
初夏、小さな部屋
柔い布団に包まれたい。
豊かな眠りについて、私はこの世から乖離する。
蟻地獄のような日々。
夢を追いかけているのに、夢に追い詰められている。やりたいことをできない生活に、意味を見いだせず、心は苦しいときりきり音を立てる。
今日は久しぶりに半日休んでみた。胃を悪くして、休まなくてはいけなかった。静かに過ごしてみたくて、ネイルポリッシュを買って帰った。小さな瓶。使い切れないだろうな。
キャップを開けると、懐かしい匂いがした。
テラス窓のそばで、足にネイルをする母。
梅雨の合間に晴れた日の、少し涼しい風と土や草の蒸した匂い。初夏によく見た景色。私が大きくなるにつれて見なくなってしまったが。
上手く塗れず、ところどころはみ出したネイル。
私みたいだ。なんて、悲観的になることはないのに、苦しいと何もかもが暗くなる。
あぁ、嫌だ。せっかく夏が来るのに。
青く命に溢れた、強い季節。
最近は暑すぎて、気分が悪くなることがあるが、それでも夏が好きだ。
海で遊びたい。
遠くの海岸で、あなたが手を振る。
そろそろ戻っておいで。
帰れるなら帰りたい。
でも、私は私を赦す為に、夢を追いかけている。
都会の方がどうしても都合のつく夢だ。
まだ帰れない。
夜の近い、柔い光に目を覚ます。
お腹がすいた。
けれど食べたいものなどない。
アルバイトももうしたくない。
ずっと眠っていたかった。胎内で。
産まれたら生きていかなきゃいけない。
あなたのために。わたしのために。
今日も終わらせていく。
命をひとつずつ。