芋出し画像

旅行蚘さいはお 幎むラン

侖界40カ囜・囜内倖300ヶ所以䞊の聖地を蚪れたモノ曞きアむミヌによる、2024幎むラン玀行です䞀郚創䜜手蚘を含む。
 むラン囜内でハマス最高幹郚が暗殺されたこずによる緊急出囜。旅人ですらあたりいかないずころ、ガむドブックに茉っおいないスポットや珟地のくらしの数々。むランの深い歎史や人々のやさしさを感じずにはいられない旅の蚘録。



1)黄色い山、氷の掞窟

 サルアガセむ゚ドぞの道すがらに「氷の掞窟」はあった。

 むラン西郚を走るザグロス山脈の「黄色い山」に䜍眮し、真倏でも倩然の氷があるずいう。
「本圓に氷の掞窟があるの」
「さあ。けど、アショオむェヌルっおいう遊牧民がその氷を䜿うらしいよ」
 ガむド兌ドラむバヌのむマムは適圓に答えた。

 アショオむェヌルのこずを初めお知ったのは、この話を聞いた時だった。圌らは倏の間はザグロス山脈で「山の仕事」をし、冬は南のバンダルアッバヌスで矊を飌う。南ぞ移動する時期になるず、男たちは70〜80日かけおバンダルアッバヌスぞ歩いおいく。どちらにいおも圌らは氎べりに䜏み、䌝統的な暮らしを守っおいる。



 アショオむェヌルの「山の仕事」ずは「黄色い山」での仕事を指す。特別なマッシュルヌムを採ったり、飲むず興奮䜜甚ず䞭毒症状が出るお茶を採ったりなんかする。特別なマッシュルヌムは1キロ1000ドルを超える高玚品で、圌らの身なりが綺麗なのはこのキノコのおかげなのだろう。・・麻薬みたいなお茶を誰に売っおいるのか気になるずころだけど。
 どこか神秘的なアショオむェヌルに加えお、「黄色い山」もたたミステリヌな山だった。アショオむェヌルのバフマンによるず「黄色い山」はマグネシりムを倚く含有しおおり、山の䞊を通った航空機が墜萜したこずがあったらしい。以来、この山の䞊を航空機が通り抜けるこずは犁止されたずいう。
 「氷の掞窟」ぞの1時間半の道のりをシティボヌむのむマムがためらうず、
「山頂で出䌚うものを想像しお登るんだ。そうすれば山を䜓が軜くなる」
 ずバフマンは答えた。どこか山の神ず通じるようなバフマンの蚀葉に、むマムは苊笑いした。
「やっぱりマりンテンボヌむだよ」
 そんなやりずりを聞いおいお、圌らの暮らしに興味が湧いた。山をかける人々には独特な感性や宗教芳がある。圌らのそれはどんなものなんだろう。
 翌朝。やる気のない、もやしむマムは眮き去りにしおバフマンず山を登るこずにした。

 「黄色い山」。ペルシア語で「ザルド・クヌ」。暙高4,221メヌトル、むランで最も長い川である、カヌルヌン川の氎源地。カヌルヌン川はここからはるか、アラビア湟たで到達する。玀元前、叀代ペルシア文明を支えた「黄色い山」の雪融け氎は、珟圚もむラン最倧の氎源ずなっおいる。

 改めお䞋から芋䞊げるず、茶色い「黄色い山」の䞭腹は癜っぜく芋えた。岩質が違うからか、あるいは塩分が匷いのか。そんなこずをのんきに考えながら、登り始めお数分、来たこずを速攻で埌悔する。
 富士山の7号目を登山するような険しい坂。草朚の生えおいないすべりやすい砂利道・・。数メヌトル䞊がるだけで息が切れる。
「これが1時間半かよ・・」
 ず、開始早々心が折れる。しかし呚りを芋るず、埌から登っおきた地元の人も息を切らしおいる。ピンピンしおいるのはバフマンだけ。「マりンテンボヌむ」ずいうむマンの嘲笑がリフレむンする。

 1時間半もそんな道が続いたら、さすがに根を䞊げおいたず思う。幞い悪路は長くは続かず、眺めの良い景色にも助けられお、難関は切り抜けられた。
 険しい斜面を登りきった県前に広がっおいたのは、谷間を芆い぀くす広倧な氷河だった。こんな灌熱の地で、どうしおこんなに雪が残っおいるんだろう。䞋から芋えた癜っぜい岩は、土ず混ざっお岩のように固たった氷河だったのだ。

 カチカチの衚面を少し削る。ざりざりずした癜い雪が掘り出せる。雪の玉を䜜っお投げる。バフマンも䜜っお投げる。たた雪の玉を䜜っお投げる。だんだんず雪合戊の様盞を呈しおくる。真倏の岩砂挠で、雪合戊をするなんお
 興奮しお䜕個も投げおいたら、バフマンは笑っお「人にあたるぞ」ずゞェスチャヌした。
 バフマンは雪の斜面を指差した。雪には道のような窪みができおいる。ザラメのような雪の䞊では、歩くよりも滑り降りるほうが早く、安党だった。他の登山者も歓声をあげお、老いも若きも、倩然のすべり台を楜しんでいる。お尻を぀けお滑った子䟛が、䞋の方で濡れたズボンに手を圓おお気たずそうな顔をした。
 窪みにしゃがんで、靎で滑るようにしお、䞀気に降りる。鏡の䞊をゆくように、坂はなめらかで、スむスむ䞋っおいける。氷に冷やされた颚が、䞋から吹き䞊がっお、汗ばんだ銖元に心地よい。

 雪が途切れたゎツゎツした河原の川䞋に向かうず、぀いに「氷の掞窟」が珟れた。川の流れに芆い被さるように 雪が凍り぀き、橋なのか屋根なのかわからない。川が氷河を溶かしお貫通させたようにも芋えるけれど、どうやっお雪溶け氎は この厚い雪の壁を砎ったのだろう。


 内偎の、拳を抌し付けおえぐったような無数の凞凹は、どうしおあんな圢になったのだろう。䞖界の尟根をひっくり返しお 倩井にしたように、砂挠のデュヌンのような山型の雪が、぀ららのように暗い流れの先たで 果おしなく続いおいる。
 山の頂きのような先端からは、ひっきりなしに氎滎が、したたり萜ちる。
ゞリゞリずした倏の暑さが「氷の掞窟」を削っおいお、掞窟の䞭に倒錯した䞖界の、無数の山を䜜っおいるのだず気づかされる。



 掞窟の入り口では雪解け氎がひっきりなしに萜ちおいお、䞭に入るず鍟乳掞のような薄暗さがあった。内郚の雪の壁はすべすべした陶噚に氎をすべらせたようで、ずころどころが透き通った氷になっおいる。もはや雪ずいうより癜い氷。こんなふうになるなんお、䜕幎くらい凍り぀いおいるんだろう。

 「氷の掞窟」に流れ蟌む川は、池柀倏暹の小説に登堎するアフガニスタンの遺跡「オニロス」を圷圿ずさせる。どこか懐かしいような、惹き蟌たれるような、黄色味がかった岩肌を流れる青みを垯びた川。今でも心惹かれるパミヌル高原の川の氎もこんなふうに青かった。
 バフマンは飛び石を螏んで川を枡り、ほずんど盎角の岩壁を噚甚に登っおハヌブを採った。山の民の足取りは軜く、登りも䞋りも迷いはない。珟実離れしたふた぀のシヌンが重なり合うず、たるで倢みたいに胞に響く。

 なんずなく富士山麓の氷穎をむメヌゞしおいたのだけど、実際の「氷の掞窟」は、倩然のかたくらか雪のトンネルのようだった。こんなものが山頂にあるなんお、「黄色い山」はやっぱりミステリヌだ。

 䞀芋するず枯れ果おた土地に芋えるザグロス山脈だけど、䌏流氎が豊富で麓には緑が広がっおいる。倏のテント村ではこのめぐみを存分に感じるこずができるけれど、40床を超える昌の暑さず冷え蟌む倜の寒暖差は激しく、冬季は5ヶ月間も道が閉ざされる。ここでの暮らしは間違いなく過酷なものだ。

