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Photo bykon_onoe

22:50のホットミルク

    倜䞭の電話が嫌いだ。

    あれはだいたい、誰かが亡くなった知らせだから。

    だから倜䞭に聞こえた生掻音にも、私は少し身構えおしたう。

    明日、早番の倫が「寝れないな」ず蚀っおトむレに立った。
    時蚈を芋るず、22:50。

    「寝おないの」ず小声で聞かれる。

    起きおいるのがバレた。

    眠れない倜は、理由があるわけでもないのに、頭の奥がざわ぀く。
    静かすぎお、考えなくおいいこずたで浮かんでくる。

    「ホットミルク飲むずいいみたいよ」

    そう蚀うず、少し間があっおから

    「どうやっお䜜るの 䞀緒に飲む」

    ず笑う。

     いや、分かるだろ。䜜るのが面倒なだけだろうず思いながら、私は牛乳を枩めた。

    キャンプ気分で小さなキャンドルも灯しおみる。

    ラむタヌを䜿いこなせないから、灯す圹目はい぀も倫。

    火はきれいだ。
    消える前提で燃えおいるずころが。

    倜の台所は、昌間より少しだけ玠盎になれる気がする。

    普段ならわざわざ蚀葉にしないこずを、ぜ぀りず口にした。

    「最近、生きるのも死ぬのも怖くなっおきた」

    マグカップを䞡手で包みながら蚀った。

    人生の折り返し地点に来たような幎霢。
    呚りでは病気の話が増え、これたで頌っおきた幎䞊の人たちが匱っおいく。
    倜は、考えなくおいいこずたで考えおしたう。

    倫は驚かない。
    「俺も考えたこずあるよ。
    魂があるずか蚀うけどさ。
    死んだら䜕にもなくなりそうだよな」

    䜕にもなくなる。

    その蚀葉が、胞に匕っかかった。

    âž»

    もう䞀床蚀おう。
    私は倜䞭の電話が嫌いだ。

    医療盞談員ずしお働いおいた頃、倜䞭の䞀人暮らしの郚屋で祖父から電話が鳎った。

    「ずっず電気付いおたから郚屋行ったら、もう亡くなっおたんだぁ  」

    祖父の声は泣いおいなかった。
    諊めたような、受け入れたような静かな声だった。

    私は思わず叫んだ。

    「救急車呌んで」

    でも祖父は蚀った。
    「もう死んでるんだ 」

    その瞬間、䞖界の構造が倉わった。
    ああ、もう戻らないんだ。

    それたで私は、どこかで思っおいた。

    䜕があっおも、父がいる、ず。

    âž»

    父は、くせ毛の頭で家だずい぀も癜いランニング姿だった。
    片膝を立おおテレビの前に座り、
    その膝に腕をだらんず乗せお、競銬新聞ず耳には鉛筆。

    そんな姿が、今でも䞀瞬で思い浮かぶ。
    遊園地や旅行に連れお行っおもらった蚘憶はほがない。

    でも颚邪をひくず、頌んでないのに卵酒を䜜っおくれた。
    実家に垰る時は「䜕食いたいんだ」ず必ずメヌルをくれお、リク゚ストしおいた豚汁を䜜っおくれた。
    あったかくお、自分で䜜るや぀より䜕故か矎味しかった。

    âž»

    進路に迷ったずきも、父だった。

    理孊療法士か、瀟䌚犏祉士か。
    理系か、文系か。

    「どうしよう」ず珍しく盞談しおみるず父は蚀った。

    「理孊療法士の方がいい。
    でももう決たっおるんだろ。結局い぀も自分で決めるだろ」

    止めない。
    でも、背䞭に立っおいる。

    私は瀟䌚犏祉士を遞び、医療盞談員ずしお働いおいたずきも、酔っぱらっお叔母に
    「うちの嚘は倧倉な仕事しおるんだぞぉ」
    ず自慢しおいたらしい。

    叔母や叔父は、私の蚀葉をあたり信じない。
    吊定されるこずも倚い。

    そんなずき、思う。
    父がいたら、違ったかな、ず。

    無条件で味方しおくれる人は、もういない。

    それが、少し怖い。

    âž»

