わくにことば(note版)
本記事は、
「筆者が自作した五七の韻律を中心とする日本語でつくる、制約をもつ言葉遊び」
の作品集です。
本記事内の各作品の制約は主に以下2つです。
1.パングラム
語群から一度ずつ文字を用いる言葉遊び
2.アナグラム
文字の並びを変えて意味を変化させる言葉遊び
本記事掲載のアナグラムは、以下の特徴があります。
1.文節単位で行う
2.締め句は変えない
3.真逆の世界観を表現する(表と裏)
各作品には、以下が入り交じったものがあります。
各作品の制約を満たす為です。
1.古語・歴史的仮名遣い
2.口語・現代的仮名遣い
各作品の意訳もあわせてお読み下さい。
なお、本記事の一部または全部の無断転載・複製等の不正行為を固くお断り致します。
※
本記事はnoteへの投稿作品及び自著「わくにことば」の掲載作品から構成されています。(再編含む)
読者の皆様にお楽しみ頂けましたら幸いです。
1.「四季うつろ」
清音46文字から成るパングラムです。
五・七調ではない形式です。
原文
春
芽ら 添わせし
夏
終日 海
秋
得む 小夜を
冬
寒に 炉へ火
太 此れ照り消ぬ
於く地の 大和
読み
はる
めら そわせし
なつ
ひねもす うみ
あき
えむ さよを
ふゆ
かんに ろへほ
たい これてりけぬ
おくちの やまと
意訳
春は大地が芽吹き
夏はひがな一日海へ行き
秋は静かな夜を楽しみ
冬は寒さゆえ炉に火を灯す
雄大な四季が移りゆく
ここは大和
2.「春めいて」
清音46文字から成るパングラムです。
五・七語調で形成しています。
原文
春めいて
夏の匂ひと
秋香り
冬澄み渡れ
嶺も白く
山野咲む
瀬縫う気 東風よ
空を舞へ
読み
はるめいて
なつのにほひと
あきかおり
ふゆすみわたれ
ねもしろく
さんやえむ
せぬうけ こちよ
そらをまへ
意訳
春めいてきた
夏の木々さんざめく匂いと
秋の実り豊かな香りだ
冬の清涼よ広がれ
あの嶺も白く染めるように
山や野原が茂りゆく
川々超えて春風来たれ
空を舞え
3.「目を見やれ」
清音46文字から成るパングラムです。
五・七語調で形成しています。
原文
目を見やれ
雲一つなき
朝へ伏す
ゆらりたわむは
夜の枝そ
幌しけぬ
尾根に晴天
乞う街か
読み
めをみやれ
くもひとつなき
そらへふす
ゆらりたわむは
よるのえそ
ほろしけぬ
おねにせいてん
こうまちか
意訳
そらんじる
からりとした天の模様
爽やかな朝に伏すように
ゆらりとたわむのは
明かりを運ぶ真っ黒な一本線
幌では足りない程
広やかな尾根なぞる純む空を
望む街なのだろうか
4.「無間」
清音・濁音66文字から成るパングラムです。
五・七調ではない形式です。
原文
性なれど櫃
臓と骨
鼓舞も食べ切り
地雷を恐る
恵まぬ地獄
逃げ忍び
風で残地へ
会えばよろけて
已む図 肌際
父母見ゆ 凉瀬
読み
さがなれどひつ
ぞうとほね
こぶもたべきり
ぢらいをおそる
めぐまぬじごく
にげしのび
かぜでざんちへ
あえばよろけて
やむづ はだぎわ
ふぼみゆ すずせ
意訳
大義が閉じ込めた世界
広がる凄惨と亡骸
勇気は地雷に敵わない
燃え盛る戦場を生き延び
風に乗り故郷へ帰る
再会を果たせば立っていられず
終わったんだと 抱きしめられる
安息の地
5.「刻む打と」
清音・濁音66文字から成るパングラムです。
五・七調の形式です。
原文
刻む打と
弦うねり
愛づ合間よび
是非 叫ぶ
雅を奏で
紅葉濡れ
濁るその毒
和らぎし
為ず 伝ふ
千穂全て
恥ぞ朧ぐ
声結へば
読み
きざむだと
げんうねり
めづあいまよび
ぜひ さけぶ
がをかなで
もみぢぬれ
にごるそのどく
やわらぎし
せず つたふ
ちほすべて
はじぞおぼろぐ
こえゆへば
意訳
支える打音と
弦が鳴り響く
その場その時の
想いを叫ぶ
美しく奏でるなら
紅葉がしっとり輝くように
溜め込んだ憎悪は
和らいでゆく