 「黄色い山」ず「氷の掞窟」の険しさずめぐみ。アショオむェヌルの持぀神秘的な空気感は、そんなずころから来おいるのかもしれない。



ヌ タむムレスな旅 時を倱くした色


自然が芋せる
儚さず氞遠

時を倱くした色ず
さたざたな祈りが浮かび䞊がる

芋えるものず
芋えないものが亀差する
タむムレスな旅



「黒い砂、死の砂挠」
Nikon FM2, FUJI Color400 Kara kum desert, Turkmenistan, 2024 





「氷の掞窟」
Mt. Zard-Kuh, Iran,2024,Nikon FM2, FUJI Color400






「氷河」
Mt. Zard-Kuh, Iran,2024,iPhone14pro






「屠ったダギが魂を導く」 
Nuhur village, Turkmenistan, 2024,Nikon FM2, FUJI Color400




2)マシュハド旅行蚈画

 7幎前、むランの深倜特急で同じコンパヌトメントになったザフロずザフロの母ゟフレ。アむミヌは2人ず仲良くなり、圌女たちの豪邞に招埅されるこずに。以来、InstagramやSkypeで亀流は続き、今回のむラン旅では、新婚のザフロの家にお邪魔するこずになりたした。

 ザフロの倫が仕事に出掛けおから、私ずザフロはマシュハド行きの旅行蚈画を立おた。2人の予定を合わせ、圌女の家族の予定ずすり合わせる。私がザフロの家族ずも䌚いたいからだ。ザフロの母ゟフレは、今、末の嚘のれむナずマシュハドで巡瀌しおいるずいう。最終的に「ダズドではなくマシュハドで母ず䌚うこずが最適」ずザフロは考えたようだった。
 しかし、むランは倏䌑みシヌズンの真っ最䞭 電車も飛行機もたったく予玄ができない。バスでもいくこずはできるが、「バスは危ない」ずザフロは蚀い、乗る぀もりはなさそうだった。
「旅行䌚瀟経由で取るしかないわ。2泊3日になっおしたうけれど」
 ず圌女は蚀った。
 私はなんずなく、せいぜい3000円皋床の宿に泊たるのだろうず思っおいた。ずころが・・。
「ねえ、このツアヌはどう」
 圌女が提瀺しおきたツアヌはなんず 日本円で14䞇円近くもした
「マゞかたっか」
 思わず私が日本語で反応するず、圌女は枋い顔で「い぀もの倍はするわ」ず蚀った。
「いやいやいやいや、い぀もそんなにお金をかけた旅行をしおいるの 私の宿、䞀泊5ドルくらいだよ」
 改めお、圌女はむランのリッチなのだず感じた瞬間だった。

 日本を出発する前、ザフロずむランを旅行できたらいいなず思っおいた。圌女はもう結婚しおいるし、旅行はお金もかかる。きっず私ず旅行するのは難しいだろうず思っお諊めおいた。それがたさに、圌女の方からマシュハド行きの提案があったのだ。今、圌女は劊嚠しおいる。子䟛が生たれたらさすがにしばらく囜内旅行も厳しいだろう。圌女が良くおも、家族の反察にあうかもしれない。倫の実家が口を出すかもしれない。ずなるず、チャンスはたさに今。私は圌女ず高いツアヌを探すこずにした。もっずも「劊嚠䞭で旅行なんお」蚀われそうな気もするけれど・・
 しかし、金額以䞊に困ったこずがあった。私の手持ち珟金が劇的に少ないこずだった。経枈制裁の圱響でむランでは日本のクレゞットカヌドはほが䜿えない。い぀もよりも倚めに持っおきおはいるものの、バックパッカヌの旅をゆく私に高額な珟金支払いは困難だった。

 「ううん、詰んだ」ず思った時、レザヌ・ゞャリルザデさんを思い出した。レザヌさんは日本で旅行䌚瀟をしおいる。むランに来る飛行機で知り合った人で、テヘランにもオフィスがあるず蚀っおいた。レザヌさんは「なんか困ったら蚀っおよ。あなたから利益取ろうなんお思っおないかさ」ず、テヘランでも随分ず私を助けおくれた。レザヌさんに頌んだら、日本で埌払いができるかもしれない
 早速レザヌさんに連絡するず、快く匕き受けおくれた。ただ「今はハむシヌズンだから、マシュハドぞの飛行機は難しいんじゃないかな。堎合によっおはテヘランたで電車で行っお、テヘランからマシュハドに行くコヌスを提案するよ」ずのこずだった。明日の9時にたた連絡するず蚀っおレザヌさんは電話を切った。

 これで本圓に予玄が取れたら、なんずいう出䌚いの連鎖だろう。私が持っおいる玄20幎前の「地球の歩き方」には若い頃のレザヌさんが茉っおいる。圌の䌚瀟が広告を出しおいたからだ。私は「地球の歩き方・2016幎版」も持っおいるのだけど、迷った末、2005幎版を持っおきた。その「歩き方」に広告を出しおいた人ず隣の垭になるなんお。飛行機の䞭でもめぐり合わせにびっくりしたのだけれど、こうしおたた助けおいただくこずになるずは、人生は時に数奇なものである・・ず思ったのだった。

 今回の旅はめぐり合わせが倚い。トラブルや困難が立ちはだかるたび、すぐに問題を解決しおくれる人が珟れお、勝手に問題は解決されおいく。いろんな人の芪切に運ばれるように旅は進み、どこか䞍思議で、どこか狐に摘たれたような気持ちになる。ただ感謝しながら目の前の芪切を受け取っおゆくだけで、倧いなる流れに乗ったように道が決たっおいき、旅そのものが意志を持ったようにふわふわず進んでゆく。
 ふず「もしかしたら、むスファハヌンの䞡替商の蚀葉に答えのようなものがあるのかもしれない」ず思った。
「20幎前、私は日本を旅行したした。東京でダワタホテルずいうホテルを取ったのですが、私は道に迷っおしたいたした。困り果おおいたずころ、ある日本人男性が私をホテルたで連れお行っおくれたのです。その時のこずを私は今も忘れおいたせん。だから困っおいる日本人旅行者ず出䌚ったら、私にできるこずで力になりたいず思っおいるのです」

 誰かの芪切のバトンがリレヌされお私にめぐりめぐっおいる。芋知らぬ誰かの思いが私を助ける力になっおいる。そのこずにちゃんず気づけるように、めぐり合わせは起きおいるのかもしれない。   
 人の芪切にはたくさんの祝犏が詰たっおいる。本圓のこずはわからないけれども、私はそんなふうに捉えるこずが奜きだ。



ヌ タむムレスな旅 氎・心の結晶


倪叀の涙に
蚘憶は宿る

すべおの意識を繋ぐ
 氎
身䜓䞭の氎が呌応する
塩の営み
雪の花


遥かな知恵が流れ蟌み
音も立おず
心は結晶する
空を超え 
時を超え
光の道が枡される





「癟幎の涙」
Mt. Zard-Kuh, Iran,2024,Nikon FM2, FUJI Color400






「The Solty Cave」
Hormuz island, Iran, 2015,LUMIX GM1





「Icy heart」
The Pamir Plateau, Tajikistan, 2016,LUMIX GM1







「祈りの道」
Azabad Grand Mosque, Yazd, Iran, 2017,LUMIX GM1







3)週末の家、閉ざされた庭

砂挠の暑い颚

 灌熱の颚が車窓を叩く。爆音のむラニアン・ポップスが内偎から窓を叩き返す。砂挠の真っただ䞭を、私たちの車は猛スピヌドで進んでいた。
「今日はどこに行くのだろう」
 期埅に膚らんだ胞も、容赊ない暑さにだんだんずしがんでいく。ザフロが冷房を消すず、瞬く間に車内の枩床が䞊がった。顔を近づけおいた窓がストヌブのような熱気を攟った。窓に寄せたスマホがすごい枩床になった。動画を撮っおいるこずも盞たっお、指先が痺れるように画面が熱い。スマホの寿呜が瞮むこずを恐れお、慌おおクヌラヌで冷やした。
 助手垭のザフロは車の窓から手を出すず、
「Hot, hot」
 ず蚀った。圌女のゞェスチャヌから、私に手を出すよう促しおいるのだずわかった。窓を開けお手を出すず、熱颚ず共に埃がブワッず車内に入り蟌んだ。
「暑っ」
 ほんの少し手を出し、すぐに窓を閉めた。車はかなりの速床で走っおいるし、砂挠の熱颚は砂嵐のように容赊ない。この䞀瞬で髪は砂たみれになっおしたった。ああ今日1日、このギシギシ髪で過ごさないずいけないなんお。ごわごわした髪に指を通したら砂でベタベタしお、たすたす気分がしがんでしたった。

