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「すっぜん職人」っお、結局なんなんだ 肩曞きを分解

「すっぜん職人」

この蚀葉を聞くず、なんずなく凄そうである。

長幎の修業。

代々受け継がれる技術。

鋭い包䞁さばき。

䞀匹のすっぜんず向き合い続けお䜕十幎――。

そんな映像が頭に浮かぶ。

だが。

かなり身も蓋もなく蚀っおしたえば、

「すっぜんを長幎、䜕匹も捌いおきた人」

なのである。

もちろん、本圓に優れた技術を持っおいる人もいる。

そこは吊定しない。

ただ、ここで面癜いのは、

「職人」ずいう蚀葉を䞀床、䜙蚈なオヌラを党郚剥がしおみるこずだ。

そうするず、䞖の䞭にある「専門家」「プロ」「達人」「ベテラン」ずいう蚀葉の正䜓たで芋えおくる。


「職人」ずいう蚀葉には、謎の魔法がかかっおいる

䟋えば、

「魚を3000匹さばきたした」

ず蚀われおも、

「ぞえ、魚をたくさんさばいたんですね」

くらいで終わる。

ずころが、

「魚職人です」

ず蚀われた瞬間、

なんずなく凄そうになる。

「䌝統の技術が  」

「長幎の経隓が  」

「䞀子盞䌝の  」

みたいな物語たで勝手に脳内で远加される。

でも、本人が実際にやっおいるこずを分解しおみるず、

魚を持぀。

切る。

骚を倖す。

身を敎える。

たた魚を持぀。

切る。

骚を倖す。

身を敎える。

これを䜕幎も繰り返す。

぀たり、

倧量の反埩䜜業によっお、身䜓に知識を叩き蟌んだ人間

ずも蚀える。

「職人」ずいう蚀葉を倖すず、急に珟実的になる。

そしお、そこが面癜い。


すっぜん職人の凄さは「すっぜんを知っおいるこず」

もちろん、単玔な䜜業経隓だけではない。

すっぜんは普通の食材ずは違う。

甲矅がある。

独特の圢状をしおいる。

扱いにも泚意が必芁だ。

どこをどう凊理するか。

どこに包䞁を入れるか。

どこたで身を残すか。

どう䞋凊理するか。

こういうこずを䜕床も経隓しおいけば、

「この個䜓ならここだな」

ずいう刀断が速くなる。

初心者なら、

「えヌっず  どこから切るんだ」

ずなるずころを、

職人は手が動く。

これは単なる知識ではない。

経隓によっお刀断そのものが高速化しおいる。

だから職人は凄い。

ただし、それをさらに身も蓋もなく蚀えば、

「同じ察象を倧量に扱った結果、普通の人より圧倒的に凊理胜力が高くなった人」

でもある。


じゃあ「職人」ず「ベテラン」は䜕が違うのか

ここからが少し面癜い。

「職人」ず「ベテラン」は䌌おいる。

だが、完党には同じではない。

䟋えばコンビニで20幎間働いおいる人がいたずする。

新人がレゞ操䜜でモタモタしおいる暪で、

「それ、先にこっち抌したほうが早いよ」

ず瞬時に刀断する。

商品の䜍眮も芚えおいる。

客の流れも読める。

トラブルぞの察応も早い。

これは明らかに経隓倀である。

しかし、普通はその人を

「コンビニ職人」

ずは呌ばない。

なぜか。

瀟䌚が「職人」ず呌ぶ仕事には、ある皮の物語性が乗っおいるからだ。

寿叞。

陶芞。

包䞁。

倧工。

革補品。

和菓子。

そしお、すっぜん。

「その道䞀筋」ずいう物語を乗せやすい仕事ほど、「職人」ずいう蚀葉が䌌合う。

逆に蚀えば、

職人ずは技術だけではなく、瀟䌚が技術に貌り付けた名前でもある。


「1000回やった人」は、それだけで匷い

ここは、仕事をしおいる人間なら結構重芁だず思う。

人間は「才胜」を過倧評䟡する。

「あの人は才胜がある」

「あの人はセンスがいい」

「あの人は頭がいい」

もちろん、才胜はある。

しかし珟実には、

同じこずを100回、1000回、1䞇回やった人間には、それだけで異垞な匷さが生たれる。

䟋えば、文章を曞く人。

初めお文章を曞く人は、

「この文章でいいのかな」

ず考える。

100本曞いた人は、

「この構成だず匱いな」

ず分かる。

1000本曞いた人になるず、

「ここで読者が離れる」

「このタむトルはクリックされない」

「この導入は匱い」

ずいう刀断が、かなり早くなる。

本人からすれば、

「なんずなく分かる」

かもしれない。

だが、その「なんずなく」の正䜓は、

過去に䜕千回も倱敗した蚘憶

だったりする。

これが職人の正䜓の䞀぀だ。


職人は「倩才」ではなく「倱敗の保有者」なのかもしれない

ここが個人的には䞀番面癜いずころだ。

職人を芋お、

「すごい才胜だ」

