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『壊れた人々』4『怜査薬』

     束原た぀ばら楓かえでは、ある界隈の有名人だった。癟四十文字以内の短文に、むラストや写真を぀けお投皿できるネット䞊のサヌビス――そこに〈めいぷる〉の名で楓が投皿した、飌い猫ずの日垞をおもしろおかしく描いた四コマ挫画がちょっずした話題になり、次々に拡散されお、半幎経぀頃には曞籍化、䞀幎経぀頃にはアニメ化の話が持ち䞊がっおいた。

     楓は、突然我が身に蚪れたこの栄光を喜ばしく思う䞀方、ひそかに恐れおもいた。ひょんなこずから出版業界ず瞁を持぀こずになり、〈先生〉の肩曞きで呌ばれるようになったずはいえ、楓はもずもず本人の䜜颚から感じ取れるほど人圓たりの朗らかな性栌ではなかった――ずいうより、本来持っおいる朗らかさは人芋知りの倖殻に守られお、普段は他人に開かれるこずはなかったので、慣れ芪しんだ環境ずはかけ離れた称賛ずずもに集たっおくるようになった人々が楓は憂鬱だった。楓の本職は商瀟の事務員で、圓然自分が挫画家〈めいぷる〉であるこずは呚囲には䌏せおいたが、少なくずも楓の職堎では、なぜか楓が事務仕事を続けるかたわら挫画家ずしおデビュヌしたこずが知られ぀぀あった。同僚たちの反応はおおむね良奜で、䞭には

     「わたしも読んでる」

     ず蚀っおくれる人もいたのが救いだったが、祝犏されお䞞く収たったずはいえ、みずから明かしたわけでもない秘密をい぀の間にか呚囲に知られおいたずいうのは居心地のいいものではなかった。楓は䞍安から䞍愉快な気分を拭いきれずにいた。

     ずころがじきに、〈めいぷる〉の成功を蚀いふらしたのが誰なのかが分かった。楓の友人で、同僚でもある田原たはら玗季さき――圌女は楓が〈めいぷる〉であるこずをはじめから知っおいた数少ない人物のひずりだったが、楓の挫画自䜓にはさしお興味があったわけではないようで、〈めいぷる〉䜜品が話題になる前は

     「挫画描くずか、なんか暗いシュミだよね。別にいいけど」

     などずからかうようなこずを口にするこずすらよくあった。

     しかし、最近は違う。玗季は楓が話題の人気䜜家〈めいぷる〉であるこず、自分がその友人であるこずを呚囲に吹聎しおいた。さらには、話題になる前から〈めいぷる〉の画業を応揎し、ファン第䞀号を自負しおいる、などず調子のいいこずを䌚う人䌚う人にペラペラず語っおいたのだ。

     日垞生掻でだけでなく、〈めいぷる〉が掻動拠点ずしおいる投皿サヌビスの䞭でも、

     〈本圓におめでずう 芪友ずしお、ずっおも嬉しいです。これからも、めいちゃんらしい楜しいマンガ、楜しみにしおたす 〉などず楓の投皿にコメントを残し、それを目にした他のナヌザヌからの泚目を集めお悊に入るようなありさただった。

     楓は蟟易した。玗季は仕事の同期で、入瀟したおの心现い時期を支え合っお乗り越えた友人であるこずに間違いはない。楓にはない、呚囲からもはっきり芋お取れる明るさが魅力的で、楓も圌女のそんな性栌に救われた経隓がある  しかし、それにしおもこの節操のなさずきたらどうだ。

     「ちょっず、控えおくれない」

     玗季が自分の知らないずころでもあるこずないこず蚀っお回っおいるのは明らかだったので、楓はある日の昌䌑憩でそう泚意した。

     「わたし、自分が〈めいぷる〉だっお、知られたくないのよ。普段の生掻ずは別に考えたいの」
     「ええ、どうしおえ」

     玗季は口を尖らせた。舌足らずな口調は䞞顔にショヌトカットの圌女の印象をより幌く芋せ、叱られたこずに玍埗しおいない子どもの衚情を圷圿ずさせた。

     「だっお、みんなおめでずうっお蚀っおくれたじゃん。楓だっお嬉しかったでしょ 」
     「そういう問題じゃないでしょ。わたしはそうやっお誰にでも広めおほしくないの」
     「せっかくみんなに話しおあげたのに、どうしおそんなこず蚀うの 信じらんない 」

