
おじいちゃんと金髪の私
大学1年生の夏休みに入る前、初めて髪を染めた。
絶対に髪を染めたい、という強い気持ちがあった訳ではないけれど、“ちょっと違う自分になれる”気がしたから。
美容院で、悩みに悩んで、少し明るめの茶色を選ぶ。ドキドキしながら染めてもらって、丁寧にブローされた後、大きな鏡に映る私は“良い感じ”で、きたる夏休みへのわくわくに弾みをつけてくれた。
ところがどっこい、1週間後の帰省時に、新幹線に乗り込む私の髪は、黄金色に輝いていた。
私は地毛が栗色のため、カラーがより明るく出てくるかも、とは美容院で言われたけれど、、ここまで明るくなるとは、、
周りを軽く照らせてるじゃん、そこまでじゃないか。ロックじゃん、そこまでじゃないか。
夏休みで賑わう新幹線の車内。座席にとりあえずふぅと身を沈めて、ペットボトルの蓋を捻りながら、窓に映る自分と目が合う。
ふと、家族のみんなはこの髪色にどんな反応をするんだろうと気になった。
特に気になったのは、祖父の反応。何故なら、祖父は私のする事なす事、あらゆる角度から肯定してくれる人だから。極端な話、例えば私が0点を取っても、「0点取れるなんて、中々ない!でかした!」とか言ってくれてたんじゃないだろうかレベル。
今まで、否定をされたことがないけれど、、金髪の孫が帰ってきたら、さすがにちゃんと勉強してるんだろうか、グレてないだろうかと心配させてしまうかも知れない。いやはや。
駅でまず顔を合わせた母は第一声、「どうしたの?!」と聞いてきた。勿論、髪色のこと。父も怪訝そうに私の頭を見つめる。
地元の駅では、私の頭の輝きはますます威力を増してしまうようだ。私はなんだか恥ずかしくなってくる。
お土産を手に、駅からそのまま祖父母の家に向かう。台所の側の勝手口から、「ただいま~」と入ると、祖母が夕飯の準備をしていた。
私を見て、「あら、おかえり!」と言った直後、眉をひそめて、目が私の頭に釘付けになる。母と同じく、「どうしたの?!」と一言。
「いや、元々はここまで明るくなかったんだけど、地毛の色の関係で明るくなってきてしまったの」と、不良孫娘の疑いを晴らすべく、しどろもどろに言い訳を続けていると、祖父が奥の居間から出てきて、「よお、帰ってきた!」と出迎えてくれた。
そのまま祖父と少し出掛けた。確かおつかい的な感じで一緒に近くのスーパーに行った気がする。
スーパーの中で私が少し祖父から離れて、商品を取ってきて、祖父のかごに入れに戻ってきたら、「おお、頭の色が目立つから、遠くから来てもすぐ分かって便利だ、目が悪くてもすぐ見つけられるぞ。」と一言。
祖父のことが大好きだった。
何をしても、「すごい」、「たいしたもんだ」、「それが良い、それが良い」と言ってくれた。
その夏の帰省中、笑顔で過ごせたのも、祖父のその一言のお陰だ。そして、明るくて派手すぎると思った髪色も、なんだかんだで私も家族も最後には見慣れていた。
暑い夏だった。
離ればなれになった、友人と家族と、みんなに会って、報告し合うことが山積みで、受験勉強も夏休みの宿題もない、初めてのどこまでも自由な夏休み。
不思議なことに、あの時の黄金色の髪は、今でもあの夏休みを照らし続けてくれている。