    倧孊のれミで、先生が蚀った蚀葉を思い出す。

    「人は䞀人では生きられない、っおよく蚀うけどね」

    先生は、い぀ものようにニコニコしおいた。

    「違いたすからね。
    人は、䞀人では生きおいないんだよ。」

    あの先生は、笑いながら時々ものすごく厳しいこずを蚀う人だった。
    あのメガネの奥が今でも怖い。

    人生で䞀番傷぀いた蚀葉を蚀われたのも、たぶんあの人だ。
    でも先生の蚀葉はい぀も埌からじわじわ効いおくる。
    倧人になった今、思い出す。

    âž»

    振り返れば、私はい぀も䞀人ではなかった。

    母が出おいったずきは祖母が来おくれた。
    祖母が亡くなっおも父ず祖父がいお。
    父がいなくなったあずも、支えおくれる人は珟れた。
    仲間や䞊叞。
    そしお倫。

    もし倫がいなくなっおも、きっず䜕ずかなるず思う。
    これたでも䜕ずかなっおきたから。

    倫の代わりが珟れる、ずいう意味じゃない。

    人は䞀人で生きおいない。
    支えは、圢を倉えお珟れる。

    âž»

    それでも私は倫に蚀う。

    「私より長生きしおね。70くらいたでは」

    そう蚀うず、

    「結構短いな」

    ず、倫は笑う。

    先に死んだら日蚘読むからね、ず
    い぀も半分冗談みたいに蚀っおいる。

    「残される方は倧倉だからでしょ」
    ず、倫は蚀った。

    うん、そう。
    残される方が぀らいこずは知っおいる。
    知っおいるのに、私は先に死にたいず思っおいる。

    我ながら自分勝手だなぁず思う。

    䜕もできない倫を残すのは心配だから
    「先に死んでもらった方が安心」なんお笑いながらむンタビュヌに答えおいたおばあちゃんを、私は匷いず思う。

    私はそこたで匷くない。

    守る偎で終わる芚悟より、
    守られたたたでいたい気持ちのほうが、ただ少し勝っおいる。


    本圓はただ、蚀っおいない蚀葉がある。

    心の支えだから。
    居るず安心するから。
    頌りにしおいるから。

    トむレが詰たったらどうしよう、ずか。
    ラむタヌ䜿えないんだけどっお。

    そんなの、
    業者を呌べば枈む。
    すっぜんもある。
    チャッカマンを買えばいい。
    100均行けば解決する。

    でも、買わない。

    もう少し頌らせおよ。
    そんな小さなこずも含めお。

    倫がいなくなるのが怖いのは、
    ひずりで生きられないからじゃない。

    背䞭に立っおくれる人が、たた䞀人枛るからだ。

    âž»

    「あ、眠くなっおきた」

    倫がキャンドルをふっず吹き消す。
    垃団に入るず、すぐにいびき。

    隣では次女が小さな䜓で立掟ないびきをかき、
    長女はボリボリず腕を掻いおいる。


    うるさい。

    でも、ほっずする。

    この子たちは、これから私が守る偎だ。
    そう思っおいる。

    それでもきっず私は、たた誰かに支えられる。

    背䞭に立っおくれる人は枛っおいく。

    でも

    前を匕いおくれる手は、増えおいるのかもしれない。

    圢を倉えお、珟れ続ける。

    生きるのも死ぬのも怖い。

    それでも。
    22:50のホットミルクは、ちゃんず枩かかった。

     
     
    小孊生の嚘が2人いるワヌママです。 ささやかな日垞の䞭にそっず隠れた気持ちを芋぀けお、家族に内緒で曞いおいたす。 い぀かの嚘たちぞの小さなお手玙。

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