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揺れる時代を生きるためのzenからのメッセージ⑯ おわり 答えではなく、持ち方を残す

    ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

    この本は、何か一つの正解を示すために書いたものではありません。

    何を信じればいいのか。

    どう生きれば正しいのか。

    何が間違いで、何が正しいのか。

    そうしたことを、きれいに決めるための本ではないのだと思っています。

    むしろこの本で見てきたのは、

    問い、

    苦しみ、

    正しさ、

    決めつけ、

    感情、

    人間関係、

    仕事、

    AI、

    比較、

    速さ、

    愛、

    欲、

    拠り所といった、

    人が生きるときに何度も触れるものたちでした。

    どれも、簡単には片づきません。

    一つに決めきれないものばかりです。

    嬉しいだけでは終わらない。

    苦しいだけでも終わらない。

    正しいと言い切れない。

    でも、無かったことにもできない。

    そういうものばかりが、人の中にはあります。

    たぶん、人が苦しくなるのは、

    そうした複雑なものを、早く一つにまとめたくなるからなのかもしれません。

    これが答えだ。

    これが正解だ。

    これで間違っていない。

    そう言い切れたら、少し安心できる。

    でも現実には、言い切れないもののほうが多い。

    そのたびに、人は揺れます。

    けれど、この揺れは、ただ悪いものではないのだと思います。

    揺れるからこそ見えるものがある。

    決めきれないからこそ残る余白がある。

    苦しいからこそ、自分が何に触れているのかがわかることもある。

    つまり、人が生きるということは、

    きれいに整いきらないものと付き合い続けること

    なのかもしれません。

    この本で残したかったのは、答えそのものではなく、

    そうしたものたちとの「持ち方」です。

    感情を敵にしすぎないこと。

    正しさを固定しすぎないこと。

    比較に全部を持っていかれないこと。

    速さだけを正義にしないこと。

    愛を一つの形に閉じないこと。

    欲を消そうとするのではなく、どう持つかを見ること。

    そして、揺れたときに少し戻れる拠り所を持つこと。

    そうした持ち方があるだけで、

    人は少し壊れにくくなるのかもしれません。

    苦しみが消えるわけではない。

    迷いがなくなるわけでもない。

    でも、全部を失わずに済むことはある。

    この本は、そのための言葉を少しでも残したかったのだと思います。

    また、この本は「問うこと」そのものも大事にしてきました。

    問いには、答えがある感じがある。

    でも、問うことには、答えがあるかどうかもわからないまま、

    それでも向き合おうとする感じがある。

    この本は、どちらかといえば後者に近いのでしょう。

    すぐには答えが出ない。

    出たとしても、また揺れる。

    それでもなお、自分の中で問い続けてしまう。

    その動きまで含めて、人間らしさなのかもしれません。

    だから、この本を読み終わったあとに、

    何か一つの結論だけが残らなくてもいいのだと思います。

    むしろ少し引っかかりが残ること。

    少し考えたくなること。

    少し自分の持ち方を見直したくなること。

    それが、この本にとってはいちばん自然な終わり方なのかもしれません。

    揺れる時代です。

    速く、強く、わかりやすいものが求められやすい時代です。

    だからこそ、わかりきらないものをすぐ切らないこと。

    決めきれないものの中にも、自分の感覚を残しておくこと。

    それが、これからますます大事になる気がしています。

    最後に、この本の題名にある「メッセージ」という言葉に戻りたいと思います。

    この本は、教えるためだけのものではありません。

    上から答えを置くためのものでもない。

    どちらかといえば、

    同じように揺れながら生きる人へ、

    「すぐに決めきれなくてもいい」

    「苦しさの中にも、見えるものがあるかもしれない」

    「揺れながらでも、持ち方は育てていける」

    と、そっと渡すためのものに近いのだと思います。

    もしこの本が、

    あなたにとって何かを断定する本ではなく、

    少し立ち止まり、少し見直し、また歩き出すための小さな手がかりになったなら、

    それだけで十分です。

    答えを残すより、

    持ち方を残すこと。

    それが、この本を通して僕がいちばん残したかったものなのかもしれません。

    最後に、一つだけ正直に言うと、

    この本を書き始めたとき、特定の誰かの顔は浮かんでいませんでした。

    どちらかといえば、自分自身に向けて書いていたのだと思います。

    揺れながら生きてきた自分へ。

    決めつけて、見落として、感情に飲まれて、それでもまだ問い続けている自分へ。

    だからもし、この本の言葉がどこかであなたに触れたとしたら、

    それはたぶん、あなたの中にも同じ揺れがあったからなのでしょう。

    決めきれないままでも、あなたは進める。

    揺れながらでも、持ち方は育てていける。

    僕は今も、そう自分に言い聞かせながら生きています。


     
     

    zen

     
     
    倉庫の現場20年。Excelの手入力地獄をVBAとPythonで変えたくて、今まさにツールを自作中です。現場の構造問題を書く「倉庫の解像度」と、答えのない問いを考える哲学エッセイ。2本立てで発信中。

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