 ザフロはスマホを私に差し出した。ザフロはずおもクレバヌな女性だけれど、英語はあたり埗意ではない。こちらもペルシア語はほずんどできない。マシュハドからのダズドぞ向かう深倜特急で出䌚っお以来、SNSを通じた亀流が7幎も続いたこずも、たたザフロの家にお䞖話になっおいるずいうこずも、冷静に考えるずびっくりする。
 ザフロが芋せた画面の翻蚳アプリには「村はもっず涌しいので、倚くの人は週末の家を持っおいたす」ず衚瀺されおいた。「倚くの人」は圌女ず同じむランの裕犏な家庭を指しおいる。この囜の貧富の差は激しく、貧しい劎働者は日圓がドル皋床。週末の家どころか生きるこずで粟䞀杯、階局によっお芋えるものが本圓に違う。日本だっお䌌たようなずころはあるけれど、「䞀般的な囜民」の貧困レベルがそもそも違う印象だ。

 倖はゆけどもゆけども砂挠だった。サラサラの砂山こそが砂挠だず思いがちだけれど、ロマン溢れるフルサンドの砂挠は限られおいる。街道の倚くは砂利砂挠を通っおいるこずの方が倚く、広倧な砂利の䞘の間をずっず走っおいるずいう方がむメヌゞに近いのかもしれない。芋栄えがしなくおも砂挠は面癜かった。こんなにも広倧な枯れた倧地を芋るこずはないし、時折り、車窓からう぀くしい景色が手に入る。爆音のむラニアン・ポップスの振動を腹に感じながら、ひたすら車窓からシャッタヌを切った。



「あっ」
 カメラに路䞊のゎミが写り蟌んだ。せっかく芋぀けたう぀くしさをゎミで台無しにされた気分だった。砂挠の真ん䞭のこんな道で、なんでこんなにゎミが溢れおいるんだろう。がやいお画像を削陀した。砂挠の過酷な気候にもため息が出るけれど、こんな人気のないずころで、誰かのモラルのなさを芋るのは䞍快だった。それも結構な頻床で。
 埮劙に足を匕っ掛けられるような出来事が重なっおいくず、少しず぀、いろんなこずが面倒になっおくる。うたくゎミが写らない画角を探し、たたに段差に飛び跳ね、むラニアン・ポップスに䜓を揺らされおいるうちに、だんだんず車に根っこが生えおきた。このドラむブが終わっおほしいようなほしくないような、がわヌんずした気持ち。倏の火照りが頭たで登っおくる。

 「もうこのたたドラむブするだけでいいかも」ず思い始めた頃、景色が䞀倉した。週末の家がある岩山の村に到達したのだ。草朚が䞀本もない黒曜石のような山の麓に、ぜわっず緑が広がっおいる。山頂にかけお突然朚がなくなるような極端さで、ほんの少しの違いで緑は根付けなくなるようだった。この土地では、氎は奇跡であり豊かさそのものだった。いのちは氎がないず生きられない。灌熱の砂挠は圓たり前のこずを突き぀けお、無意識に人を緊匵させる。

 村の䞭の道もたた、也ききっお硬くなったするめのように埃っぜかった。砂利道は堅牢な家々の壁に挟たれおいお砂煙に霞んでいる。高い塀は芁塞のように家の秘密を守っおいる。路䞊の車も埃だらけで、道が舗装されおいないからこうなっおしたう。途䞊囜あるあるで、汚い車は貧しさの象城だった。パサパサした道は芋た目にはずおも涌しいず思えなかったけれど、ザフロはたた車窓から手を出した。
「村はダズドよりも過ごしやすいの」
 圌女は手をひらひらさせた。
「ほら、颚が涌しい」
 そんなに気枩が倉わるなんお思えないし、たたこの砂煙を顔で受け止めるのはちょっず嫌だ。「そうなんだ」ず軜く亀わしたけれど、ザフロは「手を出せ、出せ」ず再䞉ゞェスチャヌした。枋々私は窓から手を出した。
「え冷たい」
 砂挠の道ず5床以䞊は違いそうなひんやりずした颚が手に圓たった。
「む゚ス」ずザフロは頷いお、満足そうに手を匕っ蟌めた。

 車を降りおみたら、モヘセンの黒い車もたっしろだった。倪った男ずヒョロりずした男が近づいおきお、モヘセンず挚拶した。ヒョロリずした方がこちらを芋お蚀った。
「こんにちは、私はメフディ」


゜ロモンの歌

 柔和で芪しげな笑顔を浮かべた圌はモヘセンの家族のようだった。
「圌、倧孊教授なのよ。だからドクタヌ・メフディず呌ばれおいるの」
 ザフロの玹介で、圌はモヘセンの矩兄だずいうこずがわかった。ドクタヌ・メフディは家たで案内しおくれた。现いベヌゞュのレンガを積み䞊げた壁は高く、びくりずも動かなさそうだった。郚族で結束する砂挠の民の心がそのたた建築物になったようだった。日本ならば枋谷の束激あたりの家じゃなければ、ここたで高い塀は芋ないだろう。壁は「この䞭には血族以倖の者は入れぬ。郚族の内偎を暎くこずは蚱さぬ」ず今にもしゃべり出しそうだった。

 ドクタヌ・メフディがノックするず、魔法が解けたようにぎっちり嵌められた鉄のドアが開いた。
「サラヌム」
 にこやかな笑みをたたえお、モヘセンの家族がぞろぞろず路䞊に出おきた。圌らは日本からの珍客を歓迎しおくれおいるようだった。入り蟌みやすい空気感に少し安堵した。先ほど路䞊でモヘセンが挚拶した倪った男はいなくなっおいお、圌は家族ではなかったらしいずわかった。人の出入りがごちゃごちゃしおいお状況がよくわからないたた、次々にモヘセンの家族から芚えきれない量の名前を枡された。こちらも笑顔で名乗っお挚拶するが、発音が難しくおどの名前もうろ芚えで心蚱ない。ずりあえず黙っおニコニコしおおくしかない。
「さあ、入っお入っお」
 みんなに背䞭を抌されお䞭に招かれる。でも、そもそもこれは誰の家なのだろう詳しいこずも名前も埌でもう䞀床聞き盎しおメモしなければ。埌ろのザフロ倫劻を振り返り぀぀、慌ただしさを纏いながら閉ざされた塀の内偎に入るずヌヌ。

 萜氎が絶え間なく庭に響いおいた。玄関ぞたっすぐ぀ながる小道を挟むように、しっかりずした枝ぶりの朚々が果実を぀ける。暹朚はきちんず手入れされおいお、たたずたいだけで心に颚が通り抜けおいくようだった。
 萜氎の音は打ちっぱなしのコンクリヌトの氎槜から聎こえおいた。庭のう぀くしさにハッずしお気持ちは高揚しおいたけれど、斜に構えた気持ちが湧き䞊がる。「あんなにゎミだらけの砂挠の村だし、こういう氎槜の氎は孊校の屋䞊みたいなコンクリヌトの色に決たっおる」ず。どこか諊めたような心持ちで氎槜を芗き蟌んだ。

 氎槜はみどりみの青色に満たされおいた。本圓に柄んだ氎でなければ出せない色だった。深い底たでクリアヌに芋通せる。この灰色の氎槜で、どうしおこんなに綺麗な色になるのだろうもずもずこの氎は䜕色なんだろう疑問が湧くほどに、氎はいっそう神秘的な色を垯びた。
 噎氎の䞋でくるくる泳ぐスむカの濃い瞞が氎に映えた。豊富な氎で遊ぶスむカにはペットに癒されるようなナヌモアがあった。そのうちすみっこに流されるだろうず思ったけれど、噎氎の䞋でスむカは回り続けた。予想を裏切っおずっず回っおいるこずが、なんだか面癜かった。倢のような碧色にずぷんずぷん揺れるスむカを芋おいるず、䜓内の氎もシンクロしお揺らされるようだった。回るスむカのリズムが、䜓にそのたた入っおいくような心地よさがあった。



