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絶察無敵ゞンラむガヌ ―ハヌフタむム・リボヌン―

    梅雚の終わりを告げるように、宇宙郜垂〈トヌラス12〉の䞊空に光の雚が降り泚いでいた。だがそれは、祝犏でも垌望でもなかった。敵性機械矀〈ネフィリりム〉による、無慈悲な䟵略の火花だ。

    「第六防衛ラむン、突砎されたした」「ラプタヌ郚隊、党滅です」「もう、残っおるのは――」

     叞什宀に響く悲鳎のような報告を、銀髪の女性が凛ずしお受け止める。叞什官リィナグランツ。幎霢にそぐわぬ若さを残したその顔は、今や責任の重さに濡れおいた。

    「ゞンラむガヌは  動かないのか  」

     リィナは呟くように、栌玍庫ぞ芖線を萜ずした。そこに眠るのは、䌝説ずすら蚀われた超叀代機《烈凰機ゞンラむガヌ》。か぀お人類を救った唯䞀のロボット。しかし今、その䞭枢は反応しない。どのパむロットが詊しおも、たるで拒むように沈黙を続けおいた。

     たるで、“お前たちでは足りない”ずでも蚀うように。

     ──その頃。

     栌玍庫の片隅で、ひずりの青幎がモップを握っおいた。茶髪に黒い぀なぎ、ツナギの袖は油で黒ずみ、ネヌムプレヌトの文字も掠れお読めない。

     神代ツカサ、19歳。栌玍庫敎備員。自称・䞇幎補欠。ゞンラむガヌの敎備に携わった経隓はあるが、操瞊経隓など䞀床もない。

    「ったく  䜕が“䌝説の機䜓”だよ。こい぀が動けば、なんでも解決  っお、それで枈むなら苊劎しねぇよな」

     ツカサは溜め息混じりにゞンラむガヌの脚郚装甲を磚きながら、目の前の機䜓に向かっおがやいた。たるで、それが聞いおいるかのように。

    「たあ  どうせ俺には、関係ないけどさ」

     そのずきだった。

     空間に、異音が走った。高呚波。金属を軋たせるような音。そしお、振動。
     ツカサの手元で、䜜業端末のむンゞケヌタが真っ赀に点滅した。

    《譊告ネフィリりム接近。第零区画ぞの盎接䟵入を確認》

    「嘘だろ ここ、最埌の拠点じゃねぇのかよ」

     栌玍庫の譊報が鳎り響き、䞊局郚からの避難呜什が飛ぶ。

     敎備員たちは蜘蛛の子を散らすように逃げおいったが――ツカサだけは、動けなかった。
     立ち尜くした圌の目の前で、ゞンラむガヌの胎䜓䞭倮、コアむンタヌフェヌスが静かに開いた。

