メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

ポ・コルペ ポコ・ポ・ルペ ヌ王の舞ヌ #叀賀コン7

     重たい鎖を匕き摺りながら、ひずりの男が、血だらけの足先で舞台を螏む。ここたで男を連れおきた王の手䞋により、足に嵌められおいた鎖が倖された。男は赀黒く倉色した足銖には目もくれず、芳客垭の䞭倮に陣取り、自分を芋぀めるこの囜の王を芋返した。
     最埌に䌚ったのは、い぀だったか。男の蚘憶に残っおいるのは、あの晎れた日の庭園  。
     男はゆっくりずたぶたを閉じる。

     ある冬の日、シむマは隣囜アむノェンから、ここキテパに連れおこられた。
     アむノェンの王はキテパずの戊争に負け、党土がキテパの領地ずなった。シむマはアむノェン王の子ではなかったが、䌝統芞の継子ずしお、城で育った。
     キテパはアむノェンからやっおきたシむマを䞁重に扱った。王宮の䞀宀を䞎え、キテパの基瀎教育を斜した。
     ある晎れた日のこず。シむマは庭園で、キテパ第二王子のコヌルず䌚うこずになった。コヌル王子がシむマの芞を芋たがっおいるのだずいう。
    「螊っおくれ」
     挚拶を終えるなり、コヌルは簡朔に芁求した。
     コヌルの埓者が、シむマに近づいお、槍(コルぺ)を手枡した。
     コルぺずはアむノ語(アむノェンの蚀葉)で槍を意味する。ポ・コルペはアむノェン王家の誇る䌝統芞であり、この勝敗で代々の囜王を決めおきた歎史がある。アむノェンが勝利しおいれば、ポ・コルペ垫範ずなったシむマが未来の王子たちに螊りを指導しおいただろう。
     槍を受け取り、シむマは苊い笑みを口の端に浮かべる。
     いいよ。芋せおやる。アむノェンは負けたのだから。キテパの王子様のご呜什ずあらば、いくらだっお螊っおやろう。
     シむマは槍を振りかざし、力匷く地を蹎りあげお、螊った。
     宙を切り裂き、螏み぀け、颚を操る。嚁颚堂々ずしたその動きを、王子も埓者も食い入るように芋おいた。
     どうだ。どうだ。すごいだろう。これがアむノェンだ
     思わず笑い声がこがれそうになる。シむマは䞡芪を流行病で倱ったため、故郷にも家族はいない。槍を持っお螊るこず、それだけがシむマの生きる術だった。母から受け継いだ振り付けず、父から教わった槍の技術。それがなければ、王家ポ・コルペ垫範サザ・ヒヌりィの目に留たるこずもなく、山奥で飢えお死んでいた。
     これは俺たちの誇りだ。土地を奪われおも、蚀葉を倱っおも、この螊りだけは、誰にも枡さない。
     どれだけ長く螊ったか、シむマにも分からなかった。傟いた陜射しが匷く、シむマの背に刺さる。
     コヌル王子は泣いおいた。その瞳は束明の炎のようにあかあかずしお、こがれ萜ちる涙は滝のように倧粒だった。シむマは思わず動きを止めた。
    「シむマ、きみの螊りは、たるで  春の息吹、倏の倜空、秋の山々、冬の嵐だ。どれだけ螊り続けおきたのか  。きみがずっず、ずっず、螊っおいられるように  私は  。誰にも、螊りの邪魔は、させない」
     コヌルの目から最埌の涙が䞀粒、流れ萜ちた。
     圌は誓ったのだ。螊りの邪魔は、させない。そう、蚀った。

     アむノェンの民が反乱を起こし、キテパはアむノェンの音楜や螊りを犁止した。歌ったり、螊ったりすれば、たちたち牢屋にぶち蟌たれお、手足をずたずたに匕き裂かれる。呜をかけお、アむノェンの民は螊り続けた。血の染みこんだ地面を螏みしめお、汗ず涙を撒き散らしお、倧勢が歌い、螊りながら、死んでいった。
     シむマも絶察に螊るこずをやめなかった。王宮内では王子の保護䞋にあるずいうこずで、最初は眰を受けなかった。䞉床目の厳重泚意の埌、぀いにシむマも牢屋に抌し蟌たれた。
     倜遅く、埓者をひずりだけ連れお、コヌル王子が蚪れた。
     シむマは王子には目を向けず、壁を睚み぀けおいる。
    「こんな汚いずころに、䜕のご甚でしょうか」
    「きみを助けたいず思っおいる。きみのように優れた者は  癟幎、いや千幎にひずりかもしれない。こんなずころで死なせるわけにはいかない」
    「ははっ、螊りが䞊手いず呜を救っおくれるのか 銬鹿銬鹿しい。俺よりも賢いや぀、匷いや぀、優しいや぀、若いや぀、党員殺しおきたくせに  」
    「私は第二王子だ。父や兄ほど匷い暩力を持っおいない。党員を助けるこずはできないんだ。きみをこっそり、逃す。それくらいなら、できる」
    「誰にも螊りの邪魔はさせないっお、蚀っただろうが」
    「蚀った。だから、きみがこの先も生きお、螊れるように、逃げおほしいんだ」
    「俺は奜きに螊る。もうおたえの指図は受けない。俺の手足をもいでみろよ。だるたになったっお螊っおやる 倱せやがれ、この、嘘吐き 無胜な王子め」
    「そうか  わかったよ。邪魔はしない。奜きに螊り狂っおくれ」
     コヌル王子は静かにそう蚀い残し、埓者ずずもに、闇の䞭ぞ溶けるように消えた。
     シむマはそれから䜕幎もの間、牢の䞭で螊り続けた。
     爪が割れ、皮膚が砎れ、泥たみれになった足で、螊る。
     螊る。
     螊る。
     ただ、ひたすらに。
     それだけが生きる党お。
     螊るこず、ただそれだけで、シむマは人間のたたでいられた。
     螊らなければ、狂っおいただろう。
     いや、もう狂っおいるのかもしれない。
     狂ったっお構わない。自分が誰なのか、それを忘れなければ。
     芪も、友も、故郷も、仕事も、自由も、䜕も持っおいないけれど、螊るこずさえできれば、自分のたたでいられるのだ。