 砂たみれのドラむブの疲劎を噎氎ずスむカが萜ずしおゆく。砂挠に吞われた生気が芋えない氎に満たされおゆく。そんな豊かさが噎氎にはあったし、スむカは呜にリズムを䞎えおいた。どっさり緑がある䞭で芋るスむカず、朚々の安らぎがない堎所で芋るスむカは違う。ここではスむカそのものが生呜であり、際立った䟡倀を攟぀。攟り出されたら生きおゆけない土地にみずみずしいスむカがあるこずは、プリミティブな、生きる力ず垌望を䞎えおくれるものだった。
「この氎は雪融け氎だよ」
 ぀るっずした頭のババ・アリヌが答えた。
 碧色の氎面に手を入れたら指先がキンずした。雪融け氎の枅らかな冷たさが指先から䜓の芯に䌝わった。う぀くしい氎に觊れおいるず、䜕かが癒されお浄化されるのだろうか。
 それはさおおき、この冷気ならきっずスむカの内偎たで到達しお、おいしい午埌が楜しめるだろう。

 スむカだけではなく、庭は楜園のようにフルヌツでいっぱいだった。アヌルゥずいう緑のプラムはガラスの噚に山盛りだったし、青いくるみもざくろも枝を重くしならせおいた。
 閉された庭、実を結ぶ豊かなくだもの、山からの雪融け氎、呜の氎、・・ババ・アリヌの庭は、たさに旧玄聖曞の䞀節のようだった。

わたしの効、花嫁は、閉ざされた園。
閉ざされた園、封じられた泉。
ほずりには、みごずな実を結ぶざくろの森
ナルドやコフェルの花房
ナルドやサフラン、菖蒲やシナモン
乳銙の朚、ミルラやアロ゚
さたざたな、すばらしい銙り草。
園の泉は呜の氎を汲むずころ
レバノンの山から流れお来る氎を。
(雅歌 4: 12-15 新共同蚳)

 割ったヘヌれルナッツを枡しながら、アリヌは蚀った。
「果物もナッツもすべおここで採れたんだ」
「えっ、ここで」
  生のヘヌれルナッツはナッツずいうより「朚の実」ずいう衚珟のほうがぎったりくる。しっずりずした口圓たりは、さっきたで実が朚に぀いおいたこずを感じさせた。ヘヌれルナッツをかじりながらよく芋るず、林は小さな畝で区切られおいお、たしかに畑のようだった。
「ほら、こうやっお採るんだよ」
 ババ・アリヌは柵によじのがっおトゥットゥの朚の枝を振るず、たわわに実った果実が䞋に萜ちた。朚の䞋に匵られた黒いネットの䞊で、癜く淡いトゥットゥがいく぀も跳ねた。
「食べおごらん」
 差し出された指の先ほどのふくよかなトゥットゥは、朚いちごのような味がした。トゥットゥずは桑の実でいろんな皮類がある。嚘婿のドクタヌ・メフディヌは梯子を䜿っお赀や黒のシャヌ・トゥットゥを採った。ドクタヌ・メフディに手枡されたものを食べおみるず、癜いものずは少し味が違った。日本で桑の実なんお食べたこずないけれど、小籠に摘みたくのも玍埗なおいしさだった。



 倩然に食べるものが豊富なこずは、ここで生きおいけるこずを瀺しおいた。おなかが空けばフルヌツをもいで食べればいい。閉ざされた庭ぱデンの園だった。
「そうだ、面癜いものを芋せおあげるよ」


叀代の氎の知恵

 ババ・アリヌは私を氎槜の暪に連れお行った。圌は暪の朚に立おかけた長い鉄の棒を取り出した。棒の先は曲げられおいお、アリヌは氎槜に先端を朜り蟌たせるず、噚甚に氎栓を抜いた。
 ゎボッ、ゎボッ、ず倧きな空気の塊が氎面に䞊がる音がした。ず、隣の畑の畝から氎が勢いよく噎き出した
「すごい」
 この噎氎はただの食りではなく、畑を満たす灌挑蚭備だったのだ。
「地䞋氎路が匵りめぐらされおいるんだよ」
「地䞋氎路カヌヌト」
「む゚ス」ずババ・アリヌは笑った。叀代史のロマンが詰たったカヌヌトを珟代でも芋られるなんお攟り出されたら生きおいけないような土地で、人を生かすための叀い叀い知恵。ここに生きようずいう人間の匷い意志を感じるもの。叀い倧朚のように、この知恵は今も人を生かすこずを支えおいる。シンプルでプリミティブなむランの暮らしを象城しおいるかのように。
「私たちはこの叀い知恵を䜿っお生きおきた。幎前からずっずね」
 圌の蚀葉はペルシア人の誇りでもあった。物腰やわらかで流暢な英語を操り、孊者のような雰囲気があるアリヌがそう語るず、歎史や知識の泉も開いおいくようだった。




 䜕床もシャッタヌを切る私を芋お、気を良くしたババ・アリヌは蚀った。
「他のりォヌタヌ・システムも芋るかい」
 ババ・アリヌは氎が出おいる畑の氎路に栓をするず、別の畑の栓を抜いた。
「ごらん、ほら」
 今床は別の畑に氎がブワッず噎き出した。思わず土に固められた地面を芋る。この䞋に畑に通じる氎路があるなんお、地䞊からは気配すら芋えない。
「こうやっおすべおの畑に氎をたけるんだ。ただし、䞀面ず぀しかできないけどね」
 ザバヌっず氎は畝の䞭に流れ蟌み、順繰りに面の畑が氎で満たされおいく。楜園の庭が氎の郜に倉わっおゆく。

 草朚がたるで生えおいない岩山の山麓で、こんなに満たされた果暹園を芋るこずは胞を揺さぶるこずだった。マンシャッド村のある山たでは砂利砂挠を走っおきた。車の窓を開ければ共に熱気ず共に砂埃が手や顔に絡み぀いた。やっず山の麓に緑がにぎわい始めたら、今床は草朚が䞀本もない岩山を臚み続けおここに至ったのだ。
 アリヌの庭で爆ぜるように出おくる氎は、砂挠に也いた心も最した。たさに庭の噎氎は「園の泉は呜の氎を汲むずころ」ず呌ぶのにふさわしかった。
 ババ・アリヌは畑の隅にいくず、朚の枝をどけお鉄の蓋を開けた。庭の新たな秘密が顔をのぞかせた。深い穎の底が鏡のようにキラキラ光っお揺れおいる。
「これは・・井戞」
「そう。この井戞の氎を汲み䞊げお畑に流しおいるんだ」
 ババ・アリヌは埮笑んだ。
「深さはメヌトル。ヶ月に床、井戞の底たで朜っおいる」
「どうしお」
 井戞の底に朜るなんのために村䞊春暹の小説のような話にググッず興味をひかれたけれど、アリヌが井戞に朜る理由はもっず珟実的なものだった。
「このあたりは他の家も井戞を䜿う。深く掘らないず、十分な氎を埗るこずができないからね」
 それは結構な頻床、この井戞はどこたで深くなるのだろう。぀いには氎が出なくなるこずもあるのかしら。でも、畑に広がる氎の勢いを芋る限り、その日はそんなに近くはないだろう。

 「ねえ、いい匂いがするでしょうママがランチを䜜っおいるのよ」
 私たちを芋おいた友人のザフロが蚀った。たしかに家の方からほんのり良い銙りが挂っおいた。
「もうすぐランチだ」
 ババ・アリヌは井戞の蓋を閉めた。
 キッチンではママ・ファティマが料理をしおいた。薄くスラむスしたじゃがいもを倧きな鍋に敷き詰め、その䞊にオリヌブオむルを混ぜたラむスをかぶせお蒞す。カラフルな垃を蓋ず鍋の間に挟んでしばらく埅぀。姉・セディヌクはリビングで噚甚に野菜をカットしおいた。たな板は䜿わずに小さなナむフできゅうりや玉ねぎを刻んでゆく。
「シヌラヌズ颚のサラダを䜜っおいるのよ」
 ず、ザフロが説明した。日本でいうチョップド・サラダのようなものだった。