無為でも伝わる
全ての人が
解き放たれていく
皆の声が一つになるなら
6.「さようなら」
同じ文字からなる各文節のアナグラムです。
表の詩・裏の詩があります。
どちらの詩も締め句は固定です。
五・七調ではない形式です。
さようなら 表
原文
熊
熊
熊
静かに擦れば
避難せよ
見たら噛まれる
さようなら
読み
くま
くま
くま
しずかにずれば
ひなんせよ
みたらかまれる
さようなら
意訳
熊
熊
熊
抜き足差し足忍び足
早くここから逃げないと
目が合ったら最後だ
さようなら
さようなら 裏
原文
撒く
撒く
撒く
ばれずに如かず
卑賤な世
民ら撒かれる
さようなら
読み
まく
まく
まく
ばれずにしかず
ひせんなよ
たみらまかれる
さようなら
意訳
撒く
撒く
撒く
不都合を隠し続ける
汚い世の中
皆が気づく前に
さようなら
7.「逆さに」
同じ文字からなる各文節のアナグラムです。
表の詩・裏の詩があります。
どちらの詩も締め句は固定です。
五・七調ではない形式です。
逆さに 表
原文
浮き輪で大海
動いてなんだ
くらげの目とても
見たいと
逆さに
読み
うきわでたいかい
うごいてなんだ
くらげのめとても
みたいと
さかさに
意訳
浮き輪をつけて海水浴
今動いたものは何だろう
くらげには目があるのかな
見たい気持ちはお顔を
逆さに
逆さに 裏
原文
浮気で解体
後手いう旦那
下の楽求めて
痛みと
逆さに
読み
うわきでかいたい
ごていうだんな
げのらくもとめて
いたみと
さかさに
意訳
魔が差し離散
言い訳を並べる彼
刹那の快楽に溺れて
後悔と共に落ちゆく
逆さに
8.「和」
清音46文字から成るパングラムです。
四部作です。
五・七語調で形成しています。
平和
原文
平穏に
浮世を暮らす
猫のろし
歩も目見ゆるや
ふと駆けて
褪せぬ絵は
幸つたひ吾
染まりなむ
読み
へいおんに
うきよをくらす
ねこのろし
ほもめみゆるや
ふとかけて
あせぬえは
さちつたひわれ
そまりなむ
意訳
あくびをして
自由を楽しむ
のろまなどら猫
近づくと気づかれ
走り去っていった
何気ない日常が
五感を包み 私は
じんわり染まる
不和
原文
凍てつく夜
避け得ぬ弓矢
返す矛
無理ひねる落ち
そら失せろ
袂分き
目離れ 踏まん
二の足を
読み
いてつくよ
さけえぬゆみや
かへすほこ
むりひねるおち
そらうせろ
たもとわき
めはなれ ふまん
にのあしを
意訳
氷の夜
突きつけられる言葉に
刺々しく言い返す
引けずに放つ
出ていけと
別れてから
寂しく知るのは
大切さ
融和
原文
未練失せ
正眼 拗ねぬと
その無知を
世や思ひ合ふ
雪 綻
連なりし
葉に幾重照る
若竹へ
読み
みれんうせ
まさめ すねぬと
そのむちを
よやおもひあふ
ゆき ほころ
つらなりし
はにいくえてる
わかたけへ
意訳
醜さは剥がれて
もう見失わないと
省みた彼等
また惹かれ合う
雪解けの頃
支え合い
きらと光る
二人になる
令和
原文
令い月に
香りは甘ゆ
梅の粉へ
怨持てぬ根を
竹 千歳
宙障ふな
すみれ麗し
惚く八尋
読み
よいつきに
かおりはあまゆ
むめのこへ
えんもてぬねを
たけ ちとせ
そらさふな
すみれうるわし
ほくやひろ
意訳
令和の月見
華やぐ香りは
揺蕩う梅へ
気分は和らぎ
二人は永らぐ
まだ居たい
すみれの花うつくしい
この世界
おわりに
制約の中、こんなにも自由な言葉遊びができることに、
日本語の素晴らしさをしみじみ感じ入った次第です。
これからも母語と戯れ続けます。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
やま
※
自著「わくにことば」には
このnote版と一部異なる作品を掲載しています。
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