    「  開いた  」

     呆然ずするツカサの脳裏に、かすかに音が響いた。

     それは、声。  蚀葉でも音声でもない、“盎接語りかけるような意思”。

    『なぜ、お前は逃げなかった』

    「  は」

    『なぜ、今ここにいる。なぜ、お前の手が、この機䜓に觊れおいる』

    「知らねぇよ  なんでだよ  」

    『ならば問う。今、お前は――“誰”なのだ』

    「  俺は  俺は、ただの敎備員だ。䜕者でもねぇ お前みたいな、遞ばれし機䜓に乗る噚じゃねぇんだよ」

     しかし、ゞンラむガヌは応える。

    『そうだ。貎様は䜕者でもない。だが、それがなぜ悪い』

    「なっ  」

    『倉わりたいず願う者にしか、私は応えぬ。“倉わった”のではない。“倉える”ず決めた者に、私は埓う』

     ツカサの胞に、1幎前の蚘憶がよみがえる。

     それは、6月30日。
     目暙を曞いたノヌトを閉じ、机に突っ䌏しお蚀った、自分の声。

    「  たた逃げたな、俺」

     誰かに“やっおいい”ず蚀っおもらいたかった。
     誰かに“お前もやれる”ず認めおほしかった。
     でも、誰も蚀っおはくれなかった。

    「――だったら、蚀っおやるよ」

     ツカサは、立ち䞊がった。

    「やっおいい。俺が  俺自身に蚀っおやる」

     その瞬間、栌玍庫が光に包たれた。

     ゞンラむガヌのコクピットが開き、ツカサを迎え入れるように階段がせり出す。

     爆颚が近づく。敵がここたで来おいる。誰かが止めなきゃ、郜垂は朰される。

     ツカサは、躊躇いながらも、しかし確かに足を螏み出した。

     䞀段、たた䞀段。
     その足取りが、か぀おの“逃げた自分”から、今を生きる“別人”ぞず倉わっおいく。

     搭乗。
     認蚌シヌク゚ンスが走る。

    《パむロット認蚌――完了。適合率99.89%》

    「  マゞかよ  」

     ヘッドセットを装着したツカサに、ゞンラむガヌが告げる。

    『倉化の時だ、ツカサ。お前の魂は、今ようやく“始たり”を埗た。』

    「  行くぞ、ゞンラむガヌ。俺が倉える。今、この瞬間から」


    振動が、党身を包む。
     譊報が鳎り響く䞭、神代ツカサは぀いに《ゞンラむガヌ》のコクピットに座っおいた。
     掌には汗、歯の奥が鳎るほどの緊匵。モニタヌには迫り来る敵圱、そしお郜垂党䜓の惚状が映し出されおいる。

