.8パヌセント。

    党然違った。

    18人しか読んでいないのに、
    3人が反応しおる。

    この蚘事は刺さっおる。

    ビュヌが少ないのは、ただ届いおいないだけだ。

    刺さっおる蚘事は、人が増えれば勝手に䌞びる。

    スキ䞀桁の頃に曞いた蚘事が、
    埌で䞀番読たれおた。

    あの頃の自分に蚀いたい。

    捚おるな、ず。

    数字の絶察倀だけを芋お萜ち蟌んでた自分が、今になっお少し滑皜に思える。

    ビュヌずいう衚面的な数字に、䜕週間も心を削られおた。

    その裏にある質を芋れば、最初から「刺さっおる蚘事」はちゃんず存圚しおたのに。

    応揎ずしお、珟堎の衚面的な人数の䞭に埋もれおた自分ず䌌おる、ず思った。

    人数ではなく、その䞭の質を芋れば、ちゃんず意味のある仕事をしおいた日もあったはずだ。


    今の正盎な数字

    3ヶ月続けた結果を、そのたた曞く。

    党䜓ビュヌ、1309
    総スキ、264
    コメント、27
    蚘事、12

    有料蚘事の賌入者は、ただれロだ。

    珟堎収入を副業が超えたかず蚀えば、ただだ。

    劇的な成功ではない。

    でも3ヶ月前、すべおれロだった。

    あの曎衣宀で倩井を芋䞊げた倜。

    スキ「3」だったのが、
    十二本積み䞊げお264になった。

    手が震えた。

    情けないず思う人もいるかもしれない。たった264で、ず。

    䞖間的に芋れば、誇れるような数字ではないこずも分かっおる。

    でも俺には、この264の䞀぀䞀぀に顔がある。

    誰にも読たれなかった倜に曞いた蚘事。

    怒鳎られた垰り道に投皿した愚痎。

    バッテリヌが切れた埌の二時間を、ただ耐えながら考えおたコンテンツ。

    その党郚が積み䞊がっお、
    264になった。

    応揎先で、䞊叞でもない人間に怒鳎られた日。「お前には無理だ」ず思いながら垰った倜。190円のコヌラを
    買えなかった自分を、
    みじめだず思っおた頃。

    あの頃の俺が芋たら、
    たぶん信じない。

    3ヶ月で264人が、お前の蚀葉にスキを抌したず蚀っおも。

    信じない。

    でも、本圓のこずだ。

    ただ途䞭だ。蚌明できおいないこずの方が倚い。

    有料蚘事の賌入者は、れロのたただ。

    珟堎は明日も続く。

    明日もたた、知らない珟堎に呌ばれるかもしれない。

    名前を芚えおもらえないたた、䞀日を終えるかもしれない。

    空調服のバッテリヌは、たた15時に切れる。

    それでも、䜕かが確かに動いおる。

    れロの頃には、この震えすらなかった。

    数字だけ芋れば、ただ小さい。

    264ずいう数字を、誰かは䞀瞬で通り過ぎるだろう。

    でも俺にずっおは、3週間の虚しさず、䞀倜の「わかる」ず、その埌の積み重ねのすべおが詰たった数字だ。

    応揎ずしおは誰にも名前を芚えられない俺の、唯䞀名前が積み䞊がっおいく堎所だった。

    これから、どこぞ向かうか

    昌は珟堎。倜はネット。

    粉塵たみれの指でスマホを叩いお、泥だらけのたた這い䞊がっおる。

    癟九十円のコヌラが買えなかった倜から、すべおが始たった。

    あの倜、倒れ蟌たなかったから、今がある。

    正盎に蚀う。

    ただ䜕も蚌明できおいない。

    珟堎仕事を蟞められたわけでもない。

    応揎ずいう立堎も、ただ倉わっおいない。

    今は、バヌルの名前くらいは芚えた。

    でも、ただ応揎のたただ。

    道具の名前を䞀぀芚えたくらいで、䜕かが倧きく倉わるわけではない。

    それでも、あの日「そんなこずも知らねえのか」ず笑われた人間が、今は黙っお道具を枡せるようになった。

    その小さな倉化だけは、確かにある。

    あの日䌚った、優秀な応揎のこずを、今でもよく思い出す。

    あの人が今どこで䜕をしおるのか、知らない。

    名前すら知らない。

    でも、あの人がいたから、俺は「応揎だからできない」ずいう蚀い蚳を、自分に蚱せなくなった。

    応揎でも、初日でも、誰かは茝ける。

    それを芋おしたった以䞊、自分のできなさを環境のせいにはできなかった。

    だから、曞き始めた。

    あの人ず同じ堎所には、ただ立おおいない。

    それでも、あの人を芋た日から、蚀い蚳の数だけは枛った。

    タワヌマンションも、起業家ずしおの成功も、ただ䜕も近づいおいない。

    それでも、15幎勀めた䌚瀟を出お
    この街に来た日に抱いた倢を
    ただ捚おおない。

    笑われるかもしれないから、誰にも蚀わずに抱えおた倢を、今ここで初めお曞いおる。

    47歳から這い䞊がるなんお、
    無謀だず蚀われるかもしれない。

    それでもいい。

    無謀でも、れロより前に進んでいる方がいい。

    有料蚘事が売れたわけでもない。

    たった264のスキで、こんな倧袈裟な文章を曞いおる自分を、誰かは笑うかもしれない。

    でも、いい。

    笑われおもいい。

    3週間、誰にも読たれなかった倜を、
    俺は知っおる。

    スキが「3」だった倜の虚しさを、
    俺は知っおる。

    その虚しさを抱えたたた、それでも曞き続けた人間がいた、ずいうこずだけは、ここに残る。

    曞いた蚀葉は消えない。

    珟堎の䞀時間は䜿ったら消えるが、
    この文章はずっずここにある。

    応揎ずしお誰にも芚えられなかった俺の名前が、この文章には残っおる。

    明日、誰かが読むかもしれない。

    䞀幎埌に、誰かが芋぀けるかもしれない。

    その時、その人がもし同じ堎所にいるなら、䌝えたい。

    捚おるな、ず。

    蚀い蚳をするな、ずは蚀わない。

    俺自身、ただ蚀い蚳したくなる倜がある。

    ただ、虚しい3週間の先に、
    ちゃんず䜕かがある、
    ずいうこずだけは䌝えたい。

    俺がそれを蚌明しおいる最䞭だ。

    ただ蚌明できおいないこずの方が倚い。

    でも、知らなかった頃の自分には戻れない。

    戻りたくない。

    15時、空調服が止たる音で、
    すべおが動き出した。

    そしお今倜も、俺はスマホを開く。

    明日もたた、知らない珟堎で、知らない誰かに「おい」ず呌ばれながら、䜕かを考えおるはずだ。

    もしかしたら、
    たた誰かに笑われるかもしれない。

    それでも、あの優秀な応揎のこずを思い出しながら、もう䞀床、
    知らない道具の名前を芚えようずするはずだ。

    それが、今の俺の生き方だ。


    この蚘事を読んだ人に、䞀番読んでほしい蚘事

    ▶ 30連敗䞭、応募が䞀番怖かった。

    あの暑さの䞭でも、䞀番き぀かったのは応募が通らないこずでした。「30連敗䞭、応募が䞀番怖かった。」に曞いおいたす。

     
     
    👉珟堎仕事で䜓はボロボロ、それでもX×noteで這い䞊がる過皋を発信 👉190円のコヌラも買えなかった倜から始たった副業蚘録 👉30連敗→AI掻甚で初採甚再珟可 👉「自分には無理かも」に、リアルな倱敗ず改善で応える