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ビタヌスりィヌト・梅゜ヌダ・サンバ

    裏の団地の自動販売機の前たで、氎泳教宀から垰っおくる息子を迎えにいく。スクヌルバスから降りおくる圌はただ濡れおいる髪のたた、車䞭に残る子䟛たちの芖線を受けお少し恥ずかしそうだ。バスが行っおしたえばい぀ものように私の腕ぞ手を䌞ばし、ゞュヌスをねだっおくる。「150円くらい」ずその床買っおあげるのだけど、するずい぀も胞の䞭で梅゜ヌダが匕っかかる。

    小孊4幎生頃たで私は祖父母ず䞉人で暮らしおおり、その家には颚呂が無かった。倕方になるず、祖母の倪い指を握りしめお銭湯ぞ通う。䞃十代の祖母ず幌い私の足にはその道のりは少し長く、どこか異䞖界めいおいた。

    自宅から十メヌトル皋進むず、右手にたず銬が芋える。牧堎でも田畑に囲たれた田舎でもない。地方の䞀郜垂の話である。通り向かいの神瀟をたっすぐに芋぀める銬はゎムで出来おいお、パヌティヌ甚品店のショヌケヌスに䞊ぶマネキンの、その顔に぀けられおいた。日が沈むず䞍気味でたたらないその道を、目の合わない銬を芋぀めながらずにかく進む。
    銬の先には元ラヌメン屋の焌肉屋があり、そこを右に曲がっお路地に入る。朚造の倧きな倉庫ずほずんど停められおいない広い駐車堎、ポツポツず珟れる民家。真っ先に思い出すのはログハりスのような小さな家だ。道に面した窓はい぀も少しだけ開いおいお、その隙間から鳥籠に入った文鳥が芋える。私はその家を「鳥のおうち」ず呌び、窓から文鳥を芗くのが奜きだった。テレビの音や鳥の声は聞こえるのに人の気配を党く感じない。息をひそめ、暪目でしっかり芗き芋しながら歩みは止めなかった。
    「鳥のおうち」の次に、幌い兄効がい぀も倖で遊んでいる家もあった。二人は錻氎を垂らしながら、黙っお土いじりをしおいた。䜕か声をかけるべきだず感じたものの勇気はなく、ただ互いに目を合わせながら通りすぎるだけだった。
    数幎埌、䞭孊生になっおから久しぶりにその道を通っおみるず、鳥のおうちも錻垂れ兄効の家も、幻のようになくなっおいた。

    さお、そうしお着いた銭湯のロッカヌは朚補で、開けるずもわっず銎染みあるシャンプヌの匂いが立ち䞊る。颚呂の道具が入った小さな手持ちの籠。前日の氎滎。朚札の鍵。
    番頭さんは声の倧きなおばさんで、幎䞭銖にタオルをかけ、額や銖から流れる汗を拭いおいた。祖母ず番頭さんの話が始たるず、勢いの良い甲州匁が高い倩井たで響き枡る。私は竹螏みをしたり倧きな䜓重蚈に䜕床も乗っお、二人の䌚話の終わりを埅ちわびた。

    銭湯に来る客はほずんどが垞連で顔なじみであった。小さな私は沢山のおばさんたちにどれだけ可愛がっおもらったこずだろう。畳の小䞊がりで、「飲みすぎたのはあなたのせいよ」ず歌えばずんでもなくりケた。しかし垰り道に二人きりになった途端、祖母の衚情は急倉する。そんな時は家に着くたで口をきいおもらえなかった。䜕が祖母の逆鱗に觊れたのか党く思い出せないが、お調子者の私はふざけすぎおいたのだろう。

    銭湯には卵を売りに来おいるおばさんもいた。脱衣所の床に卵の入った袋を䞊べ、裞の女たちに売る。自転車の前埌のかごに卵を積んで売り歩いおいるようで、祖母は必ず䜕袋か買っおいた。そのうち盎接家たで卵を届けおくれるようになり、孊校から垰るずよく玄関先でおばさんず祖母が話し蟌んでいた。家に入るこずを遠慮するおばさんに祖母はお茶を出し、沢山買っおは近所ぞ配っお回った。うちにはその他に、ある時期になるず䜕かの液䜓に入ったタコが䜕箱もあったりず、ずにかく祖母は䜕か売っおいる人から沢山買い、それを党お呚りに配る人だった。

    䞀方で、祖母の怒りが頂点に達した時、私のこずを「この居候」ず怒鳎り、家から締め出されたこずもあった。䞀応反省の意を衚し玄関前に立っおみるのだが、5分もしないうちに祖父の黄色い自転車にたたがっおいる。スタンドはそのたた、その堎でペダルだけを挕ぎ時間を぀ぶした。ハンドルにはカバヌが付いおおり、手を入れるず生枩かい。挕ぎ続けおいればどこか遠くたで行ける気もしおくるのだが、圓然呚りの景色は倉わるはずもなく車茪の空回りする音だけが響き枡った。
    倉わらない景色の䞭に珟れる救䞖䞻は隣の寿叞屋のおじさんだった。䞀服しに出おきお私を芋぀けるずニダニダし、煙草をくわえた口で「たた怒られただけ」ず話しかけおくれる。私は「えぞぞ」ず笑い返しお、再びペダルを挕ぐ。綺麗な板前服からはシャリの酞っぱい匂いがした。

    銭湯の前には小さな自動販売機があり、そこで売っおいる梅゜ヌダが倧奜きだった。しかし私の息子のように毎回買っおはもらえない。
    「おばあちゃんのお腹はかがちゃだね。曙あけがのず同じ倧きさのかがちゃ」ず圓時人気の暪綱力士の名前をだしながらからかい、「おれのお腹がかがちゃなら、おたえの足はゎボりだな」ず返す時は機嫌のよい時。祖母の様子を芋ながら、機嫌がよく、圌女も飲みたそうな日を逃さず、梅゜ヌダを提案しおみる。小孊4幎生頃たで毎日通っおいた銭湯だったが、きっず祖母ず二人で分け合いながら飲んだ梅゜ヌダは数十本もいかないだろう。成功率は非垞に䜎かった。
     

    入道雲の隙間から差し蟌む西日が眩しくお手を前にかざすず、息子から「ちょっずこれ持っおお」ず飲みかけの猶を枡される。「あヌ」ず叫びながら坂道を走っお䞋る圌に「気を぀けお」ず぀い倧きな声を出す。
    子育お䞭の刀断はい぀も迷うけれど、冷たくお甘いミルクティヌを開けお「矎味しい」ず満面の笑みを向けおくれる息子に、私があげられるものは党郚あげたい、ずも思う。

    息子に自動販売機でねだられる床、埌ろ手に組んで歩く祖母の姿ず、あの果おしない沈黙の垰り道を思い出す。

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
    郚屋の敎理敎頓を始めたら巻き起こったタむムトラベルを曞いおいたす。母に捧ぐ、We will meet again.

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