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『発想力は移動距離に比例する』の本当の意味 - なぜ、「動くこと」に価値があるのか?

    『発想力は移動距離に比例する』

    あちらこちらでこの言葉を見たり、聞いたりして、すでにこの内容も効果も十分理解されている皆さんも多いと思います。
    私がこの言葉を知ったのは数年前と遅く、早稲田大学大学院経営管理研究科 教授の入山章栄さんの講演の中で、カレーチェーン「ゴーゴーカレー」創業者の宮森宏和さんの言葉として聞いたのが初めてでした。

    このお話を聞いて、それまでの自分の行動とスタイルに全て納得しました。
    自分自身で思っていた行動が、しっかりと言葉として表現、また、脳科学や心理学のエビデンスとして示され、「あっ、そうか。これなんだ!」と腑に落ちました。

    実はこの言葉は特定の誰か一人が言ったというよりも、多くの経営者や研究者が、それぞれの経験から行き着いた、ある種の「共通言語」のようなものです。
    カレーチェーン「ゴーゴーカレー」創業者の宮森宏和さんはもちろん、ハイパーメディアクリエイターの高城剛さんは「アイデアは移動距離に比例する」を自身のライフスタイルの軸とされています。
    さらに遡れば、かつての名経営コンサルタント・船井幸雄氏は「情報量は、移動距離の二乗に比例する」という名言を残しています。
    もっと遡ると、世界の偉人の中にも、旅はもちろん様々な意味での『移動』をすることでの経験や気づきからアイデアや発想を得て、偉業をなした人たちが多数います。
    デカルトは各地を旅しながら思索を深め、モーツァルトは幼少期から各国を巡演し、多様な音楽文化に触れていました。

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    異なる場所で、異なる時代に、異なる人たちが、同じ結論にたどり着く。
    新しいものや普通は思いつかないようなものを生み出す人たちが、なぜこれほどまでに『移動』の価値を説くのか。そして、移動することによって私たちの脳や心に何が起きるのか。
    改めて文字にしてみたいと思います。

    1. なぜ『移動』すると『発想』が生まれるのか?

    いつもと同じ部屋で、いつもと同じ椅子に座り、いつもと同じ画面を見つめる。 この「いつもと同じ」は、脳にとって最高に居心地が良い反面、創造性にとっては退屈な状態です。脳が完全に「省エネモード」になってしまうからです。
    私たちの脳は、放っておくと驚くほど早く「型」にはまります。毎日同じ道を歩き、同じ人と話し、同じ景色を見ていると、脳は「もうこれは知っている」と判断します。
    脳にとって居心地が良い反面、深く考えることをやめてしまうのです。これは脳が省エネで動くための、ごく自然な仕組みです。

    しかし、物理的に場所を移動し、見慣れない景色、聞き慣れない言葉、予想と違う出来事に触れると、私たちの五感は一斉に目を覚まします。
    これらはすべて、脳への心地よい「ノイズ(新鮮な刺激)」となり、急に脳が活発になるんです。

    そうすると脳は、この新しいノイズを処理しようと、普段使っていない回路を必死に回し始めます。その結果、これまで結びつかなかった記憶と記憶がカチッと繋がり、「あ、そうか!」というひらめきや発想が生まれるんです。
    見知らぬ体験は、脳にとって「特別なこと」として処理される。

    古くから三上の環境「枕上、厠上、馬上」、つまり「寝ているとき、トイレにいるとき、移動しているとき」に良い考えが浮かぶと言われてきました。
    ぼんやりと散歩をしているときや、移動中の車窓をただ眺めているときには、脳は「デフォルトモードネットワーク」というモードに切り替わります。このとき、入力された情報と過去の記憶が、自由に、思いがけない形で結びつき始めるんです。

    実際に、スタンフォード大学の研究チームが行った実験では、座っているときよりも歩いているときのほうが、発想の自由度(拡散的思考)が明確に高まることが示されています。
    また、新しい物事に挑戦しようとする性質は「新奇探索傾向」と呼ばれています。人は新しい刺激に触れて快感を得たとき、報酬系の神経伝達物質であるドーパミンが分泌されます。この快感が、もっと新しい場所へ、もっと新しい体験へと、私たちを誘っていく。移動が発想を生むのは、決して気分の話ではなく、こうした脳の仕組みに根ざした、とても自然な反応なのです。

    これが、移動によって新しい発想が生まれやすくなる、ひとつ目の理由です

    2. 出会う人の座標をずらす-「他者」という未知の移動先

    そして、移動がもたらす最大の効果は、その先で待っている「人との出会い」にあります。

    私たちは毎日同じ環境で過ごしていると、自分と似た価値観、同じような業種、近い年齢層のコミュニティという「心地よい安全地帯」に閉じこもりがちになります。しかし、一歩外へ、見知らぬ場所へと移動した先には、全く異なるバックグラウンドを持つ人々が暮らしています。

