大人になれない男たち😂
男達の伝説
― KAWASAKI ―
歳は食った。腹も出た。
でも、まだ走りたい…《笑》🤣
第一章|大人になれない男たち。
第1話
「背中で語る? 腹が出てるぞ。」
日曜日、朝6時。
男は鏡の前に立っていた。
革ジャン。
ジーンズ。
ブーツ。
そして――
「腹…………。」
息を思いっきり吸う。
腹を引っ込める。
革ジャンのファスナーを上げる。
ググググ……「よし。」
あと5センチ。
グググ……。
「……。」
後ろから嫁が来た。
「何してんの?」
「別に。」
「それ、閉まらないんでしょ?」
「違う。」
「何が?」
男は真顔で答えた。
「革が縮んだ。」
「お前が太ったんだよ。」
「朝から言い方悪いな。」

鏡の前で腹を限界まで引っ込めている男。
本人はキメ顔。
革ジャンのファスナーは
全然閉まっていない…
男「革が縮んだな。」
嫁「お前が育ったんだよ。」
ガレージへ行ってシャッターを開けたら
そこには『KAWASAKI』
男の顔が一瞬で
変わった。
「おぉ〜……。」
「カッケぇ。」
「うん。カッケぇ。」
しゃがんで見る。
「やっぱカッケぇ。」
立ち上がる。
「いてててて……。」
膝を押さえる。
バイクは絶好調。
持ち主の方が怪しい。
セルを押す。
ドォン……!
「うひょ〜。」
ブォン。「へへへ。」
ブォン、ブォン。
玄関から嫁の声。
「朝からうるさい!」
「俺じゃねぇ!」
「じゃあ誰よ!」
男はKAWASAKIを見る。
「……コイツ。」
「あなたがエンジンかけたんでしょ!」
「……まあ、そうなんだけど。」
待ち合わせは近所のコンビニ。
男が到着すると、すでに3人いた。
「遅ぇぞ!」
「まだ集合10分前だろ!」
「俺ら30分前からいる。」
「お前ら暇なの?」
「お前もだろ。」
「俺は忙しい。」
「何が?」
「……いろいろ。」
「何だよ、いろいろって。」
「知らん。」
全員50前後。
会話の中身は中学生である。

コンビニ前。
KAWASAKIを並べた4人のおっさん。
サングラスに革ジャン。
見た目だけなら、それなりに怖い。
でも手には、
肉まん。
アメリカンドッグ。
おにぎり。
缶コーヒー。
「出発前に軽く食うか。」
「お前、それ3個目だろ。」
「朝飯は別腹。」
「意味分かんねぇよ。」
コーヒーを飲み終える。
「で?」
「ん?」
「今日どこ行くの?」
男は海の方を指差した。
「海。」
「だから、どこの海?」
「向こう。」
「向こうってどこだよ。」
「海なんだから走ってりゃ着くだろ。」
「ナビは?」
「ある。」
「じゃあ入れろよ。」
「面倒くせぇ。」
「何のためのナビだよ!」
そんな感じで――
4台は走り出した。
天気は最高。
エンジンも快調。
インカムから声がする。
「気持ちいいなぁ!」
「最高だな!」
「やっぱバイクだわ。」
「だな!」
少しだけ真面目な空気になる。
男は前を見ながら言った。
「俺たちもさ……」
「ん?」
「あと何年、こうやって一緒に走れんだろうな。」
一瞬、静かになった。
「…………。」
仲間が答える。
「知らん。」
「そこは何か言えよ。」
「とりあえず腹減った。」
「さっき食っただろ!」
いい話、約7秒で終了。
しばらく走る。
最後尾から声がした。
「なぁ。」
「何?」
「ちょっと聞いていい?」
「おう。」
「海ってさ……。」
「うん。」
「後ろじゃね?」
「…………。」
全員黙った。
先頭の男がナビを見る。
現在地を見る。
もう一度見る。
「…………。」
「おい。」
「…………。」
「お前、道間違えた?」
「いや。」
「じゃあ何?」
男は少し考えた。
「新しいルートを開拓してる。」
「迷っただけだろ!」
その時だった。
最後尾の一台が突然、速度を落とした。
「ん?」
そのまま路肩へ。
「おい、どうした?」
4台が停まる。
男たちがバイクを囲む。
「パンク?」
「違う。」
「ガス欠?」
「入れた。」
「じゃあ何だよ。」
一人がしゃがみ込んだ。
「……おい。」
「何?」
「これ……。」
全員が覗き込む。
数秒の沈黙。
そして――
「おい……これ、ヤバくね?」

4人全員でバイクを囲む。
一人がスマホを構える。
「お前、何してんの?」
「とりあえず写真。」
「撮ってる場合か!」
「いや、こういうの後でネタに
なるじゃん。」
「先に直せ!」……と言いながら、
残りの二人もスマホを出した。
――つづく🤗
次回|第2話
「転んだ。まずバイクを見た。」
果たしてKAWASAKIに何が起きたのか。
そしてこのおっさん達――
ちゃんと海に着けるのか。
たぶん、そっちの方が問題である。
