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病気と「幸福」2"病気による「幸福感」の低下を緩和するには"

    本記事は、下記記事↓の続編です。

    病気で健康が損なわれると「幸福感」(Happiness)の土台であるウェルビーイング(身体、精神、社会的に充実した状態)が万全でない状態ですから、一時的にせよ「幸福感」の深刻な低下を来します。前の記事で「病気=不幸」と言えない理由は下記の3つあることを述べました。
    1.幸福は主観なので病気を契機に潜在的幸福の自覚につながる
    2.人間にはレジリエンス(精神の強靱な回復力)がある
    3.病気の体験が人間的成長を促し、大きな幸福を得る場合がある
    本記事では「病気による『幸福感』の低下の緩和」について述べます。
    次回記事「病気と『幸福』-3」では「病気は新たな『幸福』獲得の機会にも」ということについて述べます。

    病気による「幸福感」の低下を緩和するには

    健康度を他人と比べないこと

    病気に限ったことではないのですが、
    自分と他人を比べることは
    「幸福感」の低下につながります。

    自分と他人を比べないことが大事だと、
    幸福について語った古代の哲学者、宗教家から
    現代の研究者に至るまで考え方は共通しています。

    まして病気によって「幸福感」が低下した状態で
    周囲の健康な人びとと比較することは
    羨望や妬みが入り込む脅威です。

    こう書いている私も
    偉そうなことを言えません。

    脳梗塞で入院中、私より数日後に同じく
    脳梗塞で救急車で運び込まれた
    同室の人がいらっしゃいました。

    私より一廻り高齢であるにもかかわらず
    ラクナ梗塞なのか(脳梗塞では最も軽症)
    私より症状も軽く回復も早く、
    一週間足らずで退院されたのを
    心から祝福する気持ちになれず、
    羨んでしまい、なんて心の狭い人間なんだと
    今は恥じ入るばかりです。

    社会的交流や趣味

    社会的交流や趣味は、
    病気による幸福度の低下を緩和する
    効果があるとされています。

    1. 社会的交流の効果

    • 心理的サポート: 友人や家族との交流は、ストレスを軽減し、孤独感を和らげることで幸福度を向上させます。特に、病気による不安や抑うつ症状を軽減する効果が研究で示されています(例: Cohen & Wills, 1985)。

    • 免疫系の強化: 良好な社会的つながりは、ストレスホルモンの分泌を抑え、免疫系を強化することで身体的健康にも寄与します(Uchino et al., 1996)。

    • 実例: 慢性疾患患者を対象とした研究では、定期的な社会的交流(例: サポートグループへの参加)がQOL(生活の質)の向上と関連していることが報告されています。

    • メタ分析: 社会的サポートと幸福度の関係を調べたメタ分析(Pinquart & Sörensen, 2000)では、社会的交流が特に高齢者の幸福度低下を抑制することが示されました。

    2. 趣味の効果

    • ポジティブな感情の促進: 趣味(例: 運動、音楽、創作活動)はドーパミンやセロトニンなどの幸福ホルモンを増加させ、気分を高揚させます。

    • 気晴らし効果: 趣味に没頭することで、病気による痛みやストレスから一時的に注意をそらすことができ、心理的負担を軽減します(Csikszentmihalyiの「フロー理論」)。

    • 自己効力感: 趣味を通じて達成感を得ることは、病気による無力感を軽減し、幸福度を高めます。

    • 趣味の研究: 例えば、がん患者がアートセラピーや運動プログラムに参加した場合、幸福度やQOLが向上するとの報告があります(Wood et al., 2011)。

    私もJazzや写真が趣味なので
    これらの仲間との交流が
    「社会的交流」「趣味の効果」の
    相乗効果を上げていると実感しています。

    メンタルヘルスの良好さが鍵

    メンタルヘルスの悪化自体が精神医学的病気ですが、
    身体的病気や怪我によるメンタルヘルスの悪化は、
    不可避的に発生すると言ってよいでしょう。

    ただ、それが一時的で
    メンタルヘルスが回復するか、
    メンタルヘルスの悪化が慢性化し、
    身体的健康と精神的健康の悪化の
    悪循環を来すかで、
    大きな違いがあります。

    身体の疾患とメンタルヘルスの関連

    身体疾患とメンタルヘルスは双方向的関連を持ち、
    身体疾患がメンタルヘルスを悪化させる一方で、
    メンタルヘルスが身体疾患のリスクを高めたり、
    症状を重くしたりします。

    慢性疾患を持つ人は
    うつ病等のメンタルヘルス問題を発症しやすく、
    逆にメンタルヘルスの悪化が
    心臓病や糖尿病などの身体疾患の発生率
    を増加させる可能性が示されています(注1*)。

