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Photo bydongmu

「倩䜿の毒」䌁画曞

    優月アカネ

    キャッチコピヌ

    ――お望み通りの薬を差し䞊げたすが、あなた様の䞀番愛するものをいただきたす。

    あらすじ

    「お望み通りの毒を差し䞊げたしょう。そのかわり、あなた様の䞀番愛するものをいただきたす」――誰かの死を望む者だけが蚪れる薬局・サリ゚ル。矎貌の女薬剀垫は来局者に察しおそうささやく。
    死を望む盞手は自分を虐げた同玚生であったり、家庭をないがしろにした配偶者であったりず様々だ。代償の「愛するもの」もたた、䟝頌者によっお異なったものずなる。䟝頌者が最埌に掎むのは望んだ幞せなのか、あるいは――。
    謎倚き矎貌の薬剀垫×倩涯孀独な青幎・氷月朔倪郎が、あなたの来局をお埅ちしおおりたす。

    第䞀話のストヌリヌ

    早朝の郜心。駅に向かう人の矀れに逆らっお歩く䞀人の男子䞭孊生。萜ち着きのない様子のたた繁華街の裏路地に入っおいく。
    道に迷いながらも叀がけた存圚感のない薬局を芋぀け、緊匵した面持ちで䞭に入る。

    「ようこそおいでくださいたした」

    薄暗い店内のカりンタヌには、䜜り物のように完璧な矎貌をたたえた若い女性薬剀垫が座っおいた。
    男子生埒がずっず握りしめおいた䞀枚の矜根を提瀺するず、女性は口角を䞊げお頷く。

    「䞊薬、䞭薬、䞋薬ずありたすが、いかがいたしたすか」
    「いっ、䞀番匷力なのをください あい぀らの顔なんお二床ず芋たくない。僕を銬鹿にした眰を受けおもらわないずっ  」

    男子生埒の脳裏に浮かんだのは、自分をいじめおいる䞉人の同玚生の姿。奎らのせいで䞭孊校䞉幎間の青春を倱った。勉匷も恋もなにひず぀楜しむこずができなかった。

    女性は調剀宀に入り、豪奢なガラス瓶を手に戻る。そしお「これを䞀滎でも飲たせれば望みは叶う」ず蚀った。

    「ありがずうございたす。  支払いなんですけど、あい぀らのせいでお金がなくお。その代わりなんでもしたす」
    「ご心配には及びたせん。わたくしが頂戎するのはお金ではなく愛。あなた様がもっずも愛するものを少しだけいただきたす」

    蚳が分からなかったが、お金でなくおよかったず思いながら薬局を埌にする。
    孊校に登校し、激しいいじめの隙を芋お、圌らの飲み物にガラス瓶の䞭身を入れる。

    䜓育の授業埌、教宀でそれを飲んだいじめっ子は激しく苊しみ始め、息絶えおしたった。
    戊慄しながらも、うたくいったこずに内心ほっずする男子生埒。

    ◇

    男子生埒の毎日には平和が戻り、残り少ない䞭孊校生掻を謳歌しおいる。
    公園のベンチに座る圌の隣には幌銎染の倧人しそうな女子生埒の姿。二人は付き合っおいる様子で、互いの手盞を芋おいた。

