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海の向こうでも、いつもの私だった

    登山当日の朝6時、晋州市外バスターミナルからバスに乗った。
    まだ眠たくてうつらうつらしながら、でも景色も見ておきたくて、ぼーっとしながら外を眺めた。
    日本とどこか似ている田舎の風景が流れたり、見たことのない石造りの建物が見えたりした。

    1時間くらいで目的地の中山里(チュンサンニ)に着いた。
    コンビニやカフェがあるけれど、朝早くてまだ空いていない。
    登山口まではここから歩かなければいけない。
    整備された道路(車道もありバス以外は通れるみたい)を歩くと長い行列に出会った。
    どうやら登山口まで行くシャトルバスに並んでいるらしい。
    私は違うルートから登ることにしているので通り過ぎる。


    歩いていくと橋があった。
    橋の上から見下ろすと、大きな岩が転がる谷の間に澄んだ水が流れていた。
    遠くに大きな山が見える。
    これから始まるんだ!と気合いが入る。

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    とにかく岩が大きい


    登山口に着いて、目の前にいきなり現れたのは階段地獄。
    まだ体が温まっていない中、息が上がる。額に汗が流れてくる。
    山の洗礼を浴びたようだ。
    そして、歩くうちにだんだんと森の中へと景色が変わっていった。


    緑が生い茂っている中に、熊注意の看板があった。
    字は読めないけれど、イラストが描いてあった。
    うつぶせになって頭を隠す子どもと、横になって膝を抱えてまるくなっている子どもが描かれている。
    死んだふりをしたらいいということなのだろうか。
    一撃されてしまうのではないか。
    絶対やってはいけないポーズとして描いているのだろうか。
    熊が生息していることだけ分かったので気を引き締めていこう。

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    おそらく熊の対処法


    急登が続きキツいルートとは聞いていたけれど、本当にひたすら急な階段と大きな岩を登り続けた。
    日本の階段と違って段差が大きい。
    それと、現地の人はとても歩くのが早い。
    しかも、息切れもせず淡々と歩いている。
    羨ましい限りだ。私は足を上げるのがしんどくなってきていた。
    「足がもう少し長ければ、、、」と思った。

    急登はきついけれど景色の良さに救われた。
    とにかく岩が大きくて、岩肌を縫うように川が流れていた。
    水が流れる音。
    渓谷の美しさと自然の怖さを感じて足を止めて体で感じた。


    山小屋がある休憩所に到着した。
    できたばかりなのかなと思うほど整備された場所。
    山小屋の外にあるピクニックテーブルで休憩を取った。
    来る前にコンビニで買ったキンパを食べる。
    濃厚なツナマヨと、にんじん、たまご焼きなどが入っている。
    たくあんのポリポリとした食感がたまらなく美味しくて、あっという間に完食した。

    標高が高くなるにつれて、風が強くなり、気温がぐんっと低くなった。
    木々が音を立てて揺れている。
    帽子が吹き飛ばされそうになるので脱いだ。
    代わりに、頭に手ぬぐいをほっかむりのように巻いた。
    風が頭に吹き抜けて気持ちがいい。
    すれ違ったおじさんに「ナイスファッション!」と褒められた。
    日本で登山をしている時にはよく見るほっかむりは、海外では珍しい服装なのだろうか。

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    振り返ると遠くまで山々が連なっている


    段差の大きい階段をひたすら登り、山頂に着いた頃には季節が冬になっていた。
    風が冷たくて強い。立っているのがやっとだ。
    木々の枝にぴっしりと氷がついていて、白い花が咲いたようだった。


    山頂碑の前には写真を撮る行列が出来ていた。
    並んでいる後ろの人が写真と撮るという流れができていた。
    私も後ろの方に写真をお願いした。
    「アメリカ?」と聞かれ「ジャパン!」と答えた。
    ちょっとした単語のやりとりが楽しい。

    山頂でゆっくりしたいところだったけれど、寒すぎてそれどころではなかった。
    体の震えが止まらない。
    風景の写真をささっと撮って、足早に下山を開始した。
    ここまで登山開始から6時間たっている。

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    息をするたび冷たい空気が全身に行き渡った



    下山しながら、帰りのバスのことが気になり始めた。
    乗りたいバスの時間には、早足で歩かないと間に合わないかもしれない。
    少し焦りを感じながら、行きと同じ道を黙々と歩いた。
    けがもなく無事に下山して、バス停のある場所まで戻ってきた。
    時計を見ると、バスが来る時間まで1時間もある。
    どうやら3時間で下山できたみたいだ。


    バスチケット券売機でチケットを買って、待ち時間をコンビニでのんびりと過ごすことにした。
    コンビニの外のベンチで100%オレンジジュースを飲んだ。
    とても冷えていて体に染み渡る。
    足がすごく疲れているみたい。
    すごく静かな場所でなんだか眠たくなってくる。

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    下山できた安心感と穏やかな空気による眠気との闘い


    予定時刻にバスが来た。
    行きのバスでは、荷物は自分の席の足元に置いていたので、同じように乗車しようとすると、運転手が「荷物はあっち」とジェスチャーをしてきた。
    リュックは車体横の荷物収納スペースに入れる決まりになっているらしい。

    乗車してすぐに睡魔が襲ってくる。
    頭がぐらぐらしてそのたびに目が覚めるけど、また深い眠りにつく。
    隣の座席には人がいなかったので迷惑をかけなくてよかった。
    どれくらい時間がたったのだろうか、目を開けると外は真っ暗になっていた。
    バスに乗ってから3時間、目的地に着いた。

    疲れているはずなのに、歩く元気はある。
    おなかもぺこぺこだったので、サムギョプサルのお店に行くことにした。
    注文したら、料理の準備を何から何まで店員さんがやってくれる。
    手際の良さに感心した。


    いろいろな小皿が運ばれてくる中に、オレンジの錠剤があった。
    とても怪しい。
    他のお客さんの席を見渡したら、同じ錠剤がテーブルに置いてある。
    錠剤を眺めていると、店員さんが「ビタミン」と教えてくれた。
    サムギョプサルのお店で、ビタミンが提供されるのは一般的なのだろうか。

    店員さんが「もう食べていいよ」とジェスチャーで教えてくれる。
    鉄板には、お肉と野菜、キムチ、にんにくで埋め尽くされた。
    サンチュにお肉と野菜、にんにくを乗せて、甘辛いタレをつけて巻いて食べる。
    食べる手がとまらない。
    翌日のことは気にせずに、にんにくもたくさん食べた。
    白米も注文して、完璧な食事となった。


    ホテルに着いて、お風呂に入り、ベッドに潜り込んだ。
    明日は筋肉痛だろうか。
    そんなことを思いながら、布団と体がくっついたように深い眠りについた。

    山は苦しかった思い出は少しだけ、楽しかった思い出を大きく残してくれる。


    智異山。
    標高1915メートル。
    韓国本土最高峰の山。
    今回歩いたルートは、天王峰(チョナンボン)登頂コース。

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    まあるくて優しい感じを醸しだす山頂碑
     
     
    じぶんを優先してこなかったわたしが、じぶんをいちばん大切にしていこうと決めた日々のあれこれ。

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