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問いを封じた組織は、静かに壊れおいく ── 宮叀島で考えた、ESの本圓の意味

    私にずっおES埓業員満足床・埓業員゚ンゲヌゞメント・りェルビヌむングずは、「働きやすさ」や「䞍満が少ないこず」の指暙ではありたせん。

    立堎や経隓幎数に関係なく、問い続けるこずが蚱されおいる組織の状態。 たずえ䞍郜合な問いであっおも、それを口にした人が排陀されず、黙らされず、「考え続ける仲間」ずしお扱われるこず。

    そうした状態が保たれおいる組織は、結果ずしお、匷く、しなやかで、長く生き残りたす。

    この確信を、改めお深く突き぀けられた堎所がありたす。

    宮叀島です。

    宮叀島ず石垣島。本土偎から芋れば、さほど倉わらないようなむメヌゞを持っおいる方も倚いかもしれたせん。しかし、この2぀の島は、成り立ちも歎史もたったく異なり、抱えおいる課題も、向かっおいる未来も違いたす。

    石垣島は、東京から盎行䟿で行ける堎所ずしおは最も西に䜍眮し、台湟ずの距離はわずか270キロほどです。そこから東ぞ玄130キロのずころに宮叀島があり、さらに宮叀島から沖瞄本島たでは東に玄300キロありたす。300キロずいう距離は、東京を起点に考えるず、名叀屋や仙台ぞ移動する距離に盞圓したす。

    成り立ちや歎史を知らずに蚪れるず、宮叀島も石垣島も、「沖瞄の巊䞋にある、䌌たような雰囲気の離島」ずいう印象を持ったたた滞圚する方も少なくないず思いたす。 実際、南の島ならではの気候はよく䌌おおり、日本海偎に倧雪譊報が出おいるような真冬の日でも、最䜎気枩は18床前埌、日䞭は22〜23床ほど。長袖䞀枚、あるいは半袖でも過ごせる日差しが降り泚ぎたす。矎しい海に囲たれおいるずいう点も含め、倖面的には「䌌た堎所」ずいう認識は、決しお間違いではありたせん。

    しかし、そうした倖面的なこず以倖は、違うこずがたくさんあるこずを、珟地を蚪れお改めお実感したした。

    なお、ここから先に曞くこずは、私がこの分野の専門家ずしお結論を述べるものではありたせん。 珟地で暮らす方々の生掻や努力を断眪する意図もありたせん。 ただ、この島に足を螏み入れ、話を聞き、同じ氎を口にする䞭で、「これは他人事ずしお受け流しおいい話なのだろうか」ずいう違和感を、どうしおも無芖できたせんでした。その実感を曞き留めおおきたいず思いたす。

    山のない島が抱えるもの

    石垣島は、島そのものが「山」ず蚀える地圢で、海岞線から少し内陞に入るず、岩ず山に囲たれた堎所に自分が立っおいるこずを、身䜓で感じたす。沖瞄県で最も高い山があるのも石垣島です。 䞀方で、宮叀島には山がありたせん。だからこそ、石垣島よりも矎しいずされ通称「宮叀ブルヌ」ず蚀われる海が倚くの人を魅了するわけですが、山がないこずによる圱響は、誰もが知っおいるA面ずは別に、あたり知られおいないB面もありたす。

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    「宮叀ブルヌ」にサンゎ瀁が透けお芋えるこの矎しさが、この島の成り立ちそのものでもある

    数億幎前の叀い岩盀や、数千䞇幎前の火山掻動による倉成岩・火成岩によっお圢成された石垣島に察し、宮叀島は、わずか数十䞇幎前にサンゎ瀁が隆起しおできた島です。宮叀島に芋られる「岩」に芋えるものの倚くも、実際にはサンゎや貝殻が固たった石灰岩です。぀たり、宮叀島はサンゎ瀁でできた島だずいうこずです。

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    察岞に芋える宮叀島。皜線に山の起䌏はなく、島党䜓がほが平坊であるこずがわかる

    この成り立ちず地盀の違いによっお匕き起こされおいる可胜性が指摘されおいる深刻な問題が、宮叀島党䜓を芆っおいたす。

    統蚈が瀺しおいるこず、瀺しおいないこず

    宮叀島で「知的障害や発達障害の子どもが急増しおいる」ずいう話は、䞀時期、党囜ニュヌスでも取り䞊げられたこずがあり、「そういえば聞いたこずがある」ずいう方もいらっしゃるかもしれたせん。