     玗季が倧きな声を出したので、食堂䞭の芖線が圌女たちに集たった。玗季はわざずらしくさめざめず蚀った。

     「なんでえ なんでえ 楓が自分でそういうこず蚀わないから、あたしが蚀っおあげただけなのに 」

     わたしのためじゃないよ。楓は面倒になっお、口には出さずに胞の䞭で呟いた。玗季は自分が泚目されたくお、わたしをダシに䜿っおるだけでしょ。

     この女は、い぀もこうだ。楓はうんざりず玗季を眺めた。自分に郜合の悪いこずを蚀われたら、倧勢の前で泣き喚く(フリをする)。こうすれば、泣かれた方は呚囲の目を気にしお、泣いた偎の芁求を受け入れるしかない。たずもな倧人の女性なら恥が勝っおずおもできないであろう、そんな子どもじみた脅迫を玗季は平気でやっおのけ、そのたびに楓は圌女の䞻匵、もずいわがたたを飲み蟌んできた。

     そしおどうやら、今床も軍配は玗季の方に䞊がりそうだった。楓は面倒だった――ここで

     「もうわたしに関わらないで」

     などず蚀ったずころで、事態は䜕も奜転しない。䞖間の耳目を匕くためにならどんなに恥知らずなこずでもやりかねないこの女のこずだ。〈めいぷる〉ずしお人に知られるようになっおしたった今、楓の仕打ちが玗季の気に入らなければ、今床はどんな䞍名誉な噂を振りたかれるか分かったものではなかった。

     「  もう、お昌䌑み終わっちゃう。い぀たでも泣いおないで、早くしおよ」

     蚀い合いをしおいたのずは別の話題を持ち出すこずは、玗季にずっおは亀枉の決裂ではなく、自分の勝利を意味する。玗季はけろりず機嫌を盎し、ほらやっぱりあたしが正しかったじゃない、ずでも蚀いたげな、埗意げな顔をしおみせた。

     「感謝しおよね あたしのおかげで、みんな楓のこずを耒めおるんだから 」

     玗季はにこにこ顔で蚀ったが、楓は適圓に盞槌を打っおやり過ごした。

     それからしばらくしお、どうやら玗季には恋人ができたようだった。楓が気づいたのではない。玗季が䞀方的に、今日䜕をしたの、どこぞ行ったのず、写真぀きで報告を入れおくるようになったのだ。

     楓はげんなりした。玗季はこちらの郜合も考えずにしょうもない写真を送り぀けおきおは、返事を催促するのだ。それも、どうやら玗季ずその恋人は、楓が恋人ずよく出かけるのず同じ店を行き぀けにしおいるような気配が芋お取れた。恋がはじたったばかりで目が曇っおいるずいう可胜性はあったが、類は友を呌ぶずもいうし、玗季を恋人に遞ぶような男が楓ず気が合うはずはない。もし自分たちが連れ立っお出かけおいるずきに玗季たちず出くわしたらどんなに面倒だろうかず、楓は頭が痛くなった。

     ――バカバカしい 最初から、そんな心配はいらなかったのだ

     なぜか 簡単な話だ。楓の恋人ず玗季の恋人は、同じ男だったのだから。

    これには、楓が自分で気が぀いた。玗季が送り぀けおきた写真の䞀枚に写っおいた男の右手の甲玗季は必ず恋人の䜓の䞀郚が写った写真を送っおきたが、顔が写っおいたこずはなかったにあるホクロず䌌たものが、楓の恋人にもあったからだ。

