私のボス② 人を育てる漢気のボス
白髪とやたらスベスベな肌が特徴。
お酒と女性がそこそこ好きで、
何より漢気のある二人目のボス。
徹底した現地現物主義者だ。
⸻
映画の名台詞に
「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ。」
という言葉がある。
ボスはまさにその言葉を体現する人だった。
そしてもう一つ。
「上が責任を取らない組織は末端が腐る。」
それも地で行く人だった。
⸻
実は長い間すれ違っていた。
最初の部署では、
私が配属される前にボスは異動。
次の部署では、
私が異動した後にボスが着任。
そして三度目の正直。
新しいプロジェクトと共に立ち上がった部署で、
ようやく一緒に仕事をすることになった。
⸻
事前に色々な噂は聞いていた。
中には
「任侠映画みたいな人だよ」
という話まであった。
しかし、
誰に聞いても最後は同じ言葉になる。
⸻
「漢気のあるボス」
「一緒に仕事が出来て良かった」
⸻
とは言え
ボスのミーティングは長めだ。
けれど苦ではない。
五感に訴え、
全員が本当に理解するまで話す。
だからこそ、
誰一人置いていかない。
全員が同じ方向を向き、
同じ速度で歩く。
⸻
計画は精密。
時には大胆。
しかし驚くほど、
やっていることは基本に忠実だ。
それなのに凄く見える。
なぜか。
ボスの言葉には魂があるからだ。
⸻
違うことは違うとハッキリと言う
そして魂を込め
理にかなった話で
相手の心に響かせる
それが、
社長だろが役員だろうが新入社員でもだ
「いつも、泥水飲まされるのは俺。
でもな、お前たちの仕事がしやすい環境を作る。
これが俺の役目なんだよ。」
そう言って嫌な役目もこなしてしまう。
⸻
だから
上からも慕われる。
下からも慕われる。
そんな人は滅多にいない。
唯一無二のボス。
⸻
課題を一つ乗り越えるたび、
みんなで酒を飲んだ。
オンとオフがはっきりしている。
それもボスの魅力だった。
今でも集まりがあれば
「漢気会」が開かれる。
⸻
ある日の漢気会。
ボスは用事があると言って先に帰った。
しばらくして、
私たちも帰ろうと会計をお願いした。
すると店員さんが言った。
⸻
「先ほど帰られた方が、もうお支払いされています。」
⸻
全員が顔を見合わせた。
そして笑った。
⸻
やられた
ズルいなぁ、ボス。
⸻
そんなさりげない気遣いが出来るから、
みんな大変な時も頑張れる。
⸻
ボスの口癖がある。
「仕事は思いがなきゃ、やってられない。」
今の時代、
なかなか聞かなくなった言葉だ。
ボスが副社長にらなると同時に
私は今の人事の役職に就いた。
ボスの意向だったらしい。
⸻
このボスのもとで働いた人たちは、
もちろん本人の努力もある。
しかし不思議と皆成長していく。
⸻
憧れのボス。
真似したくても真似出来ないボス。
生まれ持った人間力で人を惹きつけるボス。
⸻
気が付けば、
私はこの人に成長させてもらっていた。
そして今の私がある。
そう実感している。
