私だけのライブ
古いデジタルの腕時計。
耳にはイヤホン。
今の自分に一番合ったシューズの紐を結ぶ。
「さて、行こうか」
走り始めて、
何年が経つのだろう。
最初は散歩程度のつもりだった。
体力と筋力を維持することが目的で、
走ろうとは考えていなかった。
けれど、街を走る人たちを見て、
「やってみようか」
そんな軽い気持ちで走り始めた。
腕時計はつけていても、
時間はあまり気にしない。
3キロから5キロ。
その日の体調に合わせながら、
のらりくらりと6、7年続けています。
先日も、
出張先の神戸を走りました。
太陽が少しずつ眩しくなり始める早朝。
いつものように、
イヤホンから流れる音楽を聴きながら。
選曲は、
ほとんどお任せのミックスプレイリストです。
この日のスタートは、
The Heavyの「Same Ol’」
いきなりヘビーなロックに
背中を強く押され、走り始める。
Tinie Tempah、Zara Larsson、
SIA、Meduza、
Don Toliver、Doja Cat、SZA、
Beyoncé、King Gnu。
順番は忘れてしまったけれど、
国もジャンルも個性も違う、
色の濃いアーティストたちが次々に現れる。
その変化が刺激になり、
自分の呼吸で、
自分の道を切り開いていく。
そんな強さを感じながら走れました。
中盤は、
Bon Jovi、Mrs. GREEN APPLE、
Céline Dion、サザンオールスターズ、
Taylor Swift、Queen、
Whitney Houston、Bruno Mars
日本を代表するグループも混じった、
王道がひしめく豪華なキャスティング。
疲れが出始める中盤だからこそ、
その歌声が励ましになり、
「まだ走れる」
「もう少し先へ行こう」
と、そっと支えてくれました。
そして終盤。
耳で聴くものではなく、
心と身体で感じる
Michael Jackson
疲れているはずなのに、
身体が自然に前へ進む。
彼の声とリズムによって、
自分もステージの中にいるような感覚になる。
走っているというより、
音楽の中を駆け抜けている。
そんなひと時でした。
最後の締めは、
Ariana Grandeの「Break Free」
苦しさよりも爽快感が勝り、
「今日も走り切った」
「私は、まだ前へ進める」
そんな自信が湧いてくる。
そして、ポートタワーに到着。
ゴールした瞬間に感じたのは、
単なる達成感ではありませんでした。
心まで軽くなるような解放感。
力強く走り始め、
さまざまな感情を巡り、
最後に自分自身を解き放つ。
途中で寄り道もしながら、
いつもより長い距離を、
ゆっくり、楽しく走り切りました。
改めて聴いたアリアナ・グランデの歌声。
華やかで可愛らしい姿とは対照的に、
その声には強さと繊細さが同居しています。
声の高さや息遣い、
幾重にも重なる声によって、
一曲の中に美しい空間を作り上げる。
素晴らしいアーティストです。
「Break Free」が最後に流れたからこそ、
この日のゴールは、
より大きな解放感に包まれたのだと思います。
いつもとは違う場所と景色の中。
まるで、
自分のためだけに開かれた
豪華なライブを駆け抜けるような
ジョギングでした。
背中を押してくれた
すべての音楽とアーティストへ。
Thank you.
ありがとう。

