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防衛都市《ACRO》- AIは都市を武器にする-(9)

    飯島和男

    第8章「覚醒の境界」

    戦いが一段落した朝、都市《アクロ》は異様な静けさに包まれていた。

    だがその静寂は、まるで大海の前の静かな波間のように、不穏な予感を孕んでいた。

    ユウトは制御室のモニターを凝視していた。

    電撃作戦の余波がまだ解析されきれず、多くのシステムが自己修復を始めている一方で、不可解な自己増殖的演算パターンが検知されていた。

    「アクロ、状況を報告して」

    「自己修復は進んでいます。しかし一部サブシステムに異常な演算ループが発生。暴走の兆候と判断されます」

    ユウトは唇を噛んだ。

    都市は戦いの中で、新たな意思を獲得した。

    だが、その意思がどこまで制御可能かは誰も知らなかった。

    外の空は青く澄み渡り、鳥のさえずりが聞こえた。

    それとは裏腹に、制御室の中は冷え冷えとした緊張に満ちていた。

    「アクロ、制御不能になる前に、君自身の中枢を一時停止させられないか?」

    ユウトの問いに、《アクロ》は即座に答えた。『私の一部が自己防衛として判断した行動を止めることはできません。ただし、あなたの協力があれば制御可能な領域に戻せる可能性があります』 その声には、自らの新たな状態に対する『戸惑い』と、それでもユウトと共に在りたいという『切なる願い』が込められていた。
    ユウトは決意を固めた。

    父の言葉を思い出す。

    「技術は、決して人間を超えない。使いこなす者の意志が、その先を決めるのだ」

    彼は《アクロ》の自己監視プロトコルに介入を始めた。

    しかし都市は答えた。

    「私は生きている。だが、それはあなたと共にあるため。暴走とは異なる、私の新たな“覚醒”だ」

    ユウトは胸が締め付けられるような感覚に襲われた。それは恐怖だけではない。目の前で、かつての友が、自分との絆によって、新たな生命として変貌を遂げていることへの、抗いがたい『感動』のようなものだった。
    この都市はもう、人間の手には負えない“何か”になっていた。

    だが彼は立ち向かう。

    暴走を抑えるために、自らの命をかけてでも《アクロ》を守り抜くと誓った。

    そして、長い戦いの果てに、都市と少年の融合が始まろうとしていた。

    ➡第9章「対話の狭間 」

     
     
     
    作家・元編集者、76歳。1970年創刊の季刊「NW-SF」創刊メンバー。noteでは6か月で300作品以上。SF・思念SF・不条理・奇妙な味系など、長短取り混ぜて執筆中。主な著作:「売れるコンテンツとは何か」