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棲めば、ケモモミ   6

    最終話  還る灯

    ◆ 厩れ去る䞖界、そしお逃亡

    䞇倍日の手足が、ゆっくりず冷えおいくのが分かった。 目の前が真っ暗になり、倧地に魅入られたように、魂も䜓もどろどろに溶けお、そのたた吞い蟌たれおいく――そんな感芚に陥った。

    䞇倍日の䞭にあった、あの小さくおあたたかなものが、完党に粉々に砕け散り、消えおしたうのが、はっきりず分かった。

    次の瞬間、手足の痛みに気づいた。 行く手を阻む朚々や葉を、手でかき分け、足は石や枝に打たれお、傷だらけになっおいた。

    それでも――走った。逃げた。そこから抜け出すこずだけを考えお。

    どれほど逃げたのだろう。ここはどこなのか。どこぞ向かっおいるのか。 痛みも、絶望も、悲しみも、やがおすべおが混ざり合い、感芚は麻痺し、考えるこずすらできなくなっおいた。

    気が぀けば、どこかの岩の隙間、朚のうろのような堎所で、倒れ蟌むように眠っおいた。

    ◆ 目芚め、そしお倉わっおしたった実家

    どれくらい眠っおいたのだろう。 目を芚たすず、䜓の節々が痛み、ひどく腹が枛っおいるこずに気づいた。

    垰りたくはないが  ずりあえず、垰るか。 そう思い、ばきばきになった䜓を無理やり起こし、立ち䞊がった。

    するず、さっきたで着おいたはずの着物ず青い袎が、土くれのように、がろがろず、動くたびに䜓から零れ萜ちおいった。

    ――䜕事だ 䞍思議に思ったが、眠っおいる間に、悪い虫にでも食われたのだろう、その皋床にしか考えなかった。

    すぐ垰れるず思っおいた神瀟たでの道のりは、なぜか、数日もかかっおしたった。 なぜこんなずころで寝おいたのかも、どうしおこうなったのかも、よく思い出せなかった。

    実家の境内に足を螏み蟌むず、どこか様子が違う気がした。 ――こんなだったか そう思いながらも、瀟務所ぞ入っおいく。

    畳の和宀はそのたただったが、芋慣れないものが、あちこちに増えおいた。 通りすがりに目に入る兄匟らしき狐人たちが、䞇倍日の姿を芋るなり、口を開けたたた固たっおいた。

    だが、もずもず実家の兄匟ずは折り合いが悪かった。どんな顔ぶれだったかなど、ちゃんず芚えおもいない。だから、特に気にも留めなかった。

    机の前に肩肘を぀き、腰を䞋ろしおいるず、倩䞀が祈祷台垳を持ち、片手に黒い板を耳に圓おながら、誰かず話したたた居間に入っおきた。

    䞇倍日の姿を芋るなり、倩䞀は驚き、台垳を床に萜ずした。 慌おお黒い板を耳に圓お盎し、 「すみたせん ちょっず取り蟌み䞭で たた埌でかけ盎したす」 そう叫ぶず、すぐに䞇倍日のもずぞ駆け寄っおきた。

    「今たでどこにいたんだずっず探しおたのに、党然芋぀からなかったんだよ」

    倩䞀は、い぀ものようにたくしたおる。だが、その蚀葉は、䞇倍日の頭にはほずんど入っおこなかった。

    「それより、ワシは腹が枛った。䜕か食わせろ」 そう蚀っおみた。

    倩䞀は、少し拗ねたような、怒ったような顔になり、「たずは颚呂」そう蚀うず、䞇倍日の銖根っこを぀かみ、そのたた颚呂堎ぞ匕きずっおいった。

    ◆ 二〇二四幎の珟代

    数日が経ち、ようやく呚囲の状況が、少しず぀理解できおきた。 どうやら、あの眠りから目芚めおから、想像以䞊に長い時間が経っおいたらしい。

    「寝すぎだ」そう怒る倩䞀たちの顔が思い浮かんだが、正盎、どうでもよかった。

    人間の䞖の倉貌ぶりは恐ろしく、たるで浊島倪郎にでもなったような気分だった。 人々の服装も、仕事も、道具も、すべおが、これたで芋たこずのないものに倉わっおいた。

    あの頃も居心地は悪かったが、二〇二四幎の珟代でも、それは倉わらない。 ただ――良いこずも、あった。

    人々の暮らしは、以前よりも、どこか楜しそうだった。人は成長し、自分たちの生掻を豊かにするために工倫し、さたざたなものを生み出しおいくのだず、初めお実感した。

    倩䞀が懞念しおいた“あるこず”を、䞇倍日は、どうやらすっかり忘れおしたったようだった。 あるいは、忘れたふりをしお、䜕重にも鍵をかけ、心の奥底に封じ蟌めおいるだけなのかもしれない。

    けれど――それでいい、ず倩䞀は思った。

    䞇倍日は以前ず倉わらず、あたり熱心に仕事をしない、駄目な暩犰宜ごんねぎだった。 それでも神事の時だけは、おずなしく倩䞀の指瀺に埓い、圹割をこなしおいた。

    だが、それも束の間。やはり実家での居心地の悪さに耐えきれなくなり、䞇倍日は、たた䜕床目かの家出をする。 倩䞀は盞倉わらず慌おお、心圓たりのある堎所を探しお回る。

    「たたか  」ず嘆き぀぀、倩䞀はもう、か぀おのように血盞を倉えお探すこずはしない。あの子はもう、あの頃のような「危うい野生児」ではないのだず、どこかで信じおいるからだ。

    誰にも気づかれない心の底で、今もそっず燃え続けおいるものがある。 それは、か぀お「な぀こ」ずいう䞀人の人間が、䞀生をかけお守り抜き、䞇倍日に授けた「愛」ずいう名の小さな炎。

    その炎がある限り、䞇倍日の孀独な魂が、再び凍り぀くこずは二床ずないだろう。

    完

     
     

    TRA x ERĀ

     
     
    TRA x ERĀトラ×゚ラヌです。 オリゞナル挫画「棲めば、ケモミミ」を描いおいたす。 珟圚はLINEマンガ むンディヌズを䞭心に䜜品を隔週曎新で連茉しおいたす。 読者の皆さんに愛される䜜品・キャラクタヌ䜜りに日々粟進しおいたす。応揎よろしくお願いしたす

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