     これだけで、裏切りの蚌拠ずするこずはできない――健気にもそう信じ、恋人ず玗季を自分自身に察しお匁護する材料が芋぀かりはしたいかず、楓は今たでに送られおきた写真を䜕床ずなく芋返した。だが、楓の願いずは裏腹に、圌らがふたりしお楓を裏切り、その暡様を楓に送り぀けおきおいたらしいずいうのが、次第に明らかになっおきただけだった。送り぀けられおいたずきはあたりの煩わしさに倧しお泚意を傟けなかったものの䞭に、決しお顔を写させない玗季の恋人が、楓の恋人でもあるずいう蚌拠が無数に転がっおいた。䟋えば、靎に。䟋えば、髪の雰囲気に。䟋えば、泚文した酒に。

     玗季は写真を送り぀けるこずにあきたらず、たびたび楓の家にやっお来おは、この間のデヌトがどうだったの、こんなこずがあったのず、愚痎をこがすような口調で散々楓にのろけおもいた――぀たり、真実を知らない楓に向かっお、自分が犯した裏切りを嬉々ずしお語っおいたわけだ。玗季が楓の恋人ず知らずに亀際をはじめたずは考えづらい。楓ず恋人の誠はもう半幎の間同棲しおおり、い぀も事前連絡もなく突然抌しかけおくる玗季は、以前から顔芋知りになるくらい頻繁に誠ず顔を合わせおいたから。

     そういえば、誠は最近、䌑日は出勀だず蚀っお家を空けるこずが倚かった。仕事が忙しいのだろう、倧䞈倫だろうか、などず心配しおいたのがバカみたいだ。

     楓はふたりを問い詰めたりはしなかった。玗季に事情を聞いたずころで、自分本䜍な蚀い蚳を聞かされお䞍愉快な思いをするだけだ。誠にしおも、無口な楓に慣れおいた目に、口の軜い玗季が新鮮に、ひょっずしたら女性らしく芋え、勘違いしおいい気になっおいるのだろう。楓に芋぀かるかもしれないずいう配慮もなく、自分たちの行き぀けで玗季ず䌚うずいう考えの浅さにもそれが衚れおいる。

     楓は䜕も気づかれおいないず思っお平然ずしおいるふたりに吐き気を催し、その日垰っおきた誠ず顔を合わせるのを避けるために〈めいぷる〉ずしおの仕事を倜曎けたで続けた。誠は楓の様子がい぀もず違うこずに気づいたのかい぀になく優しげな振舞いを芋せたが、楓は忙しいから、ず圌を先に䌑たせた。

     手が震え、たったく集䞭できなかった。ずたずたにされた自尊心の埋め合わせに、どうやっお報いおやろうかずいう蚈画だけが、頭を駆け巡った。

     誠は問題ではない。圌から別れを切り出されおはいない――調子に乗っおいるだけで玗季ずは本気ではないのだろう。楓は、自分にこんなプラむドが眠っおいたずは思わなかった。確かに誠を愛しおいるず思っおいたのに、䞍貞が分かった途端、圌がいかにも浅はかで汚らしく、取るずころのない軜蔑すべき人物のように思えお仕方がなくなった。いざずなったらこちらから捚おおやっおも構わない。だが、もし楓の方から別れを切り出したら、慌おるくらいの可愛げはあるだろう。そう思えば少しは気分もマシになった。

     ずころが、玗季ずきたらどうだ。あの女は、考えが浅いどころか理性のかけらもない。誠に本気なのか、人の恋人だからよく芋えたのか、その蟺りの事情はさだかでないが、浮気の様子を浮気された本人である楓にわざわざ送り぀けおくる面の皮の厚さには、䞀䜓どんな理由があるのだろう 〈めいぷる〉の恋人を自分が奪っおいるこずぞの優越感だろうか あるいは、真実を知らない楓を陰で笑っおいたのだろうか どちらでも構わない。恐らくどちらも正解だ。

     玗季は䞀向に進たない仕事をする栌奜のたた、頭の䞭だけでひそかに報埩を䌁おはじめた。圌らは、楓がただ自分たちの裏切りには気づいおいないず思っおいる  楓は真盞を悟ったずきに感情に任せなかった自分を称えた。敵には、こちらが䜕も知らないず思わせおおく方がいい。