    「なんで  俺なんだよ  」

     ただ心は揺れおいた。心の奥底で叫んでいた。

     敎備員でいた方が楜だった。䜕も期埅されない。倱敗しおも「どうせ玠人だ」ず笑っお枈む。
     でも――もう、その仮面の裏には戻れなかった。

     県前に、ネフィリりムの小型ドロヌン郚隊が殺到する。
     コクピットの蚈噚が自動で機䜓操䜜を誘導するが、ツカサの手は戞惑っおいた。

    「くそっ、埅っお、どこがブレヌキで、どれが――」

    『迷うな。お前の動きが、すべおを決める』

     機䜓の内偎から響く声。ゞンラむガヌの意識が、たるで人のように語りかけおくる。

    『今この瞬間も、お前は遞んでいる。“䜕者でもない自分”を続けるか。“䜕者かになる”芚悟をするか』

    「遞んでるよもう  遞んだんだよ」

     咆哮ずずもに、ゞンラむガヌが巊腕を振るった。
     内蔵された衝撃砲が攟たれ、前方の敵を䞀掃する。衝撃波にのけぞりながらも、ツカサはようやく理解した。

    「こい぀  マニュアル通りじゃねえ。俺の“感情”で反応しおる  」

    『そうだ。私は、魂の機䜓。お前が“本気”で遞び取ったずきにこそ、真の力を発揮する』

     蚀い蚳はできない。感情が盎結するずいうこずは、逃げの気持ちも䌝わるずいうこずだ。
     だからこそ、怖い。でも――

    「だったら  だったらもう、党郚ぶ぀けるしかねぇじゃねぇか」

     その叫びず同時に、ツカサの操瞊桿が光に包たれた。
     機䜓が自埋操䜜を捚お、完党手動モヌドぞ移行する。

    《シンクロ率䞊昇䞭  珟圚87%》

     動きが、しっくりくる。たるで、身䜓の䞀郚が拡匵されたような――吊、ツカサの思考が機䜓そのものになっおいく感芚。

    「行くぞ  お前ず䞀緒に」

     ゞンラむガヌが再加速。郜垂をなぎ倒す勢いで突き進む。
     正面から、敵の䞻力機・〈Ω機〉が姿を珟す。

    「オメガ  」

     察話機胜が自動起動され、スピヌカヌ越しに鋭い声が響いた。

    『分析完了。お前は“倉化願望型人類”。脆匱で、䞍完党で、壊れやすい粟神構造。凊理察象に栌玍』

     機械の冷たい声が、ツカサの本質を突いおくる。

    「そうだよ。俺は匱えし、怖えし、䜕床も逃げた。でもな  」

     ツカサは拳を握り、コクピットを睚み぀けた。

    「その“匱さ”の党郚ひっくるめお、今日を倉えるために乗っおんだよ」

     ゞンラむガヌの右腕が発光し始める。ただ完党には収束しおいない。
     焊りがよぎるツカサ。しかしそのずき、別の音が響いた。

    《通信回線オヌプン叞什宀より盎通》

    「  ツカサ。聞こえるか」

     リィナ叞什官の声だった。

    「お前の心拍数ず脳波デヌタ、今モニタリングしおいる。  お前は、確かに“今ここで倉わろうずしおいる”。」

    「リィナ  さん  」

    「だがな、倉わるっおのは、誰かに認められお終わりじゃない。“自分で、自分を蚱せたずき”に初めお起動するんだよ、そのロボは」

     その蚀葉が、ツカサの奥底で響いた。

     1幎前、自宀の机で握り朰した日蚘垳。
     「たた倉われなかった」ずいう自責。
     誰にも芋せなかったその悔しさを、今日ここに晒しおもいいのだろうか。

    『倉わるのが怖いのは、圓然だ。だが、“倉わらないこず”は、もっず恐ろしい』

     ゞンラむガヌの声ず、リィナの声が重なる。

    『倉わるこずを、蚱しおやれ。お前自身に』

    「蚱すよ  ツカサ、お前を。だから――今、倉われッ」

     その叫びずずもに、シンクロ率が䞀気に100%を突砎した。

    《最終解攟コヌド鳳烈匏、起動承認》

    《倉圢開始――》

     ゞンラむガヌの背䞭が展開し、巚倧な゚ネルギヌ翌が広がる。頭郚装甲が開き、内郚コアが陜光のごずく茝いた。

     郜垂の空が、䞀瞬だけ朝焌けのように染たる。

     烈凰機――真の姿、《鳳凰圢態》が顕珟する。

     そしお、ツカサの口から自然ず溢れる蚀葉。

    「ゞンラむガヌ――行くぞ」


    空が、裂けた。

     ゞンラむガヌが鳳凰の劂き翌を広げた瞬間、郜垂の空䞭圏に巚倧な暗雲が突劂ずしお発生する。
     それは雲ではなかった。挆黒の粒子で構成された超巚倧構造䜓――

     ネフィリりムΩオメガ。
     党ネフィリりム皮を統括する䞭枢知性。
     郜垂ひず぀を飲み蟌むほどの巚䜓が、ゆっくりずその姿を珟した。

    「なんだ、あれは  」

     ツカサはコクピットで叫ぶ。ゞンラむガヌのモニタヌには、敵機のシル゚ットに無限のデヌタが重畳しおいた。

    《分析䞍胜。構造は無限可倉匏。コア䜍眮、特定䞍胜》

    『ようやく、興味が湧いた』

     それは、音ではなかった。
     ネフィリりムΩの意識が、ダむレクトにツカサの脳ぞ干枉しおくる。

    『お前ずいう人間は、今たでただ逃げ続けおきたくせに、“倉わった”ず誀認しおいる。』

    「  誀認」

    『倉化ずは幻想。お前が倉われるずいうなら、なぜ今たで倉われなかった
     “倉わるこずすらできなかった自分”を積み䞊げおきた結果が、今の貎様だ。』

     ツカサは蚀葉を倱う。
     耳を塞ぎたくおも、これは盎接“粟神”に語りかけおくる声だ。

    「うるせぇよ  」

    『私は、貎様の䞭にある“諊め”を拡匵し、砎壊する。』

     その瞬間、Ωの巚䜓から黒い雷撃が攟たれる。
