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春の薄い陽光みたいなたんぽぽシロップを作った日


    たんぽぽでシロップが作れると知って、少しだけ驚いた。

    道ばたに当たり前みたいに咲いているあの花を、
    わざわざ100個も集めて、煮て、食べる。
    そういうことを、自分がするとは思っていなかった。

    子どもと歩くようになってから、立ち止まる回数が増えた。
    名前を呼ばれて足を止めたり、しゃがみこんで何かを拾ったりする時間が、一日の中に何度も入り込んでくる。

    「たんぽぽ100個いるんだけど、手伝ってくれる?」

    庭に出始めたたんぽぽを見ながらそう言うと、6歳の息子は目を輝かせた。

    ざるを持たせて、ひとつひとつ摘んでいく。
    花を上から引っ張ると、ガクの手前で取れて、茎が残らないことがわかる。

    思っていたよりも手間がかかる。
    花びらはやわらかいのに、触れても簡単には崩れない。
    花粉でだんだん指先が黒くなっていくのを見ながら、こんなふうに何かを集めるのは久しぶりだと思った。

    家に持ち帰って、花が萎まないうちに水で洗う。
    思いのほか砂が入っていて、小さなありや芋虫が紛れ込んでいる。

    いろんな作り方があるらしいが、ガクは取らずにそのまま鍋に入れた。
    ぐつぐつと音を立てながら、少しずつ色が滲み出てくる。

    花を濾して、グレープフルーツとレモン汁、砂糖を加える。
    ゆっくりと煮詰めていくと、液体はだんだんと透明になっていった。

    出来上がったシロップは、とてもきれいな色をしていた。
    透明で、少しだけ黄色い、春の薄い光みたいな色。

    今まで通り過ぎていたものが、少しずつ違って見えるようになっていく。

    急いでいた頃には、たぶん拾えなかったもの。
    気づいたとしても、立ち止まる理由にはならなかったもの。

    たんぽぽも、こういう時間も、
    前からそこにあったのに、見えていなかっただけなのかもしれない。

    シロップをヨーグルトにかけて食べる。
    ほんのり、たんぽぽの味がする。

    来年もまた、同じように作ろうと思った。


    写真:筆者

     
     
    1男1女2🐈🐈‍⬛の母。 日々の育児と暮らしの、どうでもよくて大事なことを綴ってます。 本業は翻訳者、歌詞対訳家。

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