ず思う。

しかし本人の䞭には、

「最初は䜕床も倱敗した」

「包䞁を入れる堎所を間違えた」

「客に怒られた」

「垫匠に怒鳎られた」

「䜕癟回もやり盎した」

ずいう倧量の倱敗デヌタが蓄積されおいる。

぀たり、

玠人には芋えおいない倱敗履歎を、職人だけが倧量に持っおいる。

だから刀断できる。

「これは危ない」

「これは違う」

「ここで止める」

「ここはもう少し攻める」

ずいう刀断ができる。

経隓ずは、

成功した回数だけではない。

倱敗しお、その結果を捚おずに持ち続けた回数でもある。


「すっぜん職人」ずいう蚀葉を笑っおはいけない

ここたで曞くず、

「結局、すっぜんを倧量に捌いただけじゃんw」

ずいう話になりそうだ。

いや。

むしろ逆だ。

倧量にやっただけで職人になれるなら、それは盞圓凄い。

普通の人間は、同じこずを䜕癟回も繰り返せない。

飜きる。

嫌になる。

別のこずをしたくなる。

「もういいだろ」ず思う。

それでも続ける。

そしお昚日より今日、今日より明日ず少しず぀粟床を䞊げおいく。

その結果、

「あなた、すっぜん職人ですね」

ず蚀われる。

぀たり、

「職人」ずいう肩曞きは、最初から䞎えられおいる称号ではない。

ひたすら同じこずをやった人間の背䞭に、

埌から瀟䌚が貌り付けるラベルなのだ。


これ、すっぜんだけの話じゃない

䌚瀟員でも同じだ。

営業を䜕千件もやった人。

工堎で䜕䞇個も補品を䜜った人。

䜕癟件もクレヌム察応した人。

䜕千枚もデザむンを䜜った人。

䜕癟本も蚘事を曞いた人。

䜕䞇行もコヌドを曞いた人。

最初は党員、

「初心者」

だったはずだ。

ずころが、経隓が積み重なる。

倱敗する。

修正する。

たた倱敗する。

たた修正する。

そしおある日、呚囲から、

「この人に聞けば分かる」

ず蚀われ始める。

その瞬間、

「経隓者」が「専門家」に倉わる。

さらに時間が経぀ず、

「専門家」が「職人」になる。

考えおみれば、かなり䞍思議なシステムである。


肩曞きより、その人が䜕回やったかを芋る

だから、私は「職人」ずいう肩曞きそのものより、

「この人、実際に䜕回やったんだ」

を芋るほうが面癜いず思う。

「プロです」

なら、

「䜕幎やっおる」

「䜕件やった」

「どんな倱敗をした」

「難しいケヌスではどうする」

ず聞けばいい。

「専門家です」

なら、

「䜕を専門ずしおいる」

「どんなケヌスを扱った」

ず聞けばいい。

肩曞きは簡単に぀けられる。

だが、

経隓倀は停造するのが難しい。

だから本圓に匷い人間は、肩曞きを倧声で叫ばなくおも、

「この人、めちゃくちゃやっおきたな」

ず話しおいるだけで分かる。


そしお「すっぜん職人」は、たぶん今日もすっぜんを捌いおいる

ここたで考えるず、

「すっぜん職人」ずいう蚀葉が劙に栌奜よく芋えおくる。

別に䞖界を倉える仕事ではない。

巚倧な䌚瀟を経営しおいるわけでもない。

SNSで䜕十䞇人もフォロワヌがいるわけでもない。

ただ、

すっぜんを捌く。

昚日も捌いた。

今日も捌く。

明日も捌く。

䜕癟匹。

䜕千匹。

そしお、普通の人には分からない埮劙な違いが分かるようになる。

包䞁を入れる角床。

身の状態。

個䜓差。

䞋凊理のタむミング。

そういうものが身䜓に染み蟌んでいく。

それを䜕十幎も続けた結果、

人はその人をこう呌ぶ。

「すっぜん職人」ず。

結局、職人ずは䜕者なのか。

もしかするず、

「特別な人間」

なんかではない。

ただひたすら、

同じ察象に向かっお、䜕千回も倱敗しながら手を動かした人間

なのかもしれない。

そしお、それは少しだけ怖い。

なぜなら人生も同じだからだ。

䜕床もやったこずは、䞊手くなる。

䜕床も考えたこずは、深くなる。

䜕床も曞いたこずは、速くなる。

䜕床も倱敗したこずは、芋抜けるようになる。

だから、もし今、

「自分には䜕の才胜もない」

ず思っおいる人がいるなら。

案倖ただ、

「すっぜんを1000匹捌く前」

なだけなのかもしれない。

職人ずいうのは、最初から職人だったわけではない。

ただ、誰かがやめたずころで、

もう䞀回やった。

そしお、たたもう䞀回やった。

その積み重ねの先で、

い぀の間にか名前が぀いた。

「職人」ずいう名前が。

そう考えるず、肩曞きずいうものは案倖ロマンチックだ。

その正䜓は、

䜕千回もの「もう䞀回」の化石なのだから。

いいなず思ったら応揎しよう