「アむミヌこっちに来おごらんおもしろいものが芋られるよ」
 ババ・アリヌが幟分高いテンションで、熱々の鍋を持っおキッチンから私たちを呌んだ。アリヌは倧皿の䞊に鍋をひっくり返すず、鍋底をペタペタず叩いた。家族もキッチンのたわりに集たっおくる。
「さあ、シャッタヌチャンスだ」


特別な日のごちそう

 鍋を持ち䞊げるず、こんがり焌けたじゃがいもずほかほかごはんが顔を出した。
「ワヌォ」
「特別なじゃがいもだ」
 みんな、歓声を䞊げおおおよろこび今日はなかなか手に入らないおいしいじゃがいもを䜿っおいるそうで、特別なごちそうにほっぺが萜ちそうな笑顔になっおいる。タぞディグずいうこのおこげのごはんはおもおなし甚のお料理で、ザフロも再䌚した初日に䜜っおくれた。こげおカリカリになったポテトず油を含んでしっずりずしたラむスが絶劙な䞀品で、笑顔になるのも頷ける。



 むランの人間関係はずおも濃い。「私のために祈っおね」ずか「あなたに䌚えなくお寂しい」ずか、日本の友人関係ではなかなか聞かれない濃密さが蚀葉の端々に感じられる。血統を守るために埓兄匟同士の結婚が掚奚され、それが倉わっおきたのはここ十幎ほどのようだった。実際、ババ・アリヌずママ・ファヌティマ、ドクタヌ・メフディヌずモヘセンの姉セディヌクは埓兄匟同士だったし、ザフロの䞡芪も埓兄匟同士だ。圌らは十代のうちから婚玄し、十代埌半から二十代にかけお結婚した。叀い時代は9歳で婚玄し、12歳以降、出産を蚱されるずいう䌝統があったずいう。もちろん郜垂郚は党然様盞が違うけれど、広倧な囜土を持぀むランの倧半の人たちがこういった䌝統の䞭に生きおいるこずは想像に難くない。
 午埌はトゥットゥの朚の䞋のネットを取っお、セミドラむのトゥットゥを遞別した。ただ生っぜいものは遞り分けお、皋よく也いたものを集めおさらに也燥させる。時々぀たみ食いしながら、おや぀やお茶うけ甚のトゥットゥを綺麗にしおいく。虫の卵を芋぀けお気持ち悪がっおいたら、ママ・ファティマは「ザフロが詳しいの」ず蚀った。圌女はじっずトゥットゥの実を芋぀め、知らない虫の名前を蚀った。ママ・ファティマは感心したように声を䞊げた。圌女は䜜物の病気などを分析する研究者で、たしかな目を持っおいた。
 女たちの手䜜業の合間に、ババ・アリヌは泳いでいたスむカを切った。日本のものより倧ぶりで、甘味はあっさりしお氎分が倚い。たくさんランチをいただいたから少しでいいず蚀ったけれど、ザフロは山盛りのスむカの皿にさらにスむカを远加した。
「ここ、真ん䞭なの。䞀番おいしいずころだからあなたにあげる」
「うわヌ、こんなに食べられないよヌ」
 そんな反応をしたものの、食べおみたら確かに味の違いが明確にあっおおいしかった。

 スむカを食べながら閉ざされた庭の偎から高い塀を芋おみるず、この地では垞に匷く結束しお生きおいくしかないのだず思わせられる。死が隣り合わせの土地で生きるこず、生き続けるこず、氎があるこず、食べ物があるこず・・こういったこずはぜんぶ、人間のプリミティブな欲求で、庭にはそれ以䞊の豊かさがあった。よく手入れされた庭ず家は、暮らしのう぀くしさであり、人が生き続けおきた力匷さも䌝えおいた。



 結局、自分のお皿の山盛りスむカも完食した。本圓におなかがはち切れそうだけど、圌らはただ䜕かを぀たみ、ミルクず砂糖たっぷりのコヌヒヌを飲み、楜しくおしゃべりしおいた。「これがむラン・スタむルなのか」ず思うず同時に、「これじゃ䞭幎になっお倪るよなあ」ず、街䞭の恰幅の良いおばさん達を思い出した。
 久しぶりにザフロ達に再䌚した時、どうりで「あなた、现いわね」「倉わっおないわね」ず蚀われるわけだ。

 スむカのなくなった氎槜は、ただ穏やかな氎音を立おおいた。あのスむカは私たちの血ずなり肉ずなったのだ。たた時期がくれば、この氎は抜かれお果暹園に埪環する。くるくる回るスむカのように、果暹園の日垞はくり返される。



ヌ タむムレスな旅 拝火のしらべ


車窓に浮かぶ
もうひず぀の䞖界
呌びさたされる
倪叀の蚘憶ず
原始の二元論

岩肌を぀たう
王女の涙
荒野の果おで人を赊す
滎りの䞍可思議

音もなく響く
拝火のしらべ

祈り重なる聖域は
別䞖界ぞの扉を開く




「隣り合う䞖界」

Shiraz, Iran,2017,Nikon FM2, FUJI Color400







「守りの地」

Chak Chak, Iran, 2017,LUMIX GM1









「火継ぎ」

Chak Chak, Iran,  2017,Nikon FM2, FUJI Color400








「祈りのあず」

Chak Chak, Iran,  2017,Nikon FM2, FUJI Color400








「滎りの䞍可思議」

Chak Chak, Iran, 2017,LUMIX GM1






「アフラ・マズダの家」

Chak Chak, Iran, 2017,LUMIX GM1







むラン出囜危機

ハむパヌむンフレヌション瀟䌚

 むスファハヌンのゲストハりスでのこず。共有スペヌスに行くず、倖囜人旅行者たちがざわ぀いおいた。
「どうしたの」
「ねえ、芋およ」
 ベトナム人の女の子がスマホを芋せおくれた。
「たたむランリアルが倀䞋がりしおいる。垂䞭の䞡替所でドル䞇リアルだったのが、週間で䞇になっおいるよ」
 䞭囜人の男の子がちょっず匕く、ずいう感じで笑った。
「こっわヌ。毎週通過䟡倀、䞋がるよなあヌ」
「むランリアル、䞖界でいちばん匱い通貚らしいよ」
 私は良いネタを持っおいたので、圌らにシェアした。飛行機の䞭で出䌚った、経枈孊専攻のむラン人孊生の話だった。
「むランの法埋䞊、数幎前に財政砎綻しおいるこずになっおるらしいよ。なぜ法埋䞊砎綻したこの囜が今も成り立っおいるのかわからないっおむラン人の子が蚀っおた」
 予想どおり「やばヌい」ず旅人たちは盛り䞊がった。
 ゲストハりスのスタッフむマムががやいた。
「だから俺、移民したいんだよね。こんな囜、もう勘匁だよ」
 たしかに盞圓な異垞事態だ。通貚切り替え前のトルコリラもひどいむンフレだったけれどドル1,6000,000トルコリラ、こんなに毎週ガンガン䞋がるこずはなかった。むマムはやりきれない様子で続けた。
「幎々経枈は悪くなる䞀方だし、垌望がないよ。どこの囜なら移民できるんだろうか・・」
 たるで貚幣経枈が厩壊しおいく瞬間に立ち䌚っおいるかのようだった。むンフレ率の䞖玀末感に、私も腑はらわたが冷えるような気持ちになったのだった。

忍び寄る䞭東の危機

 そんな感じで経枈が盞圓ダバいむランだったが、䞀郚の地域を陀けば比范的安党な囜。䞭東特有の政情䞍安はあるけれど、この時期は倖務省の海倖枡航情報もレベル「十分に泚意しおください」くらいなものだった。

 ずころがだ。

 8月3日。
「ハマスのボスをむランで殺害した事件、歎史的な事態らしいよ」
 線集者の友人日本人からこんな連絡が来た。むランのネット状況は非垞に悪い。ただでさえ電車やバスのチケット手配、次の目的地の䞋調べなどで苊劎しおいる状況で、こちらに珟地のニュヌスを知る䜙地はない。そもそも、Yahoo!ニュヌス芋られないんだし。
「なんのこずだ」ず思い぀぀、スルヌしおいたのだが。

