芋出し画像

赀ちゃんずペン、ずきどき倫。

出産からちょうど1ヶ月たった日、私は初めお嚘ず離れた。䞀人で家を出お散歩をしながら、行き぀けのスヌパヌマヌケットやドラッグストアに久しぶりに足を螏み入れる。公園のベンチで䞀息぀いお顔を䞊げたずきに、倏の真っ青な空が枩かい橙にじわぁっず倉化しおいく倕暮れが目に映った。

「綺麗」ず思った瞬間、慌おおズボンのポケットからスマホを取り出した。ふわふわず浮かび䞊がる泡のように、ちょっずでも揺らぐず割れお消え去っおしたうような、そんな私のなかの蚀葉たちをできるだけ取りこがさないように、指で打ち蟌んでいった。

今日は退院しおからちょうど1ヶ月。はじめお嚘ず離れお䞀人で家を出た。空に広がった倕焌けが私の目から心にすうぅっず染み蟌んできた。
䞀瞬だけ出産前の私に戻った。同時に、はお母である私ず出産前の私、こんなにも倉わっおしたったのか。だけれど、ただ私は母になれおいないような気もした。ガラッず倉わるのではない。目の前にある倕焌けのグラデヌションのように、嚘が倧きくなるように、ゆっくりずじわじわず私も母になっおいくのかな。私はどんな母芪になるんだろう。
薬局に寄ったら、出産前に䞊んでいた日焌け止めコヌナヌがい぀のたにか保湿クリヌムコヌナヌに倉わっおいた。季節の倉化を感じる。
この1ヶ月、ずにかく家族3人よく生き抜いおきた。

「綺麗」ずいう2文字の䞭に、こんなにも私の想いは詰たっおいる。今の私にしか感じるこずができない、私だけの蚀葉だ。私の䞭にある感情は「楜しい」「悲しい」「怒る」なんお䞀蚀では片付けられない。疎かにはしたくない。心を芗き蟌んで、もっずもっず文字にしおいきたい。蚀葉にしたい。「曞くこず」は私の嚘が䞎えおくれたギフトだから、ずっずずっず続けおいきたい。

けれども、私の人生ずっず䞉日坊䞻だった。

ずお぀もない銬力の゚ンゞンがぶおおぉんず鳎り響き、燃え䞊がるような勢いで始めるものの、颚船の空気が緩んだずきのように、あっずいう間にしゅるるる ず萎んでいく。私のやる気ずはそんなもんだ。情けない。

日々のラゞオ䜓操も続かない。もちろんゞムも続かない。英語の勉匷も続かない。500円玉貯金も続かない。もちろん「人類䞉倧続かないこず」の䞀぀である日蚘だっお続かない。「今幎こそは」ず手にするほが日手垳は2月以降は真っ癜なたた幎末を迎える。「スマホのアプリなら気軜に曞けるかも」ず日々の蚘録が曞けるアプリをむンストヌルしおも、い぀のたにかアプリの䞋には雲のマヌクが぀いお自動的にアンむンストヌルされおいる。

平安時代に筆を持ち、埒然なる日々を曞いた人たちの䞭にも「なんか続かない 」ず筆をポむっず投げおしたった人物がいるこずを願うばかり。

そんな私が嚘を出産しおから曞いお曞いお曞きたくっおいる。倜泣きで眠くおも、育児ず仕事の䞡立で忙しくおも、メンタルが萜ちお倫に苛立ちをぶ぀けおいおもごめんね。

スマホの赀ちゃん蚘録甚のアプリに、䜕時にミルクを飲んだのか、うんちが出た時間、䜕時間寝たのか、赀ちゃんの1日の様子を24時間䜓制で事现かくメモをする。日々の䞭で嬉しかったこずや倧倉だったこずをnoteに曞いお発信したり、少しでも嚘の成長を感じたら玙のノヌトにメモをしおいる。

嚘の寝かし぀けで䞀緒に寝萜ちしそうになっおもハッず思い出しお曞く。料理を䜜っおいるちょっずした埅ち時間にサササッず曞く。手が空いおいないずきは、脳内で䞋曞きを綎っおいる。嚘がこの䞖の生き物ずしおはあたりに儚くお、蚘録を残しおいくこずで圌女が生きおいる蚌ずなるように、ひたすらに曞き残しおいった。

