メインコンテンツへスキップ
見出し画像

しぐるるやしぐるる山から出られない

    私はよく歌を歌っているようです。
    自分ではあまり意識していないのですが、掃除をするときや料理をするときなど歌っています。

    毎朝、知的障害の生活介護に通う長女ほかろんをバス停まで、送っていくときに、ほかろんからリクエストされることもあります。
    「まじょのたっきゅうびん、うたって。」
    そこで、前奏セリフ入り、

    そのラジオ消してくださる。
    タンタタンタタタ
    タンタタンタタタ

    「あの人のママに会うために、
    今一人列車に乗ったの。」
    周りの人に聞こえないように小さい声で歌います。

    「おかあさん、うたうまいね。」
    ほかろんがほめてくれます。

    そして次のリクエストは、
    「おかあーをこえーっていううた。」

    ほかろんの妹たち三人とも、少年少女合唱団に入っていたので、私の持ち歌の守備範囲は広いのです。
    特養で働いていた時は、一日何十人もの機械浴の入浴介助をしていました。
    次から次へとやってくる利用者さんを洗身するときには、歌ってなくては、やっていけない心の状態になりますので、
    「Come on baby, do the Loco-Motion」などという60年代ヒット曲などを歌いながら、洗い続けていました。

    本当に洗い続けていたのです。
    周囲の人からは、歌えるなんて元気でいいねとか、明るくていいねとか言われてたのですが、メンタル崩壊で歌っていなければ正気を保っていられなかっただけです。

    ほかろんが生活介護の通所になじみ、妹たちが家を出ていって、ほかろんとの二人暮らしになったころ、やっと余裕をもって音楽を聴くことが出来るようになりました。

    メロディーだけでなく、歌詞もじっくり味わえるようになったころ出会えたのです。

    「しぐるるやしぐるる」と言う言葉が入った歌に。

    これは俳人の山頭火の句に使われている言葉で、私はこの表現が好きです。
    好きというか、自分の心にしっくりくる表現だと。
    「しぐるやしぐるる山へ歩み入る」 種田山頭火

    素敵な言葉であるのだけど、寒くて暗い山の中で降り続ける冷たい雨。
    心細くて、早くこの山から出たい。
    雨がやんでくれたらいいのに。
    せめて、お日様の顔を見てから死にたい。
    それでも、この道を行く。
    みたいなイメージ。

    その様な心象風景。
    そんな心細い世界に生きている自分は、これからどう生きて行ったらいいのだろう。
    老障介護の毎日を言い表すのに最適な表現。
    しぐるるやしぐるる。

    米津玄師さん、「Lemon」
    も好きですが、「さよーならまたいつか」も好きです。
    沖縄ロケのMVもいいですが、「虎に翼」の紅白バージョンもいいです。

    「しぐるるやしぐるる町へ歩み入る
    そこかしこで袖触れる
    見上げた先には何も居なかった
    ああ居なかった」






     
     
     

    ecco

     
     
    東京郊外で、老障介護真っ最中。私、78歳。長女53歳。知的障害、自閉スペクトラム症。てんかん。躁病。生活介護通所施設利用中。母は長女が通所している間に、映画や海外ドラマを見たり、編み物や刺繍をして、自分を保って暮らしています。

    あなたへのおすすめ