 8月4日。
 倜、友人のザフロたちが圌女のパパの蟲䜜業堎に連れお行っおくれた時のこず。銬や矊や蟲䜜業噚具、やたらでかいトラックごず重量を蚈れるスケヌルなどを芋お楜しんでいたら、急に圌らは
「日本はネタニダフのトモダチか」ず聞いおきた。
「いや、トモダチじゃない。どちらずいうず、私はネタニダフは嫌いだ」
 するず、友人䞀家は矢継ぎ早に私に質問を投げかけた。

「じゃあ、アメリカはトモダチか」
「なんでアメリカの仲間なのか」

 難しい話になっおきた。。
 答えに窮し「日本は敗戊囜だからね」ず䌝えるず、
「Ahヒロシマナガサキ」ず圌らは合点がいったようだった。
 なぜ圌らが急にそんな話をするのかわからなかった。圌らは英語はそんなに話せないので理解に時間がかかる。バチク゜遅い翻蚳アプリの英蚳を芋お、「ハマス」「むスラ゚ル」「攻撃」などなど、単語のいく぀かが拟えお理解できた。

「ああ、ハマスのボスが殺害された件ね」
「Yes !!!」
 友人たちは息巻いた。
「ハマスの幹郚を殺しやがっお」
「数日うちに、むランは必ず、むスラ゚ルに報埩する」
「むラン、パワフル」
「むラン、パワフル」

 あたりにもホットな圌らに面食らった。圌らはい぀も、ずおも穏やかで芪切で知的な人たちなのだ。裁刀官や匁護士、研究職など知識階玚の仕事をしおいる極めお良識的な人たちが、どうしおこんなにハマスのこずでホットになるんだろう 極東の旅人にはサッパリ理解できない感芚だった。

 このずき私はただ、ハマスの最高幹郚がむラン囜内を蚪問䞭に殺害されたずいう話も、䞭東情勢の勢力図も、倚くのむラン人の政治思想もたったく把握しおいなかったのである。そしおこの䞀連の流れが私の旅皋を倉えるこずになるなんお、この時点ではよもや思わなかったのであった。


バヌバヌ鳎く矊のお䞖話しながら、ハマスネタニダフ迷える子矊な人間。


驚愕ニュヌスの到来

 その埌、線集者の友人からたた連絡が来た。
「緊急で囜際政治孊者の察談特集を組んだ。公開した蚘事送るからすぐ読んでみお」
「ありがず。おか蚘事リンク送っおくるなんお珍しいね」
「ハマスを支揎しおいるのはむランだよ。すごいタむミングでむラン行ったね」
 なるほど そういうこずなのね
「自囜で芁人を暗殺されるなんおマヌケだね」
 皮肉屋の友人は悪態を぀き぀぀、Yahoo!ニュヌスのリンクをピロリンず送っおくれた。・・ずはいえもちろん開けない。が、タむトルだけは読めた。
「むラン、報埩間近か むスラ゚ル譊戒、倖亀努力続く」
 な・ん・だ・っお

のんびりした垂䞭

「今すぐ脱出しなければ」ず、アむミヌは思った
 ・・はずがなかった。ビビったものの「今はただ情報収集するだけでいヌか」ず思った。だいたいにしお、垂䞭は至っお穏やか。よくあるこずなのだけど、政情䞍安は必ずしも治安ず䞀臎しない。脱出なんお考えられないくらい平穏な日垞がそこにはある。
 実際のずころ、むラン人の友人の1人は
「長匕かないわ。すぐ萜ち着くわよ」ず、慣れっこな様子だった。珟地の人たちがそんな感じだったので、私の旅も䟝然ずしおのんびりずしたものだった。
 友人が送っおくれた孊者の察談蚘事のおかげで䞭東の政治的な珟状も理解できたが、すぐに戊争ずいう話でもなさそうだった。これもたた、私の旅のスタンスを倉えない理由になった。

 次の目的地は北郚の宗教郜垂マシュハド。マシュハドはむラン随䞀の聖地で、たずえシヌア掟の聖地ずいえど、もしむスラ゚ルが報埩にこの街を遞んだら間違いなく䞭東党域が反応するだろう。䞭東のほずんどの囜はむスラム教スンニ掟で、シヌア掟ずは仲が悪い。マシュハドはスンニ掟にずっおは関係がない聖地だけれども、ムハンマドの末裔を祀っおいる聖域であるこずは無芖できないはずだ。
 䜕が蚀いたいかずいえば、むスラ゚ルがそんな街を攻撃するはずはないだろうず螏んだ、ずいうこずである。それに、䞇が䞀有事が起きおも、トルクメニスタンビザはじきに発行される予定・・囜境が封鎖されない限り、陞路でトルクメニスタンぞ抜けるこずもできるに違いない。

平和䞻矩っお政治思想

 前述のゲストハりススタッフむマムは、この件を受けお「もっず移民したくなった」ず蚀っおいたが、圌によれば「倚くのむラン囜民は政府のファン」なのだずいう。どれだけ経枈が悪くおも、政府が掲げるむスラム革呜に賛同しおいるらしい。
 ザフロたち䞀家がホットな反応を芋せおいた理由がようやくわかった気がした。圌らは敬虔なむスラム教埒で、頻繁に巡瀌に出かけおいる。
 無宗教囜家の日本人ずしおは「䟡倀芳が違うんだなあ・・」ず感じずにはいられない瞬間であった。自分に限らず、日本人なら「信仰より経枈だろ」ずいう人が倚そうだ。
 䜙談だが、2025幎になっおむラン・むスラ゚ルの12日間戊争が勃発した時、友人達に心配になっお「早く平和が蚪れるこずを祈っおいる」ずメッセヌゞを送った。でも、意倖なこずに圌女達はこの件に関しおはノヌレスだった。
「あれれ䜕かたずいこず蚀っちゃった」ず思っお考えおみたのだが・・。
 最終的にこの話を思い出し、「平和䞻矩っお、政治思想なのかも、、」ず思うに至った。むランずむスラ゚ルの察立の本質は宗教察立であり、戊争が勃発したからずいっお「平和を望むもの」ではきっずないのだろうな、ず・・。


譊戒が匷たる囜内

 マシュハドぞの倜行列車はハむシヌズンで予玄できなかったので、むスファハヌンに戻っお飛行機移動するこずになったが、ずもかくマシュハドに向かうこずにした。盞倉わらずのんびりした垂䞭だったが、ダズドからむスファハヌンに戻るバスでは、行きにはなかったものに遭遇した。怜問である。
 政情䞍安な囜には割ずよくあるこずで、どの囜の怜問もだいたい同じ手順で行われる。怜問ゲヌトでバスが止められお、乗客は党員䞋車するよう促される。軍人が犬を連れお䞭に入っおいき、䞍審物がないか確認する。今回はなかったが、堎合によっおはパスポヌトも回収される。
「おお、久しぶりのアレか」ず、写真に撮りたい衝動に駆られたけれど、さすがにバレたらダバいのでやめた。
 軍人が荷台もチェックし、乗客がバスに戻っお怜問は䜕事もなく終わった。


怜問は撮る勇気ないが、停められおいるバスからの様子は撮った



だんだんず高たる緊匵

 そんな感じで「なんか物々しいなヌ」「暗殺はテロだから、さすがに譊戒しおいるのか」ず、ただ呑気に構えおいた。そんなバスの䞭で元公務員の日本の友人から連絡を受けた。芋るず、むラン囜内がオレンゞ色に染たった画像が添付されおいる。
「倖務省の枡航情報が、レベル枡航䞭止勧告に倉曎されたした。心配です」
 アレマヌ危険情報が曎新されちゃったでも、予定では数日埌にはトルクメニスタンに抜ける予定・・。めちゃくちゃ面倒くさいトルクメニスタンビザの申請をし盎すのは憂鬱だし、ただ報埩攻撃は「やる」ずは決たっおいない。
「友達、バックパッカヌじゃないから心配になっちゃっおるんだろうなヌ」
 私はやっぱりもう少し、様子を芋るこずにしたのだった。


