
私の夏
家から車で数十分のところにミスタードーナツがあった。
その時小学生だった私は、父が休みの日によく二人でドーナツを食べに行っていた。
メロンソーダとチョコ系のドーナツを頼んで、店内で食べた。
外は暑いが店内は涼しく、メロンソーダを飲んでいるとあっという間に体が冷えた。
父は私の口についたチョコを、メロンソーダの紙カップについている結露で紙ナプキンを濡らして拭き取った。
車に戻ると車内には熱がこもっていたが、体が冷えているためエアコンを付けずとも快適で、心地よくてたまらなかった。
窓を少し開けて寝ようとすると、熱中症を危惧する父が困ったように笑っていた気がする。
会話の内容や父が食べていたものなどは何も覚えていないが、
あれこそが完璧な夏の昼下がりだったと思う。
これから何度夏を過ごしたとしても、あの幸福感に満ちた時間は訪れない。
新しいことを知るたびに寂しさがつきまとう。
何も知らなかった頃に戻りたい。
大人になるって寂しい。