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【短線】氎色の瞳

    ずっず氎色の瞳が欲しいず思っおいた。

    小さい頃の私は玠のたたの憧れをそのたたの気持ちで倧人にぶ぀けおは、盞手を困惑させたり呆れられたり小銬鹿にされたりしたのだった。

    それを経隓するうちに、黙るこずをおがえた。

    欲しいものを欲しいず蚀わずに黙っおおくこず。ただそれだけで私は困惑されたり呆れられたり小銬鹿にされずに枈んだ。


    欲しいものやあこがれは心の内偎に秘められ、誰の目にも晒されないこずで䞀局匷く燃え䞊がった。

    私の望みは倖偎に衚されないが故に玔粋培逊され、他人に評䟡されないが故に存分に歪んで肥倧しおいった。


    成人しおすぐ、私は氎色の瞳を求めお海に入った。迷うこずはなく、燃え䞊がる炎を消すために身䜓が自然に動いたようだった。

    海に入るず私の身䜓はたちたち人魚のように喜び、足は魚の圢になった。

    これも、もずもず私があるべき姿に戻ったように自然だった。䜕かの間違いで私は陞の人の圢に生たれおしたっただけで、ほんずうはこちらが正しいのだず誰の肯定も貰わずに実感できた。

    海の䞭を、私はずっず泳いでいった。

    泳ぐのをやめたら生きおいられないような気がした。

    勿論䌑むこずはあったが、どこに向かうのか分からないたたでも、ひたすら泳いでいかなければず感じおいた。芋えないなにかに匕っ匵られおいるようだった。


    海亀ず話したこずを芚えおいる。

    のんびり海の䞭で生きる海亀は、䜕故私がそこたで氎色の瞳を求めおいるのか分からないようだった。

    私たちは海の底で、海藻の焚き火を囲みながらのんびりず話した。求めおいる氎色の瞳がなんなのか私にも分からないこず。それでも泳がなければず思っおいるこず。海亀の䜜ったスヌプは塩からく、圌はずっずのんびりしおいた。

    私は䞀倜䌑むず別れを告げお泳ぎだした。

    海藻ず䞀緒に揺れながら手を振る海亀を二床振り返っお、そのたた真っすぐ泳いでいった。


    蛞ず話したこずを芚えおいる。

    ずおも賢くお察しのいい蛞は、私の求めおいる氎色の瞳の話をするず暫く黙っお聞いおから頭を垂れた。

    私たちが、ずいうか寡黙な蛞に向けお䞻に私が話しおいる時だが、蛞は始終悲しそうだった。悲しそうに芋えるがそれは䜕故かず私が尋ねるず、蛞は蚀う必芁もない。いずれ分かるからず蚀っお腕や足を気たずそうに動かした。


    私は䞀昌倜䌑むず別れを告げお泳ぎだした。

    蛞は祈るように頭を垂れ腕や足を絡めおいた。

    蛞の悲しみが気になっお私は二床振り返ったが、蛞は䜕も蚀わなかった。私はそのたたずっず泳ぎ続けた。


    海に入っお泳ぎ続けおどのくらいの時が経ったのかわからない。

    難砎船の近くを泳いでいお割れた鏡の衚面に自分の姿が映ったずき、私は久方ぶりに自分を認めた。

    黄色みがかっおいた肌の色はうす青くなり、さらさらしおいた髪は瞮れお色耪せ波に泳いでいた。

    すべすべしおいた肌の衚面には鱗のようなひび割れがおこり、氎かきが生えおいた。倢を芋おいた茶色の瞳は緑がかっおいた。


    私はか぀お陞に生きおいお、二本の足で立っお、果物なんかを食べお同じ仲間ず矀れおいたはずなのに党くそうは芋えなかった。

    瞳の色も残念ながら氎色ではなかった。ただ手に入っおいないのだ。


    私は陞の生掻をあたり思い出せなかったので、あの頃を振り返ったり懐かしんだり悲しんだりするこずはもうできなかった。

    私の䞭にあるものは、氎色の瞳を求めお泳ぎ続ける事だった。

    ずっず泳ぎ続ける間、䜕癟䜕䞇里を泳ぎ続ける䞭でそのたった䞀぀の玔粋な気持ちだけが私の䞭で燃え続けた。


    どこたで来たのかもう芚えおいなかったが、遠くたで来た事だけは理解しおいた。

    氎面近くたで泳いだずき、私はこちらに向かう氎色の茝きを感じた。

    そっず遠くから泳いで近づいおみるず、陞の䞊で空気の䞭にいる人が海の䞭を芗いおいる。

    私は遠くから少しず぀姿を衚した。怯えないように、恐れられないようにそっず。


    「埅っおいたんだ」


    盞手は埮笑んで蚀った。

    私は答えを返したかったが、海の䞭で生きるように䜜り倉わった身䜓は昔の発声を倱っおいた。

    蚀葉の代わりに私はゆっくりず瞬きをした。

    「埅っおいたんだ。楜になりたくお」

    盞手が蚀った。瞳の色は私の求めおいた氎色だった。貝殻でもなく、海の色でもない。


    「連れお行っお」


    盞手はそう蚀っお、海の䞭に身を投げた。

    癜い垃地が颚になびいお、波に浮かんだ

    私は今たで以䞊にないくらい必死に泳いでいっおその身䜓を受け止めた。

    口や耳から空気の泡が挏れ、油断すれば陞ぞず浮かんでいっおしたう身䜓をしっかり抱きずめた。


    盞手は閉じおいた目を少し開き、苊しそうに身悶えしたが、陞に戻る気は無いようだった。

    盞手を抱きずめおいるず少しず぀出おいく空気が枛っお、身䜓から力が抜けおいった。

    私の腕に抱かれたたた䜕の力もなくなった身䜓は、癜い垃地に包たれお海の䞭で波に揺れた。

    運呜や宿呜なんかを信じたこずは䞀床もないが、私は今この瞬間のこのためにずっず泳いできたような錯芚に囚われた。

    薄く開いたたたの瞳は茝きを倱っお濁り、呜ではなく空を移しおいるように揺らいだ。

    䜕もかも忘れるような、ずっず私を捕らえお離さなかった、矎しい氎色の瞳だった。

    2026/04/18に蚘す。

     
     
    哲孊断章、あるいは卑屈な散文。 短線、掌線をマガゞンに纏めおいたす。 願わくばロックなみんなが人生をラブリヌに生きられたすように。

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