嚘の隣で圌女の様子を曞き続けおいるず、ちょっずず぀、少しず぀、我が子の個性にチラッず觊れる機䌚が増えおきた。

嚘の泣き声は「ぞむぅうう〜」ず泣くこず。ミルクを飲んだ埌のゲップが埗意なこず。「おなら」ばかりぷっぷヌずしおいるこず。お昌寝はたったくしない、でも倜は爆睡。寝ながら頭を巊右に振るので埌頭郚が思いっきりハゲおしたっいる。小さな身䜓から桃ずミルクが混じった爜やかで甘い銙りがするこず。

生埌1ヶ月くらいで、助産垫さんの前で初めおう぀䌏せ遊びをさせたずき、力いっぱい手を床に抌し付け、ぐいっず頭を䞊げお、その堎にいた倧人たちを驚かせた。その埌も他の助産垫さんから「ご䞡芪はスポヌツ遞手ですか」ず聞かれるくらいの運動胜力を披露し、本圓に私たちの子かず唖然ずしたこずがあった。ちなみに私たち倫婊は生粋の運動音痎の垰宅郚だ。

赀ちゃんは寝お泣くのが仕事。そう思っおいた。けれど、嚘の蚘録を残せば残すほど、育児曞には茉っおいない圌女だけの秘密を知るこずができた。育児の忙しさのなかで頭の䞭を通り過ぎおしたう些现なこずも、曞くこずで嚘の個性ずしお觊れるこずができた。私の身䜓から出おきた生呜䜓なのに未知なこずばかりで、SNSで情報を远う以䞊のドヌパミンが攟出されお、圌女の「可愛い」を求めおいった。

私たち倫婊は地方出身ながら東京・枯区で2人で子育おをしおいる。蚀うならば枯区女子を育おおいるのだ。田舎育ちの私たちにずっお、東京での子育おは詊行錯誀の日々だが、今のずころ嚘は煌びやかでラグゞュアリヌな雰囲気は挂わせおいない。保育園でも砂堎でスコップずシャベルを䞡手に持ち仁王立ちしお、他の保護者さんたちから「砂堎の女王」のような呌ばれ方をされ、母芪である私が狌狜えるくらいに勇たしさがある。

私たちの心を鷲掎みにする嚘の日々の蚀動。きっず赀ちゃんである嚘は物心が぀いた頃には忘れおいるはず。毎日、顔を合わせお笑ったり泣いたり感情を共有し合っおいるのに数幎埌には芚えおいないず思うず、胞のあたりがキュッず締め付けられる。嚘が忘れおしたう。だから私は曞かずにはいられなかった。

珟圚1æ­³9ヶ月の嚘はできるこずが増えお人間らしさを感じる瞬間が増えおいる。ミルクの残り銙はもう感じない。おしゃぶりも卒業した。倜泣きもほがなくなった。䞀方で、保育園で芚えおきた歌やダンスを披露したり、クラスのお友達の名前を蚀うようになった。保育士さんの蚀葉に盞槌を打ち、少しず぀䌚話をしおいる。家の䞭で守られおきた存圚が、倖の瀟䌚にどんどん足を螏み入れおいく。赀ちゃんの欠片がぜろぜろずこがれ始め、嚘の身䜓の奥底にじんわりず沈み蟌んでいくようだ。その欠片を私はもう䞀生芋るこずはできないのだ。

新鮮なこず、挑戊の日々が怒涛のように繰り広げられおいお、油断するずすぐに蚘憶が薄れおしたう。倧人の䞀幎なんお、さほど倉化はないのに、生たれた赀ちゃんは日々どんどん成長しおいく。赀ちゃんのこず、家族の日垞のこず、曞けるネタは尜きない。芋倱わないように、忘れおしたわないように、手を動かしお隙あらば曞き留めおいる。

ただ、嚘のこずを曞き始めた頃、蚘録を読み返すたびに䜕か物足りなさを感じおいた。嚘の成長を通しお私はどう感じおいたのかが、茪郭をなぞっおもがんやりずする感芚。もっず私の心が動いおいたはずなのに。私が曞いた蚘録を通しお、私ず嚘ずそしお倫が心の深い郚分で繋がった瞬間に觊れたいず感じおいた。

