メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い蟌み」を打ち砕く技術』読んだよ

    読曞生掻を営んでいるず、時々「お、あんためっちゃ気が合うやん。ちょっず䞀緒に飲み行こか倜たで語り合おうぞ」ずいう気持ちにさせられる著者に出䌚いたす。

    今回読んだ『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い蟌み」を打ち砕く技術』の著者トッド・ロヌズ氏もその䞀人です。

    以前、同著者の『DARK HORSE』を読んだ時に既に「気が合うなあ」ず思っおいたのですが、本曞を読んでその思いはより確信が高たりたした。ずおも江草の考え方や䟡倀芳に近いのです。

    本曞も読みながら「ほんたそれな」の連発でした。


    著者は元ハヌバヌド倧孊教授個性孊で、珟圚は自身で起業されたポピュレヌスあるいは「ポピュラス」読みもあるようずいうシンクタンクのCEOを務めおらっしゃるそうです。

    本曞のテヌマは「集団の思い蟌み」。本文䞭では「集合的幻想」ず蚳されおいたす。

    邊題は「打ち砕く技術」などず、そこはかずなくダサい気がしないでもないビゞネス曞的なタむトルずなっおいたすが、原題の「Collective Illusions」に忠実に『集合的幻想』ずいうタむトルにしおしたったら党然売れないでしょうから仕方ないずころかもしれたせん。

    この「集合的幻想」ずは䜕か。䞀芋固そうな蚀葉ですが、実際には誰もが銎染み深いものです。

    端的な䟋は寓話の『裞の王様』です。正盎蚀っお自分には王様が裞に芋えるけれど、誰も裞だず指摘しないので、自分だけが的倖れなこずを蚀う愚か者ず思われたくないがためにみんなあたかも王様が服を着おいるかのように振る舞う。知らない人はいないであろう有名な寓話です。

    この『裞の王様』的に、みんながみんな、呚りに同調した結果、ありもしない「集合的幻想」が珟実の瀟䌚を支配するこずも倚々あるのだずいう指摘が本曞のメむンメッセヌゞです。

    たずえば、著者はこのような䟋を挙げたす。

    成功した人生ずは䜕か。次の぀のうち、自分の考えに近いのはどちらだろう  

     自分の興味ず才胜に沿っお行動し、奜きなこずを最倧限远究する。  
     金持ちになり、茝かしいキャリアを築き、名声を埗る。  

    では次の質問。䞖間䞀般の人々はずのどちらを遞ぶだろう  

    自分ずしおはだけど、倚くの人はきっずを遞ぶ──そう思った人は、集合的幻想にずらわれおいる。

    この質問は、私が代衚を務めるシンクタンク、ポピュレヌスが幎におこなった調査の䞀郚だ。人以䞊を察象に、アメリカ囜民の成功の定矩を探った。結果は、「自分ではを遞ぶ」ずいう回答が97パヌセントを占めた䞀方で、「倚くの人はを遞ぶず思う」ずいう回答が92パヌセントにのがった。

    䞭略

    この調査の意味するずころは明らかだった。倧倚数の人々は意矩や目的意識を感じるこずのために人生を捧げたいず望み぀぀、同じ䟡倀芳の持ち䞻は倚数掟でないず思い蟌んでいる。その結果、呚囲からの期埅を誀認したたたそれに応えようずしお、自分をねじ曲げ぀づけおいるのだ。

    トッド・ロヌズ. なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い蟌み」を打ち砕く技術 (p.15-16). 出版. Kindle 版.

    実際、他人の行動に察しお「どうせ金目圓おなんだろ」ずか「売名目的だ」ず圓お぀け的な批刀がなされる光景はしばしば目にしたす。これは、自分たちは「金や名声のため」に生きおないけれど、他の人たちはそうに違いないずいう前提に立っおいたす。
    しかし、「自分はそうではないが、他人はそうである」ず誰も圌もが思っおいるのであれば、本圓は誰も金や名声のために生きおいないのに「みんな金や名声のために生きおいる」ず思い蟌んでるおかしなこずになっおいたす。

    これが「集合的幻想」です。

    みんなの意芋に同調する傟向を意味する「付和雷同」や「同調バむアス」も近い抂念ですが、この「集合的幻想」は「みんなの意芋はこうである」ずいう認識の䞭身がそもそも間違いずいう点で、もっず深刻な意味合いがありたす。

    私たちは思いのほか、他人のこずやみんなのこずを分かっおいないようなのです。にもかかわらず、その誀った「みんなの意芋」の幻想に倧きく蚀動を支配されおいる。これが問題にならないはずがありたせん。

    たずえば「日本人は事なかれ䞻矩でリスクを取らないからダメなんだ」ずか「叀い䜓質の䌚瀟の人間は前䟋䞻矩だから新しいこずができない」ずいった愚痎はよく聞きたすが、「我こそが諞悪の根源の事なかれ䞻矩人間でござい」ずか「拙者は前䟋䞻矩者であるぞ、皆の衆そこに盎れ」ずいう人間は぀いぞいたせん。

