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Photo bytomiyama9

気が利く男は、なぜ職場で静かに壊れるの


    「気が利くよね」

    そう言われることが増えていった。

    頼まれる前に動く。
    空気を読んでフォローする。
    少しでも楽になるならと思って、自分の手を伸ばす。

    最初は、それでよかった。

    「助かったよ」
    「ありがとう」

    ちゃんと、言葉が返ってきていたからだ。

    でも、それは長くは続かなかった。

    気づけば、それは“できて当たり前”に変わっていた。

    やっても何も言われない。
    やらなければ、なぜか空気が悪くなる。

    一番つらかったのは、批判じゃなかった。

    何も返ってこないことだった。

    距離も、近くなっていた。

    職場だけじゃなく、プライベートでも時間を共にするようになった。
    同僚たちと飲みに行き、仕事の延長みたいな時間を過ごした翌日。

    ほんの少し、空気が変わった気がした。

    遠慮がなくなったのか、期待が増えたのか。

    理由はわからない。
    でも確実に、「前とは違う何か」になっていた。

    ある日、かなり無理をして作業を終わらせたことがあった。

    これで少しは楽になるはずだと思っていた。

    でも、翌日。

    特に何もなかった。

    ねぎらいの言葉も、表情の変化もない。

    ただ、いつも通り仕事が流れていくだけだった。

    そのとき、ふと思った。

    「これ、俺だけ損してないか?」

    それからしばらくは、やり方を変えた。

    言われたことだけをやる。
    余計なことはしない。

    その方が、傷つかないと思ったからだ。

    でも、どこかで違和感が残っていた。

    それは楽だけど、納得はしていなかった。

    他人がどうこうじゃない。

    どうあるべきかでもない。
    損か得かでもない。

    自分が、どうしたいか。

    優しさは、続けると義務に変わることがある。

    だからこそ、選ぶ。

    やるか、やらないかじゃなくて。
    どうしたいかで動く。

    前を歩いて引っ張るわけでもない。
    後ろから支えるわけでもない。

    横に並んで歩く。

    「よこあるき。」

    #創作大賞2026

    #エッセイ部門

     
     
    女性社会で肩身の狭い思いをしてきた男が、今、言葉で寄り添います。 目立つことなく、背中を押すことなく、あなたと一緒に「横歩き」しながら、 共に歩む力を見つけていきます。 気づけば、心が軽くなっている。そんな言葉を届けたい。

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