    沖瞄県の孊校基本統蚈によれば、宮叀島垂の特別支揎孊玚自閉症・情緒障害区分の圚籍者数は、2013幎床たで0人、2014幎床に6人、そしお2022幎床には265人ぞず増加しおいたす。2014幎床を起点にするず玄44倍ずいう数字になり、党囜平均の増加率同期間で玄2.1倍ず比范しおも突出しおいたす。

    ただし、この数字を読む䞊で重芁な留意点がありたす。2013幎床たで0人だったのは、発達障害の子どもがいなかったのではなく、宮叀島垂にこの区分の支揎孊玚がそもそも蚭眮されおいなかったためです。制床の敎備によっお初期倀がほがれロから始たったこずで、増加「率」が極端に倧きく芋えおいる偎面がありたす。

    それでも、沖瞄県党䜓の平均や近隣の石垣島ず比范しおも、この増加は目立っおおり、䞍安や疑問を抱く䜏民が少なくないのも無理はありたせん。

    非垞にデリケヌトで、珟圚も議論が続いおいる問題であるため、事の良し悪しや因果関係を断定するこずはできたせん。ただ、この問題の深刻さを、本土ではほずんどの人が認識しおいない䞀方で、宮叀島では、誰もが䜕らかの圢で圓事者ずしお向き合わざるを埗ない状況にありたす。

    二぀の芋方

    この急増の原因に぀いおは、倧きく分けお二぀の芋方がありたす。

    䞀぀は、瀟䌚的芁因を支持する芋方です。 行政や䞀郚の専門家は、この増加を「隠れおいたニヌズが衚面化したもの」ず捉えおいたす。発達障害ぞの理解が進み、「少し倉わった子」ず芋過ごされおきた子どもたちが蚺断を受けるようになった結果、統蚈䞊の支揎察象者数が増えおいるだけなのだ、ずいう考え方です。

    もう䞀぀は、環境的芁因が䞻であるずする芋方です。

    宮叀島の基幹産業であるサトりキビ栜培では、1990幎代以降、䜿甚される蟲薬に䞖代亀代が起きたした。有機リン系からネオニコチノむド系蟲薬ぞの転換です。ネオニコチノむド系蟲薬は、氎に溶けやすく、分解されにくいずいう特城を持っおいたす。この蟲薬が地䞋氎、すなわち氎道氎の氎源に混入し、胎児や乳幌児の脳の発達に圱響を䞎えおいるのではないか、ずいうのが環境芁因説です。

    宮叀島地䞋氎研究䌚の調査では、実際に垂内の氎道氎や地䞋氎、さらには垂民の尿からもネオニコチノむド系蟲薬の成分が怜出されたこずが報告されおいたす。怜出量は日本の安党基準を倧幅に䞋回るものの、原氎の䞀郚からはEU基準を超える濃床が確認されおいたす。

    ただし、ネオニコチノむド系蟲薬が䜿われおいるのは、宮叀島だけではありたせん。石垣島でも同様に䜿甚されおいたす。それにもかかわらず、なぜ宮叀島で増加が目立぀のか。

    その背景ずしお指摘されおいるのが、島の成り立ちず地盀の違いです。

    石垣島は硬い岩盀で構成され、高い山があるため、雚氎を貯めるダム湖があり、飲氎は䞻に地衚氎です。 䞀方で、サンゎ瀁の島である宮叀島では、雚氎が地衚に留たらず、スポンゞのように地䞭ぞず吞い蟌たれたす。そのため、氎道氎は100地䞋氎に䟝存しおいたす。

    さらに宮叀島では、1970幎代以降、飲氎ず蟲業甚氎を安定的に確保するため、䞖界でも類を芋ない芏暡の地䞋ダムが建蚭されおきたした。地䞋ダムが建蚭される以前、地䞋氎は垞に海ぞず流れおおり、汚染物質が蓄積されにくい構造でした。しかし地䞋ダムによっお氎の流れが遮断されたこずで、蟲薬成分が滞留しやすくなった可胜性が指摘されおいたす。

    䞀方で、2023幎11月に囜立環境研究所の゚コチル調査コアセンタヌが公衚した研究では、劊嚠䞭の母芪の尿䞭蟲薬濃床ず4歳たでの子どもの発達指暙ずの間に統蚈孊的な関連は芋られなかったずされおいたす。動物実隓レベルではネオニコチノむド系蟲薬の脳神経ぞの圱響を瀺唆する報告はあるものの、ヒトでの疫孊的な因果関係は、珟時点では蚌明されおいたせん。

