私のボス③ 信頼し支えてくれたボス
みなさんは、エヴァンゲリオンが歩く後ろ姿を想像できますか。
ドシン、ドシン、ドシン――。
三人目のボスは、まさにそんな後ろ姿の人でした。
身長190センチ。
痩せ型で肩幅が広く少し猫背、黒縁メガネがトレードマーク。
初めて会った時、思わず見上げ
「うわっ!でけぇっ!あっジャイアント馬場だ!」
私の心の中にあるコクピットにいる
小さな私は間違いなくそう叫んでた。
そんな第一印象でした。
話し方は物腰柔らかく、ダジャレ好き。
ただ、残念ながらあまり上手くない。
だから周りは苦笑いするしかありません。
若い人が大好きで、男女問わないはずだが
特に若い女性社員には孫のような眼差しを
向けていました。
子供には恵まれなかったそうですが、その分たくさんの若手を可愛がっていました。
もちろん、「二人のルーキー」も例外ではありません。
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体格とは対照的に、数値分析は驚くほど繊細で正確でした。
長く海外勤務をした経験と
株式投資もしていたことから先見性にも優れ、将来を読む力に長けていました。
今では悠々自適な生活を送っています。
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私は入社以来、小さな失敗はいくつもあっても
特大の失敗はほとんどありませんでした。
しかし三十代前半に大きな壁にぶつかります。
リーマンショックです。
当時の私は、会社の中長期的な経営戦略の立案や進捗管理に携わっていました。
金融危機の予兆は感じていました。
リスクも数値化していました。
しかし、世界規模の経済ショックを完全に予測することはできませんでした。
グローバルなサプライチェーンの混乱や金融引き締めによって、金融機関よりキズは浅いとは言え会社は億円規模の損失を抱えることになります。
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数値の下方修正。
事業計画の見直し。
資金対策。
連日の対応。
みんなで必死に乗り切りました。
しかし気が付けば、私は大きなストレスの海の中を泳いでいました。
いや綺麗すぎる
ガラスの破片の中を泳ぎもがいて血だらけで前に進んだと言った方が正しい
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刺さるような周囲の視線。
説明できない恐怖感。
整理できない思考。
突然あふれる涙。
眠れない夜。
偏頭痛と吐き気。
不安
闇に引き摺り込まれる感覚
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今思えば
よくあの状況で生きていたと思います。
仕事を辞めることも考えました。
当然私の命も…
誰にも言えない孤独がありました。
気がつけばうつ病を患ってました。
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全てが落ち着いたある日。
私はボスに打ち明けました。
するとボスは静かに言いました。
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「俺が予測しきれないのに、お前にはもっと無理だろう。」
「こういう時もある。お前の案がベストだから承認した。」
「大丈夫だ。全ての責任は私が負う。それが私の役目だ。」
「お前は早く自分を治せ。」
「自分を大切に出来るのは自分だけだからな。」
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その言葉に救われました。
別に世界経済が回る中で、リーマンショックだけで会社の人事は動かない。
しかし、あの時は私も心の弱さから
解雇や降格も覚悟していました。
厳しい処分も覚悟していました。
しかし何もありませんでした。
会社からは、むしろ労いの言葉をかけられました。
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後から聞いた話です。
ボスは当時の社長や役員の前で、
最後の後始末をしたそうです。
大きな失敗こそ大きな成果が生まれる時
どうぞ
若い彼らの光を消さぬように
若い彼らの未来を守っていただけるように
お願いいたします。
当時の部下たちの未来を守るために、
会社へ強く訴えてくれていたのはボス。
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その後、ボスは心臓病を患い引退しました。
今思えば、
一番大変だったのは私ではありません。
会社を守り、
部下を守り、
全ての責任を背負っていたボスでした。
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誰よりも私を信頼し、
誰よりも私を支えてくれたボス。
上司とは何か。
信頼とは何か。
その答えを教えてくれた人です。
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今でも時々会社へ顔を出してくれます。
そのたびに一緒にランチをします。
昔と変わらない穏やかな笑顔を見ながら、
私は心の中で思います。
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「あの時、守ってくれてありがとうございました。」
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三人目のボス。
私にとって、生涯忘れることのできない恩人です。