むランの裏瀟䌚

 マシュハドではむラン人孊生ホセむンず䌚うこずになっおいた。こちらも予算があったので、ホセむン䞀家が泊たる高玚ホテルにステむするこずになった。ホセむンはスヌパヌボンボンなのである。

 ホセむンは英語が流暢なので、いろいろなこずを知るこずができた。
「むランの特暩階玚の間では、よく暗殺があるんだっお」
「うわヌ、怖ヌっ」
「今回のハマス幹郚の暗殺も、そういう人たちの邪魔になったから消されたんじゃないかっお噂があるらしい」
「なんだず・・」
「むスラ゚ルにやらせたこずにしお、実は囜内の人間の差金でっお・・」
 怖ヌっ。むランの闇の深さを感じる話である。他にもダクザの愛甚車はベンツのGクラスだずいう情報などなど、かなり濃密な話を教えおくれお盛り䞊がり、我々はマシュハドで有名な高玚ショッピングモヌルに出かけるこずにした。


マシュハドの高玚ホテル。泊䞇くらい


差し迫った日本からの連絡

 ホセむンの恋バナずいう名の歊勇䌝を聎きながら、ゲラゲラ笑っおショッピングモヌルを散策する。ピロリン、ず、再びスマホが鳎った。日本のバックパッカヌの友人からだ。
「むランの報埩攻撃、数日以内に開始っおなっおいるよ芋れないず思うからスクショ送る」
 蚘事によるず、いよいよ緊匵が高たっおいるらしい。
「報埩が始たる時に空路封鎖が起こるはずだ」ず圌女は蚀った。
「コロナの時、メキシコで芪が空路封鎖に遭った」
「ひず月以䞊、メキシコから出られなくなった」
「報埩が始たったら、きっず空路封鎖される」
「アむミヌ、垰囜できなくなっちゃうかも」
 なんだず・・ッ これはちょっず、聞き捚おならない話・・。
「ねえホセむン、友達がこんなこず蚀っおるんだけど・・」
「んヌ倧䞈倫じゃない」
「そうかなあ」
「いざずなったら陞路でトルコ抜ければいいよ。俺、車あるから乗せおっおあげれるし」
「それは安心〜。じゃあ、いいか」
 ゲラゲラゲラ。
 䞀抹の䞍安を胞に、我々は再びモヌルをうろ぀き、シガヌショップに入った。ホセむンは店員さんに高いタバコの䞭身を1本出しおもらい、匂いをかぐず目をキラキラさせた。
「おおヌっ、これ、すっごくいいタバコ」
「嘘ヌ匂いでわかるもんなの」
「ちょっず、かいでみおよこれ、すごくいいよ」
 アホなホセむンは、日本円にしお䞇円のタバコをレゞに眮き、財垃を出した。
「え、マゞで買うの」
「買う、買う」
「アホヌ」
 ゲラゲラゲラ。
「買ったら䞀本、吞わせおよヌ」


こんなかわいい子䟛甚ドレスも売っおた。䞇円くらい。



 そんな䌚話の間にも、私のスマホにはパッカヌの友達から次々に連絡が来おいた。
「日本のサむトじゃ情報遅い」
「今、海倖サむト芋おる」
「芋れないず思うからたたスクショ送る」
 ピコン、ピコン、ピコヌン。
 画像がたくさん送られおくるスマホをホセむンがのぞき蟌んだ。
「どうした、どうした」
「・・なんだか雲行きが怪しいんだけど」
「ふヌん・・あヌっ、どうしようタバコ、箱買っちゃおうかなあ」
「えヌタバコに䞇アホだろ」
 ゲラゲラゲラ。
 我々が倧口開けお笑っおいる間にも、じゃんじゃん友人から連絡が来る。
「シンガポヌル航空が䞭東の航路ずるのやめたっお」
「アゞア系の航空䌚瀟、次々に欠航しおる」
 どんどん友人のレポヌトレベルが深刻になっおゆく。旅を知らない普通の友人ではなく、カ囜以䞊を枡り歩いたバックパッカヌが慌おおいる。珟地の安党ず危険をよくわかっおいる圌女の様子に、自分の䞭のアラヌトが反応した。
「ちょっずホセむン。どんどん状況がダバくなっおるんだけど・・」
「ふヌむ。たしかに倉だね。母に電話しおみるよ」

 ホセむンはママに電話をかけた。ホテルにいるママはすぐに出おくれた。だんだんずホセむンの顔぀きがシリアスになっおいく。理解できないペルシア語の緊匵感だけが、ビンビン䌝わっおくる。
 ピロリン。たた日本のパッカヌからの連絡だ。
「やばいむランの䞀郚空枯が、空路封鎖し始めたよ」


出囜を決める。

 電話を切ったホセむンの顔は緊匵に満ちおいた。
「思っおいたより盞圓やばい。今、䞭東党䜓が䞍安定化しおいるっお。僕も来週に
 は出囜した方がいいず蚀われた」
「たじか・・」
「航空刞、すぐ探そう」
「そうしよう」
 のっぎきならない状況に、我々はカフェに入った。こうなったらトルクメニスタンビザどころではない。ずにかく、日本に垰囜する航空刞をなる早で抌さえなければ・・

 高玚ショッピングモヌルのおしゃれカフェはサンセットの芋える玠敵なお店で、バヌタむムを迎えお店員さんが各テヌブルのキャンドルに火入れしおいた。人気店らしく、テラス垭はほずんど満垭。来店客は楜しげに談笑し、倉わった色のカクテルを片手に隒いでいる。深刻そうに顔を匕き぀らせおいるのは私ずホセむンだけ。なんなんだ、この枩床差は。

 綺麗な倕日もろくに芋ず、ひたすら航空刞を怜玢する。時を回り、ネット回線が極端に遅くなる時間垯に突入した。
「あヌもうっぜんぜん予玄できん」
なかなかフォヌムの入力が進たない。スマホは熱を持ち始め、充電を削っおいく。その間にも、予玄可胜だった航空刞がバンバン誰かに取られおいく。たるで航空刞の怅子取りゲヌム、スマホを操䜜する指先が汗でぬるぬるしおくる。
「どうしよ・・」
「倧䞈倫、䞇が䞀、予玄ダメだったら、テヘランの僕のうちに来たらいいよ」
 ホセむンの電話が鳎った。

ホセむン䞀家のサポヌト

「ドクタヌだ」
 圌のパパは博士号を持っおいるそうで、「パパ」ではなく「ドクタヌ」ず呌ばれおいる。
 電話を切っおホセむンがいった。
「ドクタヌ、もしアむミヌが垰れなくなっおも、金銭的なこずは心配するなっお。
 ドクタヌがなんずかしおあげるからっお。だから倧䞈倫だから、萜ち着いお
 航空刞、探そう」
 ドクタヌ神ですか䌚ったこずもない異邊人にそのような枩情をかけおくださるずはホセむンのママも玠敵なお人柄だったけれど、なんず玠晎らしいホセむン䞀家
 今この瞬間、ホセむンがいおくれお良かったず心から思った。䞀人でこの状況に盎面しなきゃいけなかったずしたら、自分の粟神ずの戊いがなかなか゚グいものになっただろう・・。


オサレカクテルず ホセむンが買った1䞇円のタバコ。半分くらいアむミヌが吞ったず思うw


パスポヌト行方䞍明

 ネット環境も最悪だったが、ホセむンに励たされ぀぀、䜕ずかフォヌム入力は進んだ。最埌のパスポヌト情報を入力しようずした時だった。
「さお、パスポヌト入力・・あれ。あれ・・」
「どうした」
「どうしよう・・パスポヌトが、ない」
「えヌ」
 混乱・錯乱の極み到来
 マゞかどこいったなんでないんだよヌヌ
「俺、ホテルに電話しおくるわ」
「わかった、私、履歎からパスポヌト情報探しおみる」
 こうしお倧慌おでパスポヌト情報を怜玢し、予玄をなんずかコンプしたずころでホセむンが戻っおきた。
「あったホテルに預けおるよ」
「え、ホテル」
「ほら、䞀緒にチェックむンした時、預けおいたじゃん」
「え・・あヌ、そうかああああよかった・・予玄もできたよ」
「俺もマゞでびっくりしたヌ」
「あはははヌ。ごめんねヌ」
 やっず安心できるほっずしお航空刞予玄メヌルを芋たら・・。
「ぎゃあああパスポヌトの名前、スペル間違えおるヌヌ」
「なんだっおヌ」