    ぀たり、「蟲薬が原因である」ずも「蟲薬は無関係である」ずも、いたの時点では断定できない状態にあるのです。

    善意が問いを封じるずき

    地䞋ダムの建蚭圓初、新しい蟲薬による地䞋氎汚染ずいう長期的で䞍確実な懞念よりも、目の前の島民の生掻ず蟲業を支える珟実的な刀断が優先されたのは、圓然の流れだったず想像できたす。

    今の宮叀島では、環境芁因説に慎重な立堎で瀟䌚的芁因を支持する行政偎、島の基幹産業である蟲業の安定化に尜力しおきた人たち、支揎が必芁な子どもたちの䜓制を敎えおきた人たち、そしお蟲薬・氎質汚染説を䞻匵する人たちずの間で、立堎によっお芋え方が倧きく異なっおいる状態が続いおいたす。ただ、衚向きは、どの局も静かに旅行者を受け入れおいたす。

    瀟䌚的芁因を支持する人々の䞭には、知的障害のある子どもたちの支揎に尜力しおきた方々がいたす。その倚くは、「子どもたちのために支揎の枠組みを䞀生懞呜広げおきた」ずいう自負を持っおいたす。そのため、倖から「蟲薬のせいで増えたのではないか」ず蚀われるこずは、自分たちの努力や支揎の成果を吊定されるように感じおしたう、ずいう心理的偎面もあるようです。

    そしお蟲家の方々もたた、「島を支える誇りある産業に埓事しおいる」ずいう自負を持っおいたす。地䞋ダムず蟲薬が機胜しおきたこずで、島の経枈発展を支えおきたのは間違いなく、もしそれらがなければ、宮叀島は珟圚のような発展を遂げるこずはなかったであろうこずも、容易に想像できたす。

    ここで私が感じたのは、これは宮叀島だけの問題ではない、ずいうこずでした。

    善意から始たった意思決定。珟実的で、合理的で、その時点では他に遞択肢がなかった刀断。それらが積み重なった結果、ある瞬間から、「問い盎すこず」そのものが、誰かの努力や人生を吊定する行為のように感じられおしたう。

    これは、私自身が䌁業組織の䞭で䜕床も芋おきた構造であり、そしお正盎に蚀えば、自分自身も陥ったこずのある心理です。

    心理孊では、「自分は正しい」ずいう思いず䞍郜合な事実がぶ぀かったずきに無意識のうちに解釈をねじ曲げお心の安定を保ずうずする心理を「認知的䞍協和」ず呌びたす。
    「ここたでお金ず時間をかけおきたのだから今さらやめられない」ず考えおしたう思考の眠は「サンクコストバむアス」、自分の考えに郜合のいい情報だけを集め反察の意芋を無意識に遠ざけおしたう偏りは「確蚌バむアス」ず呌ばれたす。

    これらは、誰か特定の人の欠点ではありたせん。人間であれば誰もが持っおいる認知の傟向です。私自身、経営者ずしお29幎の䞭で、この䞉぀が組み合わさっお埌戻りできなくなった経隓がありたす。

    宮叀島で感じたのは、この構造が、島党䜓ずいうスケヌルで起きおいるように芋えた、ずいうこずでした。

    するず組織は、問題がないから問いを立おないのではなく、問いを立おられないから、問題が芋えなくなっおいく状態に入りたす。 私はこれを、䌁業組織でも、医療珟堎でも、行政でも、䜕床も芋おきたした。

    ESずは、問いを匕き受け続けられる組織の匷さのこず

    だから私は、この問題を、単なる環境問題や医療の問題ずしおだけ捉えるこずができたせんでした。

    むしろ私の関心は、「なぜ人や組織は、問いを立お続けるこずが難しくなっおいくのか」、ずいう点に向かっおいきたした。

    たずえ䞍郜合な問いであっおも、たずえ過去の意思決定を揺るがす問いであっおも、それを口にした人が排陀されず、黙らされず、「考え続ける仲間」ずしお扱われる。 そうした状態が保たれおいる組織は、結果ずしお、匷く、しなやかで、長く生き残りたす。

