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なぜ中年になると、もう一度バイクに乗りたくなるのか?

第3話
なぜ中年になると、もう一度バイクに乗りたくなるのか

若い頃、バイクに乗っていた。
特に目的地なんてなくてもよかった。

時間があれば走った。
仲間と集まれば走った。
天気が良ければ、それだけで走る理由になった。


ガソリン代しか持っていなくても、
不思議なくらい毎日は楽しかった。

そして、いつの間にかバイクを降りた。

結婚。
子育て。
仕事。
住宅ローン。
家族との時間。


人生には、バイクより優先しなければならないものが少しずつ増えていった。

気づけば10年…
20年…もうバイクに乗ることなんてないと思っていた。

ところが……
40代、50代になったある日。

街を走る一台のバイクを見た瞬間、
胸の奥で何かが動く。

「もう一度、乗りたい…」なぜ人は、中年になるともう一度バイクに惹かれるのでしょうか?


欲しくなったのは、バイクだけではなかった。

若い頃に欲しかったのは、速いバイク
だったかもしれません。

格好いいバイクだったかもしれません。

でも、大人になってから欲しくなるバイクは、少し意味が違います。

欲しいのは、「自分だけの時間」なのかも
しれません。

朝から仕事へ行く。
会社では責任ある立場になり、
家に帰れば家族がいる。

休日にも、やらなければならないことが
ある。

もちろん、それらは大切なものです。

けれど長い年月を過ごすうちに、人は
たくさんの「役割」を持つようになります。

父親。
夫。
上司。
部下。
経営者。
家族を支える人。


誰かに必要とされることは、幸せな
ことです。

でも、その役割の中で生き続けていると、
ふと、こんなことを思う瞬間があります。
「自分は、本当は何が好きだったんだろう…」バイクに乗ると、名前だけの自分に戻れる。

ヘルメットをかぶる。
グローブをつける。
セルを押す。
エンジンが目を覚ます。
そしてクラッチをつないで、
ゆっくり走り出す。
その瞬間。
肩書きは、必要なくなります。
年収も関係ない。
会社での役職も関係ない。
家でどんな立場なのかも関係ない。


そこにいるのは、ただバイクが好き
だった、一人の自分です。

若い頃と同じ風が、ヘルメットの横を
流れていく。

その瞬間、人は気づくのかもしれません。
「ああ、俺はこれが好きだったんだ。」


懐かしいのは、バイクではなく「あの頃の自分」。

昔乗っていたバイクの写真を見ると、
胸が少し熱くなることがあります。

懐かしい車種。
昔のヘルメット。
仲間と走った道。
ガソリンスタンドで交わした、
どうでもいい会話。


でも、本当に懐かしいのは、
バイクそのものなのでしょうか。

もしかすると私たちが思い出しているのは、あの頃の自分自身なのかもしれません。

何かを始めることに、今ほど理由が
必要なかった頃。

失敗しても、またやればいいと思えた頃。

知らない道の先に何があるのか、純粋に
楽しみにできた頃。

バイクを見ると、その感覚が一瞬だけ
蘇ります。

だから胸が動く。

中年期は、「これから」を考え始める時期でもある。

40代、50代になると、人生を見る方向が少しずつ変わってきます。

若い頃は、「これから何を手に入れるか」を考えていた。
でも、ある年齢を越えると、「残された
時間を、どう生きるか?」を考えるようになります。

あと何回、桜を見られるだろう。
あと何回、夏を迎えるだろう。
あと何年、元気に好きなことができるだろう。


それは決して悲観的なことではありません。

時間に限りがあると気づいたからこそ、
「いつか」を「今」に変えたくなる。

そんな心の変化でもあります。

「もう一度乗りたい」は、過去に戻りたいという意味ではない。

リターンライダーという言葉があります。

一度バイクを降り、
何年、何十年という時間を経て、
再びバイクに戻ってくる人たち。

でも私は、「戻る」という表現だけでは、
少し足りない気がします。

20年前の自分には戻れません。

体力も違う。
家族もいる。
責任もある。
人生経験も増えた。


だから、昔と同じ走り方をする必要もありません。


今だから見える景色があります。

若い頃なら通り過ぎていた海で、バイクを停める。
小さな喫茶店に入る。
知らないライダーと話す。
夕陽を眺めながら、ゆっくり家へ帰る。

若い頃とは違う楽しみ方ができる。

つまり、リターンライダーとは、

昔の自分に戻る人ではなく、昔好きだったものを、今の自分でもう一度楽しむ人なのかもしれません。


バイクは、止まっていた時間を動かすことがある。

久しぶりにバイクショップへ行く。
少し緊張しながら跨がってみる。
ハンドルを握る。
その瞬間、忘れていた感覚が蘇る。
そして納車の日。
エンジンをかける。
音が響く。
ゆっくりクラッチをつなぐ。
数十年ぶりに、風が身体を通り抜けて
いく。

そのとき感じるのは、「若返った」という
感覚だけではないのかもしれません。

「自分の人生が、また少し動き始めた。」

そんな感覚なのではないでしょうか?


【STORY RIDER編集部より】
中年になって、
もう一度バイクに乗りたくなったあなたへ。
それは単なる衝動でも、昔への未練でも
ないのかもしれません。

長い間、
仕事を頑張ってきた。
家族を守ってきた。
誰かのために時間を使ってきた。

だから心のどこかで、「そろそろ、自分の
ためにも少し走っていいんじゃないか?」

そう思い始めたのではないでしょうか?

もちろん、若い頃と同じではありません。

体力も違う。
反応も違う。
背負っているものも違う。

だからこそ、
安全を大切にしながら走ればいい。
速くなくていい。
遠くまで行かなくてもいい。
誰かと競う必要もない。

ただ、自分の好きなバイクに跨がって、
自分のペースで走ればいい。

人生は、
若い頃だけのものではありません。

50歳からでも。
60歳からでも。


人はもう一度、
夢中になれるものを見つけられる。

そして、その最初の一歩は案外、「もう
一度、バイクに乗ってみようかな?」

そんな小さな気持ちから始まるのかもしれません。


『あなたへの問い』
あなたがもう一度バイクに乗りたいと
思ったとき、本当に取り戻したかったものは、「バイク」でしたか?

それとも……バイクに乗っていた頃の、
あなた自身でしたか?
この回は最後の「あなたへの問い」が重要です。読者が自分の20代・30代を思い出すため、コメントにもつながりやすくなります。

そして第4話「一人で走っているのに、なぜ孤独ではないのか?」では、取り戻した「自分だけの時間」が、なぜ孤独ではなく心地よいのかへ展開すると、シリーズとして綺麗につながります。

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