
第4話 博士はポテトを断れない
このドライブスルーはこの時間帯穴場スポットだ。
夜勤前のルーティン。
まずはサムライマック。
「おサムライマックくださーい!」
マイクに向かって無駄にデカい声。
(夜ってテンションおかしくなるんだよな)
後ろに車が来て、ちょっと焦る。
ちょうどその時、スマホが鳴る。
表示は、博士涼太。
「お前さ、今どこ?」
「マック」
「……また夜勤前に脂質取ってるのか」
(出た、栄養指導。……でも、お前も人のこと言えねぇだろ)
「エネルギー補給だろ?」
オレが軽いジャブを打つと
「それは理論的には間違っている」
「出たよ、博士。そういうとこな」
そう返しながら、オレはちょっとだけ楽しくなってる。
高校じゃ、博士は学年一位。
オレは学年ビリ争い。順位表を見れば、名前はいつも一番上と一番下だった。
なのに帰り道は、なぜかいつも一緒だった。
オレん家は帰れば毎日運動会。
弟三人に、じいちゃん、ばあちゃん。
博士ん家は正反対。
静かすぎて、くしゃみも遠慮しそうだ。
(育成環境、バグってるだろ)
「お前ん家、今日もうるさいのか?」
「弟三人いるからな。」
「お待たせしましたー」
紙袋を受け取り、ポテトを一本つまむ。
「お前も食う?」
博士は、電話越しに「いらねーよ」
しばらく間があいて
「……一口だけなら」
(ほらな)
(こいつ、オレのこと好きだから結局来るんだよな)
……来た。
当たり前みたいな顔で助手席に座る。博士がぽつりとつぶやく。
「今日の利用者、例の人だろ」
「おう、ガチャ当たり」
「……外れだな」
という博士にオレは言った。
「それ、本人の前で言うなよ」
「……言うわけないだろ」
(言うんだよな、こいつ)
ホスピスに着く。
302号室。
コンコン。
パソコンに一行。
――今日はサムライマック?
「なんで知ってんの!?」
――また脂っこいの?
「博士の体型に近づこうと思って」
そう言って、オレはお腹をつまんだ。
――博士さんに失礼!