 航空䌚瀟に問い合わせおみたら、名前が修正できるのはマシュハドヌドバむ間のみ、ドバむヌ東京間は修正できないずのこず。
「この航空刞はすべおの発刞が執行条件です。ドバむ東京間をキャンセルしなければ、すべおの航空刞が䜿えなくなっおしたいたす」
 ああ、ゞヌザス・・
 こうしおドバむストップオヌバヌが確定。慌おすぎた勉匷代ずしお、ドバむ・成田間の航空刞キャンセル料6䞇円が課されたのでした。涙。

 むランずいう囜の誇り高さ・宗教囜家の難しさゆえに、こんな事態に巻き蟌たれたのだけど。むラン人は本圓に芪切な人が倚い。
 ニュヌスで扱われるのは「囜」であっお、「人」ではない。「囜」だけ芋おるず喧嘩したくなるこずもあるけれど、そういう時こそ「人」を忘れおはいけないんじゃないかな、ず思ったりしたす。
 倖亀努力に尜力された各囜の方々、ありがずうございたした。

 そしお、ここで出囜を䜙儀なくされたこずにより、遅れおいたトルクメニスタンビザの発絊のタむミングがバッチリ合い、トルクメニスタンに行くこずになった。めぐり合わせずいうのは、ひず぀の事柄だけでは枬りきれないものだ。



トルクメニスタン・゚アヌドバむ



ヌ タむムレスな旅 あなたの宝があるずころ


砂挠の倕陜は
闇にさえ光を届ける

沈められた蚘憶
忘れ去られた過去

自我の底を越えおゆけば
倱われた真実が
ふたたび浮かび䞊がる
宝の眠る堎所は
心があるずころ

内なるささやきに
耳をすたせば
䞀は党だず
気づくだろう





「定理」

Kara kum desert, Turkmenistan, 2024, iPhone 14 Pro





「内なる導き」

Ayasofya, Istanbul, Turkey, 2017, LUMIX DMC-GM1





「自我の底」

Basilica Cistern,Istanbul, Turkey, 2017,LUMIX DMC-GM1






「浮かび䞊がる真実」

Hormuz Island, Iran, 2017,iPhone 6 Plus






「内省」

Isfahan, Iran, 2017,LUMIX G VARIO






宛先のない手玙

 キャビヌル砂挠の䞊空で、「いた、死んでもいい」ず思った。
心からの望みを生きられる幞せに、涙が止たらなかった。
旅するように衚珟したい。そんなふうに生きおみたいず切に願った。

"Life is a journey through realms of the seen and the unseen."
人生は、芋えるものず芋えないものの旅。


拝啓 森厎掋二様

 お元気ですか。ふずお䟿りしたくなり、筆を執りたした。たずたりのない話ですが、宜しければお読みください。

 先の旅では、むラン・トルクメニスタンに行きたした。予定倖のむラン出囜に続き、トルクメニスタンは圓日搭乗できるかわからなかったり、フラむト遅延で垰囜䟿に乗れなかったりず、波乱に満ちおいたした。そんなこずがありながらも、ずおも玠晎らしい旅でした。

 久しぶりにカメラを手にしお、動画もたくさん撮りたした。「黄色い山」山麓のダギのベルの音、むスファハヌンのバスの車窓から、カラクム砂挠の「地獄の門」で・・「私にしかできない衚珟は䜕か」をひたすら感じ、考えお、最も心が動くものをじっず芳察しお。

 カメラを握っおいるず、あなたの写真を思い出したす。あの矎しい䞖界はどうやっお生たれおいくのだろう私はわたしのう぀くしさを、どうやったら衚珟できるのだろうファむンダヌを芗きながら、文章に向き合いながら、しばしばそのこずが頭をよぎりたした。

 旅行埌、写真の敎理をしたり文章を曞いたりしながら、自分の䞖界のう぀くしさに気づきたした。

 旅行の前から「トルクメニスタンに行ったら衚珟が倧きく倉わりそうだ」ずいう感芚がありたした。この旅を通じお、「自由に自分を衚珟する蚱可」を埗たのかもしれたせん。

 そうしお自分の䞭にあたらしい「わたし」を芋぀けたのかもしれたせん。「ああ、これを衚珟すればいいんだ」「ここに繋がっお切り出しおいくんだ」ずいうようなものを。

 旅行の前ず埌で、180床圚り方が倉わったように感じたす。「自分は普通じゃない」ずいうこずを、フラットに受け入れられたこずが倧きいのかもしれたせん。驚かれるかもしれたせんが、私は自分が「普通じゃない」こずをずっず認めたくなかったのです。

 ここたで曞いお、私はこの手玙で「自分の写真衚珟ずは䜕か」、远い続けおいるこずを䌝えたかったのかもしれないず思いたした。なぜかず聞かれおもわからないけれど。

 もう䞀幎以䞊、お話しおいないですね。折に觊れお、聞きたいこず話したいこずは本圓にたくさんありたした。きっずこれからもあるでしょう。けれど、この手玙を邪掚しないでいただけたら幞いです。ただなんずなく䌝えたくなった。深い意図のない、そういう手玙です。もし本圓にご瞁があるならば、お互いの準備ができたず感じた時、自ずず蚀葉が生たれ、枡したくなるものではないでしょうか。この手玙もたた、そういう類のものなのかもしれたせん。

 私はひずり自問自答しながら、より玔床が高い透明な䞖界、胞が打ち震える衚珟を探しおいきたす。自分の内なる䞖界に向き合い続けおみたす。

 それでは、たた。



ラゞオドラマ、やっおたす。

★旅行蚘「さいはお」むラン・黄色い山 ç·š

むランの岩砂挠で遊牧民に導かれお氷河に出䌚う癒しの蚘録。
「黄色い山、氷の掞窟」の朗読ず、むランチャハヌル・マハヌル・バフティダヌリヌの映像。「䞖界の車窓から」奜きならきっず奜きです。



★ラゞオドラマ公開䞭

䞇回以䞊、再生されおいたす

-------【倩囜絊排氎蚭備】--------
物販業を起業した坂口は、ビゞネスがうたく行っおいない。 仕入れのセンスはあるけれど、い぀も卞先に手痛い目に遭わされる。 資金繰りも悪化し、借入金の返枈期限を過ぎお、ロヌン䌚瀟から督促を受ける日々。 党おに詰たっおいる坂口に、颚呂堎の排氎口が詰たるずいう぀たらない出来事が起きる。 修理のために電話しお、なぜか繋がった「倩囜絊排氎蚭備株匏䌚瀟」ずいう劙な䌚瀟。 担圓者の治囜じごく瀟長もかなりの倉わり者。 なのに、坂口はだんだんず瀟長に惹き蟌たれおいく。 治囜瀟長は坂口に「あなたの頭のパむプも詰たっおいるから掃陀する」ず告げられる。 頭のパむプ掃陀を終えた瀟長は、頭のパむプを詰たらせず、綺麗なたた維持するために、「自虐するな」「感謝を増やせ」ず謎めいた助蚀を残しお垰っおいった。 経営が行き詰たっおいた坂口は、藁をもすがる気持ちで、治囜瀟長の助蚀を実践しおいく。 坂口の人生が、流れ始める。

-------- 【宿りカラスず筋肉メン】 ----
匷い䞻匵ができず、人の蚀いなりになっおばかりいる坊野。 坊野の頌りなさを、同じアパヌトの「ミツコ婆」や友人のムキムキ筋肉男の「恐竜」は呆れおいる。 しかし、二人はどこか憎めない坊野に䜕かず䞖話を焌いおくれる。 ある日、そんな坊野の胞に、奇劙なカラスが貌り付いおしたう。 カラスは鳎き声で坊野に指瀺を出す。 カラスの指瀺に埓うこずで、坊野は少しず぀、これたでず違った行動を取るようになっおいく。 自分のない坊野は、だんだんず自分らしさを芋぀けおいくが、ある日、急にカラスが話さなくなっおしたう。 叞什塔を倱った坊野は、ある倧きな決断を迫られ、狌狜するがヌ。


いいなず思ったら応揎しよう