    例えば、心血管疾患や呼吸器疾患等の
    身体疾患が共存する場合、
    メンタルヘルスの低下が観察され、
    全体的健康状態が悪化する傾向があります(注2*)。

    深刻な精神疾患(SMI)を持つ人は、
    身体的多疾患(multimorbidity)のリスクが約2倍
    になるというメタアナリシス結果もあります(注3*)。

    これらの関連は、
    炎症反応、ホルモン変化、生活習慣の乱れ
    などが媒介していると考えられています。

    また、身体の痛みや移動制限が
    慢性ストレスを生み、
    精神疾患の症状を悪化させるメカニズム
    が指摘されており、
    身体活動の減少がこれを助長します(注4*)。

    例えば、深刻な精神疾患を持つ人は、
    身体的多疾患により
    寿命が10-20年短くなる可能性があり、
    精神衛生の低下が主な要因です(注5*)。

    さらに、慢性疾患の心理的負担が
    不安やうつを増大させ、
    全体的な生活の質を低下させる
    というエビデンスもあります(注6*)。

    メンタルヘルス療法が身体疾患の治療効果に与える影響

    メンタルヘルス療法(例: 心理療法、運動療法)は、
    身体疾患の治療効果を向上させ、
    症状軽減や回復率を高めます(注7*)。

    身体活動を組み合わせた療法は、
    うつ病や不安の症状を改善し、
    慢性疾患の管理を助けます(注8*)。

    研究では、運動療法がうつ病治療に
    薬物療法より1.5倍効果的で、
    身体疾患の転帰を改善することが
    示されています(注9*)。

    また、心理療法が慢性疾患患者の
    メンタルヘルスを向上させ、
    医療利用を減少させるエビデンスがあり、
    統合的なメンタルヘルスサービスが
    慢性疾患のコントロールを強化します(注10*)。

    ヨガやストレングストレーニング
    などの療法がうつ病を軽減し、
    身体疾患の治療遵守を高める効果が
    メタアナリシスで確認されています(注11*)。

    最後まで記事をお読みいただき
    ご覧いただき、
    誠にありがとうございました。
    今後も幸福に関連する記事
    を投稿してまいりますので、
    好き・コメント・フォローなど
    いただけますとありがたいです。

    イーハピネス株式会社 代表取締役 松島紀三男*プロフィール*

    (注1*)Turner, J., & Kelly, B.: Emotional dimensions of chronic disease: Western Journal of Medicine, 172(2), 124–128 (2000)
    (注2*)Katon, W. J.: Epidemiology and treatment of depression in patients with chronic medical illness: Dialogues in Clinical Neuroscience, 13(1), 7–23 (2011)
    (注3*)Firth, J., et al.: The Lancet Psychiatry Commission: A blueprint for protecting physical health in people with mental illness: The Lancet Psychiatry, 6(8), 675–712 (2019)
    (注4*)Bair, M. J., et al.: Depression and pain comorbidity: A literature review: Archives of Internal Medicine, 163(20), 2433–2445 (2003)
    (注5*)Walker, E. R., McGee, R. E., & Druss, B. G.: Mortality in mental disorders and global disease burden implications: A systematic review and meta-analysis: JAMA Psychiatry, 72(4), 334–341 (2015)
    (注6*)Clarke, D. M., & Currie, K. C.: Depression, anxiety and their relationship with chronic diseases: A review of the epidemiology, risk and treatment evidence: Medical Journal of Australia, 190(S7), S54–S60 (2009)
    (注7*)Cooney, G. M., et al.: Exercise for depression: Cochrane Database of Systematic Reviews, (9), CD004366 (2013)
    (注8*)Cooney, G. M., et al.: Exercise for depression: Cochrane Database of Systematic Reviews, (9), CD004366 (2013)
    (注9*)Noetel, M., et al.: Effect of exercise for depression: Systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials: BMJ, 384, e075847 (2024)
    (注10*)Naylor, C., et al.: Long-term conditions and mental health: The cost of co-morbidities: The King’s Fund and Centre for Mental Health (2012)
    (注11*)Saeed, S. A., Cunningham, K., & Bloch, R. M.: Depression and anxiety disorders: Benefits of exercise, yoga, and meditation: American Family Physician, 99(10), 620–627 (2019)

     
     
     
    幸福、従業員幸福度をライフワークとするコンサルタント。2013年世に先駆け「従業員幸福度(EH)調査® 」開発。熊本大学文学部哲学科芸術学コース卒。(株)ビジネスコンサルタントでコンサルタント、執行役員。㈱イマージョン専務取締役を経て2019年イーハピネス(株)設立。

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