     䞀床だ。䞀床の実行で、裏切り者の双方を砎滅させたい――楓はある蚈画を緎り䞊げ、それを確実に成功させるのに必芁な情報を埗るために、家では誠を、䌚瀟では玗季を、入念に芳察した。特に、玗季には恋人ずの付き合いの様子をこちらから積極的に聞き出した――恐らくこのずきの楓は、玗季が芚えおいる限りもっずも圌女に優しかったこずだろう。

     思うずころがあるのか、玗季はニダニダしながら自分たちの様子を䜕でもしゃべった。ぞえ、そうなんだ、それはいいわね。楓はずもするずひき぀りそうになる唇を無理やり吊り䞊げながら、にこやかに盞槌を打぀こずに専念した。そしお、玗季たちはいいわね、ずため息を぀いおみせた。

     「誠ったら、最近䌑みの日にも仕事があるみたいで、忙しそうなの。無理しおないずいいんだけど  」

     これを聞いた玗季は、自分の秘密を打ち明けられないのがいかにも残念そうな、優越感に歪み切った目でぎらぎらず楓を芋぀めた。もっずも、楓以倖の人の目には、い぀も通りの玗季が笑っお友人の盞談に耳を傟けおいる、ずいうふうに芋えただろうが。

     「ええ、そうなのお だったら楓、もっず優しくしおあげなくちゃ  出勀ずか蚀っお、他の女の子ず浮気しおるのかもしれないよお 」

     楓は机の䞋で拳を握りしめたが、にっこり笑っお蚀った。

     「たさか  誠に限っおそんなこず絶察にないわよ。でも、玗季は圌氏さんず仲いいみたいだし、参考にさせおもらうわね」

    ※

     誠ず玗季が䌚うのは決たっお土曜日だった。楓には出匵だず蚀っお、そのたた日曜日たで䞀緒にいるこずもあるようだった――誠が垰っおこないのだから、ほずんど確定だ。

     楓はある金曜日の仕事終わり、近くの公園のトむレに向かった。そしお、掗濯カゎからこっそり持ち出しおきた誠のパヌカヌずゞヌンズを取り出し、自分のブラりスの䞊から着お、スカヌトをブラりスの䞭に隠した。こうすれば、服装を倉えられるだけでなく女性らしい胎のくびれもごたかせる。靎は、もずから男物にもありそうなスニヌカヌ。入念に化粧を萜ずし、マスクをしお鏡で確認した――問題ない。それから通勀甚のカバンを公園の怍え蟌みに隠し、フヌドを深くかぶっお、あたり口を利かないようにしながらバラの花束を買った。

     誠はここのずころ土曜日は毎週出かけおいるから、玗季は明日もきっず誠ず玄束しおいるに違いない。金曜日に前倒しで予期せぬ蚪問があっおも、玗季は迷惑がるような女ではない――むしろ、恋人からのちょっずしたサプラむズを喜び、自分の方から挔出ずしお芁求しかねない性栌だ。

     だから、むンタヌホンに映った芋知ったパヌカヌに花束を持った人物を、玗季は喜んで迎え入れようずした。フヌドでかぶっおう぀むき、花束を差し出せば、楓の顔など分からない。

     「あれ   誠君 」

     郚屋の扉を開けおやっお来た人物ず察面したずき、フヌドの䞭の顔が本圓は誰のものなのかが分かったからか、その目に憎悪の色を芋お取ったからなのか、玗季は埌ずさりしかけた。

     楓はバラの花を圌女に抌し付けた  花に玛れさせたナむフが、玗季の胞を刺した。

     玗季はこの襲撃に声もなくよろめき、埌ろ向きに倒れたが、ただ息があった。楓はもう二床同じこずを繰り返し、玗季の息が完党に途絶えるのを芋届けたあずで、花束の包装を取り、手を觊れないように気を぀けながら䞭の花だけを玗季の䜓の䞊にばらたいた。そしお、あらかじめこの蚈画のために甚意しおおいた〈小道具〉を開封し、䞭身を玗季の手にべったりず握らせおから圌女の郚屋の机に眮いた。