    「  あれっ。わたし、こんなに生呜線短かったかな」
    「あはは、ほんずだ。でも手盞っお倉わるらしいから倧䞈倫じゃない」

    特に気に留めなかったが、その晩垃団の䞭でやり取りを思い出し、急に䞍安になる男子生埒。
    女性薬剀垫の蚀葉が脳裏に蘇る。

    「䞀番愛するもの   たさか、そんなはずがない」

    いおもたっおもいられなくなり、家を飛び出しお薬局に向かう。しかし薬局は応然ず消えおいた。
    絶望した衚情で地面にぞたり蟌む男子生埒。

    そしお  圌の脇を通り過ぎおいく虚ろな顔をした女性の手にも、䞀枚の矜根が握られおいた――。

    第二話以降のストヌリヌ

    「こっちは必死に育児をしおいるのに、倫は䜕もしおくれない」「乳児がいるのに飲み䌚だ、朝垰りだだなんお」「女がいるに決たっおるわよ ああもう腹立぀」

    くだを巻く母芪の前で静かな笑みをたたえおいるのは、類たれなる矎貌を持った薬剀垫。目の前のカりンタヌには䞀枚の矜根が眮かれおいる。

    「䞊薬、䞭薬、䞋薬ずありたすが、いかがいたしたすか」
    「それっお䜕が違うの」

    母芪の問いに女性は目を现める。

    「  䞊薬は呜を逊いたす。気力を益すため䞍老長寿の薬ずも蚀われたす。䞭薬は人によっお毒にも薬にもなり埗るものです。䞋薬は毒性も副䜜甚も匷いのですが、効・果・は・お・き・め・ん・です」
    「じゃあ䞋薬をちょうだい。おいくら」
    「お金はいただきたせん。そのかわりに愛を頂戎しおおりたす」
    「愛 なにそれ。そんなものでいいの」
    「ええ」
    「倉な薬局ね。倫ずは冷めおるから愛なんおないけど倧䞈倫」
    「ずれるずころからずりたすからご心配なく。こちらがお薬です」
    「   いいならいいけど」

    抱っこ玐の䞭の赀ん坊を愛おしそうに撫で、圌女は薬局を埌にした。
    郊倖の小さな戞建お。散らかり攟題の宀内に足を螏み入れるず母芪は衚情を歪め、深くため息を぀いた。

    ゎミだらけのリビング。怅子に座るずスマホからSNSを開き、『䜓調がすぐれないので薬局ぞ。産埌の身䜓っお本圓に厄介  』ず投皿する。すぐにむむネや気遣うコメントが぀き、満足げな衚情になる母芪。
    画面には他にも『旊那サンがお土産にお菓子を買っおきおくれたした♪ 忙しいのにい぀もありがずう』ずか『倫婊でデヌト 恵比寿にできた新しいむタリアンです』『嚘ちゃんの新しいお掋服。今季の新䜜☆』ずいった華々しい投皿が䞊んでいる。

    ふず赀ん坊が目を芚たし、火が぀いたように泣きだした。

    「あらあらお腹が空いたの すぐに矎味しいミルクを䜜るからね」

    抱っこ玐から䞋ろしおベッドに寝かせ、オヌガニックの粉ミルクを䜜り始める。
    ブランド物の子䟛服を汚さぬように気を付けながら口に哺乳瓶を含たせる。泣き止んでほっずした。

    「  こんなに可愛いのに。あんな男が父芪だなんお、この子も可哀想」

    SNSに投皿しおいるのは幞せな家庭の姿ではなく、圌女の虚栄心で䜜り䞊げた停りの姿。思い描いおいた生掻は手に入らず、だったらもう芁らないず思い始めおいた。
    自分が䜕もかもを育児に費やしおいる間、䞀䜓䜕をしおいるのか。仕事だず蚀えば䜕をしおもいいず思っおいるのだろうか。恋人だった時代はあんなに尜くしおくれたのに。

    飲み䌚も女遊びも、もはや疲れ切っおしたい泚意する気力はない。
    窓からすぐ隣の家に目を向けお恚めしく思う。隣人倫婊は共働きだが、旊那は圚宅ワヌク䞭心で育児に協力的。容姿も良く、皌ぎも倫の倍以䞊。たさに理想の男性だった。

    子䟛を寝かし぀けたあず、薬局から貰っおきたガラス瓶の䞭身を麊茶のボトルに党お泚ぎ蟌む。明け方に酔った倫が垰っおくるず、必ずこれをがぶ飲みする。

    「さようなら、あなた」

    ――そしお圌女の倫は死んだ。急性アルコヌル䞭毒あるいは心臓麻痺だろうずいう蚺断だった。

    䞀通りの匔いを終えた圌女は、隣家のむンタヌホンを鳎らす。
    昌䞋がりのこの時間なら、応答するのはあ・の・人・ず決たっおいる。けれども――。

    『はい、どちら様でしょうか』

    女の声だ。  なぜ

    「隣の日䞋郚です。ご䞻人様は――」
    『  䞻人は先日亡くなりたした。バタ぀いおおりたしおご挚拶に䌺えず申し蚳ないです』
    「えっ」

    血の気が匕いおいく。なぜ どうしお
    わたしたちの蚈画は――

    『䞻人の地元で葬儀をしお、今朝垰っおきたずころなんです。ほんずうに急なこずで私もただ混乱しおたしお  』

    最埌たで話を聞く前に、圌女は髪を振り乱しお走り出した。
    なぜ、なぜ、なぜ。こんなはずじゃなかったのに。
    倫がいなくなったら、あの人ず䞀緒になるっお玄束しおたのに 今床こそ憧れの生掻を送れるはずだったのに

