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KOKORO再誕:第21話 エピローグ

    平成二十二年 十月某日

     気が付くと、由実世は廊下の長椅子に座っていた。フォーマルなパンツスーツを着用し、傍らにはビジネスバックが置いてある。

    (ウトウトしちゃった。何か、長い夢を見ていたような……)
     腕時計を確認すると、分針が頂点を刺すところだった。

    (いけない! 今から面接だった。急がなきゃ)
     由実世は焦って立ち上がると、応接室のドアをノックする。

    「どうぞ、お入り下さい」

    「失礼します」
     まずはきちんと返答できたことに安堵する。だが、入室しながらも不穏な動悸が高まっていく。

    「仲峯さんですね、どうぞおかけください」
     面長&胴長の面接官が着座を促す。由実世は黙礼しながら、下座のパイプ椅子に座った。

     やつれ顔の初老面接官が、骨ばった顎をゆっくりと動かす。
    「では、まずは履歴書をお願いします」

     由実世が慌ててビジネスバックに手を突っ込むと、引っ張り出した茶封筒から履歴書を抜き出す。

    (なんだろう、この胸騒ぎと既視感……)
     前歯の裏に舌を這わせ、次なる質問を待つ。

    「私は理倶知新聞の加須貝かすがいと申します。彼は課長の原田です」
     初老面接官が、ぞんざいに片手で名刺を差し出す。由実世は恭しく両手でそれを受け取った。

    「ではまず、自己紹介をお願いします」
     胴長の原田課長が由実世に話を振る。

     浅く頷いた由実世が、頭の中で模範解答を反芻する。胸の内がドラムの様に跳ね、開いた口からは小さな喘鳴が漏れる。
     
     二人の面接官の視線が痛かった。夢への道を閉ざす、悲しき症状が由実世を襲っていた。懸命に喋ろうと肺に空気を溜めたその時、由実世の脳裏に異世界の情景が一気に蘇った。

     共に働いた記者仲間と培った経験。同行した勇者パーティと分かち合った苦楽。そして、大好きだった母との再会と別れ……。数々のフラッシュバックが、由実世の心の傷を溶かしていく。

     本来の自分を取り戻した由実世が、明るい眼差しで面接官と向き合う。

    「私、仲峯由実世と申します。新聞記者への強い憧れがあり、御社を志望させていただきました」
     ハキハキと発言するユミヨに対し、面接官たちがホッと胸を撫でおろす。

     由実世は質疑応答しつつ、瞼の端に溜まった涙を人差し指で拭い去る。心の闇は完全に晴れ、由実世の人生は再び軌道に乗り始めたのだった。

                           了

     
     
    初めまして、歴 悠輔 ※レキユウスケ と申します。漫画原作を中心に投稿予定です。宜しくお願いいたします。

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