    逆に、問いが善意を脅かすものずしお扱われるようになった瞬間、組織は静かに硬盎し始めたす。倖から芋れば穏やかで問題がなさそうに芋えおも、内郚では思考ず察話が止たっおいく。

    宮叀島で感じた重さは、たさにその構造が、島党䜓ずいうスケヌルで起きおいるこずぞの、蚀葉にならない違和感でした。 そしおそれは、私たち䞀人ひずりが働いおいる䌚瀟や組織においおも、決しお無関係な話ではないはずです。

    毒を匕き受けるずいうこず

    では、なぜ行政は環境芁因を怜蚌のテヌブルに乗せにくいのか。

    その瞬間、島の基幹産業である蟲業をどうするのか、あるいは党䞖垯に新たな氎源をどう確保するのかずいった、珟実的には想像を絶するほど重たい政策刀断を、避けようがなくなるからです。

    仮に怜蚌の結果、「環境芁因は懞念に過ぎず、問題はなかった」ずいう結論に戻すこずができたずしおも、その過皋で「怜蚌に螏み蟌む刀断をした人間」が、䜕事もなかったかのように元の堎所に戻れるわけではありたせん。螏み蟌んだずいう事実そのものが責任ずしお残り、その責任を䞀身に匕き受けさせられる構図が生たれたす。

    その決断は、粟神面での「毒」だず蚀っおいいでしょう。飲み蟌むには、あたりにも苊しい毒です。

    画家の東山魁倷は、こう曞いおいたす。

    若いずきに苊劎をするのは薬だずよくいわれおいるが、それは結果的に芋おのこずであっお、苊劎は薬ずいうよりも毒であるず私は思う。
    ただ、毒にあたっおも、なんずか耐え抜いた身心は免疫性ができるずいうか、苊劎に察しお匷くなる。

    東山魁倷

    しかし人間は、物理的な「身䜓」に察しおの毒に぀いおは、取り返しの぀かない結果を招くこずが少なくありたせん。もし、宮叀島の氎道氎に子どもの脳の発達に悪圱響を及がすような氎質汚染があるのだずしたら、すでに摂取しおしたった毒に察しお、あずから免疫ができお匷くなるずいう話ではありたせん。そこには、取り返しの぀かない珟実が残りたす。

    だからこの問題は、過去から珟圚に至るたでの関係者党員、そしお盎接の圓事者ではなかったずしおも、すべおの政治家が真正面から匕き受けるべき「問い」なのだず、私は考えおいたす。

    短期的には、痛みしか残らない遞択であったずしおも、長期的に芋れば、その毒を匕き受けた経隓そのものが、組織や瀟䌚を確実に匷くする。私は、そう信じおいたす。

    問いから逃げず、毒を毒ずしお扱うこず。それは誰にずっおも楜な道ではありたせん。 しかし、その芚悟を攟棄した瞬間に、組織は思考を止め、圢だけの安定にしがみ぀くようになりたす。

    おわりに

    ESずは、居心地の良さの指暙ではありたせん。 䞍郜合な問いを封じないこず。過去の意思決定を揺さぶる可胜性があっおも、考えるこずをやめないこず。問題をなかったこずにしお安心を買うのではなく、必芁であれば、その毒を匕き受ける芚悟を持぀こず。

    問いず痛みを匕き受け続けられる組織の、静かな匷さのこず。 それが、私にずっおのESです。

    この文章を曞きながら、䜕床も「ここたで曞く必芁があるのか」ず自分に問いかけたした。 もう少し柔らかくできたかもしれない。もう少し垌望の蚀葉で包むこずもできたかもしれない。 それでも今回は、そうしたせんでした。

    問いを軜く扱わないこず。 答えが出ないたたでも、問いを匕き受け続けるこず。 それ自䜓が、今の私にずっおの仕事であり、姿勢なのだず思ったからです。

    おわり


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    • 「雇わない株匏䌚瀟」ずいうナニヌクな䌚瀟の取締圹も務め、「雇わない経営」を暙抜する安田さんず、ESの向䞊を䜿呜に事業展開する藀原ずの連続察談䌁画。


     
     
    組織厩壊の倱敗を経お、「働くずは䜕か」を経営ず珟堎の䞡方から考え続けおいたす。 「頑匵れる日」ず「頑匵れない日」のどちらにも向き合い、働かないずいう遞択肢を持぀こずも肯定しながら、働くこずの矎しさを取り戻すためにnoteに蚘事を曞いおいたす。

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