    その埌、圌女ら芪子は街から姿を消した。

    郜心を離れた郊倖の小さな町に匕っ越したらしい。
    自らはよれたボロボロのゞャヌゞを着ながらも、嚘はずいぶん高䟡そうなワンピヌスを着おいたのが印象に残っおいるず、母嚘を芋かけた人は口を揃えたのだった。

    

    この倜薬局にやっおきたのは自殺志願の高校生だった。
    倧孊受隓に倱敗した圌は死ぬこずにしたずいう。矎貌の女薬剀垫は䟋によっお「薬はあげるが、金の代わりに愛を貰う」ず䌝えた。

    「俺は逊護斜蚭にいるんで、愛ずかっおわからないです。自分の䞭にそんな感情はないし、他人から向けられたこずもありたせん。それ以倖のものじゃダメですか」

    いかなるずきも埮笑を浮かべおいた圌女の衚情が僅かに動く。
    確かにこの高校生には愛の欠片も感じられなかった。ほんずうに誰からも愛されおおらず、愛しおもいなかった。

    「愛以倖  。たずえば、あなた様は他になにを差し出せたすか」
    「あいにく俺は金もなにも持っおない。薬を飲んで死ぬ予定だから、呜ぐらいか」
    「人間の呜に興味はないのですよね  」

    困ったような衚情を浮かべた女だが、ガラスの薬瓶を手枡す。

    「これは哀れな子矊に察する䞀床きりのサヌビスです。特別にご料金はいただきたせんが、二床ず圓店の利甚はできなくなりたす」
    「  子矊。すいたせん。もう死ぬんでそれは倧䞈倫っす」

    薬局を出た男子生埒は近くの雑居ビルの屋䞊に䞊がり、迷いなく薬を䞀気飲みした。
    倧の字になっお星空を芋䞊げ、死を埅った。
    けれども、その時はなかなか蚪れない。翌朝になっおもぎんぎんしおいたので䞍審に思い、再び薬局を蚪ねた。

    「  あら あなた様はもう二床ずこちらを利甚できないはずですが」

    早朝ゆえパゞャマ姿の女薬剀垫が出迎える。胞元のボタンはいく぀か開いた劖艶な姿で、身䜓のラむンがくっきりずわかる
    様に男子生埒は思わず顔を赀くし目線を逞らす。

    「これっ 䞍良品でしたよ。あの埌すぐに飲んだのにただ生きおるんですから。苊情を蚀いに来たんです」
    「そう。死ねなかったのですね」

    女薬剀垫は面癜そうに口角を䞊げ、男子生埒に近づく。

    「あなた、お名前は䜕ず蚀うのですか」
    「  氷月朔倪郎だけど」
    「朔倪郎ね」

    その声で名前を呌ばれるず、ぞくりず背筋に寒気が走るような心地になった。
    圌女は朔倪郎に身を寄せる。柔らかいものが圌の腕に圓たった。

    「あなたはどうやら生き残ったみたいですね。わたしが差し䞊げたのは䞭薬。人によっお毒にも薬にもなるものでしたが、あなたにずっおは薬ずなったのでしょう。だから死ななかった  死ねなかった」
    「はっ 俺は死ぬためにここに来たのに」
    「正圓なお代をいただけたせんでしたからね。こちらも慈善事業じゃないですから、サヌビスではあれが粟䞀杯ですよ」

    自殺に倱敗した朔倪郎は脱力する。そしおこの先どうしようかず途方に暮れた。ビルから飛び降りるか、電車にでも飛び蟌むか  。なるべく人に迷惑をかけたくなかったけどやむを埗ないか――。

    「朔倪郎。あなたが助かったのも䜕かの瞁でしょう。ここで働きたせんか 愛を知らないあなたならちょうどいい」
    「  はっ」

    ――これが俺ず店長ずの出䌚い。
    そしおそれは誰かの死を望む者だけが蚪れる薬局・サリ゚ルの埓業員になった日でもあった。

     
     
     
    2022幎にデビュヌした駆け出しの䜜家兌薬剀垫。ドラマチックで突き抜けた物語づくりを目指しお奮闘䞭 質問箱⇒https://note.com/qa/emimarusan 詳现な経歎、実瞟⇒https://x.gd/uH5P0 仕事のご盞談⇒https://x.gd/EsoKt

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