
スロップシンクがぎうぎう
やかんの湯が沸いた。
麦茶パックを3つ、やかんの中に放り込もうと、
人差し指と中指で蓋のつまみに触れた瞬間、
わずかにパクッと蓋が持ち上がった。
湯気が噴き出す、反射的に手を引っ込める。
引っ込めようと動かした先に
やかんの取っ手が仁王立ちしていた。
薬指か、小指かわからない、鋭い痛みが走ると同時に、
ガス台の五徳からやかんが滑り落ちるのが見えた。
後ろに飛びすさった、つもりだった。
半歩も下がってなかった。
やかんはゴミ箱を這わせたダンボールに向かって
ひっくり返りながら落ちていく。
入れ、スポッと入れ。
ダンボールの縁をひっかけ、いっしょに床へぶち当たる。
湯が破裂する。
熱い矢、
熱い矢、
熱い矢。
突き刺さる痛み
肘より少し下の腕、その側面。
足首、足の甲。
なんで今日に限ってバレエシューズ。
床には湯気が立っている。
事務所のエアコンはここまで届かないのに。
もわりと、湯気が立ってる。
冷やさないと。
冷やさないと。
湯沸室を出てすぐ隣の手洗いに駆け込んだ。
ここなら、スロップシンクがある。
とにかく、靴を脱いで、ストッキングの前、足を冷やそう。
あ
あ
シンクの中にいっぱい突っ込んである。
バケツ、ホース、モップの先だけ、ゴム手袋、雑巾。
私はうわーんと泣いた。