
真の富裕層はネット上に痕跡を残さないThe truly wealthy leave no digital footprint
【 家計はインフレ経済への転換に適応を 】
日本経済はデフレからインフレへと大きく転換し、金利はおよそ30年ぶりの水準にある。預貯金や住宅ローンを通じ国民生活に広範な影響が及ぶ(中略)
家計部門全体でみれば金利上昇はプラスに働く。合算で2400兆円近い金融資産を持つ一方、負債は400兆円強にとどまる。大幅な貯蓄超過であり預貯金の金利収入増の恩恵が住宅ローンなどの支払い負担増を上回る。ただし資産と負債の保有者の分布は異なり年代ごとに影響が変わる点に注意が必要だ。金融資産は60歳以上に6割集中し負債は主に住宅ローンで20~40代が多い。
【 “コネクテッド・プライバシー” という概念 】
「Financial Times」のジャーナリスト「Elizabeth Paton氏」の超富裕層の
プライバシーに関する記事が興味深かったので、その概要を個人的な思いや
関連情報を交えながら覚書程度に記してみたい。
コネクテッド・プライバシー(Connected Privacy)は、SNSやアルゴリズムに常時接続された現代において「オフラインでいること」や「情報を露出しな
いこと」自体が新たなステータス(贅沢・富の象徴)になるという概念だ。
これまでは(今現在もそうだが…)「ネットで有名になること」が勝ち組の証だったが、これからは「ネットに痕跡を残さないこと」が最高のステータスになるという。いったいどういうことか?
1. デジタルフットプリントの消去:仕事や人脈が既に強固な富裕層は、アル
ゴリズムに自分をアピールする必要がない。従ってSNSのフォロワーが
“0” であること自体が、逆に高い社会的地位を証明するようになる。
2. 限られた人だけのリアルなつながり:誰もがネットでつながれる社会だか
らこそ、マイクもセンサーもない公園で、友人と直接会って耳元で話すよ
うな「完全にデジタルから隠された時間」が最も贅沢な体験になる。
3. 「情報通」の定義が変わる:例えばSNSでバズっている場所ではなく、
ネットに一切情報が落ちていない「本当にクールな場所」を知っている
ことが、真の文化的な強みになる。
ここで勘違いしてはいけないのは、この「ステータスシンボル」は実際にはオフラインでいることにあるのではなく、『システム』に対して必要以上に
情報を与えず、自らに利益をもたらす形で選択的にオンラインでいるための
社会的、経済的、文化的な資本を有していることにある・・・。
私が思うに、その上で最重要なのは常に「自由」で「独立」しているということであり、それはネットから流れ出てくるコンテンツをまるで給餌されているように受動的に消費する “デジタル採卵鶏” から抜け出すということだ。
「なんだ、それは?」という方は、1999年公開の映画「マトリックス」の
開始から32分のシーンが私がイメージするものに近いので見てもらいたい。


【 ラグジュアリー業界の危機感 】
現在ラグジュアリー業界が直面している最大のリスクは “戦争” や “インフレ”
ではなく、“極端な富の二極化” であり “経済的格差の拡大” だとしている。
なぜか?これまでラグジュアリー商品は「成功の証」とされていたが、今や
それは「社会的排除の象徴」に変質しているという危機感に覆われている。
タワマン最上階やペントハウス、スーパーカーやクルーザー、高級腕時計や
1点モノのブランドバッグ、最高級リゾートホテルやラグジュアリークラスのクルーズ船の旅など、一部特権階級の浮かれた高揚感による贅沢生活や
これ見よがしの消費が、インスタなどのSNSで富の誇示が蔓延している。
貧富の格差がここまであからさまに開くと、「憧れ」は「不平」や「不満」に姿を変え、やがて「怒り」という負のエネルギーとして蓄積される。
この状況を超富裕層は明らかなリスクとして捉え始めている。
【 微妙な変化 】
このところプライベートジェットの利用が急増しているという。
路線便のプライオリティの「ビジネス」や「ファースト」ではなく
純粋なプライベート空間を選択し始めているというのだ。
不快な世間一般の詮索への露出を最小限に抑えようとしている。
この拡大するニーズに対して飲食や宿泊、高額品販売チャネルの
業界は、ホスピタリティを売りにしたサービスを提供し始めた。
プライベート空間内の会員専用テーブルや「VVIP(VeryVIP)」専用の
出入口及びエレベーターの設置。百貨店も縮小していた「外商」を
専門知識を持った感性の高い社員を育成し、「最上級顧客」ごとに
専属として担当させて取り込む最重要部門として再構築している。
ネットを通じて「簡単・便利」を訴求する反面、実はサービスを
外部化して自社のコストを下げて利益を創出する戦略から一転、
富裕層には手間暇を惜しまず特別な時間・空間を安全に提供すること
でその莫大な資産を取り込もうとしている。
時代は巡っている。
【 安全ではない時代の “安全” 】
ロンドンやパリ、ローマの街中でカルティエの腕時計を付けていたり
エルメスのバッグを持ち歩いたりすることは、明らかに危険だ。
捕食者は服装や持ち物から獲物を値踏みし最適な瞬間を狙っている。
かつては他人の目を気にしてオートクチュールや宝飾品で着飾っていた
人々も、今ではごく親しい友人や家族だけが集まる空間を飾るために
高級なインテリアや美術品に惜しみなく資産を投ずる。
普段は目立たない普及品の服を着て、身に付けるモノも模倣品や量産品
を迷うことなく選択している。「安全」を何より優先する価値観になれば
必然的に「ネット空間」から一定の距離を置くことになる。

【 ネットから離れられない人々 】
そういった富裕層とは違う、多くの一般人が社会でそれなりの
地歩を築いていくためにはオンラインでいる必要性が増している。
“ITリテラシー” だ “AIで業務効率化” だと言われる昨今、ネットから
離れるなどということは多くの人には無理な話だろう。
だからこそ、経済的・社会的に十分安定し、オンライン上では
発見されない存在でいられるのは、紛れもなくステータスになる。
2020年代のラグジュアリーは、手に入りにくい物質的なモノから
あらゆる制限からの “自由” と “生活の質” に関する個人的な価値の
尺度の再解釈へと進化しようとしているように見える。
人目に触れない、殆どの人が感じられない時間や空間を持っている
そんなプライベートとプライバシーが担保されているコトが、真の
ラグジュアリーになってきている。
前時代は「目立つこと」がステータスであり力の源泉だった。
これからの時代、目立つことには大きなリスクが伴う。
「目立つこと」というのは大声を出したり奇を衒うような行動を
取ったりするというようなプリミティブなことではない。
ネット空間に一生消えないfootprintを残すことだ。
『インターネットでは商品に金を払っていないのであれば、
あなた自身が商品なのだ』
――7月の「最大385万円の値上げ」が話題になりました。
「貴金属価格の上昇などを受けた措置でした。対象は金素材を採用した
3モデルです。そうした価格帯の製品の購入者はGSのブランドを支持して
くださる方々でもあります」(セイコーG会長兼CEO 服部真二氏)
