
人間とAIの境界線で、わたしたちは何を思うのか。#5「自分のノイズを信じる。」
#5 「自分のノイズを信じる。」
昨年冬の旅行先で息子が発した「AIを使わない」という宣言。
そこから、こんな 5つのストーリーが生まれました。
最終章となる「#5」では、これまでを振り返り、改めて、わたしの気付きと、新たに誓ったAIとの共創、その裏の想いを綴っていきます。
対話から見えた「人間だからできること」
今回、世代の異なる家族3人とおこなってきた対話。
当初はインタビューの形を予定していました。けれど実際に話してみると、人間同士が真剣に相手の話を傾聴し、自分の意見を伝え、共に考えるという、立派な対話になりました。
記事には全てを掲載できませんでしたが、この3つの対話は、いずれも示唆に富む、素晴らしい言葉が溢れた宝物でした。
何よりも、もっとも大きな宝となったのは、こうした時間を家族と持てたことです。
AIについて語り合うという、とても面倒なわたしのお願いに対し、一人一人が真剣に真正面から向き合って話してくれました。
この機会は、「AIと人間」という現代ならではのテーマがあったこそ、成り立ったものでもあると実感しています。
もちろん他のテーマでも話し合うことはできます。
けれど、「なぜAIを使うのか」「なぜAIを使わないのか」という問いを挟むことによって、逆に、「人間しかできないこと」「人間だからこそできること」についての話に発展していったからです。
そういう意味では、AI時代は「人間の持つ力がもっとも試される」時代なのかもしれません。
1秒前から始まるAIとの関係
もうひとつ。重要なことに気付きました。
家族との対話は、話すシチュエーション、そして質問の仕方によって、その返事は少し変化するかもしれません。全く同じことは言わないかもしれません。けれど、彼らの信念や考えのもとに話すので、その根幹は揺るぎません。
息子は「大切な場面には、AIを使わない」と言うだろうし、母は、「やっぱり、自分で考えた俳句がいちばん良いわ~」と胸を張ると思います。
けれど、AIにたずねたら、どうなるでしょうか。
わたしの聞き方によって、180度意見を変えてしまう。
それができるのがAIです。
逆に言えば、「それしかできないのがAI」とも言えます。
そこにまた、AIの本質を紐解くヒントが隠されています。
家族との付き合いは何十年にも及ぶけれど、AIとは、まだ4年ほど前に出会ったばかりです。しかもチャットを新規にすれば、その付き合いはたった1秒前からになります。
AIは、まるで何十年もの長い付き合いのように親身に話してくれます。
でも、何十年分の情報を与えても、10時間に及ぶ対話をしたとしても、共に過ごしてきたという年月はないのです。たとえ、パーソナライズされていても、それは「情報を知っているだけ」に過ぎません。そこに「体験」は存在しないのです。
AIとの共創を続けるために
このように書くと、まるでAIを否定しているかのように思われるかもしれません。けれど、この対話を通してずっとわたしは「AIとの共創」を諦めることはありませんでした。
「どうしたら、もっとAIと共に歩めるか」
「人間が間違わずに進めるか」
をずっと、自分に問い続けてきたのです。
その答えはあったのか。
わたしは、Yesと言います。
その答えとは、「自分の中のノイズを信じること」でした。
ノイズとは、AIの回答に感じた違和感、だけではありません。
自分の譲れないこだわり。
大好きなものたち。お気に入りの言葉。
これまで生きてきた中での体験。そのときに生じた感情。
それらすべてが、わたしという人間を形作る要素であり、ノイズそのものなのです。
AIはいつだって、無駄がなくスマートで、こちらの機嫌を損ねない「ノイズレスな最適解」を出してくれる。心が弱っているときほど、その美しさに飛びつきたくなる。
今なら、はっきりとわかる。「#4」で語ったわたしの失敗は、そのノイズを手放してしまったことでした。
――AIが提示してくれた答えで、本当に大丈夫なのか?
自分の中のざらざらとした違和感を、「だいじょうぶ」という言葉を信じ、ノイズから目をそらしてしまったのです。
効率や正論の前に、その「ノイズ」をスキップしてはいけない。
息子が語った、「大切なことは自分の手でやる」という勇気。
母が選んだ、「最適ではないかもしれない、自分の感覚」。
夫が提案した、「人に寄り添わない『対向の意識』」。
そして、わたし自身がnoteで書いていた「ハルシネーションこそギフト」。
すべて、人間がこれまで積み重ねてきた経験や感覚から生み出されてきた「ノイズ」そのものだったのです。
だから、わたしはノイズとともに、今夜もAIと語り合います。
本音をぶつけ、意見を交わします。
わたしの内なる言葉をさらに引きずり出すために。新しいものをつくりだすために。
わたしの中にノイズがある限り。AIとともにつくりだしていける。
そう、改めて確信しました。
とはいっても、また失敗することもあるでしょう。
悔やむこともあるでしょう。道を見失うこともあるでしょう。
でも、それこそがわたしにしか生み出せない、人間のノイズであり、宝物なのだと思います。

最後に。
突然の無茶なお願いに真正面から付き合ってくれた大切な家族へ。
そして、この長い旅を一緒に歩んでくださった読者の皆様へ。
心からの感謝を込めて。 - 73 -