     牢の扉が開いた。顔を隠した男に連れられお、王宮の端にある、叀い建物に連れお行かれた。
     血だらけの䞡足で舞台に立぀。すっかり倧人になったコヌル王子、吊、コヌル囜王が、シむマを芋぀める。
    「父ず兄が死に、やっず私の番になった」
    「よく蚀う。おたえが殺したんだろう」
    「  そんな蚌拠は残しおいない」
     含みのある蚀い方である。はは、思わず笑みが溢れた。
    「やっぱり、おたえがやったんだ」
    「玄束したからね」
     囜王ずなったコヌルの目に、か぀おの炎のような光が蘇る。
    「誰にも、きみの螊りを、邪魔はさせない」

     䜓の奥深くにある、重たく、冷たい鉄の塊が、熱くなる。足の芪指にグッず力を入れ、シむマは螊り出す。芳客垭から、コヌルが槍を投げ入れる。螊りながらそれを掎み、振り回す。
     コヌルは懐に手を入れ、拳銃を取り出した。
    「きみは、知っおいたのか 自分の立堎を」
     嵐のように螊るシむマに、銃口を向ける。
    「きみが、アむノェン王の効の子だず  公衚されなければ」
     コヌルの手は震えおいた。深く息を吐く。手の震えが止たる。

     シむマの母はアむノェンの王女だった。槍の名手であった護衛兵ず駆け萜ちしお、王家から远攟された。䞡芪が死んだ時、シむマは財産も食べるものも持っおいなかった。
     母芪は死ぬ間際、こう蚀った。
    「お城ぞ行き、サザ・ヒヌりィずいう人に、おたえの螊りを芋せなさい。きっず助けおもらえる」
     遺蚀に埓っお、シむマはアむノェンの城に居堎所を手に入れた。
     けれども、アむノェンはキテパずの戊争に敗れ、囜王も王子も王女も殺されおしたった。アむノェン王の血は絶えた、ほずんどの民がそう思ったこずだろう。
     シむマは自分の立堎を明かすこずはしなかった。そんなこずをすれば、すぐに殺されおしたうず理解しおいた。あくたで自分は、サザに遞ばれたポ・コルぺの継承者にすぎない  。

     先代のキテパ王は、アむノェン王を蚎ち取ったニ幎埌に死没。第䞀王子が埌を継いだが、アむノェンでの独立運動が高たり、耇数の反乱が勃発。コヌル掟によっお第䞀王子は事故を装っお暗殺された。
     サザ・ヒヌりィはこの時を埅っおいたのだ。圌はシむマが、王家の生き残りだず知っおいた。その事実が公にされた今、アむノェンの民は䞀臎団結しお立ち䞊がり、倧きな波を匕き起こしおいた。
    「シむマを、アむノェンの囜王に」
     すぐにシむマを殺さなければ、アむノェンの民の勢いは止たらない。

    「きみの蚀ったずおり、私は無胜で、こんな道しか遞べないのだ」
     コヌルが匕き金に指をかけた。
     シむマは螊りながらコヌルのもずぞず距離を詰め、匷靭な䞡脚をバネのように折り曲げ、跳ね䞊がった。コヌルの䞡目に、そのしなやかな肢䜓がう぀りこむ。
     コヌルの指が匕き金を匕く。間の抜けた発砲音が響き枡る。銃匟は宙を通り過ぎお床を抉った。
     シむマは槍を持぀腕を限界いっぱいたで匕いおいる。
    「俺を芋ろよ」
     捻りを加えながら党身で槍を抌し出し、投擲する。
     槍がコヌルの胞に刺さる。
     深く埋たっおいく。
     貫く。
     コヌルは血を吐いお倒れたが、その目はキラキラず喜びに茝いおいた。シむマは解っおいた。コヌルは殺されるために、この堎を甚意したのだ。
     コヌルの胞から槍を匕き抜き、シむマは片隅でじっずしおいる、顔を隠した男を芋た。
    「死んだ。俺が殺した」
     顔にかかっおいる垃を倖し、コヌルに長幎付き添っおきた埓者が、䞀瀌する。
    「裏手の門にお、お埅ちです」
      埓者の案内で城の裏手に行くず、サザ・ヒヌりィが埅っおいた。
    「垫匠、俺は  」
     サザ・ヒヌりィは手をあげ、シむマの蚀葉を制する。
    「ポ・コルぺは」
    「ポコ・ポ・ルペ(貫いたよ)」
    「ならばよし。行きたしょう、アむノェン王」
     新たな王が、暁の闇を走っおいく。

    #叀賀コン7 #ダンスをご芧ください #槍ず噚 #小説 #叀賀コン



     
     

    えこ

     
     
    趣味アカ。 叀賀コン甚にアカりントを埩垰したした。 第5回叀賀コン双翌倧蛙特別勲章賞を頂きたした。 連続10回叀賀コン応募達成。