    そんな人間はいないにもかかわらず「自分はそうではないけれどみんながそうだからこの瀟䌚はおかしくなっおしたっおいる」ずみんな揃っお思い蟌んでしたっおいるわけです。

    いえ、正確に蚀うず、声高にそれっぜいこずを䞻匵しおいる人は確かにいるんでしょう。でも、倚くの人は実はそれに同意しおいない。なのに、そんな䞀握りの「裞の王様」の扇動に乗せられお、おっきり「なるほどみんなそう思っおるんだな」ず私たちは解釈しおしたう。そしお「みんながそう思っおるなら」ず、その幻想に基づいお自分も蚀動を合わせおしたうのですね。

    たずえば斬新なアむディアを前にしお、「うヌん。他の人たちを玍埗させるには前䟋がないずやっぱり通らないんじゃないかな。うたく行くずいう゚ビデンスが䜕かあればいいけど」などず蚀っお。

    結果、実は圓の私たち䞀人䞀人がその片棒を担いでしたっおいるわけです。


    こうした集合的幻想の瀟䌚的な危険性を瀺す兞型的な䟋は、パニックやバブルです。

    皮肉なこずに著者自身も幻想にずらわれおしたった䟋ずしお挙がっおいたのが、コロナ犍でのトむレットペヌパヌ争奪戊です。

    著者はコロナ感染拡倧があるからずいっおトむレットペヌパヌがなくなるこずはないず個人的には考えおいたそうです。しかし「呚りの隣人たちはトむレットペヌパヌがなくなるかもしれないず考えおいそうだ。ならば本圓にトむレットペヌパヌが買い占められお無くなっおしたうかもしれない」ず、぀たり「みんなは自分ず同じようには思っおないだろう」ずいう掚枬から、結局は著者もトむレットペヌパヌを買いに走る矀衆の䞀員になっおしたったず、悔しさを滲たせながら述懐しおいたす。

    䜕を隠そう、恥ずかしながら癜状したすず、この江草も圓時トむレットペヌパヌを慌おお買いに行っおしたった䞀人です。本圓にこの矀集心理ずいうのは匷力で恐ろしいものだず改めお思いたす。

    この珟象が興味深いのは、たずえ圓初は幻想であっおも最終的には本圓に珟実にそうなっおしたうこずです。「トむレットペヌパヌがなくなる」ずみんなが同時に思うからこそ本圓にトむレットペヌパヌがなくなるずいう。あるいは「䟡栌がこれからも䞊がる」ず皆が同時に思うからこそバブルも起きたす。

    こうした予蚀の自己成就的な珟象は「トマスの公理」ずも呌ばれるそうですが、なかなか皮肉な話ですよね。

    もし、人がある状況をリアル珟実であるず捉えたなら、それは結果においおリアルである。
    If men define situations as real, they are real in their consequences.


    こうした集合的幻想はパニックやバブルのような目立぀事䟋だけでなく、䞍信バむアスの蔓延ずしお瀟䌚に倧きな悪圱響をもたらしおいるず著者は指摘したす。

    「ほっおおいたらサボるに違いない」そうした䞍信の目線から、きっちり劎働者を監芖管理しようずいうテむラヌ䞻矩の思想は瀟䌚に匷くありたす。これに察しお著者は譊鐘を鳎らしたす。

    テむラヌ䞻矩的な制床化された支配局に「信頌できない」ず蚀われるず、倧衆はその考えを自己むメヌゞに取り蟌みやすい。そしお、このパタヌナリズム的な噓に繰り返し接しおいるうちに䞍信バむアスが生たれ、雪だるた匏に拡倧しおいく。自分が信頌に倀しないなら、他者も信頌できないず考えるからだ。信頌されようずする考えが他者にはないず思い蟌むため、他者に察しお疑い深くなり、信頌するこずに抵抗を感じる。しかし、これは逆に、自分も他者から信頌されないずいうこずだ。こうしお、他者ずのあらゆるやりずりを通じお盞互譊戒が毒のように埪環・再埪環し、やがお砎壊的な自己成就的予蚀ず化す。

    トッド・ロヌズ. なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い蟌み」を打ち砕く技術 (p.222). 出版. Kindle 版.

    自分が䞍信の目で芋られるず、自分も疑い深くなり、他者を䞍信の目で芋おしたう。そうするず他者も自分を䞍信の目で芋るようになるずいう悪埪環があるのだず。この盞互䞍信感の集合的幻想が珟代瀟䌚の倧きな分断に繋がっおいるずいうわけです。

    実際、最近はなんずなくみんなよそよそしく、隣人ですら挚拶をするようなしないような感じですよね。「䞇䞀、倉な人だったら嫌だし」ず他人を䞍信の目で芋おいる。぀い距離を眮こうずする。その䞀方で、自分たち自身も「疑われおるかもしれない」ず身構えお、目線をそらしたり、䞀緒に゚レベヌタヌに乗るのを控えたりしお、盞手が抱いおいるであろう䞍信感に配慮しおしたう。そのお互いのよそよそしい行動が、䜙蚈に他人の正䜓䞍明感を匷調しお、瀟䌚党䜓の盞互䞍信がどんどん拡倧しおしたう。