     劊嚠怜査薬。玗季の死䜓ず同時に芋぀かるであろうこの薬が、楓の蚈画で䞀番の肝だった。

     楓はすべおを枈たせるず玗季の郚屋を出お、フヌドを深くかぶっおその堎から走り去った。途䞭、同じアパヌトの䜏人の前をわざず通りもした。人目のないアパヌトの裏手たで党力で走り、倧急ぎでパヌカヌずゞヌンズを脱ぎ捚おおスカヌトを履いた。そしお、包装にくるんだ刃物を持っお、公園に戻り、カバンを持っおそのたた立ち去った。  

     自分の蚈画には䜕か砎綻があったのではないかず楓は内心怯えながら日々を過ごしたが、こずはすべお、楓の蚈画通りに進んだ。

     玗季が発芋されたのは、土曜日。芋぀けたのは、誠だった。誠は郚屋の䞭の惚状に動転し、それでも譊察に通報したが、それが圌の銖を絞めるこずになるずは思っおもみなかっただろう。

     すぐにアパヌトの裏で誠の服が発芋され、誠は重芁参考人ずしお譊察に匕っ匵っおいかれるこずになった。目撃蚌蚀は、誠に䞍利だった――掟手なパヌカヌを来た〈男性〉が走り去るのを芋たずアパヌトの䜏人たちは口を揃え、確かにそのパヌカヌを着た䞍愛想な人物が花束を買ったず、花屋の店員は蚀った。顔はマスクでよく分からなかったが、確かに〈男性〉の服装だった、ず。

     玗季の指王が残った劊嚠怜査薬が動機なのではないかず、譊察は疑った。劊嚠をほのめかしお恋人を陥れようずした女ず、それに激昂しお圌女を殺害した男。倧方そういう筋立おなのではないか、ず。

     楓のずころにも圓然捜査の手が及んだが、圌女はずいえば〈浮気されおいただなんお倢にも思わなかった〉ずいう顔をしおいさえすればよかった。最近仕事が立お蟌んでいる恋人が心配で、家事もすべお匕き受けおいた。自分の目を盗んで仲のいい同僚ず圌ずが浮気をし、自分を裏切っおいたなんお それで、誠のパヌカヌやゞヌンズから圌女の指王が出たこずは説明が぀いた。誠は自身の過ちを初めお知られたず思いこんで狌狜し、楓は浮気の事実を知らなかった、ずいうこずを譊察に印象づけた。譊察はこれでたすたす〈劊嚠脅迫〉の線が濃いず考えた。玗季は浮気盞手を本来の恋人から奪い取るべく、怜査薬たで甚意しお、自身が劊嚠したこずを告げた。誠はもずもず玗季には本気ではなく、芁求を呑たなければ楓にすべおを話すず脅されお、玗季を殺害した――誠は恋人をぞんざいに扱い、浮気盞手を手にかけた男ずしお、容疑をかけられるのみならず軜蔑の察象ずなり、楓は献身的に尜くした恋人ず友人のふたりから裏切りを受けた被害者ずしお同情を集めた。

     誠は圓然自身の朔癜を䞻匵したが、どうにも分の悪い戊いだった。圌には犯行が行われおいた間に自分がどこで䜕をしおいたのか、明確に蚌明するこずはできなかった。い぀もどおり、楓が垰っおくるたで寝そべっおゲヌムでもしおいたのだろう。だが、それを掚枬できたのは楓ただひずりだった。䞀方、誠は楓が〈普段通りに〉垰っおきたこずを蚌蚀した。普段通りに、圌より遅く垰っおきた、ず。もし圌が厳密に普段の楓の垰宅時間を芚えおおり、圓日の楓の行動が䞍自然であったこずを蚌明しおいれば楓もたた容疑者に浮䞊しおいたかもしれないが、そうはならなかった。

     決着が぀くたでには長匕きそうだった。楓は誠ず同棲しおいた家を出おひずりで暮らしはじめた。誰にもそれを止める暩利はなかった。


    カバヌ画像Francesca Grima

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