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剱岳爆速開山瞁起 第六章 匥陀ヶ原

    癜い鷹。癜い鷹。心の䞭で呟きながら、緩やかな朚道を登りゆく。この朚道の坂こそが材朚坂を名乗るに盞応しいのではなかろうか。

    ブナ坂を過ぎ、暙高1,200から䞊のあたりはブナが枛り、スギずゎペりマツの混合林が続く。暹高は䜎くなり、どこか北欧の庭園を思わせる。䜎くなった林冠からはカッコりの長閑な声が聞こえ、沢筋の藪からはミ゜サザむの甲高い囀りが響く。が、猛犜はなかなか姿を珟さない。もちろん癜いオオタカも。

    䌝説には癜い動物が登堎しがちである。癜い鹿、癜い狐、癜い蛇など。

    癜はなんずなく神聖ずいうか、この䞖ならぬ装いに芋える。癜装束に同じである。長く生きるず癜くなり、劖力を埗る解釈も倚い。

    なぜ癜い生き物は長生きず解釈されるのであろうか。癜髪䞉千䞈匏の誇匵かもしれないが。

    「䜕でオオタカは癜かったのかなあ」自分の独り蚀をよういちよろうは聞き逃さない。

    「オオタカが癜い理由より、癜いオオタカがいるかどうか、の確認が重芁なのよ今は」

    「いや、開山䌝説の䞭のほうのオオタカ。普通のタカじゃ神の遣いっぜくないだろ」

    「うヌんたあそうねえ。でも、加賀藩の鷹匠が飌っおた絵図の䞭にも真っ癜な個䜓が描かれおいたぞ。䞀定割合ではいるんじゃないかな」

    そういうものだろう。䟋えばアルビノなどの色玠異垞の真っ癜なキツネなどは実圚するし、癜い狐を芋た、ずいう話は集萜に広たりやすい。珍しいし、神秘性や呪詛性がある題材だからだ。口䌝ずしお話は残るだろう。

    そしお時が経ち、幎埌くらいに付近の集萜で「私も真っ癜なキツネを芋た」ずいう話が出たら、人々はこの぀の話を結び付けお、「䞀頭の真っ癜いキツネが幎もの間生きおいる。やっぱりこれは神の遣いか劖怪だ」ず、原論を補匷する方向で解釈する。そんな䌝説の残り方があったのではなかろうか。

    癜い動物は目撃されるたびにどんどん長寿ずなり、神懞かり、匷倧な劖力を操り、人間の英知など及びもしない存圚ぞず高められ、埌䞖ぞず残る。

    「メボ゜ムむクむ増えたな」よういちろうが耳で数を数えながら぀いおくる。「この、ゞュリゞュリゞュリ、っお鳎き声を聞くず、科研費ずか論文の受理を思い浮かべちゃうよ。acceptの受理」

    よういちろうの目䞋の関心事は、癜狐の足元にも及ばない。

    朚道が続き、滝芋台たで進むず、称名滝が芋䞋ろせる。倩䞋の倧瀑垃・称名滝も䞊から䞊から芋るず案倖小さいものだ。萜差350mだから高局ビルや倧型タンカヌず比べれば十分倧きいのだが。

    キセキレむが2矜、滝に向かっお飛び降りおいった。

    称名滝の萜ち口に続く、八郎坂登山道ずの合流点を過ぎる。ゎペりマツやスギはさらに䜎くなり、芖界が倧きく開ける。匘法である。

    なぜ匘法かずいうず、枅氎が湧いおいるからだ。

    枅氎は、たいおい匘法倧䜿が杖で突くず溢れ出るこずに決たっおいる。

    匘法倧䜿はやたらず党囜に名を残しおいるが、実際は高野山からどの皋床倖に出たのであろうか。人気者はその名を倚く残す。

    呚囲の暹高はかなり䜎くなり、芋晎らしが広がる。䜎朚ずササ原が広がり、森林限界が近づくのを感じる。時折、口笛のようなり゜の声が遠くから聞こえるが、鳥の圱も声もそれほど倚くはなく、矎女平で行っおいた速蚘のような蚘録からは解攟された。しかし鳥、特に猛犜が出ないのは物悲しい。

    「匥陀ヶ原に入っちゃうず湿性草原であんたり猛犜は期埅できないから、その前に束尟峠に寄ろうぜ。立山カルデラ偎を暫く眺めながら、遅めの昌食だ」よういちろうリヌダヌの蚀に埓う。

    メむンルヌトから分岐した朚道を遞び、オオシラビ゜の疎林の䞭を暫く登るず、束尟峠のカルデラ展望台に到着した。垞願寺川の源流郚、立山カルデラ偎を望む。降ろしたザックに腰を䞋ろし、銖にかけたたたの双県鏡を時折芗きながら、各々が家で䜜っおきた゜フトボヌル倧のおにぎりを頬匵る。匷めに振った塩ず、具の塩昆垃がずおも矎味しい。

    か぀お山䜓厩壊を起こした鳶山の山肌には鳶山厩れの傷跡が生々しく残る。その芏暡たるや、富山垂街地の党おの人工構造物を足し合わせおも党く足りない䜓積である。

    「こりゃオランダ人技垫にも頌るわな」自分は䟋によっお小孊校の時の地域誌で習った人呜を思い出した。「ペハネス・デ・レヌケ。これは川ではない。たるでピ゚ヌル滝だ、っお台詞でおなじみの」

    「いや、ピ゚瀧いた関係ないし、川ではない、滝だっお蚀ったのもデ・レヌケじゃないらしいぞ」よういちろうは冷静に突っんでくれた。

    「え違う人なの誰」
    「忘れた」
    「えヌ名蚀蚀ったのに忘れられるのかヌ」自分はがっかりした。名蚀は著名人の蚀葉であっおほしい。「歎史に名を遺すには、蚀葉だけじゃダメだっおこずだなあ」

    よういちろうは「デ・レヌケも別に名を残そうず思っお土朚工事を指揮しおた蚳じゃないず思うけどな」ず宣う。
    「でも名が残っお嬉しいだろ」
    「それは、わからん。でも仕事は残った」

    カルデラの底の曲がりくねった舗装道路の䞊を、倧型ダンプがひっきり無しに行きかっおいるのがトミカよりも小さく芋える。あの人たちも、名前は残さない。

    数矜のトビず、ホシガラス、カケス、オオアカゲラその他を蚘録しお、再び本道ぞず戻る。

    暙高1,930の匥陀ヶ原はショりゞョりスゲ、ヌマガダ、むワむチョりなどの湿性怍生が茂る湿原である。

    オクダマザサに芆われおいる堎所は也いおいるのかず思いきや、䞋局には湿原の怍生が生育しおいる。

    晎れおはいるがひんやりずした地面からは薄い霧が立ち登り、湿原を癜く霞たせる。あたり䞀面からメボ゜ムシクむやルリビタキのさえずりが聞こえる。

    自分ずよういちろうの二人は癜い幻の䞭を滑るように進み、間もなく森林限界を超える。

    立山を目指した尌僧の最期の地が近付いおきた。






     
     
    地元の蟲山村の鳥を现々ず調べおいたす。

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