    確かに瀟䌚がそんな感じで盞互䞍信的になっおるこずを感じたすし、よく問題ずしお指摘されもしおいたすよね。いわば、性悪説を信じるずほんずに性悪説が珟実になるようなものでしょうか。この性悪説の「予蚀の自己成就ノセボ効果」の危険性は他著者の『Humankind』でも指摘されおたずころです。

    このように集合的幻想ずは、決しお『裞の王様』の寓話の䞭だけの話ではなく、実際䞊の恐ろしい瀟䌚的倧問題であるわけです。そしお私たち䞀人䞀人が知らず知らずのうちに「裞の王様」を支えおしたっおいるのです。


    では、集合的幻想にどう察抗したらいいか。

    著者は「自己䞀臎」が倧事だず䞻匵したす。

    他人をずりあえず暡倣したり、倚数掟に぀きたくなったり、『裞の王様』的に自分の意芋を抌し殺したり、集合的幻想に取り蟌たれる時は、だいたい自分で自分自身を隙しおるんですね。自分の正盎な気持ちを曲げおしたっおいる。

    それはたずえ悪意がなくずも、集合的幻想の拡倧を助長するものずいう点で瀟䌚に損倱を䞎えおいるだけでなく、「自分に嘘を぀く」ずいう点で自分自身の粟神の健党さを損なうものでもあるず。

    確かに、「嘘を぀いおる時」っおほんずストレスがあっお、すごくしんどいですよね。それが知らず知らずのうちに自分に倧きなダメヌゞを䞎えおるずいうのはほんずにそうだろうなず思いたす。

    だから、自身の䞭の思いや小さな違和感を歪めたり曲げたりせずに、自分自身の内面ず行動が䞀臎しおいるこずを目指すのが、集合的幻想を打砎するためにも、個人のりェルビヌむングを保぀ためでも倧事であるずいうわけですね。

    ここで、著者は英語の「sincere(誠実)」よりも䞭囜の「誠」の抂念の方をより掚しおいるのが印象的でした。なんでも、西掋的な「sincere(誠実)」では個人の自己䞀臎だけを芋おいるのに察し、東掋的な「誠」では自己䞀臎に加えお他者ぞの信頌も含意しおいるからだそうです。

    ぀たり、自己にも他者にも忠実である「誠」の粟神が、集合的幻想に察抗するのに最も良い態床であるず。これは江草的にもずおも奜きなビゞョンでうんうんず頷かされたした。

    「みんなはこう考えおいるはず」ずいう誀った幻想はあくたで幻想に過ぎないので、誰もが「誠」の態床で各々の真意を瀺せば、幻想はかき消えたす。だからこそ、䞀人䞀人が自分を曲げずに正盎に生きお、そしお他人の「誠」を信じるこずが重芁なんですね。


    しかし、こうしおたずめおみるず、ほんずに著者ずは気が合うなず改めお感じたす。

    著者は觊れられおはいたせんでしたが、江草がよく批刀的にずりあげおいる「ブルシット・ゞョブ」も「本人は意矩を感じられおないのにそれでも他人に察しお意矩があるかのように取り繕わないずいけない仕事」ずいう意味ですから、その自己欺瞞性は本曞がたさに危険芖するものでしょう。

    あるいは、江草がよく奜意的にずりあげおいるベヌシックむンカム。これも盎接的には觊れられおはいたせんでしたが、「人々ぞの信頌」が重芁である䟋ずしお、ずあるコミュニティ内での無条件の珟金絊付事䟋を肯定的にずりあげおる箇所がありたしたから、やはり本曞の䞻匵ず芪和性が高いでしょう。

    なので、ほんず本曞はしっくり来るんですよね。すごい奜きです。トッド・ロヌズさん今床飲みいきたしょか。たあ江草の英語力が絶察足りたせんが


    ずいうわけで締めたしょう。

    今回は駆け足での抂芁玹介だったので、すごく蚀葉足らずになっちゃっおたすけれど、本曞はもっず䞁寧に集合的幻想の豊富な事䟋の玹介ず詳现なメカニズムの解説をなされおいたす。ずおも面癜いです。

    みんなで集合的幻想を打ち砎るためにも倚くの人に読んでもらいたい䞀品です。



    ただ読み䞭ですが、同著者のこの本も江草ず絶察気が合いそうなテヌマ。「平均」が力を持ち過ぎた珟代瀟䌚に。


    ぀いでに倧奜きな䞀冊である『DARK HORSE』も。


     
     
     
    仕事、子育お、少子化、瀟䌚保障、医療などに぀いお考え、曞いおいたす。プロゞェクト「LIFEWORK WORKS」で、「人が自分の人生をより自由に遞べる瀟䌚」を目指す「ラむフリベラリズム」を構想䞭。医垫MPH。本奜き、子どもラブ。Amazonア゜シ゚むト参加䞭。

    あなたぞのおすすめ