
花畑の地底には旧文明のコンクリート層がある。
四番花 花畑の地底には旧文明のコンクリート層がある。
畑で花を育てるとき、雑草と並ぶ巨悪が存在する。
石だ。
苗を植えるときに真下に大きな石があれば、花は根を伸ばすことができないし、花を綺麗に伸ばすために張るネットの支柱を打ち込むときも、石があると必要な深さまで打ち込めないのだ。
ある日、畑で支柱を打ち込むとき、毎度の如く大きな石に当たる感触が僕の手を痺れさせてくれた。
「チッ、またかよ」
と、地底で笑い転げているであろう石に聞こえる音量で舌打ちをお見舞いしてやった。
少し場所を移し再度支柱を打ち込むも、またもや同じ深さで大きな石に行く手を阻まれのだ。
雑草の成長を防ぐために敷いているマルチが支柱の穴だらけになり、雑草共の大歓声を聞くことになるのを恐れていたとき、僕はあることに気が付いた。
「この畑の地底には旧文明のコンクリート層がある」
恐らく何らかの災害で滅んだ旧文明のコンクリート層が、安曇野の地底には存在いるのだろう。
この層がある限り、花はその層より下に根を伸ばすことができないのだ。
しかし、かつて滅んだ旧文明の敷いたコンクリート程度に鍛え上げた僕の腕力が負けるはずがない。
幾度となく支柱を打ちつけるも、残るのは手の痺れだけで旧文明層を突破することはできなかった。
現代文明で生きる僕が、圧倒的な敗北感に苛まれていたとき、進行スピードが遅いことを訝しんだ先輩同僚の女性に声をかけてきた。
「何してるの?」
僕は地底に旧文明のコンクリート層が存在すること、そのせいで作業が難航していることを説明した。
すると先輩は、
「変なこと言ってんじゃないよ」
と一蹴。
そして僕からハンマーを受け取ると、支柱の位置をほんの数センチずらし、一発で打ち込んでみせたのだ!
旧文明層は突破された。
いや、突破されたように見せかけられたのかもしれない。
恐らく先輩は旧文明から派遣された監視員なのだろう。
コンクリート層の位置を正確に把握し、旧文明が隠す秘密に、外部の人間が辿り着かないよう監視しているのだ。
そう考えれば辻褄が合う。
なぜ先輩は迷いなく支柱の位置を変えられたのか。
なぜ僕だけがコンクリート層に阻まれ続けたのか。
滅んだ文明の民は何を隠しているのか、謎は深まるばかりである。
ちなみに後日、別の畑から旧文明のものと思われる大きな石が出土した。
どうやら旧文明の勢力は、僕が想像しているよりも大きいみたいだ。