    旅先でふらりと入った居酒屋の店主、異なる地域で独自のこだわりを持つ職人さん、あるいは畑違いの場所で出会った専門家。
    彼らが何気ない一言、その土地特有の生き方、その組織の文化風土などには、自分がいつも関わるコミュニティにはない「別の価値観」が詰まっているかもしれません。

    「そんな考え方もあるのか」
    「自分の当たり前は、ここでは全く違うんだ」

    自分の常識が「心地よく揺さぶられる瞬間」が「新しいアイデアの種」になります。
    自分とは全く違う人生の座標にいる「他者」の視点を取り入れること。これこそが、移動がもたらす最も大切なことです。

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    3. 移動とは「距離」だけじゃない

    ここでもっと大切なのは、「移動距離」とは、単に物理的な距離だけを言っているのではありません。
    もう一つの移動、それは「普段の行動パターンからの移動距離」。
    経験や思考の「振り幅」そのものです。

    たとえば、いつもなら絶対に選ばない選択をしてみる。

    • 普段は絶対に見ない本を読んでみる

    • 自分とは無関係な分野の勉強を少しだけしてみる

    • いつも関わっている業界とは全く違う業界の人と話してみる

    • 普段は絶対に着ない色の服を試着してみる

    • いつものルーティンの中に「いつもと違う選択」を混ぜてみる

    これらはすべて、立派な「移動」だと思います。
    「自分の中に定着したルーティン」から、どれだけ遠くへ離れられるか。
    その心理的な距離が、脳に新鮮な衝撃を与えます。
    「こんな世界があったんだ」という小さな驚きの積み重ねが、発想の引き出しをどんどん増やしていきます。

    大切なのは表面的な移動ではなく、「自分の価値観とは異なるものに、本気でふれてみること」です。
    自分の専門領域から離れた学びに本気で向き合うこと、自分とは異なる価値観の人の話をじっくり聞いてみること。
    そうした「経験の振り幅」そのものが、移動距離になるんだと思います。

    私もいつもと違うことをすると「面倒だな~」と思うことがありますが、これを知ってからは面倒でもできることなら、あえて実行するようにしています。

    4. 心の移動距離 - 「関心の振り幅」

    さらに言えば、自分の「興味関心の振り幅」もまた、重要な移動距離です。

    今の時代、SNSのタイムラインは自分好みに最適化され、おすすめされる本や動画も、自分の過去の好みの延長線上のものばかり。
    だからこそ、あえて「全く興味のないもの」に知的好奇心を移動させてみるんです。

    最近、「ポケモン×工芸展」という展覧会を見てきました。
    一見、つながることのない分野ですが、全く違う分野に触れて、もしくは知的好奇心を移動させた素晴らしい内容でした。

    自分の仕事や生活には全く関係なさそうな「遠い場所への学び」こそが、実は最強の発想の源泉になると思います。

    イノベーションや面白いアイデアというのは、常に「遠く離れたもの同士の掛け算=化学反応」から生まれるからです。
    自分の興味の振り幅が広ければ広いほど、自分の中でそのバリエーションは無限に広がっていくと思います。

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    まとめ - 自分という存在の「振り幅」を楽しもう

    「最近、面白いアイデアが浮かばない」
    「なんだか毎日がマンネリ化している」

    そう感じたら、能力が落ちたわけではなく、同じ場所に長く居すぎただけかもしれません。

    ただ、「移動」は自然には起こりません。
    日常は、放っておけば同じ場所に留まろうとする力の方が強いから。

    発想力を高めたいと思ったら、移動は「自分で行動を起こす」ことです。
    遠くへ旅に出ること。
    普段読まない本を開くこと。
    異業種の人に会いに行くこと。
    その全てが創造性、発想力への「一歩」だと思います。

    だからこそ、私自身も、意識的に「移動」を取り入れていきたいと思っていますし、実際に行動しています。
    それは、遠くの神社へ足を運び「見えないものに感謝する」ことかもしれませんし、防災士やMBA(経営学修士)など、畑違いと思われるような学びに挑戦することかもしれません。

    「発想力は、移動距離に比例する」

    それは、遠くへ行けという単純な話ではなく、「自分をいつもと違う場所に置く勇気を持とう」という、静かな励ましの言葉なのだと、私は受け取っています。

    どんな方法でも構いません。大切なのは、自分という存在の「体験の振り幅」を広げてあげること。

    さあ、明日はどこへ移動してみようか。

     
     
    CHO(最高幸福責任者)として「子どもたちと先生、そしてみんなの幸せ」を、CDO(最高DX責任者)として「デジタルの力で加速させる」 ICTの「技術」と、ファシリテーターとしての「対話力」を掛け合わせ、教育現場のみならず全ての組織のエンゲージメントとHappy、DXを推進中です!

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