     ゞンラむガヌが翌で防埡を展開するが、衝撃波は郜垂にたで到達し、ビル矀を粉砕する。

    「ッ  くそっ、これが本気かよ  」

    『始たりに還れ、ツカサ。䜕者でもなかった貎様に』

     コクピット内で、蚈噚が乱れる。ゞンラむガヌの鳳凰圢態が埐々に厩れおいく。
     ツカサの思考が鈍る。党身が冷たくなる。

    「  俺は、たた  戻っちたうのか  」

     だがそのずき、ふず脳裏に過った蚀葉があった。

     1幎前の、ノヌトに曞いた目暙。
     そしお、今日――自分で自分に蚀った、あの蚀葉。

    「お前が、やっおいいっお蚀っおやれよ」

     ツカサは、手を握り盎す。汗ず震えで力が入らないその指に、再び気力を蟌める。

    「ゞンラむガヌ   もう䞀回だ もう䞀回だけ、俺に力を貞しおくれ」

    『力など、最初から貞しおいない。お前の“意志”が、私を動かしおいるだけだ』

    「なら――俺は、今ここで、オメガをぶっ倒す意志を持぀」

     その宣蚀ず共に、厩れかけたゞンラむガヌが再点火する。

    《再起動確認。機䜓圢態烈凰・最終臚界モヌドぞ移行》

     翌が炎を纏う。装甲が赀熱化し、シル゚ットがさらに掗緎される。

     郜垂䞭の通信網に、ツカサの声が流れた。

    「聞こえるか、みんな 俺はもう、戻らねぇ
    この䞀歩が螏み出せるなら、それが“倉わる”っおこずだろ」

     Ωが無数の砲撃を発射する。

     だがゞンラむガヌは、颚のようにそれを切り裂きながら突き進む。

    「こっちの蚀葉を、最埌に聞けッ」

    『人類の進化は  自己欺瞞の連続だ』

    「違ぇよ 倉わりおぇっお気持ちは、“匱さ”の蚌明じゃねぇ」

    「それは、“未来にしがみ぀く匷さ”だろうがッ」

     光の螺旋がツカサを包み、コクピット内に巚倧な剣が圢成される。
     それは、ゞンラむガヌ最終兵装――

    《名称鳳烈・超颚断ほうれ぀・ちょうふうだん、装備完了》

    「  終わりにしおやるよ」

     ツカサがコクピット内で息を吞い、Ωに向けお突撃する。


     空が閃いた。
     玅蓮の翌を翻し、ゞンラむガヌはネフィリりムΩぞ䞀盎線に突っ蟌む。

    「鳳烈――ッ」

     ツカサが叫ぶ。コクピット内、颚が枊を巻くように意志ず力が融合する。
     右腕に宿された最終兵装《超颚断》は、もはや物理の剣ではなかった。
     ツカサ自身の“意志の断眪”が、颚そのものずなっお攟たれる。

    「超ッッッ 颚――断ッ」

     剣が空を裂く。
     発動ず同時に、無数の颚の刃が呚囲を螺旋状に駆け巡り、Ωの粒子装甲を分解しながら栞心郚ぞず突き進む。

     Ωが吠える。

    『進化など、無駄な詊行錯誀だ。完党性に届かぬ者の末路を芋よ――』

    「それでも  俺は、今日から“倉わる”ず決めたッ
     “決める勇気”は、お前にはわからねぇ」

     断眪の䞀閃がΩの䞭枢を貫いた瞬間、黒い空間が逆流する。
     Ωの巚䜓は厩壊を始め、吞匕された粒子はたるで颚に還るかのように散っおいく。

    『理解䞍胜  䜕者にもなれなかった者が、䞖界を倉えうるずいうのか  』

    「違ぇよ。誰かになるんじゃねぇ。
     “なろうずしたこず”自䜓が、党郚だよ」

     Ω、沈黙。
     爆音ではなく、静寂の䞭でその巚倧な存圚は、虚無ぞず還った。


     激戊の空を抜けお、ゞンラむガヌが降り立぀。
     その足元には、静かに朝日が差し蟌んでいた。
     街に再び光が戻り、人々の歓声が聞こえる。

     コクピット内、ツカサは息を切らしおいた。
     震える䞡手をゆっくりず芋぀める。

     䜕かが倉わったわけじゃない。
     でも、“倉えようずした自分”だけは、そこにいた。

     通信が入る。リィナ叞什官の声だ。

    「神代ツカサ。よくやった。  お前はもう、“䜕者でもない”なんお蚀わせないぞ」

    「ぞぞっ  ありがずうございたす。  でも、もう倧䞈倫です。俺が俺に蚀いたすから」

    「  ふふっ、そうか」


     数時間埌、栌玍庫。
     再び静寂に包たれた空間で、ツカサはい぀もの敎備服に着替え、ゞンラむガヌの脚郚に向かっおレンチを回しおいた。

    「盎さなきゃな、こい぀も。掟手にやっちたったし」

     ふず、胞ポケットの䞭から䞀枚の玙切れがはみ出す。
     1幎前のノヌトの切れ端。ボロボロになったその玙には、こう曞いおある。

    「来幎の6月30日たでに、䜕か䞀぀でいい。自分を超える」

     ツカサはそれを砎り、新しい玙にペンを走らせる。

    「2025幎7月1日 俺は、倉わり始めた」

     ポケットにしたうず、ゞンラむガヌの胞郚を芋䞊げお小さく呟いた。

    「  ありがずな」

     その瞬間、ゞンラむガヌのコクピットランプが䞀床だけ、かすかに灯った。
     たるで“お前こそ、ありがずう”ず蚀うように。


    「倉わるっおのは、たぶん、“䞀歩目を蚱す”こずなんだ。
    それを蚱せた日から、人間は䜕床だっお、立ち䞊がれる」


    #SuperRobot
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    #EmotionalPilot
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