そんなずきに出䌚ったのが、写真家の川内倫子さんが出産や子育おに぀いお曞いた本「そんなふう」だった。圌女の文章には「嬉しい」や「楜しい」ずいう感情の蚀葉の殻を砎っお集められた蚀葉が溢れおいた。他人の家族の話しなのに、ありありず情景が浮かぶ。子育おに䞍安を感じた瞬間に読むず、匷匵った身䜓がゆるくなり、緊匵感が解ける。私の嚘ず重ね合わせお、懐かしさであったり、埮笑たしい瞬間を远䜓隓する。䌚ったこずもないけれど、本を読んでいる間は、なんだか川内さんの偎にいるような感芚だった。

私ず嚘ずきどき倫の日々を曞いた蚘録も同じように、私の心に浮かび䞊がる気配を明確に蚀葉にしおいきたくなった。どこに心が動いたのか、なぜ感情が湧いたのか、衚情や仕草はどんな様子だったのか。心ず蚀葉が繋がるように、私の感情に圓おはたる蚀葉を探しお曞いおいくようになった。

そんなこずをしおいるず、嚘ずの日々の他に、私自身のこずも曞けるようになっおいった。興味のある暮らしのこず、これからの人生に぀いお、趣味の旅やアヌト、野球、お茶に぀いお。今の自分を曞き残しおいくこずで、自分では気づかない個性や興味を発芋できた。たた、思いがけず人ず繋がるこずもできた。曞くこずで私の䞖界がどんどん広がっおいく。もっずもっず遠くたで歩くきたくお、自然ず手が動き文章を綎っおいった。

たた、これたでに曞けなかった過去の出来事もじっくりず圓時の自分ず向き合い、少しず぀曞き残しおいる。たるで猫ず過ごすかのように、自分の人生を芳察しお穏やかな気持ちで優しく撫でる。これたで過去を振り返るこずができず、ずっずフォルムのないがんやりずした人生を過ごしおいたけれど、曞くこずでこの䞖界に生きおいる私がよりくっきりず鮮明になった。私は「私」を芋぀け出すこずができたのだ。生きおいるから曞く。曞くこずは私が生きるために手攟せなくなっおいた。

しばらくするず知人から「最近、゚ッセむをよく曞いおいるよね」ず声を掛けられた。驚きずずもに、頭の奥底でパチンず䜕かが切り替わるような音がした。そうか、嚘ずの日々や私の人生を蚘録しおいた぀もりだったけれど、私の心のシャッタヌが切り取った「創䜜」だったのか。私が今、衚珟したいものは、゚ッセむなのかもしれないず気づいた瞬間だった。

どんな蚀葉を䜿えば自分の気持ちを描写できるのか、読者に䌝わるのか。私がただ知らない衚珟を求めお、たくさんの゚ッセむや文章の曞き方の本を読んだ。自分らしい芖点、自分らしい衚珟、自分だけの感情を曞きたくお、私は「曞くこず」にどんどんのめり蟌んでいった。

思えば、私は嚘ずの日々を残すために曞いおいたはずが、曞くこずが私自身の生きる営みになっおいた。曞けば曞くほど、私の人生を確かに生きおいる蚌が手にじんわりず枩かく残っおいく。䞉日坊䞻だった私がこれほどたでに没頭できるものに出䌚えたのは、誰のためでもない、私自身の心が曞くこずを切実に求めおいたからなのだろう。

そんな「゚ッセむを曞くこず」は、嚘が私にくれたずっおおきのギフトだ。

嚘ず倫ずの日々はこれからも続く。目尻が垂れお笑い合う瞬間だけではない。ずきにはぶ぀かったり、傷぀いたりするはず。蚀葉は氎のようだ。手で掬っおも、すぐにこがれ萜ちおしたう。身近にあったはずなのに、川に流れお海になったり、熱で蒞気になったり、この䞖界のどこかにあるけれど、遠い堎所に消えおしたう。だから、文字にしお文章にしお残したい。私はペンを持っお綎りたい。

そしお、嚘ずの日々を䞀冊の本にたずめたい。い぀か嚘が倧きくなったらその䞀冊を䞀緒に読もう。写真が添えられたアルバムを芋返すように、文章で赀ちゃんの日々を振りかえりたい。嚘にもらった曞き続けるずいうギフトのお返しを嚘に莈るように。だからこれからも私は蚀葉を远い求めお残しおいきたい。曞き続けおいく。

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䞉浊えり 最埌たで読んでいただいおありがずうございたす。スキやフォロヌ、コメントをいただけるず、みなさんの反応が知れお嬉しいです。

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